診察室便り

2012年6月28日(木)
風疹の流行

 昨日、今日と暑いですね。そろそろ梅雨入りかと思ってましたが、一気に夏になりそうな気配です。咽頭結膜熱や、ヘルパンギーナのような夏カゼも、チラホラ見られるようになってきました。昨年はいつもと違うタイプの手足口病が大流行しましたが、今年はどうでしょう。

 ところで、夏カゼではありませんが、風疹が昨年から流行しているようです。今年は近畿地方を中心に流行が続いています。関東地方から東北地方(山形県、宮城県)でも患者さんが増えているようです。患者さんは成人男性が多いようです。なぜでしょう?

 1977年から1994年まで風疹の予防接種は中学校3年生の女子のみに行われていました。その結果、現在30~50才代の男性は風疹の免疫が低いといわれています。これでは風疹にかかってしまいますね。妊婦さんが風疹にかかると先天性風疹症候群と言って、赤ちゃんに異常がみられることがあります。男性はその心配がない(?)なんて思っちゃいけませんよ。奥さんに移す場合もありますからね。

 ところで、風疹をみたことある人いますか?風疹は発疹がみられる疾患です。発疹がみられる疾患と言えば、水痘、手足口病、溶連菌感染症、突発性発疹、等々、たくさんあります。大体、その疾患に特徴的な発疹がみられますので、診断にはあまり困ることはありません。

 ところが、風疹の発疹は特徴に乏しいため、眼で見ただけでは風疹と診断できないのです。つまり、「風疹の発疹は難しい」のです。もっとも、大流行しているような時は同じような発疹が続々みられるわけですから、これはわかりやすいです。でも、時々、何にも検査しないで、風疹と言われたというような患者さん来ますね。これはホントかどうかわかりません。

 風疹を正確に診断するには、風疹の免疫を調べなければなりません。一度の検査でわかる時もありますが、二回採血しないとわからないこともあります。まだ、当院には風疹を疑うような発疹の患者さんは受診していませんが、いずれみえるでしょうね。

 話は戻りますが、先天性風疹症候群を防ぐには、妊娠前に風疹の免疫ができていればよいわけです。そのためには風疹ワクチンを2回接種する必要があります。現在は殆どのお子さんが2回接種しています。1回しか接種してない人、特に妊娠適齢期にある女性には早めに2回目を接種するようお勧めします。

 注:女性が風疹ワクチンを接種する場合、妊娠していないことを確認し、ワクチン接種後2ヶ月間は妊娠を避ける必要があります。また、妊娠中はワクチン接種できません。

2012年6月15日(金)
アトピー性皮膚炎とペリオスチン

 もうすっかり終息したと思っていたインフルエンザでしたが、また、盛南方面でチラホラ出現しているようです。もう、インフルエンザは1年中出てくるもんだと思った方が良さそうです。大きな流行にはならないでしょうが、ちょっと気をつけましょう。

 数日前、アトピー性皮膚炎を慢性化させる原因物質とそのメカニズムが解明されたというニュースがありました。佐賀大学などの研究グループの発表です。

 一般的に、アトピー性皮膚炎というと、ダニやハウスダストや食物などのアレルギーと、皮膚表面のバリアー障害が原因と考えられています。そこで、アレルギー物質を排除したり、スキンケアをするわけですが、それでも、なかなか良くならない時もあります。

 佐賀大学の研究グループは、アレルギー物質とは別なメカニズムを想定して研究を進めていました。その結果、アレルギー物質が体内に入ったときに作られる「ペリオスチン」というタンパク質が原因となっていることを解明したそうです。

 ペリオスチンが発見されたのは2008年頃だったと思いますが、歯の組織で発見され、当初は歯を含む骨組織の再生に働くと考えられていたようです。その後、研究が進むにつれ、いろいろな働きがあることがわかってきました。最近では、ガン細胞の増殖抑制や心筋梗塞後の組織の修復にも関わっていることもわかってきました。

 アトピー性皮膚炎では、ペリオスチンが大量に産生されて皮膚組織に沈着します。沈着したペリオスチンは表皮細胞を刺激して、炎症を引き起こす別のタンパク質を産生するため、さらに炎症が継続します。

 このように、いったんペリオスチンが産生されて組織に沈着すると、体外からの刺激とは無関係に体内で炎症を継続するサイクルが回転することになります。これが、アトピー性皮膚炎の慢性化につながっているということのようです。

 なかなか、画期的な研究のようですが、これでアトピー性皮膚炎の全てが解明されたわけでもないでしょう。まるで、何もわかっていなかったアトピー性皮膚炎の原因が初めて明らかにされて、治療が飛躍的に進歩するような印象を受けます。「解明」という表現は非常にインパクトが強いです。なにもかも全て解決したという印象を与えてしまいます。軽々しく使う言葉ではないと思います。

 ペリオスチンの発見はアトピー性皮膚炎治療において大きな進歩と思います。しかし、ダニやハウスダストや食物などのアレルギーも、皮膚表面のバリアー障害も原因であることには変わりないです。おそらくペリオスチンが臨床応用されて、私たちが使えるようになるまでには、数年~十年はかかるでしょう。今後もアレルギー物質を排除したり、スキンケアをこまめに行うことが大切だと思います。

 明日、明後日は、大阪で開催される「第29回 日本小児難治喘息・アレルギー疾患学会」に出席してきます。「ペリオスチン」の講演はありませんが、重症なアレルギー疾患について、かなり突っ込んだ討論が多い学会です。開催地が遠いので、申し訳ありませんが、土曜日は休診します。自分は難しい研究はとうていできませんが、こういう学会で勉強したことを少しでも多くの患者さんたちの治療に役立てたいと思っています。

2012年6月9日(土)
夜間急患診療所

 少し暑くなったかと思ったら、今度は梅雨のような天気になってきました。関東、甲信越地方も梅雨入りですね。

 昨日は夜間診療所に出勤してきました。インフルエンザや胃腸炎のような流行性疾患がないと、あまり夜間診療所は混み合いません。と言うわけで、最近の夜間診療所はヒマです。昨日の受診者はわずか6名でした。内訳は、発熱2名、咳2名、じんま疹2名です。

 発熱の緊急性についてはさておき、じんま疹は痒くて眠れないことも多いですね。救急とは言いがたい疾患ですが、診てもらえるところがあれば受診した方がよいと思います。咳はどうでしょうか?喘息のように苦しい咳は救急受診しますね。でも、咳にもいろいろありますよね・・・。

 昨日、咳のため受診したお子さんは、鼻水が出たので一昨日かかりつけ医を受診したそうです。鼻水の薬を処方されましたが、今度は咳が出てきたので、咳の薬もほしいということで受診しました。見たところあまり苦しそうでもなく、ニコニコしています。明日まで待てないもんでしょうかね。明らかに緊急性はなく、診てもらえるから来たというような感じを受けました。
 
 軽症~重症の判断は時として難しいこともありますが、いつもの元気があれば何も急いで夜に外出しなくても良いでしょう。お家でグッスリ休んでいた方が早く治りますよ。ちなみに、夜間診療所の正式名称は夜間急患診療所です。

 夜間診療所のじんま疹とは関係ありませんが、じんま疹についてのご質問をいただきましたので、ご紹介します。

K.Oさんからの


 いつもお世話になっております。
 先日の胃腸炎とカゼはすっかりよくなり、元気いっぱいです。どうもありがとうございました。

 今日は少し気になることがあるので質問させていただきます。
 ここ最近、お風呂に入れている最中に背中を痒がり、小さなプツプツとした蕁麻疹が背中全体に出ます。(わき腹やお腹あたりにも少し出ますが、腕や足・顔などには出ません)
 お風呂上りにピークで、30分もしたら消えます。石鹸もいつもと同じものです。そんなに熱い湯だとは思いません。(小さい頃からアトピーと言われ、お湯の温度には気を使っているつもりです)変わった事といえば3月に越して環境が変わった事くらいでしょうか・・・。

 ネットで調べてみると温熱蕁麻疹というのがありましたが、主に寒い時期に多いと書いてありました。蕁麻疹が出だしたのはここ最近で、冬場の寒い時期には出ませんでした。病院を受診しようかと思ったのですが、症状が出ていない時間帯に受診するのも・・・と思い様子を見ています。

 先日は病み上がりでもあり、体調も関係しているのかな?と思ったのですが、今日は元気もりもりで体調も良かったのに出ました。ただ毎日出るという訳でもありません。次、蕁麻疹が出たら携帯写真に撮ってみようと思います。原因がよくわかりませんが、なにかアレルギーと関係しているのでしょうか??よろしくお願いします。




 お便りありがとうございます。

 胃腸炎もカゼも良くなったようですね。今日はじんま疹についてのご質問ですね。じんま疹の原因はいろいろありますので、温度変化だけというわけでもないです。環境変化によるストレスや病後の体調変化なども原因になります。また、お子さんは、アレルギー体質ですので、そのような変化に少し過敏に反応しやすいかもしれません。

 一般的な対策ですが、まず、お風呂の温度はぬるめにして、長湯をしないようにして下さい。また、脂質の多い食品はアレルギーを起こしやすくしますので、なるべく控えて下さい。具体的には、焼く、炒める料理よりも、煮る、蒸す料理が良いです。

 次回、じんま疹が出現したら、写真に撮ってみて下さい。じんま疹で受診される患者さんは、診察を待っている間に消えてしまうようなこともよくありますので、別にじんま疹が見られなくても、受診していだたいてよろしいですよ。では、お大事にして下さい。

2012年6月3日(日)
陸前高田 診療応援

 今日は、陸前高田の仮設診療所に診療応援に行って来ました。いつもは殆どの診療科が来るのですが、今日は内科と外科がお休みでしたので、小児科の自分が内科と外科の患者さんも見てきました。といっても二人だけでしたけどね。

 お一人は気管支喘息の患者さんでした。治療を続けていれば調子が良いといってましたが、少しよくなると治療が滞るようでした。「喘息は予防治療が大切ですよ。」と、お話したら、前の先生にも同じことを言われたそうです。

 もう一人は肩が痛くて腕が上がらないという患者さんでした。以前から通院中で肩関節周囲炎と診断がついていましたので、応急処置として痛み止めを処方しました。いわゆる四十肩、五十肩です。あまり無理をしないようにとお話しましたが、子どもの病気のように大きくなると治りますと言うわけにもいかず・・・、大人の疾患は難しいですね。

 震災瓦礫は、少しはかたづけられてきたようですが、あまり変わっていませんね。一体いつになったらかたづけられるのか?途方に暮れます。先週の土・日は、東北六魂祭でしたが、こうして、被災地に立ってみれば、「お祭りなんかしてもいいんだかな?」という気持ちになります。復興が遅々として進まないうちに、次第に忘れさられるような不安な気持ちにもなりました。

 地元だけの努力ではどうにもならない。国は不退転の決意が不回転しないように、フル回転で早く何とかしてほしい。次に高田に行く時にはもう少し瓦礫がなくなっていればいいです。

2012年5月29日(火)
東北六魂祭、観てきました。

 東北六魂祭は、大きな混乱もなく、無事二日間の日程を終えたようです。まずは成功ですね。私も土曜日に観に行ってきました。とにかくスゴイ人混みでした。3時開始のパレードに間に合うようにいったつもりでしたが、2時30分頃で、もう中央通りには入れませんでした。何とか、沿道に立つことが出来ましたが、殆ど身動きできず疲れました。

 秋田竿灯、青森ねぶたと始まり、最後はさんさ踊りでしたが、ずいぶん、さんさ踊り長かったですね。盛岡主催なら当然かもしれませんが、さんさ踊りになったら帰り始めた人もチラホラ見られました。24万人の人出ということですが、大半は盛岡、及び盛岡周辺の観客だったように思います。正直なところ、もう少し、他県のお祭りを観たかったですね。特に、昼の明るい時間では、竿灯、ねぶたはイマイチという感じでした。やはり、竿灯、ねぶたは夏の夜を彩る祭りです。

 当日の運営に携わった市職員や警察官の皆様大変ご苦労様でした。皆様のおかげで、滞りなく六魂祭は運営されたと思います。感謝します。

 翌日、日曜日は夜間診療所勤務でしたが、六魂祭疲れの熱中症のお子さん達何人か来ましたよ。点滴1本で元気になって帰りましたが、これもよい思い出になるでしょうね。

 多少の物足りなさはあったとしても、多くの人が楽しめた六魂祭だったと思います。来年以降は未定のようですが、宮城、岩手ときましたので、あと4県続けてほしいです。最後の県で六魂祭が開催される頃には復興もだいぶ進んでいることでしょう。

2012年5月25日(金)
東北六魂祭

 復興はつづく。魂も、つづく。

 東北六魂祭実行委員会のブログには、「2011年3月11日に発生した東日本大震災により犠牲になった多くの魂を弔い、東北の元気を発信し、復興への狼煙をあげるために開催されるお祭り」と記載されていました。

 いよいよ、26日、27日、盛岡市で東北六魂祭が開催されます。東北六県の代表的な夏祭りが、盛岡市に集結します。青森ねぶた、秋田竿灯、仙台七夕、福島わらじまつり、山形花笠まつり、盛岡さんさ踊り。どれも東北を代表する伝統あるまつりです。これを一度に観ることが出来るとは感激ですね。

 昨年は仙台市で開催されましたが、36万人もの人出で大変混乱したようです。今年は20万人くらいの人出が予想されているようですが、昨年同様混乱するでしょうね。盛岡市では、東北六魂祭 参加者必読マニュアル (PDF 4.3MB) を作成して、これをよく読み、当日は持参するように促しています。

 人が大勢集まることで有名な大曲の花火大会では、大曲の人口約4万人に対して、観覧者数は約80万人だそうです。これと比較すれば、人口約30万人の盛岡市に、約20万人の観光客なら大丈夫そうに思えますが、数だけの問題ではないでしょうね。当日は交通規制も厳しく、車で仕事をしている人にとってはあまり喜ばしくないことかもしれませんね。

 東北六魂祭は順番から行くと、来年は福島県が開催県になるわけですが、原発事故の影響もあってか、来年以後の開催のめどが立っていないようです。出来れば、東北六県でワンクール持ち回りで開催してほしいです。

 多くの観光客が全国から来るでしょう。全国の都道府県には、絆(きずな)、絆(きずな)と叫びながらも、震災瓦礫(がれき)の受け入れを拒否している所も多々あります。

 明日、明後日、盛岡に来る人達は、絆(きずな)の気持ちを持って、東北の復興を願って、東北に経済効果をもたらしてくれるでしょう。そして、出来ることなら、帰る時には、瓦礫(がれき)の一束くらい持っていってもらいたいものです。

2012年5月21日(月)
金環日食

 今日は朝から金環日食の話題が多かったですね。月が太陽の手前を横切るときに、太陽の一部~全部が、月によって隠される現象が日食ですが、金環日食では、太陽の中心部が月に隠れて金色のリング状に見えるようです。

 大変珍しい現象で、1987年以来25年ぶりとのことだそうですが、日本の広い範囲で観測できるものは平安時代の1050年以来だそうです。

 私は殆ど天文には興味がないので、今回の金環日食もテレビのニュースで見るくらいですが、源平合戦の最中にも金環日食があったようです。平家は公家として暦を作る仕事をしていたので、日食の知識があったようですが、一方の源氏は日食を知らなかったので、いきなり暗くなったため混乱して、その結果、平家が勝利をおさめたそうです。

 金環日食の見られる時間帯が月曜日の朝でしたので、通勤、通学時の混乱や交通事故等の心配もあったようですが、特に大きな混乱はなかったようですね。多くの人達が宇宙や自然への興味を持ったことでしょう。次の金環日食は2030年6月1日に北海道で見られるとのこと、それまで、18年間楽しみにしていましょう。

 今日は、「熱性けいれん後予防接種までの期間」についてのご質問をいただきましたのでご紹介したいと思います。

T.Mさんからの


 いつもお世話になっています。1歳7か月の娘のことで相談させてください。
4月12日に初めて熱性けいれんを起こしました。1分程度で治まり、その後受診しダイアップを処方され使いました。その後はけいれんなく経過しています。

 自宅が北上市のため、普段の風邪の場合は北上の個人医院を受診しています。そこで言われたのは、けいれん後の予防接種は1週間あけば大丈夫、とのことでした。

 先生のHPでは初発だと3か月程度あけるとのことですよね?お兄ちゃん(3歳半。熱性けいれんは3度起こしています)の時は1か月後に接種してありました。

 現在の予防接種の予定は、4月21日~三種混合追加、4月28日~ヒブワクチンが残っています。B型肝炎・ポリオは未接種で、ポリオは不活化待ちです。肺炎球菌・おたふく・水痘は終了しました。

 仕事の関係上なかなか平日が休めないので、5月に受診しようと計画を立てていた矢先のけいれんでした。現在の娘の接種状況でしたら、3か月待っても大丈夫でしょうか?秋にはインフルエンザに不活化ポリオ…と後に残っている予防接種に少々焦りを感じています。
 また、盛岡に住民票があるのですが実際は北上に住んでいるので、予防接種は盛岡の病院で受けなければならないのです。仕事のこともあり前もって予定を立てたい思っています。

 もちろん絶対大丈夫ということはないと分かっていますが、もし1か月後でも可能であれば来週受診したいと思うのですが…。

 お忙しいところすみません。どうぞよろしくお願いします。




 お便りありがとうございます。

 「熱性けいれん後の予防接種までの期間」についてのご質問ですね。以前にも同様のご質問をいただいています。関心の多い事項と思います。

 熱性けいれん後、予防接種までどのくらい期間をおけばよいか、はっきりした基準はありません。昔の教科書には、1年間あけると書いてありました。誰が書いたのか?1年もあけたら予防接種の意味がなくなりますよね。

 熱性けいれん後の予防接種までの期間は、二通りの要因で考えてみるとわかりやすいでしょう。

 一つ目は、発熱の原因は殆ど感染症ですので、その原因となっている感染症(疾患)の影響を考えます。例えば、突発性発疹のような発熱疾患に罹ると、「免疫力が一時的に落ちます」ので、予防接種は4週間くらいあけてから接種します。
 また、発熱はなくとも、オタフクや水痘も同様に「免疫力が一時的に落ちます」ので、4週間あけます。ただし、軽症の場合は2週間くらいあけて接種しても大丈夫です。

 別に、4週間あけずに接種しても効果がないと言う事ではありません。できるだけ効果を高めるためには4週間あけた方がよいと言う事です。

 二つ目は、発熱の原因にかかわらず、予防接種と熱性けいれんとの関係です。昔の予防接種は、今よりも接種後に発熱する事が多かったようです。そのため、<予防接種→副作用で発熱→熱性けいれん>が心配というふうに考えていたようです。

 特に昔の麻疹ワクチンは発熱が多く、熱性けいれんを起こしたお子さんには、抗けいれん剤を処方しながら接種していた頃もあります。今時、信じられないですけどね。

 最近のワクチンは安全性が高く、あまり、発熱のような副作用も見られなくなりました。と言うわけで、熱性けいれんを起こしたからといって予防接種を控えることはなくなりました。

 ところで、熱性けいれんにもいろいろあって、心配のないものから少し心配なものまであります。また、1回目の熱性けいれんでは今後の重症度がわかるわけでなく、すぐ起こすかもしれないという心配もあります。
 
 そんなわけで、現在は、初回(1回目)の熱性けいれんの場合は、少し様子をみましょうということで、3ヶ月おいて接種します。また、何回か起こしている場合なら、普通の熱性けいれんでしょうということで、1ヶ月おいて接種します。これが一般的になっています。

 しかし、絶対的な基準ではありません。インフルエンザワクチンのように季節限定で接種を急がなければならないときは、初回(1回目)の熱性けいれんでも1ヶ月で接種しています。さらに急がなければならない場合は1ヶ月以内でも接種しています。

 全ての熱性けいれんに当てはまる事ではありませんが、脳波検査をすると、熱性けいれん後2週間くらいは脳波異常がみられる事があります。だからといって予防接種ができないというわけではありませんが、この期間(けいれん後2週間以内)はチョット気が引けます。

 結論として、熱性けいれん後の予防接種までの期間はケース・バイ・ケースですが、健康なお子さんでしたら、1ヶ月おいて接種してよいと思います。

(2011年6月23日(木)の「診察室便り」を一部改変した内容です。)

2012年5月8日(火)
予防接種の追加時期

 連休前はけっこう混み合いましたが、連休後はノンビリしています。4月から保育園に行き始めたお子さん達は、毎日のように小児科・耳鼻科通いをしていたと思いますが、連休で一休みですね。

 今年のスギ花粉症はあまりひどくなかったようです。自分も例年の半分くらいの薬で済みました。来年も飛散量が少ないといいですね。

 スギ花粉症はそろそろ終息しますが、まだ、症状がある人は、スギ花粉症だけでなく、ブナ目樹木の花粉症の場合もあります。シラカバやハンノキがブナ目樹木の代表で、北海道に多いですが、本州にも生息しています。

 シラカバやハンノキは、リンゴ、サクランボ、モモ、ナシなどのバラ科果実と共通抗原性を持つため、シラカバ・ハンノキ花粉症の人は、これらの食品を食べると、口の中や舌、のどが腫れたり、かゆくなったりすることがあります。(口腔アレルギー症候群)

 まだ、くしゃみや鼻水がでたり、目が痒かったり、リンゴ、サクランボ、モモ、ナシなどを食べて、違和感があるような時は、シラカバ・ハンノキ花粉症もあるかもしれません。

 今日は、予防接種の追加時期について、ご質問をいただきましたので、ご紹介します。ヒブワクチンや肺炎球菌ワクチンを3(2)回接種して一安心していると、もう追加接種の時期がやってきます。出来るだけ「お知らせハガキ」で、ご連絡していますが、たくさんあると、どういう順番で接種したらよいか迷いますよね。

H.Mさんからの


 いつもお世話になっております。

 予防接種のことでご相談がありメールいたしました。

 昨年8月に仕事復帰して以来バタバタしてしまい、現時点でDPT・Hib・肺炎球菌の追加接種とムンプスが未接種の状態です。(あとB型肝炎もですよね。水痘は接種しなくてはと思っているうちに感染してしまいました…)

 未接種のこれらのワクチンについて、どのような優先順位で接種するべきか、同時接種は可能か、接種のスケジュール案についてご教示いただけないでしょうか?接種のための休暇を取る際の参考にしたいと思います。

 お忙しいところ恐れ入りますがよろしくお願いいたします。




 お便りありがとうございます。

 追加接種のある予防接種は、つい忘れがちになりますよね。「お知らせハガキ」も出していますが、それでも複数の予防接種が追加接種必要となると、どれから行ってよいものかちょっと迷ってしまうこともあると思います。

 カルテを拝見しましたところ、お子さんの必要な予防接種は、DPT(三種混合)・Hib・肺炎球菌の追加接種とムンプス(オタフクカゼ)、B型肝炎と思います。お子さんの年令が1才9ヶ月ですので、どれもなるべく早めに接種した方がよい予防接種ばかりです。

 特に優先順位はつけなくてもよいですが、効率よく接種するには、同時接種がよいです。また、生ワクチン(ムンプス)を、先に接種すると、次のワクチンは4週間あけなければなりませんので、不活化ワクチン(DPT・Hib・肺炎球菌・B型肝炎)から接種した方が効率がよいです。

 お子さんは、DPT・Hib・肺炎球菌を2本同時接種していましたので、今回も2本同時接種で予定を組んでみました。このプランをお進めしますが、3本同時でもかまいません。2つのプランをあげてみましたのでご参考下さい。では、お待ちしていますよ。

 
(1).2本同時接種の場合 / (2).3本同時接種の場合
/ 開始 1週後 1週後 4週後 20~24週後
Hib / / / /
肺炎球菌 / / / /
DPT / / / /
B型肝炎 / /
ムンプス / / / /
/ 開始 1週後 4週後 20~24週後
Hib / / /
肺炎球菌 / / /
DPT / / /
B型肝炎 /
ムンプス / / /

 

2012年5月6日(日)
5月5日の当番医

 昨日、5月5日はこどもの日でした。年々、子どもの人口は少なくなっています。総務省によると、15才未満の子どもの数は、前年度より12万人少ない1655万人で、31年連続の減少だそうです。また、総人口(1億2765万人)に占める割合も13.0%で、これまた38年連続の減少だそうです。

 いずれも比較できる統計がある1950年以降では過去最低で、少子化の進行が改めて浮き彫りになった。と、発表しています。

 時代の流れとはいえ、何となく寂しいですね。最近、街の中であまり、鯉のぼりを見かけなくなったような気がします。子どもの数が少なくなったから、鯉のぼりも少なくなったわけではないでしょうが、子どもの健やかな発育を祝う5月5日に、鯉のぼりや菖蒲湯(しょうぶゆ)のような習わしが失われつつあることは残念な気がします。

 昨日は、休日当番医でした。こどもの日の当番医だからといっても特別なこともありません。時々、時節にあった服装で診療をしようかなと思うこともあります。例えば、クリスマス近くなら、サンタクロースの衣装を着るとか、こどもの日なら、兜でもかぶってみるとか、発送は面白そうでも、受診するお子さん達はみんな調子が悪いわけですから、かえって不謹慎な印象を与えるかもしれません。というわけで、いつも通りの質素な服装で診療しました。

 4連休の3日目でしたから、あまり混み合いませんでしたね。おそらく待ち時間もそんなに長くなかったと思いますよ。受診したお子さんの半分くらいは急性胃腸炎。3分の1強が発熱。その他、溶連菌感染症8名、水痘(みずぼうそう)7名、インフルエンザB型4名。等々でした。

 急性胃腸炎は、嘔吐、下痢から脱水症状をきたすこともよく見られますが、昨日は軽症のお子さんが多く、点滴は3名でした。一人は実家に帰省中で今日千葉へ戻る予定とのことでした。点滴後は元気が出たようでしたので、多分今頃はお家についているでしょうね。お大事にして下さい。

 明日からまた、新しい週が始まります。連休ぼけしないようにしっかり、頑張ります。

2012年4月30日(月)
花は桜木、人は武士

 今日で4月も終わりですね。先日石割桜を見てきました。雨が降っていましたが、けっこう観光客もいました。樹齢何年になるのでしょうね。いつまでも盛岡の春のシンボルでいてほしいです。

 数年前の冬は大雪でした。そのせいか当院向いにある西1児童公園の桜の木はかなりダメージを受けたみたいです。以来、数年間春になってもサッパリ花を咲かせませんでしたが、今年は以前のように美しい桜が開花しました。もう殆どあきらめていただけに嬉しいです。これからも毎年桜が見られそうです。


 日本人は桜が好きです。「花は桜木、人は武士」というように、パッと華やかに咲いて、惜しまれながら散っていく・・・。桜の散り際はとても綺麗です。どことなく哀愁を感じます。と、同時に潔さも感じます。この感傷が日本古来の武士道に通じるのでしょうね。

 自分も、毎年桜を見ながら、こうして日々、無事に生活できている歓びを感じながらも、来年の今頃は何をしているのだろうなどと、思ってしまいます。

 今年の連休は5月5日が当番日にあたりましたので、遠出も出来ません。日頃の残務整理で終わりそうです。

 今日は、B型肝炎ワクチンについてのご質問をいただきましたのでご紹介します。B型肝炎ワクチンは、あまりなじみのない方も多いと思いますが、近い将来、定期接種に組み込まれる(だろう)重要なワクチンです。


K.Sさんからの


 吉田先生こんにちは。

 先日の診察の時にはお世話になりました。今回、質問したいことがありメールを致しました。

 お聞きしたいのは、B型肝炎ウイルスの予防接種についてです。これまで、家族など近親者に感染者がいなければ問題がないものだと思い、母子ともに、また家族にも感染者がいない現状で必要がないと思っておりました。

 しかし、最近の育児書などを見ていて、また、先生のホームページをみて、任意でも受ける意義があるように感じています。ただ、対象が生後間もない乳児からということで、娘はすでに3歳8カ月です。今からでも受けることはできますでしょうか?

 もし可能な場合、予防接種スケジュールと、副反応などのリスクも教えていただきたいと思います。

 よろしくお願いいたします。




 メールありがとうございます。

 B型肝炎ワクチンについては、最近いろいろなサイトでも取り上げられるようになりました。すでにご存知の通り、B型肝炎ワクチンは、「肝臓がん予防ワクチン」と位置づけられています。そのためには、B型肝炎に感染する前にワクチンを接種する必要があります(当たり前ですね)。

 今から20年以上前、昭和61年にB型肝炎母子感染予防事業が始まりました。B型肝炎の母親から生まれてくる赤ちゃんをB型肝炎に感染させないようにするため、赤ちゃんにB型肝炎ワクチンを接種したのです。それまでは何一つ予防策がなかったのですが、ワクチンの登場により、殆どの母子感染は予防することが出来るようになりました。画期的なことでした。

 さらに、医療従事者への接種、公衆衛生の整備も整い、水平感染(人から人への感染の事です。母子感染は母から赤ちゃんへの感染ですので、垂直感染と言います)も、著しく減少しました。

 しかし、B型肝炎の患者がいなくなったわけではなく、毎年確実に発症しています。現在でも解決されていないB型肝炎対策は二つあります。一つは「性交渉」の問題です。もう一つは「知らない間に罹ってしまう場合」です。「性交渉」では、パートナーがB型肝炎に罹っているのかどうか事前に確認するわけにもいかず、わからないと思います。また、「知らない間に罹ってしまう場合」については、全く予防方法がありません。

 この二つの問題を解決するには、ワクチンを接種することしかないと思います。3才8ヶ月で遅い事はありません。3歳以下の子どもは、感染するとB型肝炎キャリアになりやすいという事と、大人より赤ちゃんの方が免疫がつきやすいという事から、なるべく乳児期の接種を勧めているわけですが、何才でも接種できます。出来るだけ早めに接種されると良いと思います。

 もし、身近にB型肝炎の人がいれば、一応、抗原検査してからの方がよいと思います。抗原が検出されれば、すでに感染しているわけですからワクチンは無効です。身近にB型肝炎の人がいなければ、検査せずに接種してかまいません。仮に感染していてもワクチンを接種して悪いことはありませんが、その場合ワクチンの効果はありません。

☆ 接種スケジュールは
 4週間隔で2回接種、その後20~24週経ってから1回接種の合計3回接種します。

 ワクチンの効果は10~20年前後とされていますので、10~15歳頃に追加接種をすることをお勧めします。

 料金:1回5.000円→3回15.000円

☆ 特に目立つ副作用はありません。接種部位のかゆみ、軽度の発熱程度です。


 余談になりますが、私は医師になりたての頃、B型肝炎の患者さんから採血した際、誤ってその針を自分の指に刺してしまいました。当時はよくある事故でしたが、まさか自分が当事者になるとは思ってもいませんでした。まだ、ワクチンは発売されてなかったと思います。
 
 そこで、一時しのぎのγグロブリンという注射を打ってもらいました。一時しのぎというのは、とりあえず一時的に免疫を上げて感染を防ぐというものです。この時期に抑えることが出来ないと肝炎に感染していまいます。大学病院でしたので、注射の手続きが複雑で先輩の先生方にいろいろ面倒をおかけしました。なんとか注射はしたものの、とにかく、ものすご~く痛い注射でした。でもなんとか感染せずにすみました。あの時、感染していれば今頃どうなっていたでしょうね。

 それから数年して今度は市中病院に勤務していた時、ワクチンを打ちました。今でも抗体はしっかり出来ています。安心して(?)採血やら点滴しています。

2012年4月19日(木)
不活化ポリオワクチン認可!?

 もう少しで桜が咲きそうですね。クリニックの前の公園の桜はとても綺麗ですよ。と言いたいのですが、数年前の大雪の影響で、道路に面した桜はあまり花が咲かなくなってしまいました。以来、今年こそは復活するのではと期待していますが、どうもイマイチです。

 今春はロタウイルスの急性胃腸炎が多いです。秋~冬はノロ、冬~春はロタが流行りますが、その通りですね。先週の土曜日夜間診療所で診療してきましたが、大変混み合っていました。患者数40名は今の季節にしてはかなり多いです。最初の10名くらいは発熱~インフルエンザでしたが、あとは、嘔吐~下痢のオンパレードでした。

 久々に点滴用のベッドが埋まってしまい、「前の人が(点滴)終わるまで待っててね」と、点滴の順番待ちまでありました。点滴は治療のためと言え、小さいお子さんにとっては苦痛ですし、親御さんも心が痛みます。点滴する医師、看護師も、すごくストレスを感じます。出来れば点滴なんぞしなくてもすむようにしたいものですが、脱水が強まればそうも言ってられませんよね。

 ロタウイルスは、ロタウイルスワクチンを接種すれば予防できる病気です。点滴や入院しなくてもすみます。生後6~24週までに接種しなければなりませんが、是非接種したいワクチンです。

 今シーズンのインフルエンザは息が長いですね。また、あちこちで出現してきました。春休みで終息と思ったのに・・・。そうでもないです。昨日はB型に2回罹ったお子さんが受診しました。1月に一度B型に罹ったそうですが、昨日またB型に罹りました。昔と違って、今はすぐ診断できて、すぐ薬で治療しますから、あまり免疫ができないにうちに治ってしまう人もいるんでしょうね。その結果、また、罹る・・・。早期診断・早期治療が悪いはずはないのですが、少し、考えますね。

 今日、次のようなニュースを見ました。
 『厚生労働省の薬事・食品衛生審議会医薬品第二部会は19日、製薬会社サノフィパスツール(本社・東京)が今年2月に申請していたポリオ(急性灰白髄炎)の不活化ワクチン「イモバックスポリオ皮下注」の製造販売を承認しても差し支えないとする意見をまとめた。早ければ5月中にも正式に承認される。』(読売新聞 4月19日(木)20時27分配信)
 
 やっと、不活化ポリオワクチンが認可されそうです。(輸入単抗原 ポリオワクチン」 の 認可を目指して) 始めから副作用ありきの生ワクチンの接種は見合わせて、もう少し待った方がよさそうです。喜ばしいことですが、これでまた接種するワクチンが一種類増えました。ワクチンの接種予定を効率よく組まなければなりませんね。

 不活化ポリオワクチンについては、詳細が判明次第お知らせします。

2012年4月9日(月)
夜泣き~不眠

 ようやく暖かくなってきました。まだ、桜が咲くには間がありますが、やっと春ですね。入学式も終わり、新入生達は張り切って通学、通園していることでしょう。

 毎年のことですが、最初はみんな元気に登校、登園しています。だいたい、ゴールデンウイークの頃になると疲れがたまってくるようです。と言うわけで、これからしばらくは小児科外来は穏やかになりそうですが、今月下旬頃から少し忙しくなりそうです。今年はゴールデンウイークに休日当番医があたっていますので、あまり連休も休めそうにありません。

 外来待合室の水槽には、海水魚が泳いでいます。海水魚は寒さに弱いため、冬場は新規購入しませんでしたが、そろそろ新人(魚)?を入れようと思っています。海水魚の鮮やかな色彩と優雅な泳ぎは、見る人の心を和ませてくれます。

 しかし、海水魚もけっこう病気しますし、けんかもします。いつも、丈夫で長持ち、かつ、性格穏便な魚を探していますが、なかなか難しいですよ。

 ところで、海水魚はとてもデリケートです。ちょっとした刺激にも敏感に反応してストレスがたまってしまうんですよ。小さなお子さん達は喜んで魚をみてくれます。でも時々水槽を叩いたりするお子さんいますね。魚がビックリするからやめて下さいね。水槽が揺れるという事は、魚にとって大地震みたいなモンですよ。

 今日は、お子さんの夜泣き~不眠についてのご相談を頂きましたので、ご紹介したいと思います。春は新しい生活のスタートですが、それとともに環境の変化もあります。いろんなことが体調に影響しそうです。

S.Oさんからの


 こんにちは、いつもお世話になっています。M.Oの母です。相談があり、メールさせて頂きます。

 子どもの事ですが、ここ最近夜寝付きが悪い日が続いており、昨日は寝かしつけに3時間かかりました。本人も眠くて眠くて‥なのですが、寝付いたと思うと泣く‥の繰り返しでした。ただの夜泣きかなぁと参っていましたが、昨日の様子を見ていると、寝ながらも、30秒~1分、その後は1分~2分位の感覚で足がビクッと動くのに気づきました。

 徐々に間隔は長くなり、毛布にくるんで抱っこしてやっと寝付いてくれたのですが、その後も少し動き、ふぇん‥と泣きながらも寝る‥という状態でした。

 素人判断はしてはいけないと解っていますが、心配でネットで調べたところ、入眠期ミオクローヌス?というものの症状に当てはまるなぁと。

 小児科を受診すべきなのか、様子を見ていいものか、本当にそれなのか、しばらくすれば無くなるものなのか、どうすれば良いか分からず、メールで相談させて頂きました。

 お忙しい中恐れ入りますが、上記についてよろしくお願いします。




お便りありがとうございます。

 文面からは、「夜泣き」かなとも思いましたが、入眠時に「30秒~1分、その後は1分~2分位の感覚で足がビクッと動く」という現象からは、確かに「入眠時ミオクローヌス」も疑われます。

 「入眠時ミオクローヌス」は、手や足の筋肉が瞬間的に動く不随意運動(自分の意志とは関係なく身体の一部が勝手に動くこと)の一種です。大人でも時々見られます。寝入りばなや睡眠中に足が階段からずり落ちるような感じで目覚めた経験は誰にでもあると思いますが、それです。

 ところで、睡眠にはノンレム睡眠とレム睡眠がありますが、「入眠時ミオクローヌス」は、ノンレム睡眠でおきます。ノンレム睡眠は、『脳は眠っているが、筋肉は動いている状態』です。ちなみに、レム睡眠は、『脳は起きているが、筋肉は休んでいる状態』です。

 人の睡眠はノンレム睡眠とレム睡眠を繰り返しますが、入眠時の最初はノンレム睡眠です。

 ノンレム睡眠には体温を下げ、オーバーヒートしやすい脳を冷やす機能をあるといわれていますが、疲労が重なったり、お昼に興奮しすぎたり、いろいろなストレスがあったりすると、ノンレム睡眠の時に「入眠時ミオクローヌス」の様な現象がみられるようです。

 「入眠時ミオクローヌス」は、生理的で心配ないものですが、睡眠障害を伴ったり、昼間にも同様な症状がみられるようなら、精査~治療が必要と思います。

 少し様子を見ても良いように思われます。何かお子さんにストレスになりそうなことがあれば取り除くようにしてみて下さい。なかなか改善が見られないようでしたら、受診して下さい。では、お大事にして下さい。



 その後、もう一度お便りを頂きました。どうもお子さんにはストレスがあったようです。症状の悪化はみられず、ストレス・疲労からくる夜泣きの一症状らしいので、自宅でのスキンシップをたっぷりとろうということになりました。きっと、よくなりますよ。少し、様子をみましょうね。

2012年4月4日(水)
春の高校野球

 昨日からスゴイ天気ですね。春の嵐を通り越しています。春一番が吹かない年は春の天気が荒れるそうですが、ここまで荒れるのも珍しいです。

 天候不順で1日順延した今年の春の高校野球は、大阪桐蔭高校の優勝で幕を閉じました。決勝で破れた青森光星学院は、昨夏に続き夏春準優勝でした。準優勝とはいえ、立派なもんです。被災地に元気を与えてくれました。

 ナインの全員が県外出身者だった昨夏とは違い、今年のチームは青森県出身者も何人かいたようですし、岩手県の子も試合に出たようです。昨夏は準優勝後に不祥事が発覚した光星学院ですが、今春は大丈夫だろうね?みんなの期待を裏切ってはいけないよ。何はともあれ、夏春準優勝という記録も初めてではないでしょうか。よく頑張った!

 花巻東がもし1回戦で大阪桐蔭に勝っていれば・・・。もし大谷くんが万全の調子だったら・・・。と少し思ってしまいます。勝負に、「レバ、タラ」は、禁句ですね。出来れば東北初の優勝旗は岩手に持ってきてほしいです。

 今日は日本脳炎ワクチンについてのご質問を頂きました。年度末になるとなぜか接種者が増える日本脳炎ですが、春休みのせいですかね。日本脳炎は1年中接種できます。あまり急がなくてもよいですが、なるべく夏前に接種するようにして下さい。

N.Hさんからの


 吉田先生
 いつもお世話になっております。K.Hの母です。
 さっそくですが、3月12日に第1期初回1回目の日本脳炎の予防接種をしました。2回目は6~28日後とされていますが、現在風邪気味で体調が万全ではなく、28日後(4月9日)までに接種できるか気になっております。
 
 そこで、2回目の接種は、1回目から28日以上経過してもかまわないものでしょうか。それとも、風邪の症状があっても熱がなければ、28日以内に接種した方がよいのでしょうか。

 風邪気味で1回目の接種をした後に高熱が出たこともあり、(先生には発熱と予防接種は関係ないだろうと診察していただきましたが・・・)できれば体調のよい時に接種させたいと思っております。

 お忙しいところ恐れ入ります。お返事をいただけると助かります。よろしくお願いいたします。




 お便りありがとうございます。

 予防接種は、決められた期間内で、体調のよい時に接種することが原則ではありますが、ケース・バイ・ケースでもあります。確かに日本脳炎第1期初回1回目から2回目は、6~28日後ですが、多少遅れても効果には問題はありません。出来るだけ期間は守るべきと思いますが、体調を優先して元気になってから接種しにいらして下さい。

 どのくらい空いてもいいかという決まりはありません。1回目接種から4(~8)週間くらいまでは免疫が十分ありますが、その後次第に低下していきます。だからといって、1回目接種した免疫が全くなくなるということではなく、感染予防に必要な免疫が足りなくなるということです(免疫はあるけど感染するかもしれないというふうにご理解下さい)。ですから、なるべく期間内に2回目接種した方がよいということですよ。少しくらいのカゼ症状でしたら、大丈夫です。私は接種しています。では、お待ちしておりますよ。

2012年4月1日(日)
開院記念日

 今日4月1日は当院の開院記念日です。16年前の今日開院しました。ときおり雪が降る寒い日でしたね。毎年4月には開院記念を祝して、ささやかな催しをしていましたが、昨年は中止しました。地震でそれどころではなかったですからね。今年はチョコットお祝いしようかと思っています。

 この頃、B型肝炎ワクチンについての問い合わせが多いです。B型肝炎は有名な(?)病気ですが、あまり一般的には知られていないようです。関東、関西方面の友人に尋ねてみましたら、最近、接種希望者は増えているとのこと!確かに、B型肝炎は肝臓がんの原因にもなりますし、血液から血液の感染といっても、感染経路不明の場合も多く、予防する価値は大いにあります。

 ここ1~2年、ヒブ、肺炎球菌に加えて、子宮頸部がん予防ワクチン、さらにはロタウイルスワクチンと、新しいワクチンがどんどん使えるようになりました。また、春、秋にはポリオが話題になります。生ポリオか不活化ポリオか?患者さん達からよく相談されますが、なかなか明解にお答えできずに悩んでいます。

 いずれ、秋には不活化ポリオワクチンが認可されるのではないでしょうか?と、希望的観測を持ってますが、根拠はありません。それはそれとして、ポリオとB型肝炎と比較したら、患者数は圧倒的にB型肝炎の方が多いですよね。日本では30年以上ポリオは発生していませんが、B型肝炎の感染者は約100万人(約100人に1人)と推定されています。となると、不活化ポリオよりもB型肝炎ワクチンを優先して接種した方がよさそうに思いますが・・・、どうでしょう。

 今、厚労省の予防接種部会では、任意接種のワクチン(水痘、流行性耳下腺炎、B型肝炎など)の定期接種化にむけて検討しています。やっと、日本もワクチン後進国から脱却できそうです。一刻も早く定期接種にしてほしいですね。

2012年3月25日(日)
インフルエンザとカゼは違う?!

 そろそろタイヤ交換しようと思っていましたが、この頃天気が荒れ気味です。もうすぐ4月というのに今日も雪降りでした。

 昔はスパイクタイヤでしたね。タイヤに金属製のピンがはまっていましたが、このピンが摩耗して生じる粉塵が環境汚染につながるというので、今のようなスタッドレスタイヤになったようです。

 テレビのコマーシャルで、氷上を走る車がブレーキを踏むとピタッと止まる場面がありますね。あれは誇大広告だな。『タイヤは止まるが、車は止まらない』はず。この意味わかるでしょ。初めて北国にきたドライバーは、その通りに信じて一度は痛い目に遭うようです。タイヤが止まって、そのまま車がス~と滑ってガツン!という場面まで見せて、だから、雪道の運転には気をつけようというコマーシャルがよいのでは・・・と、常々思っています。

 先週カゼをひいて受診した子のお父さんとのお話しです。ご自身インフルエンザに罹ったとの事。お父さん:「インフルエンザと普通のカゼは違うんですね。」 私:「そうそう、インフルエンザはカゼなんかじゃない、重症な病気・・・。」 お父さん:「インフルエンザはタミフル飲んだら、翌日には熱も下がって、よくなったけど、咳や鼻水が治らない。薬局で薬を買って飲んだけど、1週間以上かかりました。インフルエンザとカゼは全然違いますね。」 私:「(なんと言っていいのか、わからず、うなずくだけ)・・・。」

 どうも、お父さんはインフルエンザを重症疾患とは考えていないようで、インフルエンザは薬があるからすぐ治る。しかし、カゼはカゼ薬を飲んでもなかなか治らない。故に、カゼとインフルエンザは違う。カゼの方が大変・・・。と思っているようでした。ウ~ン、そう思うのも「宜(むべ)なるかな」ですね。

 最近、確かにインフルエンザは軽症化してきたように感じます。でもこういう時が怖いのかもしれません。天災は忘れた頃にやってくるといいます。現実にそうでした。インフルエンザも薬が効かないような新たな新型が登場するかもしれません。やはり、インフルエンザは重症疾患ですよ。

2012年3月18日(日)
出席停止期間

 やっと、春らしくなってきましたね。今春のスギ花粉症は例年より少なめという予報ですが、今のところホントに少ないですね。でもこれからドンドン飛び回ってくるでしょう。

 もう初期治療で予防しておいた方がよいですよ。初期治療でも点鼻薬や点眼薬を使えば効果が上がりますが、案外知られていないようです。(ステロイド以外)の多くの点鼻薬、点眼薬は1日4回処方しますが、予防として用いる時は1日2回で十分です。早速実施してみて下さい。

 インフルエンザはしぶといですね。12月中旬から患者さんが見られるようになって、もう3ヶ月になります。先週末は卒業式、終業式が多かったですが、A型とB型が同時に流行しているような地域もあり、患者さん多かったです。おそらく来週からは終息に向かうことでしょう。

 ところで、インフルエンザ罹患後の出席停止期間が来年度から変わるようです。小中高校や大学では、「発症後5日を経過して、かつ解熱後2日間」となるようです。実施は4月1日からです。ただ、幼稚園児については、「発症後5日を経過し、かつ解熱後3日間」だそうです。微妙に違いますね。

 また、オタフクかぜの出席停止期間も、現行の「耳下腺の腫れが消えるまで」から「腫れが出た後5日を経過し、かつ全身状態が良好になるまで」に変わるようです。
 実際、オタフクの腫れは1週間は続きますし、年長児になると2週間くらい続くことも稀ではありません。その間、休校では授業についていけなくなりますよね。医療の世界でも古い固定観念に縛られずに見直されることが多くなってきました。

2012年3月11日(日)
あの日から1年
奇跡の一本松
高田仮設診療所

 昨晩は夜間診療所で勤務してきました。先々週は少なくなったインフルエンザでしたが、先週はまた少し増えてきたようです。A型だけでなく、B型も多いです。

 今シーズンは流行期間が長く、いつものシーズンよりもA型、B型の両方に罹る人が多いようです。まだまだインフルエンザは要注意です。

 あの【千年に一度の大震災】から一年になります。昨日から今日にかけて報道特集が組まれていますが、見れば見るほど悲惨な気持ちになってしまいます。

 今朝の新聞に、『3.11から1年。岩手、宮城、福島の「あの日」と「いま」。』と題して、次のような一文が掲載されていました。「3月11日の大震災によって日本人は多くのことに気づきました。自然災害の脅威、防災の必要性、日常のありがたさ、命の大切さ、支えあうことの大切さ。被災地には日本中から多くの支援と声援が届きました。ありがとう。心からそう思いました。そして、あの日から1年。時とともに震災の記憶の風化も進んでいます。・・・」

 2時46分には1分間黙祷しました。1年経って何か区切りがついたわけでもなく、復興への道筋は多難です。自分のできることは被災地での医療支援くらいですが、この先もできるだけ尽力したいと思っています。

 3月11日は日本中の人々の心に残る日になりました。鎮魂、復興、そして未来へ、一歩ずつ進みましょう。

2012年3月4日(日)
陸前高田 診療応援

 やっと暖かくなってきました。インフルエンザも一段落し、これからは花粉症のシーズンです。今年のスギ花粉飛散量はやや少なめと言うことですが、多くても少なくても症状が出ることにはかわりありません。そろそろ予防治療を始めましょう。

 今日は陸前高田の仮設診療所に行って来ました。天気も良く、道路事情も良かったせいか、2時間ちょっとで着きました。高田の診療応援は主に県南の医師が担当していますが、県南は医師数が少ないため盛岡市からも応援に行っています。

 甚大な被害を受けた高田は今もまだ、街が崩壊したままです。あちこちに散らばっていた瓦礫をまとめた瓦礫の山があるだけでした。これを処分するのにどれだけ時間がかかるのでしょうか?

 今朝の新聞に『震災がれき受け入れ~全国の86%難色』という見出しの記事が載っていました。また、福島県から他県に転居した子は、放射線を理由に保育園の入園を断られたりしているようです。【絆(きずな)】、【頑張ろう東北】は、かけ声だけにしか聞こえません。政府主導で復興に本腰を入れてほしいです。

 高田の仮設診療所は小高い丘にありました。車でなければ行けないような場所です。高齢者にはちょっときつい道です。しかし、低いところには建てられないでしょうから、やむを得ないでしょうね。

 内科、外科、耳鼻科、眼科、皮膚科、小児科が、11時~4時まで診療にあたりました。今は、インフルエンザも少なくなり、患者さんは少なかったです。偶然、以前、当院で診察していたお子さんが受診してきました。お父さんの転勤で高田に転居しましたが、津波で危うく難を逃れ一時盛岡に戻られていました。また、こちらの職場に復帰したとのことでした。お子さんは少し大きくなって笑顔も見られました。この時はちょっと気持ちが和らぎました。
 しかし、震災で家族を失った人達もいました。一見元気そうに見えますが、いつまでたっても心の傷は癒されないでしょう。一般小児科医だけではなく、小児精神医学の専門医も必要です。

 遠くからですが、【奇跡の一本松】はまだしっかり見えました。根本が衰弱してるようですが、いつまでも高田の街を見守っていてほしいです。

2012年3月1日(木)
B型インフルエンザ

 今日から3月、暦の上では春ですね。インフルエンザの流行も少し峠を越したようですが、今まで流行っていなかった地域では、チョコチョコ患者さんが出てきましたね。先週の定点あたり患者数は38人(1週間にインフルエンザの患者さんが38人)と少なくなりましたが、やはりまだ、警報値(30人)を越えており、流行は持続しています。

 今、A型とB型が流行しています。A型に比べるとB型は軽症ともいわれますが、必ずしもそう言うわけではありません。B型でも入院するようなことはあります。今年のB型の特徴を見てみますと次のようです。

1.嘔吐、下痢のような消化器症状がよく見られる。
2.微熱が1~2日続いてから、高熱が出現する。
3.あまりはっきりした症状がなく、発熱も見られず、2~3日して検査したらインフルエンザと判明。
4.始めから、かなり重症。

 と言う具合に、かなりバリエーションがあります。先日、発熱はなく、頻回に嘔吐を繰り返すお子さんに点滴しましたが、全く改善しなかったので、総合病院に紹介したところ、「入院時に発熱があったため、念のため検査したらB型インフルエンザだった」という返事をもらいました。発熱がなくて嘔吐だけなら急性胃腸炎(お腹のカゼ)を考えますが、今の時期はB型インフルエンザも鑑別しなければなりませんね。

 それから、これは今年に限らず以前からもあることですが、B型には、タミフルはあまり効かない時があります。リレンザ、イナビル、ラピアクタはけっこう効きますが、リレンザ、イナビルは吸入、ラピアクタは注射ですので、幼児にはむかない剤形です。

 となると、幼児にはタミフルを処方することが多いわけですので、B型の時はちょっと苦戦する時もあります。とは言え、効かないと言っても全く効かない場合はそんなに多くないので、あまり心配しない方がいいでしょうね。

 そろそろ花粉症の季節ですね。毎年のこととは言え、憂うつになります。まず、初期治療です。薬を飲むだけでなく、点鼻、点眼も毎日行いましょう。シーズン中の症状が軽くなりますよ。予防が一番です。

2012年2月19日(日)
昨日は夜間診療所

 昨日は夜間診療所にいって勤務してきました。先週は休日当番医、今週は夜間診療所とインフルエンザが流行する中、忙しく働いています。殆ど発熱の患者さんでした。

 先週、先々週の土曜日は50人以上患者さんが受診したようですが、昨日は34人と少し減少しましたかね。盛岡市内あちこちでインフルエンザが流行っているようですが、山岸、青山、松園、滝沢近辺からの受診者が多かったです。矢巾、紫波は少なく、北高南低という感じでした。

 数日前に勤務した先生が日誌に次のようなことを書いていました。「このくらい流行してくると、あまり検査しなくても、顔~症状からインフルエンザと診断できるが、検査(-)だと、納得しない保護者が多い。医師の診断能力が全く評価されていないのは残念だ。」とありました。

 また、2~3年前の新聞には、「(保護者が)どう見ても具合が悪く、まわりはインフルエンザだらけなのに、検査(-)だと、薬を出してくれない。医者もインフルエンザと思うが、薬は出せないという。なぜ?」と言う投書もありました。

 患者さんもお医者さんも様々ですね。検査も薬も10年前にできたもの、それ以前は、検査も薬もなしでインフルエンザを診ていたわけですが、想像できますか?当時と比べるとこんなに便利になったのに・・・。なんでゴチャゴチャもめるんだかね?みんな、もっと素直になろう。

2012年2月12日(日)
今日は当番医

 インフルエンザの流行も本格的になってきましたね。山岸小学校高学年はかなり流行っているようです。盛岡市内あちこちでインフルエンザが蔓延しています。というわけで、今日は6~7割がインフルエンザの患者さんでした。

 多くの人はご存知と思いますが、検査キットはインフルエンザに感染してから少し時間が経たないと(+)にはでません。何時間経てば(+)になるというような基準もありません。個人差もあります。ですから検査キットが(-)に出たからといって、そのままインフルエンザに罹っていないと信じるわけにはいきません。検査キットが信用できるのは(+)に出た時だけです。

 今日もインフルエンザと診断した患者さんの3割は検査キットでは(-)でした。この患者さん達は殆ど今日発熱したばかりで受診しています。マア、(-)で当然といえば当然です。発熱初期の検査は当てにならないと思って下さいね。だからといって、熱が上がってから、しばらくしてから受診というわけではありませんよ。『発熱→元気がない』という時は、できるだけ早めに受診して下さい。

 「急な発熱、全身倦怠感、全く元気のない顔、周囲にインフルエンザの人がいる。」大体こういう時はインフルエンザにかかっていると思って間違いないです。でも、検査で(+)にでないと信じてくれない人達けっこういますね。【医師の診断よりも検査が第一】なんて思われると、ちょっと残念です。

 「検査で(-)なら、明日まで様子みたい。」 「いいですよ。」 でも、ひとつだけ気をつけて下さい。【インフルエンザ脳症】よく聞く病名ですね。【インフルエンザ脳症】は、インフルエンザに罹ったその日から1~2日くらいで発症します。約80%が発熱後、数時間から1日以内に神経症状が見られています。わずか1日足らずのうちに重症になることもあります。となると、【検査キットではわからないうちに脳症になってしまう】こともあるんです。めったにないことですが、こういう事態を避けるためにはインフルエンザが疑わしいと医師が診断すれば、積極的に薬を使って治療した方がよいと思います。というようなことを、今日は何十人にお話ししたことか・・・。

 何人かまとめてご説明すれば時間の短縮になって待ち時間も少なくなるでしょうが、まさかそんなことはできませんよね。一人一人に丁寧にご説明すれば時間がかかるのは当然と思って下さい。

 今日は、朝8時30分から夜6時30分まで、10時間連続で診察しました。缶コーヒー1本+リンゴジュース1本+カロリーメイト2コが今日の昼食で5分で終わりました。あとはトイレに2回立っただけ、ア~疲れた。昨日も当番医を受診したお母さんは、「昨日は5時間待ちだったが、今日は早かった。」と、喜んでいました?そう言ってもらえると少しは疲れが取れますかね。明日からまた一週間が始まります。今日は昨日買ってきた「浜娘」を飲んでゆっくり休みます。しばらく頑張る日々が続きそうです。

2012年2月11日(土)
明日は当番医

 最近、日本酒を買う時は殆ど被災地の酒を買っています。福島県、宮城県、そしてもちろん岩手県。今日、スーパーで大槌町の「浜娘」という日本酒を買ってきました。ラベルには「この清酒は盛岡市の桜顔酒造の工場で赤武酒造の社員が心を込めて醸した純米酒です。『ガッツうまい酒』復活しました。」と書いてありました。復活の赤文字が目にしみます。

 もう震災から11ヶ月になるんですね。少しずつ復興しているように思いたいですが、現実はまだまだ厳しいようです。このお酒は純米「生貯蔵酒」と書いてありました。詳しいことはわかりませんが、飲み心地はどちらかというと甘口、少しキリッとして飲みやすいです。皆さんもどうぞ。

 同じスーパーで中学校の同級生と会いました。彼は盛岡の酒造店の社長です。同級生のよしみもあり、日本酒は彼の会社のものを買うことが多いのですが、この頃は、被災地支援していますので、あまり購入していません。ちょっと立ち話をしましたが、かごの中の「浜娘」見られたかな?今度は、七○神か亀○尾買うから。

 インフルエンザは過去10年では2005年に次ぐ大流行とのことです。今のところ、あまり混乱なく診療していますが、流行は長引きそうですね。明日は当番医です。新型が流行した2009年10月11日の当番医では200人以上の患者さんが殺到して、とても忙しかったですが、明日はそんなに混まないでしょう。とは言え、殆ど初めてお会いする患者さんばかりですから、いろいろ気を遣います。無事当番医の役目を果たせるよう頑張ります。

2012年2月7日(火)
インフルエンザいろいろ

 日曜日から少し天気が回復してきましたが、明日からまた寒くなるようですね。立春は過ぎても春はまだまだ・・・。でも、この頃ちょっと鼻がムズムズする時があります。スギ花粉症のシーズンもそろそろです。

 インフルエンザは、だいぶ流行してきました。早期の学校(学級)閉鎖のおかげで爆発的な流行にはなっていませんが、毎日あちこちからインフルエンザの患者さんが受診します。

 今年の流行株はA香港型ですが、A香港型は5年ぶりの流行だそうです。5才以下のお子さん達は初めて遭遇するわけですから、抗体を持っていません。ということは、5才以下に患者さんが多いということになりますが、実際は、園児(保育園・幼稚園)~小学生~中学生と、全ての子ども年令が受診しています。5年も経てば、免疫も低下しているのでしょうね。

 インフルエンザは重症疾患と位置づけられています。確かにその通りですが、中には軽症もいます。熱も高くなく、ニコニコしていて、食欲もある、そういうインフルエンザのお子さんを時々見ます。もしかしたら治療薬(タミフル・リレンザなど)なしでも治るんじゃないかなとも思いますが、帰宅後から症状が悪化するような気がして、殆ど治療薬を処方しています。治療薬なしでも大丈夫なインフルエンザの見分け方は、難しいですね。

 先週診た患者さんのお話しです。小学生の女の子、仮にA子ちゃんとしましょう。発熱38度、ちょっと元気がないくらい。検査は(-)でした。周囲にもインフルエンザの子がいるので、かなり、怪しいと思いましたが、経過観察として治療薬は処方しませんでした。翌日、発熱37~38度、マズマズ元気。やはり検査は(-)。その翌日、お母さんと妹さんがインフルエンザに罹りました。その翌々日、発熱から5日経過しすでに解熱したA子ちゃんに3回目の検査をしましたら、なんと(+)でした。

 結局、発病初期にはインフルエンザかどうか不明のまま、治療薬なしで回復し5日経過後にインフルエンザと判明したケースです。こういう場合もあることを思うと、診断・治療は難しいですね。

 いつも見慣れたインフルエンザと思っても、いろんなケースを想定することが大切です。まだシーズン半ば、気を引き締めて診療します。

2012年1月30日(月)
お昼休みの健診

 先週はお天気が良かったですが、今週は大荒れのようですね。大雪に見舞われている地方があることを思えば、北国岩手もこのくらいの雪は降りますね。

 先週後半から当院周辺でもインフルエンザが流行り始めてきましたが、早いですね。今日は本宮小の1年生がたくさんインフルエンザに罹ってきました。明日は学級閉鎖でしょう。この地域には仙北小と本宮小の学童数の多い二つの小学校があります。毎年インフルエンザの生徒さんを多数診ますが、同時に二つの小学校で流行ることは案外少なく、大体は仙北小が先に流行って、少し遅れて本宮小が流行るというパターンが多かったように思います。今シーズンは逆ですかね。でも、もしかしたら同時に流行るかもしれません。その場合、一時的にせよ、この周辺は大流行?になりそうです。しばらく周囲の状況に要注意です。

 今日は、忙しい診療の合間をぬって、昼休みに保育園の健診に行ってきました。小学校、幼稚園は年1回の健診ですが、保育園は年2回健診があります。私は、小学校1つ、幼稚園1つ、保育園5つの校医(園医)をしています。あまり診療を休診できませんので、昼休みを利用して健診に出かけています。

 今日も行ってきましたよ。12時30分に出かけて、帰ってきたのは1時45分、お昼ご飯は、行きのタクシーの中で、あんパン2個と牛乳1本。帰ったら歯を磨いてすぐ午後の診療。でした。ア~疲れた。

2012年1月27日(金)
インフルエンザ流行

 毎日寒いですね。1月5日の「小寒」から数えて15日後の1月20日を大寒と言いますね。1年でもっとも寒い時期だそうですが、今日は27日、でもまだまだ寒いです。「冬来たりなば、春遠からじ」とは言いますが、春はまだまだ先のようです。

 今週前半はヒマでしたが、後半になったら、インフルエンザの患者さんが増えてきましたね。年明けからチラホラ出てきたインフルエンザでしたが、学校が始まったらアッという間ですね。仙北、向中野、本宮、太田方面からもそろそろ患者さんが受診するようになってきました。来週~再来週は流行期に入っているでしょう。

 今年の流行タイプはA香港型のようです。A香港型はA(H1N1)2009(3年前の新型)よりも毒性が強いと言われていますが、あまり重症者は見られていないようです。願わくば軽症者だけで終息してほしいです。

 診療所に行くとインフルエンザの検査をしますが、現在、20社以上から検査キットが販売されています。どの製品が精度が高いのか迷ってしまいますね。

 ところで、従来の検査キットはA型とB型の区別はできても、A香港型かA(H1N1)2009(3年前の新型)かの区別はつきませんでした。今シーズンはA香港型とA(H1N1)2009の区別ができる検査キットが発売されましたので、当院ではこのキットを使っています。

 今のところ、当院では、A(H1N1)2009が1名、B型が1名、あとは全員A香港型です。この傾向はしばらく続くでしょうね。先日、B型と診断したお子さんのお母さんから「A型とB型の違いはなんですか?」と尋ねられました。ウ~ン、そうですね。ウイルス表面のヘマグルチニン(HA)、ノイラミニダーゼ(NA)の違い・・・。そんなこと言ったらかえって混乱しますね。ズバリ、「B型はA型より軽いです。」お母さん納得してくれました。もう解熱していると思いますが、少し咳をしていました。インフルエンザに罹ると熱が下がってもいつまでも咳が続くということがあります。特に気管支喘息の持病があるとひどいです。熱が下がっても体調がいまいちの時は再受診した方がよいですよ。

2012年1月25日(水)
夜間診療所

 昨日は夜間診療所に行ってまいりました。巷ではインフルエンザが流行してきたとのこと。さぞや、夜間は混み合っている(とは、マジに思っていませんが)かもしれないと、戦々恐々として出勤しました。案の定、患者さんは少なく、一桁でした。インフルエンザの患者さんは二人、上田中と八幡平市のお子さんでした。7時から11時まで勤務して、10人足らずの患者さんでしたね。ホントにインフルエンザ流行っているの?

 インフルエンザは確かに流行ってきましたが、厳密に言うと、【流行ってきた地域がある】ということです。岩手県、盛岡市の全てで流行っているということではないです。とは言え、毎日インフルエンザの患者さんを診ますし、時間の問題ですね。今日も3人診ました。見前、永井、滝沢、です。今シーズンは盛岡市の周辺からジワジワと広がってきたようですね。

 学校閉鎖の新聞記事を見ると、ものすごく流行っているような気がしますが、学校(学級・学年)閉鎖の基準を知ってますか?インフルエンザの患者が、一クラスの一割になったら学級閉鎖、複数学級で学年閉鎖、複数学年で学校閉鎖。これが今の基準です。ということは、仮に、ある小学校で、1学年30人クラスが3クラスあるとして学校全体で540人、そのうち12人インフルエンザの患者がいれば学校閉鎖です。もう一度わかりやすく言うと、540人中12人で学校閉鎖です。これってどうでしょうね。いろいろ議論のあるところとは思いますが、私はこれで良いと思いますよ。感染拡大を防ぐためには早期の封じ込みが最善です。これによって感染拡大は防げます。しかし、学校閉鎖が解除されると、また流行って、学校閉鎖になります。この繰り返しでしょう。授業の遅れもあり学校の先生は大変だと思います。

 早期の学校(学級・学年)閉鎖は大流行は防げるけど、小流行がダラダラ続くという事になります。この図式はここ数年定着してきました。

 インフルエンザの検査、薬、早期の学校閉鎖、によって感染拡大は確実に防ぐことができるようになりました。あとはいかにして流行を早く終息させるかという課題が残っています。

 昨日、夜間診療所にいらしたお母さんは、「今年はインフルエンザがないものと思っていました。」と、お話ししていました。確かに、ここ数年インフルエンザの流行は早まり、年内に流行していましたが、長い歴史を振り返ると、インフルエンザの流行は年明けが殆どです。これからしばらく流行が続くと思って下さい。

 「今さら、ワクチンしても・・・。」なんて思っていませんか?受験を控えている方々、流行は3月まで続くと思いなさい。ですから、ワクチン接種しなさいよ。長年インフルエンザを診ている医師からの提言です。

2012年1月18日(水)
山田町乳児健診

 インフルエンザはもう流行期に入りましたね。盛岡市内あちこちでインフルエンザの患者さんを診るようになりました。急な発熱、全身倦怠感、全く元気のない顔、周囲にインフルエンザの人がいる。~大体こういう時はインフルエンザに罹ってる場合が多いです。
 検査キットは罹ってもすぐには(+)にでませんが、検査キットだけを当てにしないで、医師の診察を受けて下さい。 

 今日は、山田町へ乳幼児健診(10ヶ月健診)に行ってきました。天気もよく片道2時間ちょっとで着きました。盛岡から山田までは国道106号線~45号線が普通のルートのようですが、今日は106号線から三陸道を抜けて45号線に入りました。この方が宮古を経由しない分少し早く着くようです。震災で45号線が不通になった時、この三陸道が大いに役立ったようです。

 三陸道から45号線に合流するあたりから震災の疵痕が広がっていました。壊れた車は道路沿いに山のように放置されたままに見えましたが、少しずつ撤去されているのだそうです。仮設住宅もいくつか見えましたが全て高台にありました。山田町に入る前に仮設診療所がありましたが、町からは遠く、通院する人は不便を感じているように思えました。

 役場の隣の保健所には10ヶ月児とその保護者が20名ほど受診していました。出迎えてくれた保健師さん達は皆さん明るく元気そうに働いていました。赤ちゃん達も順調に発育していました。今日受診した赤ちゃん達は、ちょうど震災の前後に生まれています。保護者の方達も大変だったでしょうね。でも、みんな震災にめげず一生懸命生活しているように見えました。

 診察しながら、何か励ましの言葉を考えましたが、なんと言ってよいのか言葉が見つかりません。「大変でしたね」としか言えませんでした。赤ちゃんもお母さんも保健師さんも、みんな笑顔、笑顔でした。本当の辛さを経験して「今」があるのでしょうか。母子手帳を見ると、やはり、予防接種が進んでいない赤ちゃんが目立ちました。今後の予定をわかりやすくお話してきました。

 診察後、保健所の窓から町を見ると、殆ど家屋はなく、がれきが除去された荒野だけが広がっていました。保健所は少し高いところにあったので津波を免れたようですが、すぐ下まで津波が押し寄せ、津波が退いた後に出火して付近は焼け野原になったということでした。

 山田町の仮設住宅も高台に造られていますが、まとまった広さの高台がなくあちこちに仮設住宅が散在しているのだそうです。全部で48か所あるそうです。とても不便ですが何とも仕方がないようです。
 来る時見た診療所は町はずれにありました。町から通院するには不便かなと思ったのですが、散在する仮設住宅を考えると、案外、今の場所が良いのかもしれないですね。

 健診終了後、保健所の周囲を見てきました。工事車両が忙しく動いている以外は人影もまばらでした。まだ、復興計画による町作りは始まっていません。
 これだけ被害を被った場所に再び生活空間を造ることができるのだろうか?もしこの場所が不可能ならどこに生活の場を求めればいいのだろうか?黙って見ているだけで涙が出そうでした。

 被災地の現状は、がれきが少々撤去されただけで何も進展はないように見えました。一刻も早い復興計画の実施が望まれます。帰りの車の中で、今の自分がいかに恵まれた環境にいるのかということを実感しました。そして、微力ではありますが、今後も被災地支援を続けなければならないという気持ちでいっぱいになりました。次回は3月4日(日)、陸前高田に行って来ます。

2012年1月15日(日)
裸参り

 今日1月15日は昔の成人の日ですね。1月の第2土曜日が成人の日になってからは、この日は何もないと思っていましたが、今日は裸参りの日でした。

 夕方、街に出たら、偶然、裸参りの集団(?)に出会いました。真冬日でしたが、参加者は寒さをものともせず、元気にお参りしていました(ように見えましたよ。)小さいお子さんもいました。子どもは風の子とは言え、やっぱり寒いですから、カゼをひかないように・・・。

 【裸参り】、または、【裸祭り】と言うそうですが、そもそも、「無病息災」、「五穀豊穣」、「厄払い」などを祈願する行事です。日本全国大体70~80カ所で行われているそうですが、岩手県は最も多く県内8カ所で開催されています。なんとそのうち7カ所が盛岡市内だそうです。そう言えば先週は仙北町でも裸参りしてましたね。

 身を清め、寒さで気を引き締め、願掛けをする。昔ながらの風習ですが、いつまでも続いてほしいです。参加した皆さんは今頃はもう温かい風呂に入ってゆっくりしているでしょう。ご苦労様でした。来年もお願いします。

 インフルエンザは徐々に流行ってきました。毎日1~2人診るようになりました。二戸市や八幡平市ではけっこう流行ってきたようです。

 来週から小学校が始まると本格的流行になるでしょう。裸参りで気を引き締める必要はありませんが、規則正しい生活リズムを守り、マスクをして、手洗い、うがいをキチンと行いましょう。

2012年1月6日(金)
扁桃腺といびき

 年末年始は寒さも少し和らいだ感じでしたが、この頃また寒くなりましたね。1月5日頃を「小寒」といいますが、これから寒さが厳しくなる前とか、寒さが加わるという意味だそうです。「寒の入り」とも言いますね。いずれ、これから1ヶ月くらいが1年で一番寒い時期です。カゼをひかないように体調管理に気をつけましょう。

 今日、今年最初のインフルエンザの患者さんを診察しました。新聞では流行期に入ったような報道をしています。しかし、岩手県内では少し流行っている地域もあるようですが、盛岡市内はまだ流行っていません。

 ここ数年インフルエンザの流行は早くなってきましたが、もともとインフルエンザは年明けから流行することが多いです。年末に流行しなかったからといって今シーズンのインフルエンザが終わったわけではありません。これから流行が始まると思って、しっかり準備(ワクチン)して下さい。

 今日は、扁桃腺について、ご相談のメールをいただきましたので、ご紹介します。扁桃腺の大きいお子さんは、いびき~口呼吸~無呼吸などよく見られます。その対策はどうしたらよいか・・・。と言うようなお話しです。

K.Kさんからの


 <子どものいびきについて>

 いつも大変お世話になっております。最近は元気でお世話になることがないのでメールにて失礼します。

 件名に書いたとおり、先月あたりからいびきをかくようになり心配しております。以前から扁桃腺が大きいということは先生から伺っておりましたが、それ以前は特に気になるようないびきをかくことなく過ごしておりました。

 先月、声が出ないくらいに喉を傷めたことがありました。喉を傷めた原因が風邪なのか騒ぎすぎてのものなのかはよくわかりませんでしたが、その時は特に熱も上がることがなかったので受診はしませんでした。そのうち調子が良くなればと思い経過観察しておりましたが、あまりにも酷いので。

 体の成長により改善されるということだったと記憶しておりますが、相談を兼ねて一度お伺いしたほうがよろしいでしょうか。

 お忙しいところすいませんがよろしくお願いします。




 メールありがとうございます

 扁桃肥大といびきの問題ですね。カルテを見ましたが、確かに扁桃肥大ありますね。扁桃肥大による症状はいろいろありますが、年令が進むにつれて扁桃腺は小さくなる場合も多く、大体は経過観察です。となると、問題は「小さくなるまで、何もしないでもよいのか?果たして本当に小さくなるのか?」と言うことですよね。

 扁桃は、外から入ってくるバイ菌を体内に入らないように守ってくれる関所みたいな組織です。口をア~んと開けて見えるのが『口蓋扁桃』、もっと喉の奥にあって外からは見えないのが『咽頭扁桃(アデノイド)』です。他にもいくつかありますが、扁桃と言えばこの二つを指すと思って良いでしょう。本来、生体防御のために働く組織ですが、時として有害となることもあり、治療が必要となることもあります。その場合、大体3通りの場合があります。

1.何回も扁桃腺炎を繰り返す場合。
 肥大した扁桃はバイ菌が着きやすく、時として、バイ菌の巣になってしまうこともあります。一般に1年間に8回以上扁桃腺を繰り返す場合は手術が勧められています。

2.睡眠障害が見られる場合。
 大きくなった扁桃は仰臥位(仰向け)になると、のどに向かって下がってきますので、気道をふさいでしまいます。そのため空気の流れが悪くなり、いびき、無呼吸、口呼吸などが見られます。仰臥位では眠れず、横向けやうつ伏せで寝ることが多いです。

 子どもの場合は大人ほど無呼吸が見られることはありませんが、浅い睡眠になっている場合が多く、その結果、朝の寝覚めが悪くなったり、日中に集中力を欠いてボーとしてしていたり、学力が低下したり、情緒不安定となり攻撃的であったり、はしゃぎすぎたり、などの症状が見られます。

 また、夜間の不眠は夜尿の原因になっていることもあります。さらに、扁桃肥大のため食が細くなり成長障害が見られることもあります。この様なお子さんでは、扁桃腺を取った後に、夜尿が改善したり、食欲が旺盛となってドンドン体重が増えてくることを経験しています。

3.IgA腎症がある場合。
 IgA腎症は聞き慣れない病気と思いますが、子どもでも大人でも、もっともよく見られる慢性の腎臓病です。多くの場合、無症状で学校検尿や職場健診などで、血尿、タンパク尿などで発見されます。良好に経過する疾患と言われていましたが、最近は進行性に重症の腎障害をきたすこともわかってきました。詳細は省きますが、このIgA腎症と扁桃肥大は関わり合いが深く、成人では年単位での経過観察で、扁桃腺を手術して取った方が取らない方よりも腎障害が改善したと報告されています。

 以上より、上記1.~3.のような症状があれば、扁桃腺は手術して取った方がよいと思います。おそらく一番多いのは2.の場合だと思います。しかし、実際にどの程度の症状があるのか、ちょっと見ただけでは判断しかねます。

 また、小児科医が手術を勧めても実際に手術をするのは耳鼻科医です。年令の問題も関わってきます。特に2才以下では術後に呼吸器合併症や出血も見られやすく、手術の必要性がある場合は限られてくると思います。

 私はいくら扁桃肥大があるからと言って、すぐに手術を勧めることはありません。確かに自然に小さくなることが多く見られますが、全ての人が小さくなるわけではなく、成人になっても大きなままの人も多いです。
 
 何回か診察をしながら、お子さんの様子や、保護者のお話から、症状の程度~手術の必要性を考えていきます。

 ところで、扁桃肥大があるお子さんはアレルギー性鼻炎や副鼻腔炎(蓄膿症)を合併していることも多く、その治療をすることによって、いびきなどの症状が改善することもあります。

 しばらくお子さんを見る機会がありませんでしたので、一度、扁桃腺の状態や症状について診察したいと思います。近々受診していただければ幸いです。では、お大事にして下さい。

2012年1月1日(日)
復興元年

 あけましておめでとうございます。今日は雪ですね。午後から八幡宮へ初詣に行って来ました。雪の中おおぜいの人達が参拝していましたね。今年は復興元年です。私もまず、被災地の復興から祈願してきました。

 先輩からいただいた年賀状に、「斧をふるって巨木を削り、この山間にありて作らんかな。ニッポンの背骨岩手の地に、未見の運命を担ふ牛の如き魂の造形を」(高村光太郎の「岩手の人」より)と書かれていました。黙々と頑張る「岩手の人」の力を信じて、自分も支援していきたいと思っています。

 今月18日に山田町へ健診に行って来ます。JMAT(災害医療チーム)が退去した後、岩手県医師会や岩手県小児科医会から、被災地の健診・診療の要請がありました。アンケート形式で被災地へ行ける日程を決めるわけですが、私の場合、土・日、水の午後を希望していましたので、今回山田町へ派遣されることになりました。今年が復興元年になるよう少しでも役に立ちたいと思います。