診察室便り

2016年12月31日(土)
大晦日

 今年も余すところ今日1日となりました。年末の風物詩となっている除夜の鐘や餅つきが、騒音やノロウイルス感染への危惧から中止されてる例が相次いでいます。除夜の鐘は夕方に終わるよう時間を早めた「除夕の鐘」になったとか?社会事情とはいえ、何となく殺伐とした気持ちになりますが、これも時代でしょう。

 11月から流行り始めて来たインフルエンザは、学校の休みとともに一段落しました。今度は新学期が始まった後、1月中旬~2月中旬に今シーズン第2波の流行がくるでしょう。

 今シーズンはインフルエンザ ワクチンが不足気味と言われていましたが、今のところ順調に供給されています。また、麻疹・風疹ワクチン、日本脳炎ワクチンも一時期不足しそうでしたが、何とか持ちこたえました。今後も突然ワクチン不足の事態がやってくるかもしれません。接種予定の方はできるだけ早めに接種されるようお勧めします。

 インフルエンザと並ぶ冬の流行病といえば、急性(感染性)胃腸炎ですが、こちらは従来とタイプの違う新型ノロウイルスが出現したということで流行が心配されています。新型ですから、過去に罹ったことがあってもまた罹ることがあるわけです。

 ノロウイルスの発症がずば抜けて多いのは「保育園(所)」です。小さい子はなんでも触って、そのまま口に入れたりしますから感染拡大を防ぐののは大変難しいです。

 保育園に行ってるお子さんが嘔吐や下痢で受診されますと、よく聞かれるのは「いつから保育園に行っていいですか?」です。昔の教科書には「感染の恐れがなくなってから」となっていますが、ノロウイルスに感染すれば3~4週間は体内にウイルスが存在しております。つまり、その期間は他のお子さんに感染させる可能性があるということです。では、3~4週間休まなければならない?これはちょっと非現実的です。

 ノロウイルス感染後の欠席期間はインフルエンザのようにはっきりしたものはなく、特に決まっていません。私はまず、「最低限、限吐かなくて食べられること。そして、下痢の回数があまり多くないこと」とお話ししています。
 下痢の回数は具体的に何回以下というのではなく、あまり保育士さんの手を煩わさせないくらいの回数とお話しします。徹底した手洗いができればいいのですが、小さいお子さんでは限界があります。とはいえ、とにかく手を洗いましょう。

 今年は当院開院20周年の節目に当たりました。早いものですね。開院当初は、10年、20年なんてはるか彼方に思えましたが、経ってみれば案外早いものです。
 20年といえど一つの通過点にすぎません。来年もまた、新しい気持ちで診療に励んでいきたいと思っています。

2016年12月4日(日)
鳥インフルエンザ

 11月下旬からインフルエンザの患者さんが増えてきました。いつの間にか、ちょっとした流行になってきました。まだ流行地域は限定的ですが、小学校・中学校から幼稚園・保育園にも少しずつ広がりを見せています。このまま冬休みまで続きそうです。そして、冬休みで一段落して、また、新学期から流行が始まるように思います。

 毎年流行する季節性インフルエンザとは別に、今シーズンは鳥インフルエンザも日本各地で出現しています。青森県、新潟県ではH5亜型が、秋田県、岩手県、宮城県、鹿児島県、鳥取県ではH5N6型が、報告されています。

 鳥インフルエンザは、今のところ鳥から鳥の感染で、人から人の感染はありませんが、要注意ではあります。

 先日、「カラスの糞からでも鳥インフルエンザは感染しますか?」というご質問を受けました。(どうも、子どもがカラスの便を踏んづけたらしい?)

 鳥インフルエンザは、カモやアヒルなどの水鳥(水禽)やニワトリやウズラ、七面鳥などの(家禽)に見られます。カラスやスズメのような野鳥での感染はあまり聞いたことがありませんが、鳥インフルエンザウイルスに感染したカラスも見つかってはいます。

 カラスがどのくらい鳥インフルエンザに対して抵抗力があるかわかりませんが、鳥インフルエンザに強いカラスなら、直ちに死ぬことはなく健康保菌者(鳥)となって、ウイルスをばらまく可能性はあります。便中にも鳥インフルエンザウイルスは排泄されますが、便中の鳥インフルエンザウイルスは乾燥すると死滅してしまいます。しかし、低温では長期に生存しますので、少量の乾燥した便を踏んづけたくらいでは感染の心配はないでしょうが、新鮮な大量の便に接触するのは出来るだけ避けたほうが良いですね。

2016年11月26日(土)
あいさつ

 本格的に寒くなってきましたね。今シーズンは全国的にインフルエンザの流行が早いようです。今のところインフルエンザの患者さんを診ない日はないですが、とても流行と言えるほどでの患者数ではありません。これから師走にかけて、あちこちでチラリホラリと患者さんが出てきそうです。

 先日テレビのニュースで観ましたが、とある地方のマンションでは「あいさつをしないこと」が決まったそうです。よく意味がわかりませんでしたが、今の世の中大変物騒ですので、親は知らない人にはあいさつをしないように、また、声をかけられても返事をしないように言い聞かせています。ごもっともです。

 大人は同じマンションに住んでいる子ならだいたいわかりますから、親しみを込めて声をかけることが多いのでしょうが、子どもからは知らない人にみえる場合が多いのでしょう。そこで大人にあいさつをかえさない。確かに声をかけても返事が返ってこないのは気分が悪いものです。ならば、いっそのこと、「あいさつをしないこと」に決まったようです。

 とても殺伐とした世の中になったものだな~と思いましたが、やむを得ないような気もします。私は2才児や3才児の健診では、「知っている人に会ったら、自分からあいさつをしましょう」とお話ししています。人と人とのコミュニケーションにおいて、お互いにあいさつを交わすことは基本中の基本と思っていますが、時代の情勢にあわせてちょっと修正も必要ですね。これからは、「知っている人にはあいさつをしましょう」それに、「知らない人は無視しましょう」を付け加えるようにします。

2016年11月8日(火)
そろそろ、インフルエンザ その2

 日増しに寒さが増す今日この頃ですが、明日は初雪になりそうです。まだタイヤ交換していないので、積もるような雪でしたら、明日はクリニックまで徒歩通勤です。健康のためには良いかもしれませんね。

 いよいよ、アメリカ大統領選挙の投票日となりました。史上最大の最悪VS最低の対決などと揶揄されていますが、どっちが当選するんでしょうね。お互いに相手の悪口を言いたい放題。まともな政策論争なんてなかったみたい?今回に限り任期を2年にしても良いような感じがします。どっちが当選しても日本にとってはありがたくないような報道が多いですが、日本政府には独立国家として、しっかりした外交を行ってほしいものです。

 先週から当院周辺の小学校でインフルエンザが発症しています。まだ、大きな流行にはなっていませんが、次第に患者さんは増えているようです。

 昨年と比べるとちょっと早い流行です。現在、沖縄県が流行期に入り、福井県、岩手県も増えつつあるようです。沖縄県で流行しているのはA香港型で、このタイプは2014/15シーズンに子どもたちの間で大流行しました、にもかかわらず10代での患者さんが多いようです。インフルエンザウイルスは毎年少~しずつ変異しますので、昨年、一昨年に罹ったからといって、油断してはいけません。今年は今年のA香港型と思った方が良いです。

 流行が早いと終わるのも早いような気がしますが、ダラダラと流行が続くのが最近のインフルエンザの特徴です。今シーズンは長丁場になりそうです。何はともあれ、インフルエンザ ワクチン接種を急ぎましょう。

2016年10月29日(土)
そろそろ、インフルエンザ

 朝起きると寒さを感じる季節になってきました。この時期が一番イヤですね。ある程度寒くなってしまうと、マア、なんというか、あきらめてしまいます。

 先週の土曜日は休診して、患者さんにご迷惑をおかけしました。当院あまり休診しませんが、何かの代休、学会出張、冠婚葬祭などではお休みすることがあります。

 今回は甥っ子の結婚式で東京に行ってきました。新幹線に乗ってふと隣の席をみると、あれ、この人は?なんと耳鼻科の渡邊聡哉先生ではありませんか!聞けば、先生もご親戚の結婚式で東京へ行くのだそうです。こちらも休診ですね。
 東京駅で新幹線を降りたら、あれ、この人は?がもう一人。今度は高校の同級生の盛岡市議でした。公務で東京出張とのこと、数人の市議と一緒でした。一両の新幹線に知り合いが二人いたんですね。世間は狭い。

 厳かな神前での挙式を終え、披露宴会場に移動。披露宴は東京タワーを間近でみる会席料理の老舗でした。新郎の叔父ということで乾杯のあいさつを頼まれていましたが、マア、何とか手短に無難に出来たかなと思います。いつの世も新郎新婦は良いですね。若い二人に幸多かれと祈願してきました。

 そろそろ、インフルエンザを診るようになってきました。先週、出張先でインフルエンザに罹ったお父さんから、さらに感染したお子さん二人とお母さんを診ました。皆さん軽症でした。おそらく単発ですむでしょう。

 インフルエンザは、学校や保育園・幼稚園など流行り始めると、あっという間に流行っちゃいます。今のところ盛岡市内ではあまりそういう話は聞きません。

 とは言え、いつブレイクするかわからないインフルエンザです。早めにインフルエンザ ワクチンを接種しましょう。子どもは2回接種です。インフルエンザに対する免疫ができるまでは接種後2週間罹ります。2~4週間間隔で2回目を接種しますので、免疫が出来るまで、4週間は罹ります。遅くても11月中旬までに1回目を、12月中旬までには2回目を接種しましょう。

2016年10月16日(日)
人知を越えるゲームソフト?!

 10月になってめっきり寒くなってきました。本格的な秋ですね。10月1日からB型肝炎ワクチンも定期接種になり、ますます赤ちゃんのワクチンスケジュールが過密になってきました。

 1本ずつ接種する単独接種ですと、生後2ヶ月から約半年間に13~16回も受診しなければなりませんので、効率よく同時接種されるようお勧めします。同時接種によって副反応が増えるなどということはありません。同時接種の利点は複数のワクチンを同時に接種することにより、短期間に完了できる。早めに免疫ができる。接種率の向上。何回も受診しなくも良い(保護者の経済的、時間的負担が軽減する)。ことです。

 インフルエンザワクチンは10月11日から接種開始していますが、盛岡市、紫波町、矢巾町は20日から、滝沢市は11月1日から自治体の補助金がでます。盛岡市は昨年度までは小学生が対象外でしたが、今年度は小学生まで対象が広がりました。出来れば全年令に補助金を出してほしいです。

 先日、「三浦弘行九段の将棋不正疑惑騒動」というショッキングなニュースがありました。プロの将棋棋士が対局中に何度も離席して、スマートフォンの将棋ソフトでカンニングをしたのではないかという疑惑が報じられました。

 本人は否定しましたが、結論はうやむやのままです。なんとマア、プロがね~?と思いますが、最近の将棋や囲碁のゲームソフトは、かなり強いですもんね。自分も将棋や囲碁は好きですから、以前は将棋道場や碁会所によくいきました。でもだんだん出かけるのが億劫になってきて最近はインターネットでの対局ばかりになりました。

 将棋や囲碁は、本来人同士が対峙して行うゲームですが、相手の顔も見ない、声も聞かない対局は少し異様な感じがします。とは言え、いつの間にか慣れましたね。たまに、将棋や囲碁のゲームソフトを相手にすることがあります。昔のソフトは弱すぎて話にならなかったのですが、最近のソフトは強すぎる!自分が弱いといえばそれまでですが、とにかく強いですね。将棋や囲碁のルールを知らない人にはわかりにくいかもしれませんが、将棋なら詰み、囲碁なら死活はあっという間に回答を出してくる。こっちが時間をかけて考えているのを一瞬にして結論を出すわけです。もちろん正解です。いっぺんに闘争心が萎えてしまいます。いつの間にこれだけ進歩したのやら?

 将棋や囲碁のゲームソフトの進歩はアマチュアレベルに終わらず、プロの世界でも現実化してきています。将棋ではプロ棋士とパソコンが対戦しパソコンが勝ち越しました。囲碁では中国最強といわれている李 世乭(イ・セドル)が人工知能(AI)「アルファ碁」に完敗しました。

 大変な時代になったものと思いますが、その反面、無理して機械に勝てなくてもいいような気もします。そろばんの名人でもパソコンにはかなわないし、ボルトもスポーツカーにはかなわない。人間の開発したものは人間と競うのではなく、人間のために有効活用されれば良いと思います。ゲームソフトに限らず、IT(情報技術)の進歩に人間はついて行っているのか?時々偶発的なIT関連の事故があります。いつの日かターミネーターの世の中にならないようにしっかりとした管理体制が望まれます。

2016年9月17日(土)
麻疹流行?

 今週の初め頃から夜はだいぶ冷え込んできました。日中はまだ残暑という感じですが、確実に夜間は気温が下がってきています。そのせいか、今週は喘息発作のお子さん増えて来ました。発作を起こしてからではなく、発作を起こさないように予防治療しましょうね。

 8月下旬に、関西国際空港、幕張メッセなどから麻疹の患者が報告されました。国立感染症研究所によると麻疹患者数は9月13日現在、1月から9月4日までの報告数が全国で82人になったとのことです。1週間前の発表時より41人増えています。
 内訳を見ると、大阪府26人、千葉県18人、東京都11人、兵庫県10人など。20~30代が約6割を占めています。

 日本は2015年3月27日にWHO(世界保健機構)から、麻疹の土着株が存在しない「排除状態」であると認定されました。「排除状態」とは、国内に由来する麻疹ウイルスによる感染が3年間確認されなかった事を意味します。そろそろ日本も麻疹の撲滅国になりそうだったのですが、ちょっと、逆戻りです。

 しかし、今回の麻疹ウイルス株はD8型といわれるもので、そもそも日本に土着している株ではありません。アジアの国々(インドネシア、モンゴル等)で流行している麻疹の株です。
 
 つまり、今回の麻疹は海外から輸入(?)されてきたのです。事の発端は、聞くところによると、高熱があるにもかかわらず幕張メッセのコンサートに参加した人がいたようです。どうもこの人が麻疹に罹っていたようです。この人は関空も利用したようです。

 ここから感染が始まってあちこちに拡がったわけですね。麻疹の患者が一人いれば周囲の10~20人に麻疹をうつすといわれるくらい感染力が強いです。麻疹にはなにも特効薬がなく、大変重症な病気ですが、ワクチンをしていれば、ほぼ防ぐことが出来る病気です
 
 2007年~2008年に10才から20才代を中心に麻疹が流行したことがありました。2006年からMR(麻疹・風疹)ワクチンは2回接種になりましたが、この流行を受けて、ここから5年間に限って、1回しか接種していない中学1年生(第3期)と高校3年生(第4期)にもう1回接種(2回目)することになりました。

 ところが、この5年間限定の中学1年生(第3期)と高校3年生(第4期)の接種率があまり高くなかったこと、さらに、20代後半の人は1回のみしか接種していない可能性が高いことなどより免疫が不十分な人が多くいるのが現状です。

 最近になって、麻疹ワクチンが不足しそう?というような報道も耳にするようになりました。もともと定期接種分しか製造されていないわけですから、それ以外の接種希望者が増えれば不足するのは目に見えています。
 今のところ、東北地方では麻疹の発症はないようですが、これから秋の行楽シーズンで人の移動が多くなると、流行の規模も拡がるかもしれませんね。

 出来るだけ多くの人にワクチン接種してあげたいと思っておりますが、不足してきたときは定期接種第1期(1才での1回目接種)を優先します。この年令はまだ1回もワクチンを接種していません。また、一番重症化しやすい年令です、その次に優先するのは定期接種第2期(小学校入学前の1年間)です。それ以外の方々には接種できなくなるかもしれせん。その際は、HPや院内掲示でお知らせしますので、ご了承下さい。 

 毎年、楽しみにみているお八幡さんのお祭りですが、今年はばっちりウイークデーにあたり、山車の追っかけが出来ませんでした。なんとか、木曜日の夜の盛岡山車大絵巻だけはみることが出来ました。

 今年は仙北町からも山車が出て、当院前で音頭上げをしてもらいました。小さなお子さん達はちょっとビックリした様子でしたね。お祭りが終わるともう秋です。喘息、麻疹、インフルエンザ(ワクチン)、ノロ・・・。小児科が一年で一番多忙な時期を迎えます。

  盛山会さ組
菅原伝授手習鑑 車引き
      い組
暫(しばらく)
   
仙北町 は組の音頭上げ  仙北町 は組
一ノ谷鵯越の逆落し


2016年9月3日(土)
EV-D68(エンテロウイルスD68)

 台風10号によって岩手県沿岸部はすさまじい被害を受けました。亡くなられた方々のご冥福をお祈りします。30日は診療を早めに終了しました。停電に備えて院内でも懐中電灯などの装備を確認していましたが、幸い盛岡市は大きな混乱はなく、ホッとしました。

 例年、9月~10月は喘息発作の多い月です。今年もそろそろ発作のお子さん達を診るようになりました。ところで、昨年の9月は異常に喘息発作が多く見られました。これは全国的な傾向だったようで、エンテロウイルスD68(以下、EV-D68)が流行ったのが原因でした。

 このウイルスは夏~秋にかけて流行し、咳嗽、鼻汁、発熱などのカゼ症状を引き起こします。大人では軽いカゼ程度ですみますが、小児、特に乳幼児では喘息発作を起こすことがあります。手足口病の原因ウイルスとして有名なエンテロウイルスですが、こういうタイプもあるのですね。

 昨年は9月中旬頃に、あまりにも喘息発作が多いので、たぶん何かのウイルス感染が引き金になっているんだろうと思っていましたが、EV-D68が犯人だったようです。

 最近、テレビでこのEV-D68に感染した後に、弛緩性麻痺(運動神経に障害がみられるために、筋緊張が弱まり、筋肉や関節の運動に支障を来す症状)がみられる場合があるという報道がありました。弛緩性麻痺を引き起こす有名な病気にポリオがあります。ポリオもエンテロウイルスの仲間ですから、ポリオと似たような症状が出ることはあり得ます。
 しかし、「EV-D68による喘息発作を起こす子は弛緩性麻痺まで起こす?」ということについては解説がありませんでした。

 日本小児アレルギー学会の調査によりますと、2015年1年間の喘息発作237例中、55例からEV-D68が検出されました。また、弛緩性麻痺は18例報告されましたが、喘息発作を伴ったのは4例のみでした。まだ、はっきりとした結論は出ていませんが、必ずしも喘息発作→弛緩性麻痺というわけではないようです。

 また、EV-D68に罹ったからといって全例が喘息発作を起こすわけではありませんし、今年もまたEV-D68が流行るというわけでもありません。

 とは言え、苦しくなってから治療するのではなく、日頃から予防治療をすることが大切であることにかわりはありません。カゼをひいたときにゼイゼイ、ヒューヒューしやすいお子さんは、この時期しっかりと予防治療をしましょう。

2016年8月23日(火)
アレルゲンコンポーネント

 今日は台風一過の翌日とあってよく晴れた一日でした。週末からはまた天気が荒れそうです。もう、一雨ごとに秋の気配を感じるようになってきましたね。

 先日、豆腐や味噌は食べられるけど、豆乳を飲むとじんま疹が出たり、具合が悪くなるという大人の方がみえました。いろいろお話しを伺うと、花粉症もあるようで、春に眼~鼻症状が見られるようでした。この時期の花粉は、スギだけでなく、シラカバ、ハンノキなどのカバノキ科の植物です

 検査したところ、シラカバ、ハンノキ花粉の抗体は陽性でした。しかし、大豆は陰性でした。大豆は食べられるから抗体は陰性。これは理解できます。では、なぜ豆乳を飲むとアレルギー症状がみられるのでしょうか?大豆と豆乳の違いはなんでしょうね?

 ところで、アレルゲンコンポーネントという言葉をご存じでしょうか?アレルギーを起こす食品はすべて蛋白質を含んでいますが、一つの食品の中には多くの蛋白質が含まれており、そのうち特にアレルギー反応と結びつきが深いタンパク質をアレルゲンコンポーネントと言います。

 アレルゲンコンポーネントには、アレルギーを起こしやすい蛋白質、重篤な症状を起こすタンパク質、他のアレルゲンとよく似たタンパク質、直接アレルギー反応とは関係ない蛋白質などいろいろあります。大豆にもいろいろなアレルゲンコンポーネントが含まれていますが、Glym 4(グリエム4)というアレルゲンコンポーネントがあります。

 シラカバ、ハンノキなどのカバノキ科の主要アレルゲンとGlym4は、PR-10という同じグループに分類されるアレルゲンコンポーネントです。そのため、カバノキ科の花粉症患者さんの中には、大豆や豆乳でアレルギーを起こす場合があります。

 さらに、カバノキ科花粉とバラ科果物(リンゴ、モモ、サクランボなど)とも共通のコンポーネントがありますので、これらの果物でも同様の症状が出現することことがあります。

 Glym4 は加熱や発酵など加工処理をすることで分解されますので、アレルギーを起こしにくくなります。そのため、豆腐や味噌、納豆などの加工食品ではアレルギー症状がみられなくなりますが、あまり加工されていない豆乳ではアレルギー症状が見られることがあります。

 同様に加工程度が低いもやし、湯葉、冷や奴などでも症状がみられやすいですが、湯通しした豆腐や油揚げなどでは症状がでにくくなります。

 シラカバ、ハンノキなどのカバノキ科の植物~バラ科果物(リンゴ、モモ、サクランボなど)~豆乳は共通のアレルゲンコンポーネントを持っていますので、このうちどれか一つでもアレルギーがあれば他の二つについてもアレルギーを起こしうるわけです。

 国民生活センターでは、豆乳に関して次のような注意を喚起しています。「カバノキ科花粉症や、果物のアレルギーのある人は、現在豆乳等によるアレルギーがなくても今後、豆乳等によるアレルギーを新しく発症する危険性は他の人よりも高いと考えられています。」

2016年8月8日(月)
オリンピック

 今年も暑くなってきました。オリンピックと高校野球が同時に始まり、さらに暑い夏が続きます。オリンピックはいつもメダルの数が話題なりますが、あまりメダルの数にこだわらないようにしたいものです。

 柔道は現在まで男女4種目で銅メダル4個獲得しましたが、銅では満足できないんでしょう。選手に笑みが見られませんでした。「参加することに意義がある」と言う言葉はもう死語になったようです。始まったばかりのオリンピックですが、選手には負担をかけないような応援をしたいものです。

 先週の土曜日は夜間急患診療所でした。もう、そろそろお盆の帰省が始まっています。長旅で疲れてくるお子さんも多かったです。特に目立つ疾患はありませんでしたが、やはり、夏カゼ多かったですね。

 ところで、よく夏カゼと言いますが、春カゼ、秋カゼ、冬カゼなんてあまり聞きませんよね。ほかの時期に流行るカゼと違いがあるのでしょうか?
 自分もよく分かりませんが、昔は夏場はあまりカゼ(冬に流行るカゼをイメージして下さい)が流行らないものと考えられていたようです。それで夏にカゼをひくのは珍しいので、特別に夏カゼというようになったとか?聞いたことがありますが、定かではありません。ちなみに漢方医学の教科書には、春風邪、夏風邪、秋風邪、冬風邪について、それぞれ特徴が記載されています。

 夏カゼは殆どがウイルスが原因です。夏の暑さと湿気を好んで活発に活動するウイルスで、冬のインフルエンザとは対照的です。

 代表的な夏カゼウイルスは、エンテロウイルス・コクサッキーウイルス→手・足・口病。アデノウイルス→咽頭結膜熱(プール熱)。エンテロウイルス・アデノウイルス→急性胃腸炎。コクサッキーウイルス・エコーウイルス→ヘルパンギーナ。ライノウイルス→大人の鼻かぜ。と言った具合です。今年は手・足・口病が少なく、ヘルパンギーナが多いようです。
 しかし、今のところは「チョット熱が出るか出ないかで、解熱する頃に顔面~全身にパラパラとした発疹が見られる」夏カゼが多いようです。

 夏カゼは症状が分かりやすいので、診れば大体診断できます。ただ、特別な薬があるわけではないので、ジッと体力(免疫力)の回復を待ちます。

 夏カゼは疲れがたまり免疫力が落ちてくると感染しやすくなります。免疫力が下がるとウイルスへの抵抗力が弱まって、感染しやすくなるわけですね。
 そこで、一番の対策は、疲れをためないことです。睡眠をしっかりとって、食事をキチンととって、手洗い、うがいをしっかりやって、冷房は控え目にして・・・、まあ、いつもと同じです。特に今年はオリンピックで夜更かしをしないことですね。

2016年7月24日(日)
体外式人工呼吸器

 今場所もいよいよ今日が千秋楽です。稀勢の里の優勝~綱取りが期待された場所でしたが、あと2~3時間後には結論が出そうです。「大関在位で二場所連続優勝か、それに準ずる成績で横綱昇進」という規定があるはずですが、稀勢の里は、先場所準優勝、今場所?さてどうでしょうね?

 どうも解説やらなにやら聞いていると、稀勢の里贔屓が強すぎるのではないか?と感じます。確かに日本人力士の横綱を期待しますが、心技体そろって始めて横綱ですよね。

 ちょっと過去を振り返ってみたら、小錦:13勝2敗(優勝)~12勝3敗(3位)~13勝2敗(優勝)。 貴乃花:14勝1敗(優勝)~13勝2敗(同点優勝)。白鵬14勝1敗(優勝)~13勝2敗(準優勝)でも翌場所に横綱になっていないんですよね。

 今日結び前の一番で稀勢の里が勝てば同点優勝の可能性はあるものの、これで横綱になったら、ちょっと首をかしげたくなります。稀勢の里が豪栄道に勝てば、結びの一番でおこるであろう白鵬コールはほどほどにしてほしいですね。

 先週の土・日に仙台で行われた第33回日本小児難治喘息・アレルギー疾患学会に出席してきました。仙台は近くていいですね。ちょっと面白そうな(?)機械のデモンストレーションがありましたのでご紹介したいと思います。

 皆さんは人工呼吸器と聞くとすごく大げさな機械で。ウ~ンと重症な患者さんが装着するものとお考えではないですか?実際、重症な肺炎や気管支喘息発作では呼吸ができない場合、気管支の奥までチューブを通し(気管内挿管)麻酔をかけて呼吸管理します。なかなか大変で集中治療室で行われる治療です。

 ところが、気管内挿管せずに機械を体外から装着するだけで人工呼吸(厳密には補助呼吸)できる機械があるんですね。RTXレスピレーターといいます。話しには聞いていましたがみるのは初めてです。

 下段左が本体、下段中がパンフレットの写真(こんなに元気ではないはず!?)下段右が自分に装着してもらったところです。陽圧と陰圧を微妙に調整し、バイブレーションをかけて、強制換気をしながら呼吸のアシストをしてくれます。確かに痰が出やすく、呼吸が少し楽になりますね。

 普通なら入院必要なケースでもこの機械で入院せずに外来通院だけで治ることも多いようです。実際にこの機械で治療している診療所もありました。すごいですね。今のところ県内では設備されていないようですが、重症一歩手前くらいの段階で試みても良い治療と思われました。ただ、価格もすごそうでした・・・。




         


2016年7月8日(金)
おたふくカゼ流行の兆し

 この頃天候不順ですね。西日本では大雨になったりして大変なようです。それでも季節は梅雨から夏に少しずつ近づいています。

 そろそろ今年の夏カゼを診るようになってきました。今のところ、毎年流行する夏カゼの定番~手・足・口病ヘルパンギーナ~は、まだあまり流行ってないようです。アデノウイルス感染症はけっこう診ますね。

 今流行始めの夏カゼは、「チョット熱が出て、解熱する頃に顔面~全身にパラパラとした発疹が見られる感染症」ですね。突発性発疹に似ていますが、発熱の期間は1日~数日と幅があります。全く発熱が見られないこともあります。発疹は突発性発疹の様な大きな発疹ではなく、小さなパラパラです。熱があってもみんな元気で、軽症という印象ですが、夏場に流行るウイルス感染症は、ときどきたちの悪いのもおりますので、現状は軽症ばかりとは言え、気をつけてみるに越したことはありません。

 昔から、「夏のオタフク、冬の水疱(みずぼうそう)」と言いますが、今夏は、オタフクかぜが流行りそうです。オタフクかぜは4~5年間隔で流行が繰り返されていますが、2015年5月頃より増加しており、2010~11年に次ぐ流行状態が危惧されています。

 都道府県別の累積届け出数のベスト5は、宮崎県、山形県、佐賀県、鹿児島県、石川県。年令別では5才が全体の17%と最多で、3~7才が66%を占めています。

 オタフクかぜに罹ると、無菌性髄膜炎や感音性難聴の心配があります。無菌性髄膜炎に占めるオタフクかぜウイルス検出の割合も増加しており、現時点で465例中48例(10.3%)に上っています。これは無菌性髄膜炎の10人に1人がオタフクかぜが原因と言うことです。また、感音性難聴になると高い音が聞こえにくくなってしまいます。自然治癒は殆どなくやっかいです。

 いろいろ合併症があって心配なオタフクかぜですが、オタフクかぜワクチンがあります。【予防できる病気は、予防する】のが原則です。積極的にワクチン接種をしましょう。