RSウイルス、ヒトメタニューモウイルス、急性細気管支炎

とても怖い病気です。 

 赤ちゃんのゼーゼーは、要注意!!


 RSウイルスは主に冬季に流行する呼吸器感染症を引き起こすウイルスです。大人が罹っても鼻カゼ程度の症状ですみますが、赤ちゃんが罹ると急性細気管支炎という重症な気管支炎になることがあります。

 急性細気管支炎は、生後2才未満の赤ちゃんによく見られます。空気は太い気管支を経て細い気管支に送られていきます。一番細い空気の通り道が、細気管支です。細気管支炎とは、この細い気管支に炎症が起こり、粘膜が腫れて、気管支が詰まって呼吸ができなくなる病気です。


◆ 主な症状は

 潜伏期間は4~6日間で、最初、軽い鼻水、咳などのかぜ症状が2~3日続いた後、気管支が詰まってきて、ゼーゼー、ヒューヒュー(呼気性喘鳴)という苦しい呼吸が見られるようになりますが、いきなり、ゼーゼー、ヒューヒューという苦しい呼吸で始まることもあります。ゼーゼー、ヒューヒューしてきたら、どんどん悪くなることが多く、入院治療が必要です。


◆ そんなに重症なの?

 そうです。赤ちゃんにとって急性細気管支炎は大変な病気です。特に6ヶ月未満の赤ちゃんでは重症化することも珍しくありません。

 朝に鼻水が出る程度でも、夕方には重症な呼吸困難になっていることもよくみられます。ゼーゼー、ヒューヒュー(呼気性喘鳴)が強くなると、肩で呼吸するようになり、お腹や肋間がペコペコへっこんだり、さらにひどくなると、喉仏のあたりまでペコペコして呼吸するようになります(多呼吸、陥没呼吸)。

 チアノーゼは血中酸素濃度が低下し、顔面が紫色になることをいいますが、乳児の場合、まず真っ青(顔面蒼白)になります。もっとひどくなると呼吸が止まることもあります。


◆ 細気管支炎の原因はRSウイルスだけではありません。

 アデノ、ライノ、パラインフルエンザ、インフルエンザなど冬季に流行するウイルスも急性細気管支炎の原因になります。もっとも多くみられるのがRSウイルスで、細気管支炎の70~80%をRSウイルスが占めています。

 もう一つ、最近注目されるようになってきたウイルスにヒトメタニューモウイルス(名称が長いので、以下ヒトメタ)があります。ヒトメタも大体RSと同様の症状が見られますが、RSよりは、やや軽症という印象があります。乳幼児のゼーゼー、ヒューヒューを見れば、まず、最初にRSかヒトメタを疑います。検査して、RS(-) ヒトメタ(+)なら、保護者に「ヒトメタです。」とご説明しますが、「それ、なんですか?」と聞かれます。「RSの年長版みたいなもんです。」と言うと、「なるほど。」と納得されます。まだ、知名度は低いようです。RSとよく似たヒトメタですが、次のような相違点があります。

  RS  ヒトメタ 
 好発年齢  2才未満  2~4才
 症状  発熱、咳、鼻汁、喘鳴  発熱、咳、鼻汁、喘鳴
 重症度  6ヶ月未満(特に1~2ヶ月)重症例多い。  軽症~重症、RSほど重症ではない。
 流行期  秋~冬  春
 薬  なし  なし
 検査  1才未満  6才未満

 ヒトメタの検査は、胸部写真を撮影してからでないと検査できなかったのですが、2018年4月から胸部写真なしでも検査できるようになりましたので、これからはたくさん見つかるようになるでしょう。重症例はRSの方が多いです。しかし、1才未満でもヒトメタに罹ることもあり、その場合はけっこう重症です。

 流行期は最近かなりずれてきた感じがします。2017年は夏からRSの流行が延々と続きました。2018年も夏に流行しています。ヒトメタは毎月見られます。RSとヒトメタは乳幼児のゼーゼー、ヒューヒューの2トップです。ちょっと呼吸が苦しいかな?と思ったら早めに受診しましょう。



◆ 治療法はあるの

 残念ながら、特効薬はありません。気管支喘息でよく使用される気管支拡張剤も赤ちゃんは気管支の筋肉が弱いため、殆ど効果は期待できません。軽症の場合は去痰剤やほどよい水分補給で改善することもありますが、ゼーゼー、ヒューヒューがはっきりするような場合は、まず、入院が必要です。酸素投与や輸液、吸入療法が、治療の主体ですが、重症な場合は人工呼吸器が必要なこともよくあります。


◆ 予防薬:シナジス

 急性細気管支炎に特効薬はありませんが、RSウイルスが原因の急性細気管支炎にはシナジスという予防薬があります。残念ながら誰にでも投与できるわけでなく、現在国内では、未熟児で出生したり、慢性肺疾患を持っている場合など、限られた症例にのみ保険適応が認められています。

 シナジスの保険適応がある症例は、以下の場合です。
①.早産児
・お母さんのお腹にいた期間が28 週以下で、RSウイルス流行開始時に12ヶ月令以下の赤ちゃん
・お母さんのお腹にいた期間が29~35 週で、RSウイルス流行開始時に6ヶ月令以下の赤ちゃん

②.慢性肺疾患を持つ子
・過去6ヶ月以内に気管支肺異形成症などの呼吸器疾患の治療を受けたことがあり、RSウイルス流行開始時に24ヶ月令以下の子ども

③.先天性心疾患を持つ子
・RSウイルス流行開始時に24ヶ月令以下の先天性心疾患児で、血行動態(心臓や血流)に異常がある子ども

④.ダウン症
・解剖学的または生理的・機能的異常:顕著な巨舌、舌根沈下、気道軟化症などによる気道狭窄および合併する無呼吸、肺高血圧、肺低形成・異形成、肺気腫様変化。
・呼吸器またはウイルス感染症の既往:ウイルス感染症・呼吸器感染症による入院の既往。
・免疫に関する検査データ異常:リンパ球減少あるいはT細胞の減少。


◆ 細気管支炎にならないためには、どうすればよいの?

まず第一に注意すべきは、とにかく、予防です。
 
①.赤ちゃんのいる家庭では家族全員が、手洗い、うがいを励行することです。
②.カゼをひいたら、赤ちゃんに近づかないことです。
③.家庭内の喫煙は絶対ダメ。室内の空気をきれいにすることです。
④.赤ちゃんを人混みに連れて行かないことです。
⑤.保育園のような集団生活の場で、急性細気管支炎が発生したら、流行がおさまるまでは休園した方がよいです。
⑥.基礎疾患のある赤ちゃん(先天性心疾患や未熟児で生まれて慢性肺疾患を持っている場合など)は、重症化しやすいのでカゼをひいたなと思ったら、早めに小児科を受診することです。


◆ 細気管支炎になったあとも少し心配(RSウイルスと気管支喘息との関係)

 RSウイルス感染症後、6ヶ月~1年くらいは、カゼをひくたびにゼーゼーしたり、いつまでも咳が続くことがあります。特に家族歴にアレルギーがある場合は、将来、気管支喘息を発症する場合も多くあり、細気管支炎に罹らない場合と比べると、10倍なりやすいといわれています。