普通は1回しか罹りませんが、2回罹る人もいます。
流行性耳下腺炎は、小児によくみられるウイルス感染症です。生後1才くらいまでは、母体からの免疫があるため、感染することは少なく、4~5才頃に多くみられます。
耳下腺腫脹が特徴的で、頬がはれた様子が“オタフク”によく似ているため、“オタフクかぜ”とも呼ばれています。と言います。英語ではmumps (ムンプス)と言います。頬がはれるため、軽い疼痛があり、ものをかんだりすると痛みが強くなります。
潜伏期間(ウイルスが体内に入ってから症状が出るまでの期間)は、2~3週間くらいで、 耳下腺腫脹(一側性または両側性)、発熱、頭痛、嘔吐、全身倦怠感、などの症状がみられますが、3~7日くらいで軽快します。
・食事:酸っぱいもの、固いものは控えましょう。痛みが強いときは軟らかい食品がよいです。
(お粥、豆腐、牛乳、みそ汁、プリン、ゼリー、グラタン、など)
・入浴:発熱がなく、痛みがあまり強くなければかまいません。
・外出:感染力が強いので、腫れた翌日から5日間はお休みです。
①.頭痛が強く、何度も吐くとき。→髄膜炎、脳炎が心配です。
髄膜炎は発熱、頭痛、嘔吐などの症状がみられ、入院するような場合もありますが、軽快が早く、あまり重症になることはありません。これに対して、脳炎は、意識障害などがみられて、重症になることもあります。
②.睾丸を痛がるとき。→睾丸炎が心配です。
思春期以後に罹患した場合、男子にみられます。殆ど一側性の睾丸腫脹と疼痛です。軽い萎縮をきたす場合もありますが、不妊症の原因になることは稀です。
③.耳の下の腫れが赤くなったとき。→化膿性耳下腺炎、リンパ節炎の合併が心配です。細菌による二次感染を起こしている時があります。
④.腹痛が強く、何度も吐くとき。→膵炎が心配です。
重症な膵炎は稀で、軽い膵炎が殆どです。上腹部痛、悪心、嘔吐などの症状を呈しますが、2~3日で軽快します。
⑤.1週間たっても腫れがひけないとき。
⑥.熱が3日以上続くとき。
オタフクかぜに罹った後に耳が聞こえにくくなることがあります。これをムンプス難聴というのですが、たちの悪い難聴で片耳が殆ど聞こえなくなる事もあります。オタフクかぜに罹った人100~500人に対して1人くらいの割合(0.2〜1%)で難聴が発症するといわれています。発症年令は15才以下が多く、
中でも5~9才に多いです。
ムンプス難聴は、見逃されていることが多いです。それは、片耳だけの難聴の場合が殆どなので、通常の会話にはあまり障害がみられず、気づきにくいのです。また、オタフクかぜには不顕性感染と言って、ほっぺたが腫れる症状が見られなくても罹っている場合があります。その場合でもムンプス難聴に罹ることがあります。本人はオタフクかぜに罹っていないと思ってるわけですから、難聴に気づくことがないわけです。小学校入学時の就学時健診でみつかる難聴の多くはムンプス難聴といわれています。
ムンプス難聴には、次のような特徴があります。
①.オタフクかぜの発症4日前から発症18日後の間に起こることが多いですが、腫れがひけてから、約1ヶ月以内に起こることもあります。
②.片耳が殆ど聞こえなくなってしまいます。
③.特効薬はありません。自然治癒もあまり期待できません。
やっかいなムンプス難聴ですが、有効な対策はワクチンです。ムンプス難聴の発生率は自然にオタフクかぜに感染した場合は、0.2〜1%ですが、ワクチン接種してあれば、0.1%未満と言われています。
ムンプスウイルスによる耳下腺炎を流行性耳下腺炎といいますが、ムンプスウイルス以外のウイルスや、細菌でも耳下腺が腫れる場合があります。こういう場合を「反復性耳下線炎」といいます。
オタフクかぜは、一生に1回しか罹りません(希に、何回も罹る人もいます)が、反復性耳下腺炎は、思春期頃まで何回も罹る人がいます。オタフクとよく似ていますが、次の点が少し異なります。
①.片方だけ腫れる場合が殆ど。
②.熱はあまりでません。
③.痛みは軽く2~3日で治ります。
④.何回も繰り返します。
見た目だけでは、流行性耳下腺炎(オタフクかぜ)と反復性耳下線炎とを区別できません。これでは、腫れる度にオタフクかぜと考えて、学校を休まなければなりませんので大変です。2回以上耳下腺が腫れたら、抗体検査をして本物のオタフクかぜの免疫があるかどうか確認しましょう。
◆ 登校・登園はいつから?
従来は「耳下腺の腫れが消えるまで」とされていましたが、現在は、「腫れが出た後5日を経過し、かつ全身状態が良好になるまで」となりました。