診察室便り

2011年12月31日(土)
大晦日

 今年も余すところ数時間となりました。3月11日の東日本大震災が全てのような一年でした。まだ、復興も半ばで被災地の方々はご苦労されていると思います。来年が少しでも良い年になるよう祈願します。

 毎年、最後の診療日を終えると、ホッとします。「無事、是名馬」はアントニオ猪木が言った言葉ですが、実感します。毎日が平凡な日々でも、大きな災いがないと言うことに感謝します。

 今年は12月30日~1月3日まで休診しますが、診療がなくても、たまりにたまった残業があります。これがなかなか大変です。提出書類の作成、棚卸し、学会誌や文献の整理、患者さん向けのリーフレットの作成、古くなった資料の処分、等々、昨日も今日も、残務整理に精を出してきました。疲れました。でも、今年のことは今年のうちに済ませないと、スッキリしませんよね。

 【千年に一度の年】が、もうすぐ終わります。新年は辰年です。【昇竜邁進】のような、素晴らしい年となってほしいです。

2011年12月25日(日)
乗り物酔いの薬

 この頃急に冷え込んできました。ホワイトクリスマスらしくて良いですが、寒いですね。先週は不覚にもカゼをひいてしまいました。別に熱もなく、咳もなく、全身倦怠感もなく、症状は「声が出ない」だけでしたが、ひどかったなア~。患者さんと話ができませんモンね。先週火曜日、水曜日に受診された方には聞きにくい声でご迷惑かけました。申し訳ありませんでした。

 昨日、クリスマスイブは夜間診療所に出勤してきました。土曜日にしては急患もあまり多くなく、やはり、お家でクリスマスですね。私は夜間診療所の勤務の時、いつもおやつを買っていきます。診療の合間に、看護師さんや事務員さん達と、チョット一服するんですよ。
 昨日はケーキ屋さんでショートケーキを買っていきましたが、クリスマスケーキの予約でしょうか、おおぜいの人が行列をなしていました。駐車場の整理をしているおじさんに聞いたら、「今日は朝からスゴイ混雑だ~」と言ってました。昨晩はサンタさんも忙しかったでしょうね。

 年末年始は人の移動も多く、必然的に乗り物に乗る機会も多くなります。今日は乗り物酔いの薬について、ご相談を受けましたのでご紹介します。

M.Oさんからの


 いつも大変お世話になっております。

 年末のご多忙中、大変恐縮ではございますが、以前より気にかかっておりました件につきまして、お教え頂きたく、ご連絡させて頂きました次第です。

 お盆や年末年始等々、親戚のお宅へご挨拶へお伺いしたり…など、遠出をする機会が少なくないかと思うのですが、そういった時に、私自身、車酔いをするタイプの人間でしたので、予め、いわゆる『酔い止め薬』を飲むのですが、よく説明書に『他の薬を飲んでいる方は使用を避けてください』的な記載があるのを目にします。

 例えば、今時期ですと一般的な《風邪薬》や《アレルギーの薬》、今、娘が処方を頂いております。《オノン》や《クラリチン》等のお薬を服用している場合、やはり、市販の『酔い止め薬』の服用は避けた方がよいのでしょうか?それとも、上記のような内容のお薬の場合は併用が可能なのでしょうか?

 もしくは、小児科や内科等で、処方されている常用のお薬に支障のない『酔い止め薬』的なものを処方して頂く事は可能なのでしょうか?

 娘も最近、車酔いをするようになって参りまして、《オノン》や《クラリチン》等、比較的長期のお薬の服用をする事も少なくなかったので、一般的な知識として、『市販の酔い止め薬』と『病院処方のお薬』との上手な付き合い方をお教え頂きたくご連絡申し上げました次第でございます。

 年末のご多忙中、大変恐縮ではございますが、御返答を賜れますと幸いに存じます。お忙しい折、先生も体調など崩されませんよう、ご自愛下さいませ。




 メールありがとうございます。

 乗り物酔いは不愉快なものですが、時々なることもありますね。薬の前にまず、なぜ乗り物酔いになるのか?どうすれば酔わなくて済むのか?と言うことから考えてみましょう。

 一般に乗り物酔いは、車や電車などに乗った時、いつもとは違うスピードを感じたり、体の位置の違い~揺れを感じたりします。それは、目からであったり、耳からであったり、消化管からであったりします。

 例えば、自分の乗っている電車のとなりで停車中の電車が動いた時、その電車が動いてるにもかかわらず、自分の乗っている電車が動いたように感じる事があると思います。これは、目から入ってくる情報を脳が正しく判断できないために見られる現象です。

 また、自分で運転すると酔わないのに助手席にすわると酔う人もいます。これは、自分で運転している時のイメージが脳から消えないため、予測した情報とのずれを脳が修復できないために見られる現象です。

 このいつもと違う感じを調整してくれる神経を自律神経と言いますが、乗り物酔いではこの自律神経も調子が悪くなって、吐き気や動悸が見られたりします。

 市販されている代表的な乗り物酔いの薬をチョット見てみました。トラベルミンチュロップの主成分は、d-クロルフェニラミンマレイン酸塩とスコポラミン臭化水素酸塩水和物の二つですね。

 d-クロルフェニラミンマレイン酸塩は抗ヒスタミン剤といいます。嘔吐は、脳から放出されるヒスタミンという物質が、嘔吐中枢を刺激することによって起きます。抗ヒスタミン剤はこのヒスタミンの働きを抑えて嘔吐を鎮めます。

 スコポラミン臭化水素酸塩水和物は抗コリン剤といいます。自律神経の働きを高めたり、消化管の緊張を和らげて嘔吐を抑えます。他の乗り物酔いの薬も似たり寄ったりのようですね。

 抗ヒスタミン剤や抗コリン剤は、医療機関でもよく処方されます。ヒスタミンは、くしゃみ、鼻水、かゆみなどを引き起こしますので、それを抑える抗ヒスタミン剤は、カゼ薬やアレルギーの薬としてよく処方されています。また、抗コリン剤は、消化管の調整だけでなく、気管支拡張剤として気管支喘息にも処方されるお薬です。

 早い話、乗り物酔いの薬の成分は医療機関でよく処方されるカゼ薬やアレルギーの薬と同じ成分と言うことです。ですから、ご質問にありました説明書に『他の薬を飲んでいる方は使用を避けてください』と言う記載はごもっともなのです。クスリがダブル心配があると言うことですよね。

 【市販の酔い止め薬』と『病院処方のお薬』との上手な付き合い方について】は、薬局の方に今飲んでいるお薬を話して、ダブりがないか、併用してよいか、確かめてから購入すれば良いと思います。

 ご質問にありました。オノンはロイコトリエン拮抗薬です。抗ヒスタミン剤でも抗コリン剤でもないので一緒に飲んで良いです。クラリチンは抗ヒスタミン剤ですから、一緒に飲まない方がよいと言うことになりますが、車に乗る前だけに追加して飲むなら大丈夫のように思います。

 医療機関で処方する乗り物酔いの薬も、やはり、抗ヒスタミン剤や抗コリン剤です。私も時々処方しています。クラリチンなど同型薬剤を常時内服している場合でも、たまに乗り物に乗る時だけ飲むなら大丈夫と思います。しかし、知らずに飲んでたらけっこうな量になると言うこともありますので、乗り物酔いの薬は、頓用とし、常用しないことです。

 ところで、乗り物酔いは、薬に頼らなくても案外おさまることも多いです。誰でも簡単にできる予防法をあげてみましたので参考にして下さい。

・睡眠を十分にとり、体調を整える。
 睡眠不足や疲労している時は自律神経も調子が悪いですので、乗り物酔いしやすくなります。また、満腹や空腹でも乗り物酔いは起こりやすくなります。乗る直前の食事は控えめにして、移動中に手軽に食べられるおやつや飲み物などを用意しておきしょう。

・進行方向をまっすぐ見る
 乗り物の中では、あまり横を見ないで、進行方向を見るようにしましょう。また、カーブに合わせて体を傾けるなど、目や耳、筋肉の動きを一致させるのも効果的です。窓から外の景色を見る時は近くの景色は瞬間的に変化して目が疲れますので、近くは見ないでなるべく遠くの景色を眺めるようにしましょう。疲れたら目を閉じて下さい。目からの不要な情報が入ってこなければ症状は起きません。

・乗り物の中で読書やゲームをしない。
 乗り物の中での読書やゲームをすると、文字や画面のチラつきが乗り物酔いを助長します。また、乗り物に乗る時は位置も大切です。バスなら前輪と後輪の中間、船なら中央の席、飛行機は主翼に近い席が振動が少なく、酔いにくい席です。

・リラックスした服装で乗る。
 当たり前の事ですが、きつい衣服は体を圧迫します。乗り物に乗る際は。お腹を圧迫するような服装は避けましょう。ガソリンやタバコの煙も乗り物酔いを助長します。時々窓を開けて換気をすればよいです。

・酔い止めの薬を飲む。
 ここまで頑張っても症状が見られるようなら酔い止めの薬を飲みましょう。
 過去に乗り物酔いをした人は、その記憶がストレスとなって乗り物酔いを感じる場合が多いようです。自分は乗り物酔いするんだとあきらめてしまったり、家族や周囲の人がそう思い込ませたりすると、必要以上に酔ったりします。いわば自己暗示にかかっている状態です。こういう場合は暗示を解いて自信をつけさせることが必要です。

 子どもの頃は酔いやすくても、必要に迫られていろんな乗り物に乗ることによって慣れの現象が起こり、年をとるに連れて、酔わなくなります。

 お子さんの場合も、すぐ、乗り物酔いの薬を飲むよりも、いつも飲んでいるクラリチンを「この薬は乗り物に乗る30分前に飲むと聞くから」と言って、いつもとは違う飲み方をすれば効果があるかもしれません。まずは、リラックスです。

 酔うからあまり乗り物に乗らないではなく、薬の助けを借りてでも乗り物に乗り、その成功でもたらされる自信と経験を積んで下さい。それが、酔わないことにつながります。乗り物酔いの薬を上手に使って、行動範囲をどんどん広げて下さい。

2011年12月19日(月)
ノロウイルスの検査

 昨日は、休日当番医でした。通常の休日当番医と年末年始当番医は、別ローテーションで回ります。通常の休日当番医は3ヶ月に1回くらい、年末年始は3年に1回順番が来ます。昨年、年末年始当番医(12月31日)をしましたので、来年は年末年始は当たらないはずでしたが、どうも、人手不足のようで、来年は1年早く年末年始の当番医になる予定です。いやはや何とも仕方ないですね。しかし、これも世のため、人のため、スタッフ一同頑張ります。

 昨日は、嘔吐、下痢のお子さんが多かったですね。最近はみんな丈夫になり、点滴をする機会も少なくなりましたが、昨日はけっこう点滴しました。帰る頃は元気な笑顔になって帰っていきました。もう今日は大丈夫でしょう。
 ところで、嘔吐、下痢というと、まず感染性(急性)胃腸炎を考えます。季節柄ただいま流行中ですね。

 時々、お子さんを連れてくる方で、「身内がノロウイルスに罹りました。この子も心配なので検査して下さい。」とお話しされる方がいます。と言うことで、今日は、【ノロウイルスの検査】 この話題に触れてみました。

 ノロウイルスは今が流行時期です。嘔吐、下痢が見られる多くの人達が、おそらくノロに感染していると思われます。ところが。ノロウイルスの検査は保険適応外ですので、自費で検査しなければなりません。ですから殆どの人は検査してないはずです。

 でも、「ノロと言われた。」と言う人達、後が絶えません。で、「検査しましたか?」と聞くと、「何も検査していません。症状からロタと言われました。」と言う調子です。ノロも、ロタも、アデノもみんな症状は同じです。診ただけでは診断できるはずがありません。ろくに検査もしないでノロと診断するのはどうかと思います。

 なぜなら、ノロと診断されれば、例えば、飲食業に従事している人達は自宅待機を命ぜられることが多々あります。そのために、収入が減ったり、極端な場合は自宅待機中にリストラされることもあるようです。本当にノロに感染しているかどうかキチンと検査すべきですよね。ただし、正確にわかる検査でしたらね。

 保健所は集団発生が疑われれば、検査してくれます。これを行政検査と言います。感染拡大防止のために行う検査ですが、一人、二人では行ってくれません。チョット融通が利かないように思います。実際に感染拡大してからでは遅いでしょうにね。

 前述したように個人で検査するには保険適応外(自費)です。何となくおかしいですよね。早く保険適応になればいいですけど・・・チョット問題も?

 ところで、保健所で行う検査はPCRと言って遺伝子を調べる検査ですので、とても正確です。しかし、一般診療所で行われる保険適応外(自費)の検査は、あまり精度が高くないようです。つまり、『ノロに感染しても陽性(菌あり)にでない場合も多い』ようです。これを偽陰性といいますが、実際に感染していても陰性(菌なし)とでれば、検査で陰性(菌なし)だから、大丈夫と思って、職場で多くの人に移してしまう心配もあります。不正確な検査をしたばっかりに、かえってあちこちで感染を広めてしまう事にもなりかねません。

 厚労省が保険適応にしないのは、この辺の事情もあるかもしれませんね。そういえば、インフルエンザ検査も発売当初は保険適応外でした。

 保健所で行っているPCRを自費で行うには2万円くらいかかります。保険適応外ということは、「行き過ぎた医療」という意味でもあります。結局、ノロウイルスが検出されたとしても特別な治療法があるわけではありません。カゼにかかった時、どんな種類のカゼ(ウイルス)か調べるのと同じようなものです。

 ノロウイルスかどうかを確認する検査を受けるより、栄養をつけ水分補給をし、安静にしているのが最善策ですよ。

2011年12月9日(金)
インフルエンザ発生!

 暖かな師走かと思ってましたが、今朝からド~ンと冷え込んできましたね。明日はもっと寒いそうです。なんとか、年内は発生してほしくないと思ってたインフルエンザでしたが、そろそろ出てきましたね。12月8日、10才男子がA型インフルエンザに罹りました。どうも仙台市でもらってきたようです。

 今、日本国内では沖縄県と宮城県でインフルエンザが流行の兆しを見せています。岩手県も時間の問題でしょうね。毎年のことですが、年内にはインフルエンザワクチンの接種を済ませましょう。

 今日はインフルエンザワクチンの接種回数についてご質問を受けましたのでご紹介します。

M.Iさんからの


 インフルエンザの予防接種の件でメールしました。

 ネットで「今年から量が増えたので4歳ならば1回の接種でOK」というような書き込みを見ました。うちは1月で4歳なのですが、1回でもいいものでしょうか??

 前回に接種翌日から発熱したことと、接種部位が腫れた為、もし1回でも大丈夫ならば今回は見送ろうかなと思ったのですが・・・

 よろしくお願いします。




 メールありがとうございます。12月8日に、盛岡市内でもインフルエンザの患者さん(10才男子)が発生しました。仙台で感染してきたようです。本格的な流行は年明けになると思いますが、そろそろですね。

 おたずねの件はワクチンの接種量と回数についてですね。インフルエンザワクチンの接種回数は昔は1回だったようです。しかし、発熱のような副作用が多かったので2回に分割されたと聞いたことがあります。その際、子どもはさらに副作用を減ずるために接種量が少なく設定されたようです。有効性よりも安全性が優先されたのでしょう。

 実際に、当時のワクチンは発熱が多かったのですが、現在のワクチンは当時とは全く別な製法で作られたワクチンです。その結果、発熱のような副作用は少なくなりました。しかしながら、ワクチン接種量は昔のままでした。

 B型肝炎、日本脳炎、インフルエンザ以外のワクチンは成人も小児も接種量は同じです。それに対してインフルエンザワクチンは年令別に事細かに設定され、乳幼児ほど接種量は少なくなります。インフルエンザワクチンの効果がイマイチなのは接種量にも関係していると思います。

 そのような事から、今年は小児の接種量が増えました。増量した結果、効果があるかどうかは今後の検討を待たねばなりませんが、今年の(2回)接種量が標準的接種量だと思いますので、できるだけ、2回接種された方がよいと思います。

 補足です。インフルエンザワクチンは毎年接種しますから、前年と同じような株のインフルエンザが流行するのであれば、前年にワクチン接種した人やインフルエンザに罹った人なら、今年は不要かもしれません。

 インフルエンザワクチンには、新型インフルエンザ(H1N1)2009、A香港型、B型の三種類の株が入っています。

 新型インフルエンザ(H1N1)2009は、一昨年登場して以来、殆ど変化していませんので、新型に対しては、昨年、一昨年ワクチンを接種したり、罹った人は、1回接種あるいは接種しなくても良いかもしれません。
 
 一方、 A香港型は毎年微妙に変化していますので、毎年ワクチンを接種する必要があります。今のところ、沖縄県も宮城県もA香港型が殆どを占めています。ということを考えると、今年はA香港型が流行しそうということになります。ですから、やはり、2回接種が望ましいと思います

 B型に対しては、抗原量が少なく、効果は低いと思われます。しかし、B型はあまり重症化することはなく、インフルエンザワクチンはA型予防のためにあると思われた方が良いでしょう。

 接種翌日の発熱、接種部位の腫れは、あまり気にしなくても良いと思いますが、腫れの程度が強ければ、2回目接種は半量で行えばよいです。

2011年12月4日(日)
師走

 今年もまた12月(師走)になりました。師走の語源はいろいろあるようです。よく言われるのが、昔は正月もお盆と同じように祖先の霊をともらう月で、和尚さんが読経のため忙しく走り回ったということのようです。しかし、諸説ありますね。

 例えば、
・「年が果てる」という意味の「年果つ(としはつ)」が変化した説。
・「四季の果てる月」という意味の「四極(しはつ)」からとする説。
・「一年の最後になし終える」という意味の「為果つ(しはつ)」からとする説など。

 何はともあれ一年の締めくくりの月です。3月11日の東日本大震災という未曾有の惨劇の年でした。多くの課題を背負いながら一年が暮れていきます。

 従来インフルエンザの流行は年明けに多かったのですが、ここ数年流行が早まってきました。今シーズンの岩手県ではまだ、あまりインフルエンザの患者さんはみられていないようです。しかし全国的にはジワジワと流行が始まってきています。

 厚生労働省によると、11月14~20日のインフルエンザ定点当たり報告数(注)は、0.21、報告数は1012人でした。また、沖縄に続き宮城も流行指標(1.00)を上回りました。

 定点当たり報告数を都道府県別に見ると、沖縄が1.98で最も多く、宮城の1.57、愛知の0.66、徳島の0.58、岐阜の0.57、兵庫の0.43となり、35都府県で前週よりも報告数が増加していました。定点が10を越えると注意報がでます。まだ、余裕がありますが、いよいよ冬本番ですね。

 品不足が心配された今年のインフルエンザワクチンですが、今のところ円滑に供給されています。これから年末にかけて盛岡市内でも流行が始まるかもしれません。12月中旬までにはインフルエンザワクチンの接種を済ませるようにしましょう。

 (注)「定点当たり報告数」とは、ある感染症(この場合は、インフルエンザ)について、いくつかの医療機関を定め(これが定点)、そこからの報告数を合算し、報告した医療機関の数で割ったものです。週単位、月単位で表示します。

 具体的な例を挙げれば、例えば、11/14~11/20の間に、インフルエンザで受診した患者さんが、A診療所:2人、B診療所:4人、C病院:6人いたとすると、11/14~11/20の1週間のインフルエンザの「定点当たり報告数」は、(2+4+6)/3=4(人)となります。

 「総患者数」では人口の多いところと少ないところでは差が出てしまいますので、実際どちらの地域が流行の規模が大きいのか、わかりません。「定点当り報告数」は、ほかの地域や全国レベルでの流行状況を比較する場合などに便利です。報道では、「定点当り報告数」といったり、省略して単に「定点」と言ったりしています。

2011年11月27日(日)
ほっぺたの腫れないオタフクかぜの診断は?

 だんだん冬らしくなりました。天気がカラッと晴れるとより寒さが身にしみます。

 相変わらずマイコプラズマ肺炎のお子さん多いですね。乳幼児は少ないですが学童によく見られます。マイコプラズマは潜伏期間が2~3週間と長いですので、学校のような集団生活の場では、小さな流行がダラダラと続くんでしょうね。

 急性細気管支炎もまた、増えてきました。一時少なくなってきたので安心していたら、先日は1日に3人の赤ちゃん(RSウイルス2名、RS以外1名)を入院紹介しました。もう良くなって退院していると思いますが、まだまだ要注意です。

 昔から「RSが流行っている時は、インフルエンザは流行しない。」と、よく言われます。小児科医なら一度は耳にしたことあると思います。なぜ?はっきりした根拠はわかっていませんが、一昨年、新型インフルエンザが流行った時も、季節性インフルエンザは殆ど見られませんでした。もしかしたら、ウイルス同士で一緒に流行しないように棲み分けしているのかもしれませんね?

 今日は、「インフルエンザワクチン1回目接種後にオタフクに罹ったかもしれない。2回目のインフルエンザワクチンをどうしようか」というご質問をいただきましたので、ご紹介します。水痘は大体一目でわかりますが、オタフクは頬が腫れないことも多く、免疫の検査をしないとわからないこともあります。感染症の免疫検査についても少し触れたいと思います。

H.Sさんからの


  いつもお世話になっております。お忙しい中、恐縮ですが、質問があります。

 11月18日木曜日に私はキプレス錠とムコサールーLカプセルを処方していただきました。毎晩、薬を飲み様子を見ていましたが、昨日の23日早朝より頬周辺の痛みと耳周辺の痛み(一番痛むのは耳下)の症状が出てきました。呼吸は落ち着いたのですが、鼻の奥で詰まっている感じと鼻声が治らない&上記の症状がありましたので、耳鼻咽喉科にて診ていただきました。

 その際、おたふくかぜの疑いがあり、血液検査を実施しました。結果が出るまで4~5日必要とのことで、薬を処方され帰ってきました。

 私自身、小学校の時におたふくにかかったことがあります。その状態で、大人になった今、再度おたふくにかかることはあるのでしょうか?

 血液検査でおたふくの抗体がない場合は、免疫が消去したと考えていいのでしょうか?

 別視点で考えると、抗体が出た場合も、昔の免疫なのか、今回かかった免疫なのか、わからないですよね?

 その場合、子供たちのインフルエンザ予防接種2回目はあきらめた方がよいでしょうか?(予診票におたふくかぜの病気の方がいたか?という欄があるので…) 子供たちは11月5日土曜日に1回目の予防接種をしています。

 読みにくい文章で大変申し訳ございませんが、ご回答いただければ幸いです。




 メールありがとうございます。体調は回復されたでしょうか。

 流行性耳下腺炎(オタフク)に感染しているか(したことがあるか)?と言うことと、インフルエンザワクチン2回目をどうするかと言うことですね。

 まず、オタフクの検査ですが、免疫(抗体)を調べれば罹っているかどうかはわかります。オタフクの免疫検査は何種類かありますが、IgMとIgGという抗体を検査することが多いです。

 IgMは感染直後から短期間出現し、時間が経てば消失します。これに対して、IgGは感染直後には見られず、感染後2~3週間くらいしてから出現して、生涯持続的に検出されます。

 つまり、感染していれば、感染直後はIgM(+)IgG(-)。感染後(大体4週間以上経過)はIgM(-)IgG(+)という具合になるはずです。しかし、このようにクリアカットにわかることは少なく、特にIgMは検出されないことも多く、他のウイルスに感染しても検出されたりして、あまり当てになりません。また、IgGは感染していれば検出されますが、感染しても検出されないことがあります。なお、IgMとIgGはどちらか一方しか保険適応になりません。

 通常オタフクは1回しか罹りませんが、時々、2~3回罹る人がいます。IgG抗体は検出されますが、罹る度に IgG抗体の上昇が見られます。

 というわけで、感染がいつ頃あったのか、検査は感染からどのくらいたった時点で行われたのか、IgMとIgGのどちらを調べたのか、等々によって抗体検査の解釈はかわります。

 以上より、次のように考えます。

・小学校の時におたふくにかかったことがあります。その状態で、大人になった今、再度おたふくにかかることはあるのでしょうか?

 → 時々、2~3回罹る人がいます。しかし、オタフクに再感染するよりもオタフク以外のウイルス(細菌)による反復性耳下腺炎の方が多いです。

・血液検査でおたふくの抗体がない場合は、免疫が消去したと考えていいのでしょうか?

 → IgMとIgGとでは解釈が違います。IgM(-)は最近感染していない。IgG(-)は今までに一度も罹ったことがない。(ただし、稀ですが罹ったけども抗体ができていない場合があります。) オタフクに罹った場合、一度できたIgG抗体が消失する事はまずありません。

・別視点で考えると、抗体が出た場合も、昔の免疫なのか、今回かかった免疫なのか、わからないですよね?

 → IgM(+)は最近感染した。IgG(+)は今までに罹ったことがある。IgG(+++)は再感染の可能性あり。です。

・その場合、子供たちのインフルエンザ予防接種2回目はあきらめた方がよいでしょうか?(予診票におたふくかぜの病気の方がいたか?という欄があるので…) 子供たちは11月5日土曜日に1回目の予防接種をしています。

 → 11月5日に1回目を接種していますから、2回目は11月19日~12月3日になります。オタフクの潜伏期間は2週間チョットですからお母さんの症状が出た日から3週間経ってお子さん達にオタフクが発症しなければ、お子さん達にはかかっていないと思って良いでしょう。
 もし、その前にインフルエンザが流行してきたら、すぐ2回目を接種した方がよいです。仮にオタフクの潜伏期間にワクチンを接種しても健康被害が見られることはありません。チョット免疫ができにくいかもしれないと言う程度です。

 補足ですが、一般に感染症罹患後は、その感染症の影響が残っており他のワクチン接種しても効果が不十分な場合もあります。そのため一定期間おいてワクチンを接種します。オタフクや水痘は、一般的には4週間あけますが、2~4週間おけば接種できます。

 この間隔は罹った感染症の強さにもよります。例えば、水痘はキチンと薬を内服すれば5日くらいで治癒します。昔は水痘に効く薬がなかったので水疱がカサブタになるまで、1週間以上かかりました。この様に軽症ですむか、重症になるかによって免疫の回復には差があるわけですから、2~4週間という幅を持って考えるわけです。

 今のようにそろそろインフルエンザが流行りそうなときに、悠長に4週間も待つのもどうかと思います。私は、オタフクや水痘に罹った場合、、今の時期は2週間あけてインフルエンザワクチンを接種してます。

2011年11月18日(金)
インフルエンザ罹患後の登校基準は?

 来日中のブータン国王が今日は福島県相馬市を訪れました。国王は相馬の小学生に対して「ボクは、ドラゴンを見たことがある。君たちの心の中にいる。そして、その龍は、君たちの経験を食べて大きくなる。この震災を経験として、龍を大きく育てて欲しい。」とお話しされたそうです。感激しますね。なんと良い人なんだろう。

 しかるに、16日夜、一川保夫防衛相は、ブータン国王夫妻を歓迎する宮中晩餐会を欠席し、同僚議員のパーティーに出席したと!その席上で「ブータン国王が来て宮中で催し物があるが、私はこちらの方が大事だ」と挨拶したそうな。ア~日本の恥だ。これで国家防衛が出来るのか。防衛相と言えば自衛隊のトップだろう。東日本大震災で献身的に活躍してくれた自衛隊員達にも申し訳ないと思わないのか。ところで、一川さん、オバマや胡錦濤が来ても同じ事を言えるかな?

 一関市の小学校でインフルエンザによる休校があったようです。盛岡市内ではまだインフルエンザは見られていませんが、そろそろですかね。

 ところで、インフルエンザに罹った後、どのくら学校を休めばよいかという基準はあるようでないようなものです。一般的には「解熱後2日間」経てば登校できるということになっていますが、今年はその基準が少し変わりそうです。それは、インフルエンザに罹ると大体1週間くらいは体内にインフルエンザウイルスが存在しています。つまり、「発症後1週間は、まだ他人に移す可能性を持っている」ということに基づきます。

 そもそも、解熱後2日間で登校という基準は、タミフルやリレンザのようにインフルエンザに効く薬のない時代の基準です。当時はインフルエンザに罹ると、効く薬は何もありませんので、発熱にジッと耐えて、免疫が上がるのを待つだけでした。タミフルやリレンザを使わなければ、大体4~5日間くらいは発熱が続きます。そこでやっと熱が下がって2日くらいすれば、発症から大体1週間、解熱後から2日間、その頃には体内からウイルスが無くなっているので登校可能と言うことでした。

 ところが、現代は、タミフルやリレンザを使えば1~2日間で熱が下がります。それから解熱後2日間でも発症から1週間経っていないのでまだ体内にインフルエンザウイルスが存在しています。ここで登校すると他人に移してしまうことになります。そこで、熱が下がってもタミフルやリレンザを5日間キチンと内服(吸入)するように指導しながら登校許可しているのが現状です。軽症インフルエンザならこれでもよさそうですが・・・。

 タミフルやリレンザが使われるようになって今年で10年になります。この10年間ズ~と、昔の基準で登校時期が決められていましたが、一昨年の新型インフルエンザ流行を機に見直しが行われるようになりました。

 「発症後1週間休校」というのは確かに感染を広げない効果はありますが、学校や生徒側の立場から考えてみると、授業は遅れるし、家でブラブラして体をもてあます児童も増えそうです。園児(幼稚園・保育園)の場合は、働くお母さんが1週間休業しなければなりません。感染拡大予防と社会生活のバランスを考える必要があります。

 新型インフルエンザ流行時は発症後1週間休みました。それは新型がウ~んと重症かもしれないと心配されたからです。実際はそんなに重症ではなかったわけですから、昨年は解熱後2日間で登校するようになりました。

 新しい病気は未知の病気です。重症か軽症かわからなければ、やはり、重症疾患を疑って基準を作ります。今シーズンのインフルエンザも実際に流行しなければ重症か軽症かわかりません。その時々の疾患の性質を見極めながら、臨機応変に対応していかなければなりません。

2011年11月17日(木)
市民公開講座

 一昨日、前もってお知らせした盛岡市民公開講座「放射線の人体影響について-子どもの健康影響を中心に-」が、県民会館で開催されました。演者は広島大学原爆放射線医科学研究所教授の田代 聡 先生でした。

 会場の中ホールは満員でしたね。このホームページのお知らせを見て聴講を申し込んだという人もいました。1時間半の講演でしたが、わかりやすいお話しでした。結論として、現在の岩手県では「放射線の人体影響について」あまり心配しなくてもよさそうです。

 一方、田代 先生は、原爆投下(被爆)された広島や長崎は復興したが、原発事故(被曝)のチェルノブイリはまだ立入禁止区域が多い。ということから、福島県の将来はかなり長期にわたって観察していかなければならず、必ずしも楽観できないともお話しされていました。原爆と原発は違うんですね。

 福島県や三陸沿岸の人達の苦しみを思えば、盛岡市にいる私達は苦労のかけらもありません。被災地復興のため、出来ることはなんでもしましょう。

 同じく、一昨日、日本vs北朝鮮のサッカーの試合が北朝鮮の平壌で行われました。あとから、ニュースで見ましたが、マア~、スゴイ試合だったようですね。アウエーの洗礼どころではなかったようです。5万人収容のスタジアムに、日本人はわずか150人。北朝鮮は、国旗、メガホン、太鼓が自由に使えるのに、日本は、日の丸、鳴り物、横断幕の3点セットは持ち込み禁止。自由に立ち上がることも出来ない。選手の宿泊したホテルでは守衛による監視もあったようですし、怖くて眠れなかった選手もいたようです。

 すでにアジア予選の結果は出ているのに、わざわざ北朝鮮まで行って試合する必要があったのかね?スポーツに国境はないとはいえ、同じ日本人が拉致された国へサッカーの試合をしに行く。それを応援に行く。おまけに観光までしてくる。拉致被害者家族会の心情を思うと、何となく私には解せない。一刻も早い拉致問題の解決が望まれます。

2011年11月13日(日)
夜間診療所

 昨日は夜間診療所の当番でした。大体1ヶ月に1~2回順番が回ってきます。月2回の時は平日、月1回の時は土・日が多いです。内輪の話ですが、比較的若い年令の人が土・日にあたりますね。自分もまだ若い方みたい?

 今の時期にしてはあまり夜間診療所は混んでいませんでした。一昨年の新型インフルエンザが流行した時には、土・日は小児科医二人で診療しました。それを思えば、ずいぶんノンビリした土曜日でした。

 午前中に診た咳をしている1才のお子さんが受診してきました。その時はあまりゼイゼイしていませんでしたが、念のためRSウイルスを検査しました。しかし、陰性。元気もそこそこ、食欲もマズマズ。とは言え、このゼイゼイはチト怪しいと思いましたので、ゼイゼイが強まるようでしたら夜間を受診するようにお話しましたが、案の定ゼイゼイが強まったため夜間診療所にいらっしゃいましたね。明らかに、午前中よりゼイゼイは強まっています。

 夜間診療所では、まだRSウイルスは検査出来ませんが、急性細気管支炎であることにかわりはなく、二次輪番病院に入院紹介しました。すぐ、紹介先からFAXが来ましたが、今度はRS陽性でした。、RSウイルスによる急性細気管支炎です。RSもインフルエンザ同様、罹ってから少し時間が経たないと検査では陽性にはならないようです。早く良くなればいいですね。

 別なお子さんですが、生後2ヶ月時にRSウイルスによる急性細気管支炎で、人工呼吸器による治療まで受けたお子さんも受診しました。こちらは軽症でチョットカゼをひいたという感じでした。でも、一度大変な思いをされれば少し鼻水垂らしたくらいでも心配になりますよね。よくわかります。

 盛岡市はおそらく全国でも指折りの小児救急医療体制が整った地域だと思います。いつまでもこの体制を維持したいと思っています。

 この頃、TPP(環太平洋戦略的経済連携協定:Trans-Pacific Partnership)で世間が騒がしいです。正直なところ、私は殆どTPPについてわかりません。関税が撤廃されて物資の往来がスムーズになるとのことですが、医療に関しては、保険制度がなくなるようなことも言われています。どうなんでしょうね?自由診療~混合診療が増えて、なし崩し的に保健医療も崩壊する・・・?と言うことのようですが、なぜ?よくわかりません。

 もし保健医療が崩壊すれば、不採算部門である救急医療は危機に陥るといわれています。真っ先に崩壊の憂き目を見るのは小児救急医療との声も耳にします。まさかそんなことはないと思っていますが、TPPはわからないことだらけです。

 外国からものが入ってくる農業は都合が悪く、外国にものを出す産業は都合がよいようですが、ならば、日本からものが入ってくる外国の同じ産業にとっては都合が悪いような気もします。国民生活に直結する全ての分野において何も説明がなされていない現状では、PTTが、良いも悪いもわかりません。政府による詳細な説明を期待します。

2011年11月8日(火)
マイコプラズマ肺炎

 今朝は少し冷え込みました。明日はもっと寒くなりそうです。そろそろ冬将軍の先発隊が来襲しそうです。

 この頃、マイコプラズマ肺炎の患者さんが目立ってきました。少し流行っているようですね。マイコプラズマ肺炎はマイコプラズマという菌によって引き起こされる肺炎ですが、普通の肺炎とチョット違いますので、診断に苦慮します。

 マイコプラズマ肺炎の特徴は、一言で言うと、「しつこい咳と、頑固な発熱」です。カゼと思いきや、ドンドン咳が増えていく、熱も全く下がらない。と言う具合ですが、咳だけで、全く発熱が見られないこともあります。しかし、咳や発熱が続くだけでは、マイコプラズマ肺炎と診断はできませんよね。

 マイコプラズマ肺炎では、聴診器で胸の音を聴いても、普通の肺炎のようなゼロゼロした呼吸音は聴こえません。殆ど正常な呼吸音です。血液検査をしても特別変わったことはありません。胸部写真もいくつか特徴的なパターンはありますが、確診できるものはありません。また、年少児では殆ど特徴的な写真はなく、胸部写真も参考程度です。となると、どうして診断するかというと、難しいですね・・・。

 マイコプラズマに罹るとマイコプラズマの抗体(MPHA)ができますので、この抗体を調べればマイコプラズマに罹ったかどうかということがわかります。しかし、罹って間もないと検査してもまだ抗体が上昇していないので、1回の採血ではわからないことが多いです。大体2~3週間経てば抗体は上昇しますので、その時もう一度採血して、最初と比べて、4倍以上上昇していれば、そこで始めてマイコプラズマに罹ったということがわかります。これが一番確実で正しい診断方法です。
 しかし、2~3週間立たなければわからないと言うのでは少し遅すぎます。そこで1回目の採血でもある程度抗体の上昇が見られればマイコプラズマ肺炎と診断します。これが実践的です。

 ところで、病初期に抗体を検査するイムノガードという検査がありますが、この検査はやや不正確で、参考程度です。マイコプラズマ肺炎は殆ど2才以上で罹ります。もちろん2才以下でも罹りますが、それは少数で学童期に多く見られる肺炎です。
 2才以下でマイコプラズマ肺炎と診断されてくるお子さんをよく見ますが、正確な抗体検査(MPHA)は実施されておらず、イムノガードで診断されています。この場合「ホントにマイコかいな?」ということになります。

 なかなかやっかいなマイコプラズマですが、今までお話したことを総合的に考えて診断すれば、そんなに迷うこともないです。

 マイコプラズマ肺炎は、以前はとても抗生物質が効きやすく、外来治療で殆ど治っていました。それが、10年くらい前から効くはずの抗生物質が殆ど効かなくなってしまいました。

 マイコプラズマ肺炎に効く抗生物質はマクロライド系抗生物質ですが、この薬は、マイコプラズマだけでなく、チョットしたカゼ(?)にもよく使われました(カゼには抗生物質が効かないんですけどね・・・)。早い話、使い過ぎで効かなくなってきたのです。

 昔は、マイコプラズマ肺炎が疑わしいい時は、マクロライド系抗生物質を処方し、「マクロライドが効けばマイコ」と、診断したりしましたが、今は、「マクロライドが効かなければマイコ?」という感じになってきました。

 現在は、マクロライド系に代わる抗生物質がありますが、それとてしっかりとした診断もしないでマイコプラズマ肺炎が疑わしいからといって、ドンドン処方すれば、マクロライド系抗生物質と同様に効かなくなってしまうでしょう。医師は安易な診断をしないように、患者さんは不要に抗生物質を望まないように、気をつける事が大切です。

2011年11月1日(火)
ワクチンは、皮下注?筋注?

 だんだん秋らしい天気になってきました。朝はチョット冷えますね。だいぶインフルエンザワクチンを接種する人も増えてきました。

 今日はインフルエンザワクチン接種後の腕の腫れについてご相談をいただきましたので、ご紹介します。

 インフルエンザワクチンの場合、20%~30%くらいの割合で接種部位の発赤、腫脹(腫れ)が見られます。他のワクチンと比べると少し多いです。局所の免疫反応が強く起きるために腫れるわけですが、接種後1~2日くらいがピークで、4~5日もすれば退けてきます。まず、心配ありませんが、腕全体が腫れるようなときは、治療が必要なこともあります。メールをいただいたお子さんもけっこう腫れたようですが、その後、元気に保育園の行事に参加したと、後日メールをいただきました。

 さて、心配ない腫れとは言え、なぜ、腫れるのでしょうね。確かに局所の免疫反応が強く起きるわけですが、それならばその反応を弱くすることはできないのでしょうか?できるんですよね。これが簡単に!でも実際はできないことになっているんです。??チンプンカンプン。

 腕の腫れの一番の原因はワクチンを皮下注しているからです。皮下注は、針を少し寝かせて皮膚と筋肉の間にある脂肪組織に注射します。皮膚の中に注射するのが皮内注射(昔のツベルクリン反応)、針をほぼ垂直に立てて筋肉内に注射するのが筋肉内注射(筋注)です。

 実は、ワクチンは皮下注より筋注の方が、はるかに、局所反応が少ないのです。つまり、筋注の方が、皮下注より痛くないし、赤くならないし、腫れることも少ないのです。外国では殆どのワクチンは筋注です。しかるに日本では殆ど皮下注ですので、よく腫れるわけですね。

 では、なぜ日本でワクチンを筋注にしないかというと、ズ~と話は溯りますが、1970年代前半、「大腿四頭筋短縮症」という奇妙な病気が見られました。太ももの前部にある大腿四頭筋という筋肉が異常にに短くなって伸びなくなってしまう病気です。当然、歩行障害が見られます。

 この病気の原因はなんだろうと調べていくうちに、ある病院に通っている子ども達だけに見られることがわかりました。その子ども達はみんな太ももに筋注を受けていました。当時、筋注は当たり前の医療行為とされていましたが、調査が進むにつれて全国あちこちから同じような症状の見られる子ども達が見つかってきました。

 この時代は、子どもが、カゼをひくとお尻か太ももに注射を筋注で一本、というのが、一般的な治療でした。注射の内容は、解熱鎮痛剤か抗生物質です。解熱鎮痛剤の代表はスルピリン(商品名:メチロン)という薬で、抗生物質の代表はクロラムフェニコールという薬でした。今はもう使われることのない薬ですね。

 これらの薬剤の殆どは、浸透圧やPH(ペーハー)が筋肉に障害を与える有害な薬剤でした。つまり、「筋注自体は当時の医療レベルでは一般的な治療であったが、使用される薬剤に問題があった。」ということです。

 以来、ごく一部の薬品を除いて、子どもに対する筋注は無くなりました。しかし、全ての薬品が筋注できないというわけではないのに、殆どの薬品が筋注できなくなったため、インフルエンザワクチンも筋注できなくなりました。「羮(あつもの)に懲りて膾(なます)を吹く」と言うことですね。どうも極端ですね。海外では筋注しているインフルエンザワクチンですから、日本でも筋注を認めてほしいですよね。そうすると、腕の痛みも、赤みも、腫れも、もっと少なくなります。

N.Tさんからの


 いつもお世話になっています。

 次女の健診の際にもお伝えしたのですが、長女のインフルエンザワクチン接種後の腕が結構腫れました。前腕の方まで腫れて来なければ大丈夫とのことでしたが、撮影してみましたので、画像も診ていただければと思いました。

 本人は押すと痛いのと、痒がるぐらいで元気ではあります。今夜は冷やして寝ました。反対側の倍ほど腫れているのですが、クーリングぐらいの対処でいいのでしょうか?

 お忙しいところ申し訳ありません。よろしくお願い致します。




 メールありがとうございます

 ちょっと腫れていますね。疼痛はありますか。クーリングでひければ大丈夫と思いますが、まだ腫れているようでしたら、治療した方がよいです。今日はお見えになりませんでしたので、良くなりましたか?

 以前に処方した「リドメックス+ヒルドイドソフト」でも良いですが、ヒルドイドソフトは少し刺激になるかもしれません。本日(10月29日)夜間診療所に出勤しますので、腫れがひどいようでしたら、いらして下さい。2回目の接種は半量接種にすれば良いと思います。

 では、お大事にして下さい。

2011年10月24日(月)
「放射線の人体影響について-子どもの健康影響を中心に-」:市民公開講座のお知らせ

 東日本大震災から7ヶ月になります。復興の見通しは殆ど立たないまま、冬を迎えそうです。この頃、「放射線の除染」をテレビでよく見ます。高圧の水を民家の屋根や学校のグランドの土にかけてますが、水を掛ければ放射線が消えてなくなるのだろうか?仮に一時的には屋根やグランドからは除去できたとしても、その汚染された水や土が周囲に拡散するだけではないでしょうか?

 現場のお役人は本当に有効と思っているのだろうか。マスコミは騒ぐし、現場を知らない政府は放射線に関して殆ど理解できていないようだから、何かしないわけにはいかないという心情のように察します。

 世田谷のラジウムの話、床下に50年もラジウムが保管されていて、そこに住んでいた人は、数十年にわたって年間30ミリシーベルトを浴び続けていた? でも、健康被害はない。本当にそうなのかな?だから、原発事故後の放射線も大丈夫と誰かが言いたいのかな?と思うのは、考えすぎなんでしょうね。

 放射線については誰も何もわかっていないような気がしますが、専門に勉強されている方は、少なくとも私達一般人よりも知識を持ち合わせているはずです。
 来月、盛岡市で「放射線の人体影響について-子どもの健康影響を中心に-」という市民公開講座があります。誰でも参加できますが、定員600名で事前に申し込みが必要です。私もスタッフを連れて聴講してきます。広島大学の先生ですから放射線は詳しいと思います。

日時:平成23年11月15日(火)19:00~20:30(会場8:30)
会場:岩手県民会館 中ホール(盛岡市内丸13-1)
演題:「放射線の人体影響について-子どもの健康影響を中心に-」
講師:広島大学原爆放射線医科学研究所 細胞修復制御研究分野
   教授 田代 聡 先生

 参加希望者は、ご住所、お名前、電話番号(FAX番号)、参加人数を、盛岡市医師会まで、
電話:019-625-5311 又は、FAX:019-624-1350 又は、E-mail:ishi01@morioka-med.or.jp でお知らせ下さい。

2011年10月23日(日)
RSウイルス検査が、保険適応になりました。

 先週後半くらいから、RSウイルスによると思われる急性細気管支炎の赤ちゃんを診るようになってきました。1日1~2人を入院紹介しました。1人はRSでしたが、他の赤ちゃんはまだ返事が来ていません。そろそろ流行してきたようですね。

 外来診察で、「呼吸が苦しそうですから入院しましょうね。」とお話しても、「いつですか?エッ、今ですか?」と、不思議な顔をされることも良くあります。チョット見ただけでは、苦しいかどうかわかりにくいかもしれませんね。

 元気そうに見えても、急性細気管支炎はアッというまに悪くなることもあります。様子を見ていたが心配になって夕方受診、そのまま、入院なんて事もよくあります。これからのシーズンは赤ちゃんがカゼをひいたなと思ったら早めに受診して下さいね。様子なんか見なくていいからね。

 先日ご紹介したRSの検査が保険適応になったと厚労省から(医師会を経て)通知がありました。なるほど、日付は10月17日になっています。

 保険適応範囲ですが、次のようになっています。
①.入院中の患者
②.乳児
③.パリビズマブ製剤(商品名:シナジス)の適用となる患者

 ①.は、今と同じです。③.は、基礎疾患のある赤ちゃん(先天性心疾患や未熟児で生まれて慢性肺疾患を持っている場合など)です。問題は、②.で、普通、乳児と言えば、1才未満ですが、小児科では乳児喘息を2才以下の喘息と定義したりして、乳児年令をもう少し引き上げて考えています。また、RSは1~2才でも感染しますので、出来れば2才までを乳児と考えてほしいのですが・・・。今回の通知には乳児年令が記載されていませんので、これからどうなりますか?

 今後、インフルエンザのようにRS検査を希望する人は増えると思います。もう既に検査キットが不足するかもしれない等という話も耳にします。もともとあまり検査されていなかったわけですから、メーカーの在庫もそんなに多くないかもしれません。赤ちゃんがカゼをひいたら、みんな検査というわけではありません。検査は必要に応じてですね。やはり、キチンと診察して、どの様な症状か、重症か、軽症か、を見ることが一番大切です。

 と言うわけで、繰り返しますが、これからのシーズンは、赤ちゃんがカゼをひいたなと思ったら早めに受診して下さいね。

2011年10月20日(木)
RSウイルス感染症

 朝晩は少し冷え込み、日中はカラッと晴れる良い天気?ですね。でも、寒暖の差があると体調崩しやすいですね。

 先々週~先週にかけてRSウイルスの報道をよく見ました。一昨日、RSウイルス検査が保険適応となったというようなニュースがありましたが、ホントかいな?いつものことですが、医療機関に話が伝わる前にまず、マスコミが報道しますから、ホントなんでしょうね。

 RSウイルス(以下、RS)は急性細気管支炎から呼吸不全を引き起こすとんでもないウイルスです。通常は冬に流行るんですが、今シーズンは夏頃から流行り始めた地域もあります。盛岡市はまだ、そんなに流行ってはいませんが、これから冷え込んでくると流行しそうです。
 
 インフルエンザに検査キットがあるようにRSにも検査キットがあります。ところで、あまり、知られていないと思いますが、RSの検査は、外来では保険適応されず、入院のみが保険適応となっています。変な話ですよね。

 ところが、10月17日(?)から、外来で検査しても保険適応になったようです。昨日、市内の小児科医の集会がありましたが、その席上でもこの話題が出ました。しかし、誰一人はっきりした事は知らず、みんなの話をまとめてみると、RS検査が保険適応となる場合は、①.入院(従来と変わらず) ②.シナジスが投与されている場合 ③.一般の乳児 と言うことだそうです。(これは、多分?です。はっきりしたら、またお知らせします)

 ところで、RS感染の有無がわかるのは良いですが、急性細気管支炎はRS以外のウイルスでも見られますし、RSとわかっても治療薬もないので、検査をしたからと言って、インフルエンザで使うタミフルのような薬がでるわけではありません。

 テレビのお医者さんはRSと診断されて、すぐ入院紹介状を書いていましたが、「RSウイルス=全て入院」というわけではありません。急性細気管支炎による呼吸不全の重症度によって、外来治療か入院治療が決められます。ですから、RSでもその他のウイルスでも重症なら入院ですが、軽症なら外来治療です。どことなく、乳幼児を持つ親の不安をあおるような設定に見えましたが・・・。

 とは言え、RSに重症例が多いことは確かです。赤ちゃんにとってはインフルエンザよりもはるかに怖い病気です。どっかの番組で言ってましたが、【名前のインフルエンザ、実力のRS】は、全くその通りです。

 RS検査が外来でも保険適応になれば、RSと診断される赤ちゃんは、軒並みに増えるでしょう。前述したように特効薬はありませんが、一般にRSの呼吸不全症状は他のウイルスよりも強いことを思うと、今後は、「RSなら入院考慮.、RS以外なら外来治療優先」というように治療方針を立てる上で役立つ検査になると思います。

 RS検査が外来でも保険適応となるようですが、この事を知る数日前にRSについてのメールをいただきましたので、ご紹介します。

Kさんからの


 いつもお世話になっております。

 お忙しいとは思いますが、質問させていただきたく、メールいたしました。

 件名にも書きましたが、今、騒がれているRSウイルスですが、よしだクリニックさんでは検査をしてらっしゃるのでしょうか?

 実は、今、我が家の8ヶ月の息子が、熱はなく、鼻水と咳の症状が出ているのですが、祖母がとても心配していて、検査のできる病院に連れて行けとうるさくて…

 とりあえず今は、漢方薬局で処方してもらった薬を飲ませて、様子を見ていました。

 大変、お手数をかけて申し訳ないのですが、返信いただけたら嬉しいです。よろしくお願いいたしまします。




メールありがとうございます。

 ちまたではRSウイルス大流行のようなマスコミ報道も耳にしますが、今のところ当院周辺では流行っていません。とは言え、季節柄そろそろ増えてきそうですね。

 私は今のところ、RSウイルスの検査はしていません。理由は二つあります。一つは、RSウイルスと診断がついても、特別な治療薬はなく、治療方針にプラスになることがあまりありません。もう一つは、保険が効きませんので自費になります。

 チョット、「ハ~?」と思われるかもしれませんね。では、もう少し詳しくお話します。
 赤ちゃんにとって、RSウイルスが怖いのは確かですが、怖いのはRSウイルスではなく、RSウイルスによって引き起こされる【急性細気管支炎】です。

 ところで、この急性細気管支炎はRSウイルス以外のウイルスでも引き起こされると言うことをご存知でしょうか。冬季に流行るウイルスにはRSの他にもアデノ、ライノ、パラインフルエンザなど多くのウイルスが急性細管支炎の原因になります(一番多いのはRSです)。
 
 どのウイルスに罹っても急性細気管支炎による呼吸不全症状は重症です。もちろん軽症で外来治療で治癒することもありますが、多くの場合、「このお薬飲みましょうね。」などでは治りようがなく、入院が必要です。

 つまり、RSであろうが、なかろうが、呼吸器症状の程度が重要になるわけです。早い話、検査よりも診察(症状を診ること)が大切なわけです。と言うわけで、外来での検査の必要性は低いと思っています。

 話は続きます。そこで、入院紹介されて総合病院受診と言うことになりますが、ここで、RSウイルスの検査が行われます。なぜ?RSの検査は保険が効かないと言いましたが、それは外来の場合です。入院の場合は保険が効くのです。変な話ですが、そういう仕組みです。

 原因ウイルスがRSかどうか知りたいというお気持ちもわかります。近い将来、外来検査でも保険が適応されるようになったら検査しようかと思っています。

 8ヶ月の赤ちゃんでしたら、この冬は急性細気管支炎(RSに限らず)は、要注意です。急性細気管支炎は進行が早いので、例えば、朝に鼻水を垂らしていたら、夕方にはゼイゼイ呼吸が苦しくなっていると言うようなことも珍しくありません。まず、周囲の家族がカゼをひかないように気をつけることです。もし、保育園に行っているなら、急性細気管支炎が発生したら、流行がおさまるまでは休園した方がよいです。赤ちゃんにとっては、急性細気管支炎はインフルエンザよりも怖いと思って下さい。

 Kさんの赤ちゃんはお便りで見る限りでは、カゼという感じですので、今のところあまりご心配なさらなくてもよさそうです。おばあちゃんのお気持ちもよくわかります。RSウイルスを外来診療で検査してくれる診療所もあると思います。その場合、自費ですが2.000円くらいだと思います。

 それから、市販薬のカゼ薬にはいろいろな成分が入っていますが、1才以下の赤ちゃんにはあまり好ましくない成分もあります。出来るだけ市販薬は避けた方がよいです。

 では、季節柄。お大事にして下さい。

2011年10月18日(火)
神奈川県の大英断?

 神奈川県は、独自に不活化ポリオワクチンを輸入して接種する方針を決めましたね。10月15日の読売新聞に、次のような記事が掲載されたようですが、岩手版には載っていなかったような?

 神奈川県は、ポリオ(急性灰白髄炎)の予防接種で、生ワクチンより安全性が高いとされる「不活化ワクチン」を独自に輸入し、希望する県民に接種する方針を固めた。
 年内にも実施する。
 厚生労働省は不活化ワクチンの来年度中の承認を目指しており、承認まで生ワクチンの接種を控える動きが広がっている。
 県では直接輸入できないため、医療機関に協力を求め、個人輸入の形でフランスやスイスのメーカーから不活化ワクチンを輸入し、県の保健福祉事務所で接種する方針。国内では未承認のため、事故が起きた場合に県が責任を負わない旨の同意を取り、接種費用は自己負担してもらう。
 黒岩祐治知事は「ポリオに感染する危険性のあるワクチンをそのまま使っているのはおかしい。国の対応は遅すぎる」と話している。

 以上のような内容でした。

 さすが、黒岩知事、たいしたモンだ?かな?ところで、神奈川県が接種するとは言うものの、県立病院の医師が個人輸入し、それを保健所で接種するらしいです。いわば、個人輸入を県が後押しするような図式ですかね。

 厚労省も来年度には「不活化ワクチンへ切り替える。そのための準備をしている。」と言ってるわけですから、内心、面白くないと思っているでしょう。しかし、現実には厚労省は、副作用あり生ワクチンを勧めているわけですから、表だって神奈川県を非難できないでしょうね。

 しかし、「事故が起きた場合に県が責任を負わない同意書」を取るというのは、いかがなものかな?少し無責任ではないか?ここまで、県単位で決めることが出来るのか?大体、同意書のような紙切れ一枚で責任から逃れられるわけがない。

 ちょっと、スタンドプレーと言う気もします。厚労省に法整備を早急に行うよう直談判するなり、神奈川県が不活化ワクチンを輸入し、それを県下の医療機関で接種するなり、選択肢はあったと思います。

 しかし、大英断ではあります。今回の神奈川県の判断の善悪は、近い将来明らかになるでしょう。何はともあれ、不活化ワクチンの早期承認を推進する起爆剤になってほしいと願います。

 今日は、ポリオワクチンとインフルエンザワクチンの接種でお悩み方からご相談を受けましたのでご紹介します。

H.Sさんからの


 いつもお世話になっております。花粉症と息子の気管支喘息発作予防治療を長期に診ていただきありがとうございました。

 今年もインフルエンザ予防接種の時期が近づいてきたので、そろそろ家族で受けたいと思うのですが、1歳7ヵ月の娘が10・11月に2回目のポリオを控えております。今年の5月に不活化ポリオワクチンについて、詳しく教えていただきました。不活化ポリオへの切り替えを12年度と政府が明示しているとのことで、春のポリオは延期いたしました。

 しかし、近所の小児科ではまったく不活化ポリオの話はなく、地元の秋の集団接種も、もう少しで始まってしまいます。(1歳6ヵ月健診の際に保健師さんにポリオの2回目のことをかなり突っ込まれてしまいました。)

 私としては、ポリオも大切ですが、インフルエンザ予防接種の方が、優先させた方がいいのではと考えています。インフルエンザの予防接種の補助金が今年も受けることが出来るとのことなので、

10月20日以降にインフルエンザ1回目

11月上旬のポリオ集団接種2回目

27日あけて、インフルエンザ2回目

 というスケジュールにするか、今年はインフルエンザのみにするか…。未だに迷っております。

 あと、インフルエンザの予防接種は大人も一緒に受けることが出来ますか?その場合も、診療時間内にお伺いすればよろしいでしょうか?

 診察室便りも拝見いたしましたが、国としても対策を考えているだろうから、単独の不活化ワクチンを待ってもよいと思って構いませんか?まとまりのない文章で恐縮ですが、お返事をお待ちいたしております。よろしくお願いいたします。




 メールありがとうございます。

 そろそろインフルエンザの季節ですね。いつ流行するか予測困難なインフルエンザですので、ワクチンはなるべく早めに接種された方がよいです。

 ポリオとの優先順位ですが、ご存知のように現行の生ポリオワクチン接種を控える方は最近増えております。不活化ポリオワクチンに切り替わるまでの間、しばらく、混乱が続きそうです。

 国の方針は、不活化ワクチンを導入すると言いながらも、今は、生ワクチンの接種を勧めています。生ワクチンを公費負担で接種しながら、一方で不活化ワクチンも認可するとなると、一体どちらを接種してよいのか、ますます混乱しますので、認可に踏み切れないのでしょう。

 一番よい方法はすっかり生ワクチンを中止して、不活化ワクチンだけに切り替えればよいわけですが、国には積極的な動きが見られません。

 地方自治体の保健所レベルでは、国からの文書通りの対応しかできませんので、保健所の職員はマニュアル通り、生ワクチンを勧めるだけです。これは致し方ありません。

 また、生ワクチンの副作用を心配している医師の間にも統一した見解は得られておらず、来春以降までポリオ接種を控える。ポリオのない日本ではポリオワクチンは不要。不活化ワクチン導入までは生ワクチンを接種する(厚労省の方針通り)。国内未承認不活化ワクチンを個人輸入して接種する。等々、いろいろな意見があります。

 先日、某大学病院小児科教授の予防接種の講演会がありました。その席上で、ポリオワクチンの現状についてどのように対処すべきか質問したところ、結論は、「わからない」とのとでした(大学教授でもわからないようです)。
 
 ただ、この教授は、「国が不活化ワクチンを承認するまでは待つべきで、個人的に輸入して接種すべきではない。」とお話しされました。それは、「未承認薬として使用して、もし事故が起きた場合、国として承認薬として使いにくくなり、さらに不活化ワクチンの導入が遅れる可能性がある。」と言うことでした。

 今、輸入して使われている不活化ポリオワクチンは世界中の多くの国々で使用され安全性は確認されているとはいうものの、アナフィラキシーショックのような副作用はいつ起きるか予測不可能です。もし、そのような副作用が起きたとしても承認薬と未承認薬とでは保障の問題も雲泥の差があります。

 もともと、我が国ではワクチンに対して「ホントに大丈夫?」と言う考え方を持っている人も多く、さらに、マスコミが煽りますので、未承認薬の段階で事故が起きた場合、大変な騒ぎになりそうです。当然、国内承認が遅れることが予測されます。 

 私自身としては、来春くらいまで待って不活化ワクチンを輸入しようかとも考えていましたが、このお話を聞いて少し考えてしまいました。もう少し待った方がよいかもしれません。

 前置きが長くなりましたが、お子さんの予定についてコメントさせていただきます

10月20日以降に、インフルエンザ1回目

11月上旬のポリオ集団接種2回目

27日あけて、インフルエンザ2回目

と、ありますが、ポリオ患者がいない現在、ポリオは急がず、来春以降まで待っても良いと思いますので、

10月20日以降に、インフルエンザ1回目

2週間あけて、インフルエンザ2回目

で、よろしいかと思います。

 インフルエンザワクチンは子どもから大人まで接種しています。ワクチン接種だけなら予約なしで、診療も一緒なら予約していらして下さい。接種時間帯は予防接種の時間帯でなく、一般診療の時間帯でよろしいですよ。では、ご家族全員でお気をつけていらして下さい。お待ちしています。

2011年10月13日(木)
iPS細胞

 前回の診察室便りに掲載したように先週の日曜日、弘前へ行ってきました。お祝いの会ですので、大体こういうときは著名人を招いての特別講演というものがあります。

 今回の演題は、「疾患特異的iPS細胞を用いたこれからの小児医療」。演者は、京都大学 iPS細胞研究所の中畑龍俊 副所長でした。iPS細胞研究所の所長は山中伸弥先生、ご存知、今年のノーベル医学賞候補になった方です。その研究所の副所長が特別講演にいらっしゃいました。中畑先生は【臨床応用研究部門】の責任者ですので、iPS細胞が、いろいろな難病へ応用されていく上で中心となってご活躍されている方です。

 さて、講演内容ですが、1時間半ビッチリとお話を伺いましたが、難しいですね・・・。でも、普段あまり聞けないような貴重なお話でしたので、わかるところだけをご紹介したいと思います。

 iPS細胞は、induced pluripotent stem cellの略で、日本語では、「人工多能性幹細胞」と言います。どのような細胞かと言うと、ウ~ンと簡単に言えば、「身体のあらゆる細胞に変わる能力がある万能細胞で、人の皮膚細胞から作られる細胞」です。わかったような、わからないような・・・。

 よく似た名前でES細胞があります。ES細胞もiPS細胞同様、万能細胞ですが、受精卵を成長させて作りますので、わざわざ女性から未受精卵を摘出して人工授精させなければならず、どうしても倫理的な問題があります。しかし、iPS細胞では、そのような問題がありません。と言うわけで、iPS細胞の研究が進んだわけですね。

 ところで、具体的にiPS細胞がどのように医療に利用されてくるのかというと、iPS細胞は、身体のあらゆる細胞に変わる能力をもっていますので、病気やケガで障害を起こした細胞を復活することができます。これを再生医療と言います。

 今は、重い心臓病や肝臓病では臓器移植が行われていますが、再生医療は臓器移植と違い、臓器提供者(ドナー)が必要ありません。つまり、iPS細胞は臓器なしで再生医療を可能にしてくれる素晴らしい救世主なのです。

 人間は約60兆個の細胞から成り立っていますが、元々は1個の受精卵が分裂を繰り返し、神経、筋肉、皮膚などいろいろな組織に変化したものです。受精卵は様々な細胞に変化する「万能性」を持っていますが、いったん神経などに変化すると、もう別の細胞に後戻りすることはできません。

 この常識を覆したのが、iPS細胞です。皮膚細胞に数種類の遺伝子を加えるだけで、「万能性」を獲得します。いわば、すっかり成長した細胞を、まだいろいろな分化する可能性のある若い細胞にもどすわけです。これを初期化(リプログラミング)と言って、iPS細胞は「タイムマシン」みたいに昔の姿を取り戻すことが出来るのです。

 前述したように、iPS細胞への期待は、病気やけがで失った機能を回復させる再生医療の実現化にあります。

 例えば、心臓の細胞(心筋細胞)が壊死した心筋梗塞の場合、iPS細胞から変化させた心筋細胞を、患者の心臓の壊死した部分に移植すれば、心機能の回復が期待されます。また、インスリンというホルモン不足で起きる糖尿病も、iPS細胞からインスリンを分泌するβ細胞を作って患者に移植すれば、治療できると考えられています。

 さらに、現在はまだ難しいですが、iPS細胞を使えば、心臓や肝臓などの臓器をそのままそっくり作ることも夢ではないようです。

 iPS細胞の登場で再生医療の夢が広がりました。もう一つ、iPS細胞が、もたらした恩恵があります。それは、iPS細胞を使って、病気の原因を調べたり、治療薬の開発への応用が可能になったことです。

 具体的には、神経や筋肉の難病であるパーキンソン病や筋ジストロフィーなどの患者から、iPS細胞を作製して、神経や筋肉に変化させる過程で、どんな異常が起きているかを詳細に観察することで、病気発症の仕組みが解明できると期待されています。
 また、新薬の効果や副作用も試験管内で確認できます。国内外の多くの製薬会社も注目しており、研究がドンドン進んでいます。

 再生医療は、もう既に試験的に行われていますが、中畑先生は、「iPS細胞を用いた再生医療は小児のための治療」ともお話しされていました。先天性(生まれつき)の難病の殆どは遺伝子異常が原因ですので、遺伝子を修復したiPS細胞を患者に戻すことによって遺伝子異常は治療されるわけです。まさに、再生医療の適応です。

 中畑先生は、あと2年くらいで実際の日常臨床で多くの再生医療が行われるようになるだろうとお話しされました。あと2年ですよ・・・。スゴイですね。
 近い将来、多くの難病が再生医療で克服されるようになりそうです。非常に楽しみですね。

 今年は、ノーベル医学賞を受賞できませんでしたが、中畑先生は、来年か再来年あたりには受賞するだろう!と、自信たっぷりにお話しされていました。みんなで期待しましょう。

 講演が終わった後、出席者全員で集合写真を撮りました。できれば中畑先生とツーショットで撮りたっかたのですが、誰もそうする人がいませんでしたので、遠慮して撮りませんでした。ちょっと残念でした。

 iPS細胞の話。どうでしたか?少しわかりにくかったかもしれませんね。私自身よくわかっていないので・・・。

 もし、(大人の)自分が子どもの頃に戻れたら、野球の選手になろうか、お笑い芸人になろうか、なんて事考えてみたことないですか。でも、戻れるわけないし、そんなセンスもないから不可能だと思ってあきらめるでしょうね。しかし、それを可能にしてくれるのが、子どもの頃に戻れて、いろいろな能力を与えてくれるのが、iPS細胞なんです。医学の進歩は素晴らしいですね。

2011年10月8日(土)
ワクチンのご質問

 今週は天気がぐずつきましたが、週末は晴れそうです。明日、久しぶりに弘前へ行って来ます。昨年も行きましたが、今年は同級生の小児科学講座教授就任10周年にあたりますので、その祝賀会に行って来ます。同級生なのでテーブルスピーチを頼まれましたが、彼は留学して外国生活が長く、一緒に大学の医局にいた期間が短かったので、何を話そうかと悩みましたが、入局した当時の新米医師の頃の思い出話でもしようかと思っています。
 明日は、高速道路を走りながらスピーチの練習です。事故を起こさないように気をつけて行ってきます。

 来週10月11日(火)から、インフルエンザワクチン接種開始します。ワクチン、問診票など、必需品はそろいましたが、20日から始まる盛岡市の助成金対象者用の問診票はまだ送付されてきません。いつもギリギリですからね。当日には間に合うと思いますが、若干、不安ではあります。

 この頃、ワクチンについてのメールをたくさんいただきます。インフルエンザと、日本脳炎について二つほどご紹介したいと思います。

K.Oさんからの


 予防接種の事で質問があります。

 ポリオの2回目を受けようと思っていたのですが、その前にインフルエンザを受けた方がいいのか迷っています。

 インフルエンザは10月20日からとホームページで見ました。1歳なので接種は2回ですが、接種間隔が2~4週間というのが??です。10月20日に打ち、2週間後に2本目を打ち、2週間空けて今年のポリオに間に合いますが、間隔を4週間空けると今年のポリオには間に合いません。2~4週間というのはおおざっぱな感じがしますが、どのくらいがいいのかよく分かりません。

 でなければ、ポリオを先に受けてからインフルエンザでもいいのかと思ったのですが、ポリオの4週間後だと11月半ばぐらいになってしまい、そこからインフルエンザを2回打って免疫ができるまでに流行してしまったら・・・と思うと、インフルエンザの方を優先したいのですが、先生はどうお考えになりますでしょうか?

 分かりにくい文章ですいません・・・。お忙しい中恐縮ですが、お返事いただければ幸いです。よろしくおねがい致します。




 メールありがとうございます。

 本日診察の際にお話ししたとおり、まず、インフルエンザワクチンから接種されればよい思います。ご存知の通り、現行のポリオワクチンは、来年度後半には、三種混合ワクチンと一緒になった四種混合ワクチンとして接種されることになります。この移行期には「三種混合ワクチン接種済みでポリオ未接種のお子さん」のために、単独の不活化ポリオワクチンが必要になります。国もその辺の対策は考えていると思います。先月、中国でポリオが発生しましたが、今のところ拡大の気配はなく、少し静観していいと思います。

 インフルエンザワクチンは、昔のデータでは3~4週間隔が最も効果的と言われていますが、1週間隔で接種してもそんなに大きく効果に差があるわけではありません。

 今年度から、小児の接種量も増加し、接種間隔も少し長めにすることで、ワクチンの効果を上げようと考えているわけです。
 接種間隔は、最初「2~4週」とされていましたが、先週の説明会では「およそ2~4週」とのことですので、昨年までと同様に1週間隔でも接種できます。逆に、あまり間隔を空けて待っていると、カゼをひいたりしてタイミングを逃すこともありますので、「2週間経ったら早めに接種」するのがいいでしょう。急に流行が始まればゆっくり待っていられませんが、そうなる前に余裕を持って接種しにいらして下さい。


Y.Iさんからの


 いつも子供達がお世話になっております。先生のホームページで、秋冬の予防接種の周知事項を拝見したのですが、質問があります。

 日本脳炎ワクチンは年明けから来て!とあったのですが、私の5才の娘が、日本脳炎ワクチンの1期の追加を8月頃にうける予定が、うっかりしていました。1期追加は1期初回のおおむね1年後とありますが、8月頃予定だったのを年明けまで延ばすと、約1年半の間隔になります。そのくらいは問題ないでしょうか?

 それとも、インフルエンザワクチンが本格的に開始する前の10月上旬のうちに、日本脳炎ワクチンしに行ってもいいものでしょうか?

 お忙しい中、こんな質問で本当にすみません。返答は、メールでもスタッフさんからのお電話でもどちらでも構いませんので、宜しくお願いいたします。




 メールありがとうございます。

 日本脳炎ワクチン1期追加接種は、1期初回接種から概ね1年あけて接種となっています。概ね1年という解釈は、少し曖昧ですが1年±1ヶ月としている自治体が多いようです。では、概ね1年後、いつまでの間に接種すればよいかというと、特にいつまでに接種しなければならないという期間は定まっていません。

 ご存知と思われますが、平成17年5月、厚労省は、突然日本脳炎ワクチンを一時中止しました。それまでは、1期初回3~4才、1期追加4~5才だったわけですが、この一時中止期間が数年に及び、完全に接種スケジュールが狂ってしまいました。現在はかなり大ざっぱなスケジュールになっていますが、1期初回接種から、1~2年のうちに1期追加接種が出来れば十分です。もっと期間が空いても問題ありませんが、その間に免疫が弱まってきますから、「概ね1年空けたら、次の夏までには1期追加を接種する」と考えればよいと思います。

 盛岡の冬に日本脳炎が流行ることは考えがたく、これから12月にかけては驚異的に外来が混み合います。特に、インフルエンザワクチンを接種する人は多く、ワクチン取り違い事故なども心配になってきます。

 以上のような理由から、今急ぐ必要のない日本脳炎ワクチンは年明け1月からの接種にしたいと思っています。近隣の医療機関でも10~12月は日本脳炎ワクチンを接種しないという所もあります。みんな考えることは同じですね。

 ただ、盛岡市は日本脳炎ワクチンの接種期間を1年中としてますので、接種希望者をお断りするわけにはいきません。海外や流行地へ出かける場合など以外でも、接種希望者には接種します。ですから、「日本脳炎ワクチンは年明け1月から」というのは、私から皆さんへのお願いですね。でも、まだ、あまり混み合っていませんので、1期追加接種OKですよ。

2011年10月4日(火)
中国でポリオ発生!

 朝起きると寒いと感じるような気候になりました。秋の気配は、もう冬の訪れを感じます。

 先週あたりから、RSウイルス感染症(急性細気管支炎)が流行始めたというニュースを耳にします。赤ちゃんにとって、RSウイルス感染症は大敵です。ワクチンもないので、周囲からの感染を防ぐようにするしかありません。

 RSはワクチンがないので予防が難しいわけですが、ポリオは、ワクチンがあります。それも二種類・・・。そのポリオがお隣の中国(新疆ウイグル自治区)で発生したようです。発生源はパキスタンだそうです。
 中国のポリオは、1994年に撲滅されました。その後1999年にも発生してますが、この時もパキスタンから持ち込まれました。今回は9月に9人の感染者がでて、患者からのポリオウイルスはパキスタンのものと遺伝子が一致したとのことです。

 今、世界でポリオが発生しているのは、中国の新疆、ならびにインド、パキスタン、アフガニスタンです。WHOは、このポリオウイルスがアジア全域に広がる危険性が「高い」としています。ポリオ未接種の人は早くポリオワクチンを接種しましょうと言いたいところですが、現行の生ワクチンではマヒの副作用が心配ですし、不活化ワクチンは国内未承認です。となると、どうしてよいか、本当に困ってしまいました。

 中国では今のところ大流行の兆しはなさそうですが、パキスタンは感染が拡大しているようです。厚労省からは自治体にも医療機関にもまだ連絡はありませんが、国は近隣諸国の情勢を見ながら対策を講じなければなりません。

 国産不活化ワクチン導入の前に、海外で当たり前に使われている不活化ポリオワクチンを、国内承認し緊急輸入する事が最善策と思います。厚労省の大英断に期待します。

2011年9月26日(月)
インフルエンザワクチン不足?

 先週初めは急に寒くなりましたが、週末から少し暖かくなり、今週また涼しくなってきました。もう秋ですね。

 寒暖差があると喘息発作も起こしやすくなります。今月は喘息で受診されるお子さん多かったですよ。喘息は、「発作を起こしてから治療するのではなく、発作を起こさないように予防治療する」ことが大切です。発作を起こしたときだけ薬を飲んでも喘息は良くなりません。何回も発作を起こすうちにどんどん気管支は汚れて最終的には成人まで持ち越してしまいます。と言うことをいつもお話していますけど、チョット良くなると治療を止めて、また発作を起こすと受診という悪いパターンから抜けきれない人けっこういますね。

 さて、喘息の話はそのくらいにして、この頃、医療ニュースを見ていますと、「今年のインフルエンザワクチンが不足しそう?」という記事が目につきます。なぜ?一つは、小児接種量が増えたためです。もう一つは、ワクチンを生産している国内四社のうち一社のワクチンの一部が品質異常のため出荷停止になったためです。

 このため、236万本のインフルエンザワクチンが不足することになり、実際に出荷されるのは約2700万本くらいになると言うことです。
 一昨年、昨年の出荷状況をみますと、2009年:2039万(2313万)、2010年:2447万(2928万)でした。※出荷本数(生産本数)です。と言うことで、厚労省は影響は少ないとしています。

 さて、どうでしょうかね?236万本と言えば、出荷本数の1割じゃないか。本当に影響は少ないのかね?やっぱりどっかで足りなくなるのでは?と思ったりもしますよね。とは言え、一昨年、昨年の出荷状況から見れば十分足りそうですけどね。でも今年から小児量が増えるから、そうでもないか・・・。等々と、いろいろ思案してしまいます。

 さしあたり、当院では昨シーズンの本数に小児増加量分を加えて予約注文しました。他の医療機関が接種しないのでこっちに来たということでもない限り、不足することはないと思っていますが、若干不安はありますね。

 それよりも、ワクチン接種で異常に混み合う外来をいかに混乱を少なくやりくりするか、こっちの方が頭が痛いです。また、その季節になります。10月11日(火)頃から接種を始めたいと思っています。ワクチン不足かどうかはともかく、いつ流行り始めるか予測困難なインフルエンザですので、なるべく早めの接種をお勧めします。詳細は近々掲示します。

2011年9月14日(水)
二つの子宮頸がん予防ワクチン:サーバリックス と ガーダシル

 9月15日より、子宮頸がん予防ワクチンは、現在接種されているサーバリックスに加えて、ガーダシルも公費負担で接種できるようになりました。と言ってもピンと来ない方も多いでしょうね。

 子宮頸がん予防ワクチンの接種対象者は10代前半の女子ですから、赤ちゃん世代はまだ関係ないですね。中学生、高校生の女子のお子さんをお持ちの方は、ちょっと読んでみて下さい。→子宮頸がん予防ワクチン

 例えば、インフルエンザワクチンは4社の製薬会社で作っていますが、同じものです。だから、どこの会社のワクチンを接種しても同じです。当たり前ですよね。会社によって違ったら、どれを接種していいか困りますよね。そういう困ったことが、今現実に子宮頸がん予防ワクチンで起きてきました。

 子宮頸がん予防ワクチンは、現在、サーバリックス(商品名)が接種されていますが、明日からガーダシル(商品名)も公費負担で接種できるようになりました。まだ、何を言ってるのかよくわからない方もいると思いますが、簡単に言うと【同じ病気を予防するワクチンが二種類あって、微妙~に違いがある。】と言うことです。では、どちらを選択すれば良いかというと、ここで迷うわけですよ。

 最初、地方自治体はサーバリックスとガーダシルの使い分けについて、厚労省に説明を求めました。返ってきた答えは、「ガーダシルとサーバリックスはいずれも子宮頸がんの予防効果があります。医療機関で相談し、接種できる方を接種して下さい。」だと。

 まず、接種希望者はどっちがよいのかわからない。これ当たり前。接種する医療機関も、バニラアイスに抹茶をトッピングするか、チョコレートをトッピングするかどちらがいいですか?と、接種希望者に尋ねる感じですね。厚労省の『現場丸投げパターン』には、ホトホトまいります。

 盛岡市の説明会は9月30日だそうです。15日から開始すると言っておきながら、なんで、30日なんだよ。もっと早く説明会しなさいよ。ところで、なぜ30日かな?と思ったら、この事業は、平成24年3月31日までで一応終わりなんですね。子宮頸がん予防ワクチンは、“初回、1(2)ヶ月後、6ヶ月後”の3回接種します。と言うことは、10月1日接種者の3回目は4月1日になりますので、もしかしたら3回目は公費負担できないかもしれないと言うことになります。まさか、こんな話は説明会で出ないと思いますが・・・。いくら何でもそれはひどいよね。おそらく殆どの自治体では来年以後も継続されると思いますが、ちょっと、心配ではあります。

 明日から、混乱しそうです。医療機関によっては、どちらか一方しか接種しないところもあるようです。また、混乱を避けるためにしばらく様子見を決め込んでいる医療機関もあります。いずれ、解消されていくと思いますが、しばらく大変です。

 子宮頸がん予防ワクチン接種を希望される方は、少なくとも、子宮頸がん予防ワクチンを、読んできて下さいよ。いきなり「どっちがいいですか」と聞かれても、「まずこれ読んで・・・」から、出直しですよ。

2011年9月9日(金)
救急の日

 秋の気配が漂うようになりました。朝晩は少し涼しいですね。季節の推移を感じます。

 今日9月9日は救急の日です。9(きゅう)月9(きゅう)日と読むのですね。救急の日は救急業務や救急医療について医療関係者だけでなく、一般の人にも理解と認識を深めてもらうために、1982年に厚生省(厚生労働省)と消防庁が制定した記念日です。

 各地で、医師会や消防署による応急手当の実技指導などが行われています。私も勤務医の頃には、講演したり、心肺蘇生のデモンストレーションをしたりしました。人形のモデルを使って気管内挿管(自分で呼吸ができない人の肺に空気を送るため、気管支にチューブを挿入すること)の実演もしましたが、実際に「自分にも入れてみてくれ」と言われたときは困りました。意識がある状態では苦しくて気管内挿管はできません。今は、こういう重症な患者さんに遭遇することはありませんが、いつでも心肺蘇生はできるように心の準備をしています。

 平成22年度の救急車の出動回数は546万320件で、過去最多だったそうです。増加の原因として、「高齢疾病者の増加」や、「熱中症患者の増加」の他、「緊急性が低いと思われる疾病者の増加」もあげられています。確かに、「緊急性が低い」ケースでの救急車の要請は問題あります。救急車をタクシー代わりに使う人もいますしね。救急車が必要かどうかの軽症~重症の判断は難しい事もあります。どの様なときに救急車を呼ぶべきかということも救急の日の話題として取り上げてもいいですね。

 ところで、9月は一年で一番喘息発作の多い月です。よくなったように見える人でも発作を起こすことはよくあります。今は喘息治療もよい薬がたくさんできてきましたので、夜中に発作をおこして、救急受診ということも少なくなりました。でも、やっぱり季節の変わり目は調子悪くなること多いですよ。今日も喘息発作を起こしたお子さんたち、たくさん来院しました。

 喘息治療の原則は、【発作を起こしてから治療をするのではなく、発作を起こさないように予防治療すること】です。これから秋が深まるにつれて発作も起きやすくなります。キチンと予防治療しましょうね。

2011年8月28日(日)
今年のインフルエンザワクチン:変更あり!

 週末からまた、暑くなりましたね。秋は近いとは言え、残暑厳しい今日この頃です。

 今日は盛岡市議会議員選挙が行われました。先週はあちこちで選挙演説が行われて賑やかでした。選挙が公示されて、初めて顔を見る立候補者も多いですが、普段から地道な活動をしている人もいます。

 私の通勤路の南大通りの交差点で、いつも黄色い旗を持って、歩行者を誘導してくれている人がいます。乱暴な運転をする車には注意もしています。月曜日~金曜日まで、雨の日も雪の日も毎日ですよ。えらいなと思います。こういう人に当選してほしいですね。

 まだ、チョット先の話ですが、インフルエンザワクチンのお知らせをしておきたいと思います。
 一昨年は季節性と新型の二種類のワクチンでした。昨年は季節性と新型が一緒になった一種類のワクチンで自治体から補助金が出ました。というような感じで、毎年ちょこちょことマイナーチェンジしているインフルエンザワクチンです。

 今年も若干の変更があります。自治体の説明会もまだですので、詳細は後日お知らせしますが、今わかっていることだけお話しします。

 今年のワクチンも昨年同様、【A型(H1N1)2009+A香港型H2N3+B型】の3価ワクチンです。A型(H1N1)2009は、今まで「新型インフルエンザ」と呼んでいた豚インフルエンザ(H1N1)のことですが、すでにインフルエンザA型(H1N1)2009と名称が変わり、季節性のインフルエンザとして扱われることになりました。もう新型ではありません。

 今年度大きく変わる点は次の二点です。

①.子ども(13才未満)の接種量が、増量されました。               
②.子ども(13才未満)の接種間隔が、2~4週間になりました。          

 もともと子どものインフルエンザワクチンの接種量は少なく、効果がやや不十分なため、増量するよう医療関係者から要望が出されていました。本来は昨シーズンから増量される予定でしたが、国会での審議が遅れたために延び延びになって、今年の8月1日やっと増量される運びとなりました。

 参考までに従来の接種量と今年度からの接種量を下表に示します。

従来の接種量 今年度からの接種量
  6ヶ月~1才未満 0.1mlx 2
  1才~6才未満  0.2mlx 2
  6才~13才未満 0.3mlx 2
  13才以上 0.5mlx 1
  6ヶ月~3才未満 0.25mlx 2
  3才~13才未満  0.5ml x 2
  13才以上 0.5ml x 1


 1回接種量が増える分だけワクチンも多く必要になりますが、厚労省は今年度のインフルエンザワクチンの供給量は十分に用意されているとコメントしています。

 一般にワクチン接種量は大人でも子どもでも同じですが、B型肝炎、コレラ、インフルエンザだけが大人と子どもで異なります。
 昔のインフルエンザワクチンは、発熱のような副作用が多かったので、接種量を年令によってきめ細かく決められたようですが、現在のワクチンは昔の製品よりも安全性も高く、あまり副作用の心配もありません。
 今回の訂正された量が妥当かどうかは数年経過を見なければわからないと思いますが、一歩進んだ感じです。

 また、接種間隔も大人(13才以上)は1~4週間のままですが、子ども(13才未満)は2~4週間に変更されました。もっとも大人(13才以上)は通常1回接種ですから、今までと変わっていませんが、子ども(13才未満)は、今までの1~4週間から、2~4週間になりますので、最初は絶対混乱しますね。

 昨年までのように1週間で接種に来たら、「もう1週間待ってちょうだい。」ということになります。この時、「そんなこと聞いてない。せっかく来たんだから、接種しろ。」などと、待合いで怒らないで下さいよ。こういう決まりですからね。

 接種間隔は2~4週間の方が効果があるとは言え、流行が近づけば2週間待ってるうちにインフルエンザに罹ってしまうかもしれません。それよりも多少効果は落ちても1週間で早く接種したいと思いますよね。果たして、よい結果をもたらすか否か?これも数年経過を見なければわからないことです。

 早くも混乱しそうな今シーズンのインフルエンザワクチンですが、自治体の説明会は9月30日です。昨年は9月6日でしたので、10月1日から接種開始できましたが、今年は10月1日開始は無理でしょうね。毎年のことですが、また多忙な時期がやってきます。皆様のご協力もお願いします。

2011年8月26日(金)
ポリオワクチン

 少し涼しい日が続きましたが、今日はチョット暑かったですね。いや、暑いと言うほどでもないかな。ちょうど良い秋日和でしょうか。

 民主党の代表選挙は立候補者が5人になりましたね。主流だか、反主流だか、誰がなるのかわかりませんが、被災地復興、原発、経済、外交、福祉、医療、教育、全ての分野での活動が停滞しているように見えます。新代表=新総理には大いに頑張ってもらいましょう。

 今日はポリオワクチンについてのご質問をご紹介します。二つのポリオワクチンについて、みんなが知ってるようで知らないことも多いと思います。

M.Hさんからの


 いつも娘がお世話になっております。

 9月からポリオの集団接種が始まるにあたり、先生のご意見をうかがいたくメールしました。本当は今日予防接種で伺った際にお聞きすればよかったのですが、タイミングを逃してしまいました・・・。

 現在、国内では生ワクチンが使用されていますが、最近不活化ワクチンを受けている人も増えてきていると耳にします。国内ではまだ承認されてないということですが、トップページにあるポリオについてのリンク先を読むと2012年度末には承認されるのでは、ということ。(もしかして早まったりすることもあるのでしょうか?)

 さらに、私が昭和52年生まれでポリオの抗体価が低い年代に入り、それも少々不安です。(自分の母子手帳を見ると、接種は2回しています)。

 親としてはできることならリスクのより少ない不活化ワクチンにしたいと思いますが、それまで待ったほうがいいのか、それとも生ワクチンを接種した方がいいのか迷っています。

 吉田先生のお考えをお聞かせ願えますか。お忙しいと思いますので、お返事は急がなくても大丈夫です。よろしくお願いいたします。




 お便りありがとうございます。

 ご存知の通り、現行の生ポリオワクチン(OPV)は、副作用として【ワクチン関連麻痺(マヒ)】が見られる事があるため、来年度末から不活化ポリオワクチン(IPV)に切り替わる予定です。初耳の方は、輸入単抗原ポリオワクチンの認可を目指してをご覧下さい。 

 これをふまえて、今後IPVの需要は高まると思います。しかし、国は輸入単抗原IPVを承認していません。国内開発IPVを待っていてもまだ時間がかかることは明白です。

 当院でも輸入単抗原IPVを接種しようかとも思いましたが、現在、Hib・肺炎球菌ワクチン接種の公費負担、日本脳炎ワクチンの積極的勧奨接種の再開などにより、ワクチン接種者が大変増えてきております。また、10月からはインフルエンザワクチンも始まります。さらに、感染症、胃腸炎、喘息、インフルエンザなどなど、秋から冬にかけて小児科は猛烈に忙しくなります。

 輸入単抗原IPVを接種する場合、接種希望される方には少なくとも、輸入単抗原ポリオワクチンの認可を目指して程度の内容はあらかじめご理解していただかなければなりません。にもかかわらず、突然、外来で「IPVって、な~に?」と聞かれても、とうていごゆっくりとご説明する余裕はありません。

 おそらくIPVについては、かなり勉強されて医師以上の知識を持っている方から、殆ど知らないという方までいると思います。また、「OPVでもいいんじゃないの?」と思っている方の方が多いでしょう。

 今春の定期接種OPVは、接種者が少なかったようです。おそらく現在行われている秋の定期接種OPVも例年よりは少ないと思います。

 この様な状況が続けば、遅くとも来年度には、国としても、輸入単抗原IPVを承認せざるを得ない状況になると思いますが、それは、同時に現行のOPVを否定することにもなります。すなわち、一方でOPVを定期接種しながら、一方でIPVという選択肢を与えられた場合、多くの人は混乱するでしょう。

 ちょっと前に、輸入単抗原IPVを希望していらした方がおりました。OPVとIPVの違い、IPVの必要性、有用性などをご説明し、最後に「世界中で安全に使用されているワクチンですが、アナフィラキシーショックのような重篤な副作用が全く起こらないというわけではありません。その場合、日本の健康被害救済制度は適用されませんので、補償は微々たるものです。」と言うことをお話ししたら、やはり、少し様子を見るとのことでした。

 ワクチンの有用性が副作用を上回る ということはわかっていても、なぜ、国内未承認ワクチンを接種しなければならないのか?と考えてしまうようです。

 現時点では、殆どの方がこういう判断を下すと思います。ポリオ接種対象になる赤ちゃんの全ての保護者がIPVの必要性を理解できるまでにはまだ時間がかかりそうです。

 今、当院で輸入単抗原IPVを開始するにあたっては、一人一人にIPVの長所短所をご説明する余裕がなく、まだ、準備不足であり、時期尚早と思っています。

 しかし、いつまでも待っているわけにはいかず、今後IPVについて啓蒙を勧め、来春くらいには希望者には接種できるようにしたいと思っています。

 それから、お母さんのポリオワクチンについてですが、確かに、昭和50年~52年生まれの人は抗体が低いです。原因はよく分かっていませんが、当時のワクチンの抗体価が低かったようです。不良品ということではなく、少し力が足りなかったようです。

 もともとポリオワクチンはOPVでもIPVでも両方混ぜても、合計4回接種が原則ですので、あと2回接種が必要です。できればIPVで接種されればよいと思います。

 明解な回答にならず申し訳ありません。今のところ、この程度のお答えしかできません。

2011年8月23日(火)
せっかくの準優勝が・・・

 昨日は、とても残念で驚いた次のようなニュースがありました。

 『全国高校野球選手権で準優勝した光星学院(青森県八戸市)は22日、甲子園でプレーした野球部員3人が昨年末に飲酒したことが分かったため、停学処分にすると発表した。

 同校長によると、3人は昨年12月、それぞれが帰省中に飲酒。そのことを自らインターネット上に書き込んだとの情報が、22日に学校に寄せられた。学校側は同日登校した部員に聞き取り調査をし、飲酒の事実を確認したという。

 同校長は、22日以前には「事実を全く把握していなかった」と話した。今後の対応については「高野連に相談し、指導を仰ぎたい」と述べた。・・・』

 せっかく準優勝したのに残念ですね。子どもは飲酒禁止だよ。暴力、飲酒、喫煙で、過去に問題になった高校がどれだけあったことか、知らないわけでもないだろう。体は大人、頭は子ども、ということかな。

 でも、なぜ、今わかったんだろう?本当はもっと前にわかってたんじゃないのかな。学校側が「全く把握していなかった」と言っても、だれも信用しませんよね。昨年末の飲酒なら、今年の夏は地区予選に参加できるわけがない。ということで、今、発表?としか思えない。

「高野連に相談し、指導を仰ぎたい」というコメントは、あまりにも無責任。学校側としてどのような対応するのか、明言すべきだろう。

 しかし、ホントに自分で飲酒したことをインターネット上に書き込んだのかね?呆れた。開いた口がふさがらない。猛省しなさい。

 準優勝は、被災地東北に明るい話題をもたらしてくれた。大いに賞賛しよう。しかし、その実績とは関係なく、高野連、学校はこの事件に対して厳罰を持って臨み、二度とこのような不祥事が起こらないよう、モラルの向上に努力してほしい。

2011年8月21日(日)
高校野球

 お盆過ぎたら、涼しくなりましたね。これから夜はチョット冷えこむこともありますので、喘息発作も起きやすくなる時期です。健康管理に注意しましょう。

 よく、「夏カゼは治りにくい」といわれますが、この時期の長引く咳そう(咳)は、夏カゼよりもアレルギー関連の疾患が多いです。いつまでたってもスッキリしないと言うような時は、一度受診してみて下さい。

 今年の高校野球は、日大三高が優勝しましたね。しかし、よく打ちますね。主軸がうち、エースが好投し、勝つべくして勝ったチームという印象です。破れた光星学院、残念でしたね。先発選手全員が青森県外からの野球留学生というのには少し考えさせられますが・・・。悲願の東北への優勝旗は、また、お預けになりました。捲土重来また、頑張れ!!

 東北の高校は、夏は過去5回決勝進出していますが、いずれも破れています。私が一番印象に残っているのは、子どもの頃見た三沢高校(青森県)-松山商業(愛媛県)の試合ですね。知っている人は殆どいないカモね?

 好投手太田幸司が延長18回を投げきり、0-0で引き分け。翌日再試合も一人で投げ抜いて、惜しくも破れた試合でした。松山商業は投手が二人いましたが、三沢は太田幸司一人でした。引き分けした試合では三沢が押し気味だっただけに残念です。

 引き分け直後、松山商業の監督は、「向こう(三沢)は(投手は)太田くん一人だから、うちも、明日は井上(太田と延長18回を投げきった投手)一人でいく。」と言っておきながら、再試合では、二人の投手の継投でした。チョット、ずるいと思いましたよ。で、三沢は惜しくも敗れましたが、全国に東北もいずれ全国制覇をするだろうと印象づけた試合でした。

 その~十年後、私は小児科医として三沢市立病院に1年間勤務しました。太田幸司の生家も見てきました。まさか、自分が三沢に行くとは!。あの試合を見ていたときには思ってもいませんでしたね。東北初の優勝旗は、岩手か青森にとって来てほしいです。

2011年8月12日(金)
お盆

 今年もまたお盆を迎えます。大震災以後初めてのお盆ですので、とても切ない思いをされる方々も多いと思います。毎年お盆には故郷へ帰省される人たちで交通機関は混み合いますね。今日の東北自動車道はすごいラッシュのようです。40kmくらい渋滞したようです。

 私が子どもの頃は毎年お盆が近づくと、墓掃除と仏壇飾りの手入れをさせられました。お盆の意味もよくわからず、朝早く起こされて、お墓掃除に連れて行かれたり、猛暑の中、冷房もない部屋で汗を流しながら、仏壇飾りの手入れをしたり、もうイヤでイヤで仕方なかったですね。でもだんだんお盆の意味が理解できるようになって、今は少しイヤイヤですが、キチンと年中行事をこなしています。

 お盆の正式名称は「盂蘭盆会:うらぼんえ」と言うのだそうですね。昔、昔、お釈迦さまの弟子の一人、目連尊者(もくれんそんじゃ)という人が、自分の母親が餓鬼道(常に、飢えと乾きに苦しむ亡者の世界)に落ちて、逆さ吊りにされて苦しんでいる事を知りました。どうしたら母親を救えるのかお釈迦様に相談したところ、お釈迦様は「夏の修行が終った(旧暦)7月15日に僧侶を招き、多くの供物をささげて供養すれば母を救うことが出来るであろう。」と仰いました。

 そこで、目連尊者はお釈迦様の教え通りにしたところ、その功徳によって母親は極楽往生がとげられたということです。

 それ以来(旧暦)7月15日は、父母や先祖に報恩感謝をささげ、供養をする重要な日となりました。これが仏教のお盆の由来のようです。

 日本のお盆は、先祖や亡くなった人たちが苦しむことなく、成仏してくれるようにと、私たち子孫が、報恩の供養をする心と、今の自分があるのは、ご先祖さまのお陰であると感謝する先祖崇拝の気持ちが一緒になった行事のようです。

 さらに、古くからの農耕儀礼や祖霊祭祀なども融合して地域や宗教によって、あるいは時代によって、形を変えながら伝えられてきた習慣が現在のお盆です。ですから、日本の各地でいろいろなお盆行事があるのでしょうね。

 でも、最近は、あまりお盆を意識しない人も増えてきましたね。「どうして、お盆には墓参りに行くんだろう?時間の無駄じゃないか?」と、真剣に疑問を持つ人も多いようです。

 お盆は、先祖の霊が帰ってくる日ということで、親戚一同が集まってお迎えし供養します。故郷を離れている人も帰郷して来ます。新しく家族になった人たちのお披露目もあります。
 故人の思い出や家族・親族の近況を語り合うことは大変に意義ある素晴らしい風習であると思います。

 『親族が一堂に会し、先祖や故人を偲び、今日ある自分をかえりみる』という理念がお盆の根幹です。これからも世代を超えて受け継がれていくことでしょう。

2011年8月9日(火)
手・足・口病罹患後の爪変形、脱落

 7月下旬から、涼しくなって、もう今年の夏も終わりかなと思ったりもしましたが、今週は【暑い!】。やっぱりまだ夏だ。暑くなったら、また、手・足・口病が流行ってきた。気象と感染症は関係が深そうです。今日は、「手・足・口病罹患後の爪変形、脱落」について、ご質問をいただきましたので、ご紹介します。「エッ?そんなことあるの?」と思われる方も多いと思いますが、あるんですよ。時々・・・。

M.Iさんからの


 いつもお世話になっております。

 手足口病に関して教えていただきたいことがあってメールしました。

 7月中旬に手足口病になりました。週末でしたので休日当番医を受診し、先生には診察していただいておりませんが・・・。

 その後、手足口病が治ってから爪の脱落がある、という話を聞きました。ネットで調べたところ、比較的新しい情報のようなので、あまりよく分かりませんでした。実際にそのようなことはありますか?また、そのような場合には受診の必要がありますか??

 といいますのも、もともと爪噛みの癖があるので、手足口病のせいなのか、爪噛みのせいなのか判断がつかないのですが・・・。

 お時間のあります時にお返事頂戴できればありがたいです。よろしくお願いいたします。




 お便りありがとうございます。

 今年の手・足・口病は例年と少し異なっています。なんと言っても、発疹の出現部位が肘・膝・臀部に多いと言うことが特徴です。『手・足・口病』と言うよりも『肘・膝・臀部病』と言った方が良さそうですね。

 さて、ご指摘のあった「手・足・口病罹患後の爪変形、脱落」は、2000年頃に欧州(スペイン、フィンランド)や米国で見られたようです。おそらくこれが、最初の報告のようです。原因ウイルスはコクサッキーA6型(CA6)で、今シーズン日本で流行している手・足・口病もこのタイプですから、今後日本でも「手・足・口病罹患後の爪変形、脱落」が見られても不思議ではないでしょう。

 2009年8月~12月にかけて、愛媛県松山市で、小児32名、成人7名の患者で爪変形、脱落の発生が確認され、その殆どの患者が1~2ヶ月前に手・足・口病の既往があったということでした。このときの原因ウイルスも、今流行中のコクサッキーA6型(CA6)です。これが「手・足・口病罹患後の爪変形、脱落」の日本初の報告と思われます。

 もっとも、若干の爪変形、脱落は以前にも見られていたかもしれませんが、あまり、話題にならず、論文としては発表されていないようです。

 爪変形、脱落は、ちょっと爪が白っぽく変色する程度から、完全に剥離するような場合まで様々のようです。今のところ、そのような症例は見ていませんが、これだけ流行すれば、今後見られるかもしれません。「何となく爪が変?」と思ったら受診してみて下さい。

 特に予防法もないと思います。手・足・口病の後で爪が剥がれてきた場合は自然に任せるしかないようですが、手・足・口病の時に限らず、爪のケアとして以下のことに注意して下さい。

①.爪を短く切りすぎると(深爪)、指先が傷つきやすくなり、変形や剥離の原因になります。爪の先を1~2mmほど残して先端を四角く切ると良いと思います。

②.爪を切った後は、軽くヤスリでならすようにすると、すべすべして荒れにくくなります。

③.「爪噛みの癖」は、あまりよいことではないです。できれば、止めさせた方がよいですが、急に止めるわけにもいかないでしょう。できるだけ他のことに関心を持たせながら、自然に止めるようにして下さい。
 
 もし、爪が剥がれ落ちても、正常な爪が生えてくる場合がほとんどですので、そんなに心配しなくても良いと思います。経験が少なく適切なアドバイスができませんが、気になったら見せて下さい。では、お大事にして下さい。

2011年8月1日(月)
手・足・口病 大流行
膝の軽い発疹~水泡
膝に大きな水泡が見られます
肘にもたくさん水泡が見られます

 今年の夏は手・足・口病が流行していますね。テレビでも大流行なんて言ってましたが、少し時間差があります。ちょっと前までは大流行、先週は少し下火になって、今週からまた少し増えてきたかなという感じですね。

 手・足・口病と言えば、「手のひら、足の裏、口の中に小さな水ぶくれのような発疹が出る病気」でした。
 
 ところが、今年流行中の手・足・口病は毎年見られる発疹より大きめの発疹~水泡が膝、肘、臀部によく見られます。さらに、この部位に見られた発疹は、けっこう大きくなることもあり、水痘(水ぼうそう)みたいに見えることもあります。

 口腔内の発疹は他の部位に少し遅れて出現してきます。口内炎を形成して若干痛みが出ますが、食事ができなくなるほどではなさそうです。

 また、通常は乳幼児に多い手・足・口病ですが、今年は、年長児(小学生)にも多く見られます。

 手・足・口病の原因ウイルスはエンテロウイルスとコクサッキーウイルスですが、今年の手・足・口病はコクサッキーA6型(CA6)によるものだそうです。CA6は、あまり過去に流行したことがないと言うことですので、今年の手・足・口病は、珍しく見えるのでしょうね。

 数年前に同じCA6による手・足・口病が発生した欧州では、治った数週間後につめが浮き上がってはがれたり変形したりする事例が報告されたそうです。日本でも今後、同様の症状がみられるかもしれません。要注意ですね。

 保育園・幼稚園では、『みんなが、しっかり手洗いをする。おむつを適正に処理する。タオルの共用は避ける。』といった基本的なことが大事です。

 ところで、子どもが罹ると軽症ですむ手・足・口病ですが、大人が罹ると、時々重症になることがあります。発疹が出ている間は、お子さんの食べ残しを食べたり、食器を共有したりしないようにしましょう。

 いつものことですが、手・足・口病の場合、保育園・幼稚園での休園の基準についてはまちまちのようですね。「手・足・口病は軽症疾患であり、ウイルス排出期間も長いので、積極的に休園させる必要はない」というのが、従来の原則です。

 しかし、発熱を伴う場合や、口腔内の発疹が著明な場合は、食欲が低下し、脱水症状が見られる事もあります。この様な時は、お休みした方がよいと思いますよ。


2011年7月24日(日)
発熱と熱さまし

 先週は暑さも一段落して過ごしやすかったですけど、今日からまた暑くなりましたね。まだ、7月ですから暑さはこれからが本番でしょう。一昨日、当院を“寿退社”した看護師さんが赤ちゃんを連れて、嫁ぎ先の愛知県から帰省してきました。向こうとの気温差に驚いていましたね。赤ちゃんも夏カゼをひいて発熱したり、アセモで湿疹がひどくなったり、新米ママさんもけっこう大変そうです。小児科の看護師経験を生かして子育てに励んでいるようでした。今日は、「発熱と熱さまし」についてご質問のメールをいただきましたのでご紹介したいと思います。

M.Wさんからの


 吉田先生

 いつもお世話になっております。19日(火)午前中に受診し、手足口病との診断をいただきました。子どもは18日(月)の朝から発熱と発疹があり、19日に病院から帰宅したころには、39度7分まで上がっていたため、処方していただいた坐薬を使用しました。

 お伺いしたいのは、坐薬の使用頻度です。平日は仕事があるため、子どもが体調を崩したときのお世話はおばあちゃんにお願いすることが多いのですが・・・。

 おばあちゃんは、「熱はこわいよ、脳がやられるから。早く熱さましを使いなさい。私が子育てしたときなんて、38度超えさせたことなんてほとんどない。」とたびたび言います。最近、親戚のお孫さんが高熱から髄膜炎、脳性まひになったらしく、熱に対してさらに神経質です。
 
 私はおばあちゃんの考えと違います。吉田先生のHPの病気のお話で、発熱は体がバイキンと戦っている証拠・・・という言葉に納得しているので、ちょっと熱が高いというだけで、むやみに熱さましを使いたくないのです。必要なときに薬は使います。ただ、すぐ頼りたくないだけです。
 
 もちろん、子どもが39度を超えるととても心配です。一時的にでも、薬で早く熱を下げてあげたいです。最近熱性けいれんを起こしていますので、発熱のたびに「また起こすのでは・・・」と不安になります。でも、ぐったりしていたり熱が何日も続くようであれば別ですが、私の中では熱さましは最後の手段・・・的な位置づけにあるのです。

 いろいろな考えがあるとは思うのですが、パパも「すぐ熱さまし使いたい」派なので、私の考えを理解してもらえるような説明をするのが難しく・・・。「子どもが苦しそうなんだから、早く熱さまし入れてあげなよ」と言われてしまいます。

 ちょっと愚痴が入ってしまいましたが(笑)、発熱(38度5分以上)のたびに坐薬を使用していると、効き目が鈍くなる・・・ということはありますか?

 早期に坐薬を使って熱を下げてもまた発熱した場合、上がったり下がったり・・・で発熱の期間が長引くということはありませんか?
 
 今日受診した際にお聞きできなくてすみません。お忙しいところ恐れ入りますが、よろしくお願いします。




 お便りありがとうございます。

 発熱が心配というお便りもよくいただきます。fever phobia(発熱恐怖症)などと揶揄した言い方をする医師もいますが、実際に自分の子が高熱が続くと誰でも心配になるものですよね。

 私も自分の子が小さい頃に高熱が続くと心配でした。そんな時は、「おそらくカゼだろう~原因はウイルスだろう~何も特効薬があるわけじゃない~免疫が上がれば自然に治るだろう~時間が経つのを待つだけ・・・。」と思っても、正直、不安な時もありましたよ。

 細菌性髄膜炎のような重症感染症ではないか?悪性腫瘍(小児がん)が隠れているんではないか?膠原病(免疫異常の病気)の初期症状ではないか?等と、考えたりもしました。なまじっか知識があるとかえっていろんな事を考えてしまうモンです。

 さて、本題に入りましょう。おばあちゃんやお父さんのお気持ちはよくわかります。しかし、「熱が上がった。すぐ下げろ」というものではないですよね。おかあさんがおっしゃるとおり、「ちょっと熱が高いというだけで、むやみに熱さましを使いたくないのです。」という考え方でよろしいと思います。でも、いかにしてそのことを周囲のご家族に理解してもらうかとなるとチョット難しいかもしれませんね。

 「熱はこわいよ、脳がやられるから。早く熱さましを使いなさい。私が子育てしたときなんて、38度超えさせたことなんてほとんどない。」最近、親戚のお孫さんが高熱から髄膜炎、脳性まひになったらしい。というおばあちゃんのお話しからは細菌性髄膜炎を考えてしまいます。乳幼児の発熱で一番心配なケースと思います。

 しかし、高熱から髄膜炎になるのではありません。髄膜炎になったから高熱が続くのです。この熱は解熱剤をいくら使っても下がりません。使うだけ無駄です。それでも熱が続くから解熱剤を使い続けていたのでしょうね?
 お子さんは、ヒブワクチンも、肺炎球菌ワクチンも接種していますよね、であれば、まず髄膜炎にはかかりません。解熱剤なんかよりももっと確かな治療をしているわけですから、ご親戚のお孫さんのような事はありません。大丈夫です。というような事もおばあちゃんにお話してあげたらよいと思いますよ。

 子どもが発熱したらみんな医療機関を受診します。とにかく心配ですからね。それでいいですよ。最初は原因がはっきりしなくても、小児科医だったら2~3回診れば大体どんなものかわかります。
 
 カゼ、気管支炎・肺炎、中耳炎、扁桃腺炎、胃腸炎、尿路感染症、髄膜炎、いろいろありますけど、ちゃ~んとわかって診てますよ。必要な検査はその都度しています。小児科医を信頼して下さい。「でも、熱が続いているじゃないか」とおばあちゃんが言っても、「しっかりした小児科の先生に診てもらっているから心配ありません」といって下さい。 
 
 それでもご心配されるようでしたら、次回はおばあちゃんもご一緒に受診して下さい。私とおばあちゃんで発熱談義しましょう。自分も医者になりたての頃は、おばあちゃん達には難儀しましたね。「発熱も治せないようなこんな若僧になにがわかる。」なんて感じでゴチャゴチャ言われましたよ。懐かしい思い出です。

 一般論はこのくらいにして、メールのご質問にお答えします。
 
 原則として、解熱剤の使用は、6~8時間おきとして使用すればよいと思います。しかし、実際にこんなに使用する事はないと思います。つまり、心配で使い使いすぎている場合が殆どと思います。

1.最近熱性けいれんを起こしていますので、発熱のたびに、「また起こすのでは・・・」と不安になります。 

 熱性けいれんは解熱剤では予防できません。けいれん予防の坐薬がありますが、熱性けいれんを1~2回起こしたから使うというようなものでもありません。ケース・バイ・ケースです。ただ、インフルエンザによる熱性けいれんはチョットたちが悪いので、熱性けいれんを起こしやすいお子さんには、冬季は予防として、発熱時にけいれん予防の坐薬を処方しています。

2.発熱(38度5分以上)のたびに坐薬を使用していると、効き目が鈍くなる・・・ということはありますか?

 頻回に使ったからといって効き目が鈍くなるというような事はないと思いますが、実際にそんなに頻回に解熱剤を使用する必要がないと思います。いつも患者さんにお話ししている事ですが、1日2回以上解熱剤を使わなければならないようなときは、翌日必ず受診するように勧めています。それは、使わなくてもよいのに(熱が下がらないので心配で)使っているか、又は、解熱剤だけでは、改善できない状態かのいずれかです。殆どの場合、前者ですが、稀に重症になっているお子さんもいます。ですから、頻回に解熱剤を使用するときは、早めに受診して下さい。

3.早期に坐薬を使って熱を下げてもまた発熱した場合、上がったり下がったり・・・で発熱の期間が長引くということはありませんか?

 発熱早期に解熱剤を使用しても、発熱期間が短くなる事はありません。ある程度免疫ができてくるまでは発熱は続きます。発熱の度に解熱剤を使えば、免疫の働きもその都度中断しますので、発熱期間がかえって長引く可能性があります。とは言え、少々長引く程度です。具合が悪く、いつまでも眠れないような時は、ガマンしないで解熱剤を使って良いです。
 結論として、具合が悪いなと思ったら解熱剤を使用してもかまいません。多少発熱期間が長引いても五十歩百歩です。

2011年7月14日(木)
夏の夜の冷房

 今日は少し暑さが和らぎましたかね。でも、蒸し暑いですね。この夏の暑さを寒い冬に持っていければいいのになんていつも思ってしまいます。逆に、冬には、この冬の寒さを暑い夏に持っていければ・・・と、夢ですね。何年か先にエネルギーを変換できる技術が開発されれば、できるかもしれませんね。そうすれば電力不足も心配なくなるでしょう。現実は、「毎日暑い。夜も暑い。」です。

 今日は夏の冷房(空調)について、ご相談のメールをいただきました。お子さんが熱を出して具合が悪い。夜も暑くて熟睡できない。夜の冷房をどうしよう?というお話しです。建築~エアコン関係は詳しくありませんので、あまり、良いご返事にはなりませんが、医学文献も参考にして、ない知恵を絞ってみました。少しでもご参考になれば幸いです。

A.Oさんからの


 よしだクリニック 吉田先生

 いつも大変御世話になっております。M.Oの母でございます。

 先日、受診させて頂きました以降、熱も落ち着き食欲はまだありませんが、あとは咳と痰のからみ、時たまの腹痛の症状を残すのみにまで回復致しておりました。誠に有難うございます!

 週末を前に、明日また受診させて頂こうと思っておりましたので、どうぞ宜しくお願い申し上げます。

 さて、前段とは別に吉田先生にご質問がございました。(診療時にお伺いしようかとも考えたのですが、あとの患者さんがいらっしゃると、なかなかゆっくりのお話も難しいかと思い、メールにてご質問申し上げさせて頂きました。)

 ここ数日、日中のみならず夜も蒸し暑く寝苦しい日が続いておりますが、クーラーとの上手な付き合い方についてお教え頂きたくご質問でございました。

 今回の娘のように高熱を出してしまった場合、娘の体感上、『寒い』等の訴えがない場合には、体力の消耗等を考慮し、クーラーを利用した方が有効なのでしょうか?それとも、クーラーは使わず、かえって脇の下や大腿部、首のうしろ等々を氷枕的なもので冷やすだけに留めておいた方が宜しかったでしょうか?

 今回に限っては、さすがに暑かったのもあり、娘も高熱でぐったりしていましたので、日中はクーラーを27~28度に設定し、使用致しておりました。(首のうしろを冷やす氷枕も併用しました。) ちなみに、夜はどうにか自力で眠れていたので、クーラーは使用せず脇の下、首のうしろに氷枕で乗り切りったのですが、これもまた無理はせず、かえってクーラーを弱くかけた部屋で夜間も休ませた方が宜しかったのでしょうか?(私個人としては、夜間にクーラーを使用したまま休むという経験が今までほとんどございませんでしたので、なんとなく冷えすぎてしまうのでは。。。といいますか、躊躇してしまう傾向がありまして。。。)

 さすがの娘も、この大暑の中、数日の高熱だったせいか(夜間も、熱や暑さで何度か『のどが渇いた~』などと起きてしまう日が続いたせいか…) 体力や食欲がだいぶ落ちているようで…、その諸々の回復を図る為にも、先生からアドバイスを頂戴し、早速実践してみようと思っておりました!夏本番に先がけて、吉田先生の見解をお伺い出来ますと幸いに存じます。

 お忙しいところ、大変お手数をおかけ致しますが、何卒宜しくお願い申し上げます。




 メールありがとうございます。夏の空調は面倒ですね。冷えすぎても暑すぎてもよくないのはわかっていますが、調整の仕方がとてもやっかいです。室内で涼しいと感じるくらいならもう冷えすぎなんでしょうね。

 お子さんが発熱しているときの夜の冷房をどうしたらよいかという事ですよね。新陳代謝を活発にする意味でも、夏は少し汗ばむくらいが良いとはいえ、発熱して具合が悪いときはどうしても冷房に頼ってしまいますよね。よくわかります。日中はつけたり切ったりで良いと思いますが、問題は夜ですよね。ウ~ン、どうしましょう。
 
 ちなみに自分の場合は、夜寝る前に少し冷房をかけて涼しくなった頃にリモコンのスイッチを切って寝る。夜中に暑くて目が覚めたら、また冷房のスイッチを入れて、眠気と涼しさのバランスを見計らって、サッと、スイッチを切るという極めて原始的な対策です。これはとてもお勧めできません。時々スイッチを切り忘れて寝てしまいますからね。

 夜間の冷房、つまり、~いかに健康的にグッスリ眠れるか~、という事ですよね。

 一般的な事になりますが、

・西日の入る部屋は、部屋の温度が上がりますので、寝室には適しません。寝室にする場合は、カーテンやすだれで日ざしを遮って下さい。
・部屋へ帰ったら、まず、窓を開けて換気をしましょう。部屋にたまった熱を外に逃がすことで、部屋の温度が下がりやすくなります。
・冷気は下へ下へとたまっていきます。2階よりは1階の方が涼しいです。
・除湿(ドライ)は、設定温度が高くても体感温度は下がります。
・間接的に風が身体にあたるようにすれば、体感温度は下がりますので、扇風機を併用するのも効果的でしょう。

 というような対策はありそうですが、これだけでは不十分ですよね。大体にして医学的とは言えないですね。

 日本睡眠学会という面白い(?)学会があります。この学会で、「エアコンのタイマー使用による室温変化が終夜睡眠にどのような影響を与えるのかを調べた研究結果」というテーマがありました。エアコンをいろいろな条件に設定して実際の睡眠効果を調べた研究です。以下にその概要を示します。

1.コンスタント
 実験に参加した人の“基準気温”を終夜一定に保つ。基準気温とは、個々の被験者が昼間の実験で最も快適な気温として選択した気温。

2.タイマー1.5時間
 基準気温から2度低い室温で1時間半一定に保った後、1時間かけて4度上昇させ、その後は一定に保った。

3.タイマー3時間
 基準気温から2度低い室温で3時間一定に保った後、1時間かけて4度上昇させ、その後は一定に保った。

4.スリープ
 基準気温から始め、就寝後1時間で室温を2度下降させ、その後6時間かけて3度上昇させた場合。
   
 実験の結果、睡眠に悪い影響が出る可能性があったのは、「2.タイマー1.5時間」と、「3.タイマー3時間」でした。これらのタイマー設定では、室温が上昇するのに伴い30分遅れで平均皮膚温が上昇したそうです。加えて、深部体温(直腸温)の上昇や心拍数の増加につながることも判明しました。

 睡眠に悪い影響としては、「2.タイマー1.5時間」と「3.タイマー3時間」の設定では、睡眠の深さを表す睡眠深度の出現が妨げられる可能性が確認され、特に「2.タイマー1.5時間」では、睡眠リズムが崩れて、深い睡眠が出現するのを妨げることが明らかになったそうです。。

 この実験からは、「4.スリープ」の場合が、睡眠中の快適環境に近いという結果が得られています。ただし、「4.スリープ」のような温度調節は、ほとんどのエアコンでは難しいですよね。

 「タイマー3時間」は睡眠の質としては、そんなに悪くは無かったと実験に参加した人たちが言っている事から、とりあえずエアコンに頼らざるを得ない場合は、冷えすぎないように注意して、タイマーが切れるまでの時間設定をより長めにとってみると良いかもしれません。
 
 なお、「1.コンスタント」は、特に悪い影響は見られなかったそうですが、エアコンの終夜運転が必ずしも快適な睡眠をもたらすことでは無いと言っています。

 スッキリした結論が出てはいませんが、この実験を参考にして、「基準気温で冷房を3時間かけて中止する」方法が今のところ最善でしょうかね?

 基準気温については、実験に参加して人たちは、24度が2人、26度と27度が1人ずつ、28度が3人だったそうです。多分、この温度で設定すれば時間が経つにつれて体温は下がってくるでしょうから、これよりチョット高めの設定がよさそうです。28度くらいがちょうど良いくらいじゃないでしょうか。

 どうも、明解にはほど遠いご返事になってしまいましたが、少しはご参考になりましたでしょうか。暑さ対策には規則正しい生活も大切です。早寝早起きして夏を乗り切って下さい。

2011年7月11日(月)
ケータイ母子手帳

 毎日暑いですね。特に昨日は暑かった!買い物やら何やらであちこち出かけましたが、建物の中は節電とはいえ、けっこう涼しいです。でも外に出るとモア~としますね。ということは、もう少し温度が高めの冷房でもいいかもしれません。熱中症には注意が必要ですが、体の新陳代謝を活発にする上では少し汗ばむくらいがちょうどいいように思います。

 ところで、暑さとは関係ありませんが、「ケータイ母子手帳」をご存知ですか?ちょっと前まではあまり考えられなかったことでしょうが、IT(情報通信技術)の進歩はめざましく、母子手帳もケータイに入れてしまおうという試みです。しかし、実際に母子手帳を発行している自治体が行うのではなく、製薬メーカーのアイデアです。

 「ケータイ母子手帳」は、予防接種率を向上させることで、ワクチンにより防げる病気を減らすことを目的に開発されました。また、お子さんの通院記録や成長記録なども管理することができます。

 「ケータイ母子手帳」は、お子さんの誕生日などを登録するだけで、ワクチンの接種時期やワクチンごとの接種間隔などを考慮した接種のスケジュール表が作成され、それぞれの予防接種の時期に合わせてメールが配信されますので、忘れやすい接種時期を確認することができます。

 当院では開院以来、三種混合ワクチンや日本脳炎ワクチンなど1年後に追加接種するワクチンのお知らせをハガキで行ってきました。そろそろこのようなソフト(サイト)がほしいなと思っておりましたが、この度、第一三共製薬が『赤ちゃんの予防接種をケータイでサポート』と銘打って、「ケータイ母子手帳」を製作してくれました。

 これを利用すれば1年後でも何年後でも接種時期が来ればメールが来ますので大変便利です。今後、多くの医療機関で使用されると思います。登録料は無料です。

 詳細はこちら→ケータイ母子手帳をご覧下さい。

右のQRコードを携帯電話のカメラで読み取っても登録できます。
2011年7月5日(火)
アッと、驚く「復興担当大臣」

 前復興担当大臣:松本龍(以下、松本氏)の暴言には驚いた~。ネ

 「お客さんが来るときは自分が(まず部屋に)入ってから(客を)呼べ。」とか、「(漁港を)3分の1~5分の1集約すると言っているけど、県で(漁業者の)コンセンサス得ろよ。そうしないと我々何もしないぞ。」とか、「知恵を出さないヤツは助けない。」とか、「(被災地の)何市がどこの県とか分からん。」とか、何なんだ?何様だと思っている?これが大臣か?まるでヤクザじゃないか。

 ブチギレシーンを報じられたくなかったのか、松本氏は「今の最後の言葉はオフレコです。いいですか? 皆さん。絶対書いたらその社は終わりだから」と言ったそうな。

 しかし、東北放送は堂々と「松本龍復興担当大臣が就任後はじめて、宮城県庁を訪れましたが、村井知事が出迎えなかったことに腹を立て、知事を叱責しました」と報道したね。

 ニュースの内容は、「宮城県庁を訪れた松本龍復興担当大臣。村井知事が出迎えなかったことで顔色が変わります。」や「数分後、笑顔で現れた村井知事が握手を求めようとしますが、これを拒否。応接室に緊張が走ります。」という解説とともに、松本氏がブチギレしたことをメインに報じてましたね。一応復興支援の話しもしたようだけど・・・。

 オフレコなのに報じてしまった東北放送は、松本氏の手によって消されてしまうのか。マスコミも手を出せない大物なんだろう。いやはや政治家は恐ろしい。

 1分37秒待たされて怒るか?それなら言うが、被災地を復興まで何ヶ月待たせてる?【お里が知れる】とはまさにこの事。どうにもならない輩と思ったが、「(漁港を)3分の1~5分の1集約すると言っているけど、県で(漁業者の)コンセンサス得ろよ。そうしないと我々何もしないぞ。」という事がチョット気になったので、調べてたら意外な事がわかりましたよ。

 東日本大震災からの復興を目指す宮城県の「復興会議」には、野村総研顧問や三菱総合研究所理事長らが委員として入り、「委員12人のうち宮城県内在住者はわずか2人」(河北新報18日付)だそうです。委員19人全員が県内在住者である岩手県の「津波復興委員会」と著しい対比をなしています。第2回の宮城県「復興会議」は、「委員の大半が首都圏在住のため…村井知事らが上京」(同)し、都内で開催したそうです。

 村井知事は、4月23日に開かれた政府の復興構想会議の席上、「漁業の株式会社化を大がかりでやったらどうだろうか」と提案し、10日の同会議では「緊急提言」として、沿岸漁業への民間参入や資本導入を図る「水産業復興特区」を提案しています。

 もうけが上がらなければ勝手に撤退してしまう「企業の大規模参入」。という懸念が漁協に拡がったようです。宮城県漁協の木村稔経営管理委員会会長は25日の衆院大震災復興特別委員会で、「子々孫々まで漁業を続け、そこに住みつくのが漁師。会社なんてもってのほか」、「バカにするなといいたい。漁業者は全員一致で反対だ」と表明しています。

 今なお、宮城県では、約400カ所、2万8千人近くが厳しい避難生活を送っているなかで、財界の意向が前面に押し出されている復興計画は大きな「構造改革」となって地元との葛藤が始まっているようです。

 この様に県内でもめていたのでは進展がない。「(漁港を)3分の1~5分の1集約すると言っているけど、県で(漁業者の)コンセンサス得ろよ。そうしないと我々何もしないぞ。」これは、丁寧な言葉に訳すと「漁業の再編成は、宮城県で、よく話し合って同意を取り付けなさい。そうしたら、国はその方針に従って援助しますよ。」という事じゃないかナ~。松本氏を擁護する気はないが、普通に話せばよかったのにね。チョット気になった事でした。

 さて、松本氏に変わって復興担当大臣に任命されたのは、ご存知、岩手県の平野達男代議士。確か、3月のNHK「日曜討論」で、「現地スタッフは自分でやるという覚悟を持って、いちいち上の判断を仰ぐな!」って、言ってたな。自分が「上」になったからにはそんな事言ってられないな。また、松本氏の辞任を受けて、「引き続き松本氏の下で復興に取り組みたい気持ちは今も強く持っている」とも言ってたが、今度は、あんたがトップなんだから、「下」じゃないんだよ。しっかりしてくれよ。

 最近、気仙沼出身で地元でも頑張っている自民党の小野寺五典さんを復興担当大臣に希望する声も多い。気仙沼で水揚げされた初カツオが自民には届いたが、民主には届かなかったらしい。

 小野寺さんに負けないように、平野さんには逆風を乗り越えて、東北の復興に尽力してほしい。全国的におそらく無名だろう。実績もないだろう。決して前評判は高くないだろう。また、地元出身という肩書きは両刃の剣でもある。それこそ「身を捨ててこそ浮かぶ瀬もあれ」だ。そのくらいの覚悟で頑張ってほしい。日本中に東北人魂を見せてくれ。

2011年7月3日(日)
胡蝶蘭
胡蝶蘭
新しい花

 7月1日から9月22日までの平日午前9時から午後8時まで、一律15%程度の節電が、要請されました。これからエアコンが必要な時期での節電は厳しいですが、仕方ないですね。でも、あまり無理をして熱中症にならないように気をつけましょう。

 ところで、15%程度とはどのくらいなんでしょう。具体的に何をどうすればよいか、チョットわかりにくいです。
 多くのスーパーやお店がしているように、当院でも3月11日以後、蛍光灯を少なくして節電をしています。3月以後の電気料は15~20%くらい少なくなっていますので、少し暗い院内ですが、ちょうど良いくらいの節電のようです。
 
 あとは、冷房ですね。28~29度で維持していますが、真夏はどうでしょう。待合室にはうちわも置いてますので、ご利用下さい。

 今年は開院15年目にあたります。毎年4月にはささやかではありますが、開院記念祝賀会をしておりました。
 しかし、今年は大震災がありましたのでそれどころありません。 祝賀会は中止、来年に持ち越しです。とは言え、何もないのもチョット寂しいというので、職員一同から胡蝶蘭をいただきました。診察室に飾ってますが、見ましたか?

 私は花の知識は殆どありませんが、胡蝶蘭が高級できれいな花だという事くらいは知っています。実際なかなかきれいな胡蝶蘭です。
 実は、5年前の開院10周年の時にも知り合いの方から胡蝶蘭をプレゼントしていただきました。この時もきれいな胡蝶蘭でしたが、手入れが悪く短期間で枯らしていしまいました。胡蝶蘭は育て方が難しいようです。

 そこで、今回は、職員一同よく勉強しながら、育てています。おかげで、最初の花は枯れましたが、新しいつぼみがつき、花が咲いてきました。

 水のやり方、陽の当て方、空気の乾燥、等など、季節によってもいろいろ手入れの仕方が変わってきます。手間暇がかかる胡蝶蘭ですが、きれいな花を見ると心が和みます。

 胡蝶蘭には、白とピンクの花がありますので、花言葉も白とピンクの二つあるようです。白の花言葉は「清純」。ピンクの花言葉は「あなたを愛します」という意味があるそうです。素敵な花ですね。いつまでもきれいに咲いていてほしいです。