望ましい接種時期→受けられる時期が来たら、すぐ受けましょう。

 それぞれの予防接種には、接種期間といって、接種できる期間が決まっています。これは病気にかかりやすい時期を考慮して、定められた期間(標準的な接種期間)ですので、期間内ならいつでも受けられると考えないで、時期が来たらすぐ接種するようにしましょう。


 定期接種と任意接種

 予防接種には、国や自治体が「受けるように努めなければならない」と勧める定期接種と、「接種者の希望」により受ける任意接種があります。定期接種は公費負担でお金がかかりませんが、任意接種は、自己負担金が生じます。定期接種は受けても任意接種は受けないお子さんも見られます。しかし、任意接種の対象となっている病気でも重症な疾患はありますので、任意接種のワクチンも是非接種されるようお勧めします。
 
 ちなみに米国では、おたふくかぜ(流行性耳下腺炎)、インフルエンザ、A型肝炎のワクチンも定期接種に組み込まれています。また、子宮頸がん予防以外のワクチンは接種していないと、保育園、学校に入園(学)できない場合もあります。現在、日本では多くのワクチンが定期接種に組み込まれるようになってきました。近い将来、定期接種されるワクチンが、さらに増えるものと思われます。


 異なった種類のワクチンを接種する場合の間隔

  予防接種で使うワクチンには、生ワクチン不活化ワクチンがあり、異なるワクチンを接種する場合には間隔を守ることが必要ですが、2020年10月1日より、異なるワクチンの接種間隔について次のように規定改正が行われました。
 注射生ワクチンどうしについては、現行どおり27日以上の接種間隔を開けて接種します。これ以外の接種につきましては、「制限なし」に変更となりました。

・注射生ワクチン: BCG、麻疹・風疹、水痘、流行性耳下腺炎。
・経口生ワクチン:ロタウイルスワクチン。
・不活化ワクチン: ヒブ、肺炎球菌、五種混合、四種混合、二種混合、B型肝炎、日本脳炎、インフルエンザ、子宮頸がん予防ワクチン。


 ワクチンの同時接種

 近年、日本のワクチンの種類は増えてきており、大変喜ばしい状況ですが、接種回数も多くなるため、当然受診回数も増えます。1本ずつ接種する単独接種でも良いことにかわりはありませんが、生後2か月から約半年間に15〜16回も受診しなければなりません。ワクチンの同時接種は諸外国では普通に行われており、日本でも一般的になってきました。同時接種によって副反応が増えるなどということはありません。

 同時接種の利点は複数のワクチンを同時に接種することにより、短期間に完了できる。早めに免疫ができる。接種率の向上。何回も受診しなくも良い(保護者の経済的、時間的負担が軽減する)ことです。


 効率の良い予防接種の予定をたてましょう。

 接種するワクチンには、たくさん種類があります。効率よく接種するように予定を立てましょう。1才前と1才過ぎに分けてみればわかりやすいと思いますが、よくわからない時はご相談下さい。ご希望にそったワクチンスケジュールを組んでさし上げます。


 赤ちゃんの定期予防接種一部変更のお知らせ

五種混合ワクチン
 令和6年4月1日より、五種混合ワクチンの接種が始まります。五種混合ワクチンは、これまでの四種混合ワクチンにヒブワクチンを加えたワクチンです。令和6年4月1日以降に初めてワクチンを接種する赤ちゃんは、これまでの四種混合ワクチン+ヒブワクチンか五種混合ワクチンのいずれかを接種することになります。
 どちらの接種でも良いのですが、1回目を接種したワクチンで2回目、3回目、追加も接種しなければなりません。つまり、四種混合ワクチン+ヒブワクチンを1回でも接種した場合は最後まで四種混合ワクチン+ヒブワクチンを接種します。途中で五種混合ワクチンに替えることはできません。同様に五種混合ワクチンを1回でも接種した場合は最後まで五種混合ワクチンを接種します。途中で四種混合ワクチン+ヒブワクチンに替えることはできません。(今後変更になるかもしれません)
 四種混合ワクチン+ヒブワクチンも五種混合ワクチンも効果は同じです。五種混合ワクチンの方が、針を刺す回数が少なくなります。痛い思いをすることが少なくなるということから、令和6年4月1日以降に初めてワクチンを接種する赤ちゃんには五種混合ワクチンを接種することにします。
 五種混合ワクチンの接種券はまだお手元にない方ばかりですので、五種混合ワクチンを接種する場合には、当面の間、四種混合ワクチンの接種券を代用します。ヒブワクチンの接種券は使用しません。

バクニュバンス:PCV15 (15価)
 令和6年4月1日より、現行の小児用肺炎球菌ワクチン(プレベナー:PCV13)(13価)に加えて小児用肺炎球菌ワクチン(バクニュバンス:PCV15)(15価)が定期接種に追加されます。一口に肺炎球菌といってもいろいろ種類があります。インフルエンザにA型やB型があったり、コロナにもアルファとかオミクロンとかあったりするように、肺炎球菌にも多くの種類があります。〜価というのは、そのうちの〜種類をカバーしているかと言うことです。現行の肺炎球菌ワクチンは13価ですが、これに加えて15価が4月から接種可能になりました。
 これまで13種類をカバーしていたものが15種類をカバーするようになるので守備範囲が少し広くなると考えて良いでしょう。どちらのワクチンを接種しても良いですが、今後は(バクニュバンス)(15価)の接種が主流になると思われます。

 令和6年4月1日以降に初めて肺炎球菌ワクチンを接種される赤ちゃんには、バクニュバンスを接種しますが、この2つの肺炎球菌ワクチンは互換性(互いに取り替えること)が認められておりますので、一方から他方への変更可能です。現在、プレベナーで接種している赤ちゃんも、残りの接種はバクニュバンスで接種することをお勧めします。

※ 交互接種について:プレベナーとバクニュバンスは互換性が認められているので、一方から他方へ変更可能ですが、今のところ再度の交換は認められていません。(今後変更になるかもしれません)
例:プレベナーを1回目接種→2回目をバクニュバンスへ変更したら、3回目、追加もバクニュバンスを接種、途中でプレベナーに戻すことはできない。


1才までに、接種する ワクチン

通常の予防接種は、生後2か月から開始します。
 ワクチンデビューは、生後2か月の誕生日 

生後2か月の誕生日に当たる前日から開始できます。この日は8週令後半になります。

(R3)は、ロタテックのみ。 B型肝炎Bは、@から140日以後。

生後
2か月
      生後
3か月
      生後
4か月
      生後
5か月
 
五種混合
または、
四種混合+ヒブ
@          A          B          
 肺炎球菌 @       A       B          
 B型肝炎 @       A                 B
 ロタウイルス  R1       R2       (R3)          
BCG                         B  
インフルエンザ 生後6か月以後、10月〜12月にかけて2回接種

生後2か月になったら、五種混合ワクチン肺炎球菌ワクチンB型肝炎ワクチンロタウイルスワクチン、の4種類から開始します。

1才までに、接種するワクチンは、次の@.〜E.です。

@.五種混合ワクチン:生後2か月から接種できます。3〜8週間の間隔をおいて3回接種します。
 五種混合ワクチンは四種混合ワクチン(ジフテリア、百日咳、破傷風、ポリオ)にヒブワクチンを加えたワクチンです。赤ちゃんが百日咳に感染すると、肺炎や脳症を併発して危篤状態になることがあります。また、ヒブに感染すると細菌性髄膜炎(後述)になることがあります。五種混合ワクチンは、百日咳や細菌性髄膜炎から赤ちゃんを守ってくれるワクチンです。2か月になったら、すぐ接種しましょう。

A.肺炎球菌ワクチン:生後2か月から接種できます。4週間以上の間隔をおいて3回接種します。
 乳幼児の命を脅かす細菌性髄膜炎という恐ろしい病気があります。体の中でもっとも大切な脳や脊髄を包んでいる膜を髄膜と言います。この髄膜に細菌が侵入して、発熱、嘔吐、頭痛、けいれんなどの症状を起こす病気が髄膜炎です。進行すると意識障害から命に関わる重症な病気です。この原因となる細菌がヒブと肺炎球菌で、この二つの菌から命を守ってくれるワクチンが、五種混合ワクチンに含まれているヒブワクチンと肺炎球菌ワクチンです。2か月になったら、すぐ接種しましょう。

B.B型肝炎ワクチン:生後2か月から接種できます。1回目から4週間おいて2回目接種、1回目から140日以上おいて3回目接種します。
 B型肝炎は、B型肝炎ウイルスに感染して発症します。B型肝炎にかかると、急性期には、劇症肝炎といって命に関わる重篤な病気を引き起こすこともあります。また、慢性期には、肝硬変から肝臓がんになることもあります。B型肝炎ワクチンは、劇症肝炎や肝臓がんから身を守ってくれます。B型肝炎は集団生活の場で、知らない間(例えば、保育園でのいろいろな行為:噛みつき、尿、便、唾液、涙など)でも罹ることがあります。2か月になったら、すぐ接種しましょう。

C.ロタウイルスワクチン:生後6週から接種できます。4週間以上の間隔をおいて2(3)回接種します。
 ロタウイルスワクチンは、乳幼児をロタウイルス胃腸炎から守ってくれるワクチンです。乳児期早期から保育園に入所している赤ちゃんが、ロタウイルス胃腸炎に罹患すれば、多くの場合、嘔吐〜下痢から高度の脱水症状をきたし、点滴〜入院となります。そのため、乳児期早期のうちに早めに接種を終わらせることが大切です。2ヶ月になったら、すぐ接種しましょう。
*ロタウイルスワクチンは、6週令(生まれてから42日後)から開始できますが、生後2か月になってから、五種混合ワクチン、肺炎球菌ワクチン、B型肝炎ワクチンと同時接種した方が受診回数が少なくてすみますので、2か月からの接種をお勧めします。
*ロタウイルスワクチンは、ロタリックスとロタテックの2種類あります。ロタリックスは2回接種で、24週令(生まれてから168日後)までに2回目を完了します。ロタテックは3回接種で、32週令(生まれてから224日後)までに3回目を完了します。
*ロタウイルスワクチンは、14週令(生まれてから104日後)までに、1回目を接種するようにお勧めします。→詳細は、ロタウイルスワクチンをご覧ください。

D.BCG:1才までに1回接種します。現在の日本では、乳児の結核はほぼ見らなくなったので、BCGはあまり急ぎません。生後1才までに接種します。望ましい接種期間は、生後5か月〜8か月未満です。

E.インフルエンザワクチンは任意接種で有料になりますが、乳児がインフルエンザに罹ったときに重症化を防いでくれます。生後6か月以後、10月〜12月の間に2回接種します。


1才過ぎに、接種する ワクチン

(定):定期接種     (任):任意接種)

  1才 2才 3才 4才 5才 6才 7才 8才 9才 小学校6年生 小学校6年生

高校1年生
 ヒブ(定) 追加                    
 肺炎球菌(定) 追加                    
 四種混合(定) 追加                 追加(二種混合)  
 五種混合(定) 追加                 追加(二種混合)  
 麻疹・風疹(定) @          A            
 水痘(定) @  A                    
 流行性耳下腺炎(任) @       A            
 日本脳炎(定)     @ A B         C(標準接種年令:9〜12才)
 子宮頸がん予防(定)                       女子のみ3回接種
 インフルエンザ(任)  生後6か月以後、10月〜12月にかけて2回接種


 1才になったら、すぐ、接種するワクチン

 1才になったら、すぐ、麻疹・風疹ワクチンを受けましょう。麻疹は命に関わる病気ですが、何も特効薬はありません。罹ってしまえば大変です。また、妊娠初期に妊婦さんが風疹に罹ると生まれてくる赤ちゃんに障害が見られることがあります。先天性風疹症候群といいますが、妊娠週数が早いほど、障害の率が高く、症状も重なります。白内障は妊娠の2か月まで、心臓の異常は3か月まで、難聴は5か月までの感染でおこるとされています。これらの障害は、あらかじめワクチンを接種していれば、防ぐことができますので、生まれてくる赤ちゃんのためにもワクチンは大切です。

 従来、麻疹・風疹ワクチンは1回接種すると終生免疫(一生続く免疫)が得られると考えられていました。ところが、ワクチン接種しても麻疹、風疹に罹る人がみられます。原因の一つは、ワクチン1回接種では、わずかではありますが、十分な免疫ができないことがあるためです。もう一つの原因は、接種後、年数が経過するにつれて、免疫が弱まるためです。そのため、麻疹・風疹ワクチンは小学校入学前に2回目接種を行っています。

 水痘ワクチンも、1才になったら、すぐ、麻疹・風疹ワクチンと同時接種されれば良いです。流行性耳下腺炎ワクチンは、麻疹・風疹ワクチン、水痘ワクチンと同時、または麻疹・風疹ワクチン、水痘ワクチン接種4週間後に行います。保育園や、幼稚園で罹りますから、集団生活に入る前がよいと思います。1才前後で保育園入所する乳幼児も多いため、早めに流行性耳下腺炎ワクチンを接種すればよいと思います。

 水痘ワクチンは定期接種ですが、流行性耳下腺炎ワクチンは任意接種(全額自費)です。子どもの頃に軽く罹ればよいとは言うものの、大人になってから、罹ると重症化し入院することもよくあります。また、軽く罹る保証などないわけですから、できる限り接種した方がよいです。

 あまり知られていないことですが、流行性耳下腺炎に罹ると、高い音が聞こえにくくなることがあります。感音声難聴といいます。通常の会話には支障がないため、気がつかれずに経過して、たまたま就学時健診で見つかるということがよくあります。就学時健診で見つかる感音声難聴の多くは流行性耳下腺炎の後遺症(ムンプス難聴)と言われています。

 また、妊婦さんが水痘に罹ると先天性水痘症候群といって、赤ちゃんに障害が見られることがあります。水痘ワクチン、流行性耳下腺炎ワクチンは、是非、接種して下さい。

 水痘ワクチン、流行性耳下腺炎ワクチンも、麻疹・風疹ワクチン同様、年数が経過するにつれて、免疫が低下してきますので、2回目接種した方がよいです。水痘ワクチンの2回目接種時期は、生後18か月〜2才未満(初回接種後6〜12か月後)が、また、流行性耳下腺炎ワクチンの2回目接種時期は、5〜6才頃(麻疹・風疹ワクチン2回目と同じ頃)が、望ましいとされています。


 1才を過ぎたら、接種するワクチン

 乳児期に3回接種したヒブ、肺炎球菌、四種混合、五種混合の追加接種の時期が来ます。3回目接種から、ヒブは7〜13か月後、肺炎球菌は60日以上おいて1才以後、四種混合、五種混合は6か月〜18か月後に、追加接種を1回行います。

当院では、1才健診時に麻疹・風疹ワクチン第1期と水痘ワクチン1回目を同時接種し、その後に、ヒブワクチン追加、肺炎球菌ワクチン追加、流行性耳下腺炎ワクチン1回目を同時接種しています。また、1才6か月健診時に水痘ワクチン2回目と四種混合ワクチン追加を同時接種しています。


 2才過ぎ〜小学校入学前のワクチン

 日本脳炎ワクチンは、生後6か月からでも接種できますが、通常は3才以後に接種します。最初の年に第1期初回接種(1回目、2回目)し、翌年第1期追加接種(3回目)し、9才以後に第2期接種(4回目)します。日本脳炎は夏に発生しますので、夏になる前に接種するようお勧めします。

 麻疹・風疹ワクチン2回目接種は、「5才以上7才未満で小学校入学前1年間」の時期です。1回目接種で出来た免疫も少し下がってくる頃ですので、忘れずに接種しましょう。流行性耳下腺炎ワクチンの2回目と同時接種されると良いです。


 1才以後の予防接種予定:乳幼児健診を活用しましょう。

 1才以後の予防接種については、接種時期が健診と同じ時期にあたるものも多く、乳幼児健診と同時に行うことができます。

☆1才児健診では、「麻疹・風疹第1期+水痘1回目」を接種します。 
 麻疹はとても重症な病気です。1才になったら、すぐ行います。

☆1才6か月児健診では、「水痘2回目+四種混合追加」を接種します。 
 標準的接種期間は、水痘2回目は初回から6か月〜1年後、四種混合追加は、T期初回3回目から1年〜1年6か月後ですが、水痘2回目は3か月、四種混合追加は6か月経てば接種できます。

☆3才児健診では、「日本脳炎 第T期初回1回目」を接種します。


 小学校入学以後のワクチン

 日本脳炎第2期接種(4回目)が、9才以後(標準接種年令:9〜12才)にあります。

 二種混合ワクチン(破傷風・ジフテリア)が、小学校6年生であります。

 子宮頸がん予防ワクチンは、小学校6年生〜高校1年生(女子)が対象年令です。


 VPD〜知っていますか?→ワクチンで防げる病気をVPDと言います

 「ワクチンで防げる病気」の事をVPDと言います。VPDとは、Vaccine Preventable Diseasesの略です。

・Vaccine(ヴァクシーン)→ワクチン
・Preventable(プリベンタブル)→防ぐ事ができる
・Diseases(ディスイーズ)→病気

 医学が進歩した現在でも、はっきりした治療法がなかったり、重い後遺症を残すような病気がまだまだあります。そんななかで、ワクチンで予防できる病気は決して多くはありませんが、ワクチンで防げると言うことはとても幸運なことと思います。VPDのサイトはワクチンについて、とてもわかりやすく解説されていますので、是非ご一読下さい。