診察室便り

2008年12月31日(水)
「八方塞がり」と、「八方開き」

 もう少しで今年も終わります。いつもならとても忙しい12月ですが、今年は特に大流行する病気もなく、比較的平穏な年でした。無事1年を過ごすことができ、ホッとしています。 

 私は占いなどまず信じることはありません。が、しかし、今年の初めに、知人から、九星気学とかいう占いによると、私は「八方塞がり」の年にあたり、大変な年になるといわれました。気にも止めませんでしたが、ちょっとは気になりましたので、職員一同八幡様でお払いをしました。新年会の余興くらいの感じで行ってきましたが、何となくこれで安心しました。(信じないと言ってもちょっとは気になるモンね。)

 別に根拠があるわけではないでしょうが、人間誰しも年をとるにつれて健康が心配になってきます。そういう時の警告みたいなものかなと思います。「八方塞がり」について、いろいろ調べてみたら、パワーのある人は逆に「八方開き」となり、とても良い年になるのだそうです。自分はパワーがあるのかな?どうもひ弱な感じですから、まず、「八方開き」にはなりませんでした。一年を振り返ってみますと、特に良いこともなく、特に悪いこともなく、普通の一年だったように思います。お払いのお陰(?)で平穏無事な一年だったのかな。なんて思っています。

 来年はどんな年になるんでしょうね。クリニックの仕事始めは、1月5日(月)からですが、私は明日1月1日の夜間診療所から始まります。「八方開き」でなくても「二〜三開き」くらいの年になればいいですね。皆さんも良いお年を迎えて下さい。

2008年12月17日(水)
細気管支炎について、お便り紹介

 ここ1週間くらい、1日1〜2人くらいのインフルエンザの患者さんをみますが、あまり大きな流行にはなっていないようです。11月7日の診察室便りに、急性細気管支炎について書きましたが、まだ、患者さんは結構いますね。今日は、その急性細気管支炎についてのお便りをいただきましたのでご紹介します。

A・Aさんからの


 鼻水・たんで通院していましたが、先日家に遊びに来た子(1か月半)がRSウイルスにかかっていました。土曜日に来たのですがその時点で咳をしていて、ここ数日でひどくなり、今日RSウイルスと診断されたそうです。

 いまのところひどい咳は見られませんが、日に何度かケホケホとしています。ただ、むせているだけかもしれません。母乳の飲みはいつもと変わりなく、吐き戻しはもともとよくあるのでこちらも普段と変わりはないと思います。ここ2日くらいいつもより睡眠が多いですが、機嫌が悪いということはありません。

 ネットでは潜伏期間は3〜4日と書いてありましたが、それ以降でも症状が出てくることはありますか?もし症状が出てきた場合は夜間でも病院へ連れて行った方がいいでしょうか?また、受診の目安はどんな症状でしょうか。

 よろしくお願いいたします。



 お便りありがとうございます。RSウイルスと診断されたということは急性細気管支炎ですね。この病気は、赤ちゃんに多い病気です。進行が早い場合が多く、ちょっと咳をしたり、鼻水が出るくらいの軽いカゼにみえても、半日くらいで呼吸困難になってしまうこともあります。ただ、細気管支炎になればみんなすぐ重症化するというわけでもなく、2〜3日くらいの間に徐々に悪化する場合もありますので、今の時期カゼをひいた赤ちゃんは注意して様子をみなければなりません。

 さてご質問の件ですが、潜伏期間は、3〜4日よりもう少し長く続き、1週間弱くらいまでは要注意です。お子さんの場合今のところ大丈夫と思われます。細気管支炎の症状で、一番心配なのは、呼吸が苦しくなることです。具体的には、ゼーゼー、ヒューヒューのような呼吸音。呼吸回数が多い。呼吸の度に、お腹、肋間、喉仏のあたりがへこむ(ペコペコした呼吸と表現すればいいでしょうか)。顔色が悪い。ミルクが飲めない。などなどです。夜間に悪化することも多いです。ちょっとわかりにくいかもしれませんが。このような苦しい呼吸がみられたら夜間でも病院を受診すべきと思います。もし受診した場合、診察した医師は呼吸状態について説明してくれます。「この状態は受診、これくらいなら受診しなくても大丈夫。」ということがわかると思いますので、よく聞いて次回からの参考にされればよいと思います。少し冷え込むと咳が増えてくるようでしたら一度受診してみて下さい。

 では、お大事にして下さい。

2008年12月10日(水)
インフルエンザ、そろそろ流行りそうです。

 今日、仙北地区の幼稚園児にインフルエンザA型が発生しました。お母さんも昨日A型に罹ったようです。昨年よりは流行の始まりが遅いですが、そろそろインフルエンザの季節が始まりそうです。
 ここ数年インフルエンザはあまり大きな流行がみられていません。それは、早期診断・早期治療が可能になったからだと思います。そのかわり、地域的な流行があちこちでみられ、結構長い期間にわたって、流行がみられるようになりました。おそらく年明けもダラダラと流行は続くと思いますので、まだ、ワクチンを接種してない方は早めに接種されるようお勧めします。

 よく、「インフルエンザワクチンは、接種した方がよいですか?」と聞かれることがあります。いろいろな考え方があると思いますが、私はワクチンを勧めています。「ワクチンで防ぐことのできる病気は全て防ぐ」というのが、原則と思っております。どうも、我が国では「ワクチン=副作用が心配」という考え方が浸透しているように感じます。接種するか、しないかは、個人の考え方でありますので、強制的に接種を勧めるものではないと思いますが、ワクチン接種せず、なんの準備もしないでインフルエンザを迎え撃つのは、大変勇気のいることです。新型はさておき毎年流行する通常のインフルエンザでも、罹った人はどれだけひどい病気かわかるはずです。少しでも健康被害を少なくするためにワクチン接種をお勧めします。

2008年12月6日(土)
Hib(ヒブ)ワクチン知ってますか?

 関東や関西ではインフルエンザが流行し始めてきたようですね。岩手県でも県南あたりでは少し出てきましたが、盛岡市内ではまだあまり流行ってはいないようです。今日はインフルエンザウイルスの話ではなく、インフルエンザ菌 b型のお話です。インフルエンザ菌 b型と言ってもピンとこない方も多いでしょうから、まず、こちら→ Hibワクチンのお知らせ を、一読されてから本日のブログを読んで下さい。

 Hib(ヒブ)ワクチンが、12月19日から接種できるようになりました。世界中の殆どの国々で接種されているのに我が国では今まで接種されていませんでしたが、やっと先進国と足並みを合わせることができます。
 
 Hibは、インフルエンザ菌 b型といって、冬に流行るインフルエンザウイルスとは全く別のものです。この菌による細菌性髄膜炎はきわめて重症です。それがこのHibワクチンによって殆ど予防できるわけですから、ありがたいことです。自分も今まで何人ものHib髄膜炎の患者さんを診てきました。その時の苦労話を2件ほどご紹介します。

 1件目はまだ、勤務医の頃の話です。日曜日の夜に、「カゼといわれて治療していたけどさっぱり熱が下がらない。どんどん具合が悪くなってるようだ」といって救急外来に来た4ヶ月の赤ちゃんがいました。当直は内科の先生でしたので、さっそく、<小児科オンコール>となり、その日の当番だった私が呼ばれました。経過は次のようでした。『2日前から39度の発熱、近くの小児科医院でカゼと診断されて抗生物質を処方されました。最初機嫌もよかったようですが、2日目に少し元気がないようなので、もう一度同じ先生を受診したら血液検査をして大丈夫心配ないといわれたそうです。そして、3日目朝から機嫌も悪く、泣いてばかりいたけど、だんだん泣く元気もなくなってあまり動かなくなったので心配になって救急外来を受診した』ということでした。ここまではよくあるカゼの話ですよね。(朝から具合が悪かったら、夜になる前にもっと早く来なさいよと言いたかったけど言いませんでしたよ。)

 私が診断した時点では、高熱が持続し殆ど食事もとれてないため脱水状態でしたが、体を反るような動作がみられ明らかに意識障害をおこしていました。血液検査をしてみましたら、異常なほど悪くなっています。肺炎とか尿路感染症とか中耳炎とかはありません。月齢、経過、症状から細菌性髄膜炎、特にHib髄膜炎を疑いました。確定診断するには、腰椎穿刺といって脊椎に針を刺して髄液の検査をしなければなりません。そのことをご両親にお話ししたら、「とてもかわいそうでそんな検査はしたくない」と拒否されました。しかし、診断できなければ治療もできません。もう一度ご説明しましたら、、お母さんは泣いて、お父さんは怒ってしまいました。まだ、私も30代の若い頃(?)でしたので「赤ちゃんがどうなってもいいのか、あんたらそれでも親か?」なんてことを言ってしまったモンだから、ますますこじれてしまい収拾がつかなくなりそうでしたが、一緒に居た婦長さんがやんわりと「お子さんのためですよ、痛いのは一瞬ですよ。先生はとても上手いですから。」といってくれて、やっと納得して腰椎穿刺を行うことができました。亀の甲より年の功?婦長さんに感謝です。

 結果はHib髄膜炎でした、とても重症な疾患であり命に関わる疾患であることをご説明しましたら、お父さん(とても過激なお父さんでした)は、最初に見た医者を訴えるなどと言い始めました。Hib髄膜炎は発熱後2日以内だと70%は診断がつかず、重症化するまで診断が難しいと言うことをご説明し、さらに医学書や医学論文などを見せてやっと納得してもらいました。幸いこの赤ちゃんは何一つ後遺症を残さず、完治することができましたが、もし不幸な転帰をとったり、重い後遺症を残したりしたらと思うとゾッとします。

 2件目は、開業してからです。土曜日に、昨日から熱を出して受診した6ヶ月の赤ちゃんです。生まれて初めての発熱と言うことでした、とても元気でしたので、なにも検査せず、突発性発疹かもしれませんね。なんていって外来経過観察ということにしました。その後受診しませんでしたので、もう治ったんだろうなと思ってましたが、しばらくしてから、また、カゼ症状で受診しました。その時、お母さんから、「先生に診て頂いたあと、けいれんを起こしたので救急病院を受診したら、熱性けいれんということで家で様子をみるようにいわれました。しかし、診察後もう一度けいれんを起こしたので、まず入院して様子をみましょうということになりました。その後も熱が下がらずミルクも吐くようになったので、細菌性髄膜炎を疑われ、検査したらHib髄膜炎でした。」というお話を伺いました。イヤ、ビックリです。
 さいわいこのお子さんも何一つ後遺症を残さず治癒できましたが。今度は開業医の立場でHib髄膜炎を経験しました。最初はわかりません。

 Hib髄膜炎はとても大変な病気です。これが予防できるのですから、多少お金はかかってもHibワクチンは接種したいワクチンです。本来であれば、国が全額補助し公費負担にすべきです。欧米の先進国は皆そうです。
 Hibワクチンは今のところ十分な本数がなく、受注販売の形をとっております。患者さんが申し込めばメーカーからワクチンが送られて接種するという形です。12月1日から受注が始まりました。当院でも12月1日の午後に二人分注文しましたが、受付番号は5000番台でした。12月1日受注が始まったとたんに午前中だけで全国から5000件以上の申し込みがあったようです。Hibに対する関心の深さが伺われます。決して強制するものではありませんが、Hibワクチンは接種すべきワクチンと思います。Hibが予防できることがわかれば、赤ちゃんの発熱に対しておびえることは殆どなくなります。

2008年11月24日(月)
勤労感謝の日
        










































 昨日は勤労感謝の日でしたね。そもそも、勤労感謝の日とは「勤労を尊び、生産を祝い、国民がたがいに感謝しあう日」として、1948年に法律で決められました。昔は11月23日は「新嘗祭」(にいなめさい。または、しんじょうさい)といって、農作物の恵みに感謝する日でした。勤労によって農作物が得られるわけですから、働く人たちに感謝して、豊作を祝ってたのでしょうね。

 現代では、勤労=農作物だけではありませんし、肉体労働だけでなく、精神労働のように形で現れない労働もあります。勤労感謝の日は 「肉体的にも、精神的にも幅広い意味での労働によって、私達の文化遺産が築かれていくことを理解する日」とされています。なんか難しい言い方ですけど、簡単に言うと、一生懸命働いてくれるお父さん、お母さんのお陰で家族みんなが健全な生活が出来るわけですから、お父さん、お母さんに感謝しましょうという日ですね。小学校くらいになったらこのくらいのことは教えてあげた方がいいですよ。

 勤労感謝の日とは関係ありませんが、昨日秋田県の男鹿半島の水族館ガオにいってきました。小さい水族館でしたけど、アシカやペンギンもいました。海水魚もたくさんいました。クリニックで飼っている海水魚は小さい魚しかいませんが、さすがに水族館には大きな魚がたくさんいました。ちょっと飼えませんけど、見応えありますね。

 急性細気管支炎は、まだ流行ってます。赤ちゃんのゼイゼイは要注意です。毎年恒例のインフルエンザもボチボチ出てきました。集団で発生するとあっという間に広がりますけど、今のところ単発ですが、時間の問題です。

 新型インフルエンザの話題ですが、厚労省は一人でも新型インフルエンザが発生したら、その都道府県では幼稚園、学校を全て休校にする試案を出しました。エ〜ッと思われる人も多いと思いますけど、このくらいは必要と思います。問題は休校中の授業の遅れをどうするかです。教育委員会も頭いたいです。休校になったら塾にいこうなんて思ってはいけませんよ。塾も休校です。今まで全く不備だった新型インフルエンザ対策は、急ピッチで進んでいます。

2008年11月14日(金)
インフルエンザ発生!!

 今年も、インフルエンザの季節がやってきました。昨日、盛岡市で今年最初のインフルエンザの患者さん(成人)が発生しました。昨シーズンは11月7日でしたから、6日間遅れです。とはいえ、11月の発生は例年と比べるとかなり早いです。そのせいか今日はインフルエンザワクチンを接種する患者さんで混み合いました。

 よくカゼをひいたりして、なかなかワクチンができないと言うことを聞きますが、よほど具合が悪くなければ普通は接種できますので、カゼ薬を飲んでいてもワクチン接種したいなと思ったらいらして下さい。殆どの方は接種できますよ。むしろ飲んでる薬に問題がある時があります。ちょっと【強めのかゆみ止めや鼻の薬】で、セレスタミンとかヒスタブロックとかリンデロンとかいう薬がありますが、これみんな飲み薬のステロイド剤です。こんなモン長々と飲んでれば、必ず体の正常な免疫が抑えられて、いくらワクチン接種しても免疫ができにくく、殆ど効果が期待できません。飲み薬のステロイド剤は、めったに使わない薬です。これに対して、点鼻薬や、吸入薬や、塗り薬のステロイド剤は、通常の使い方では体に悪影響を及ぼすことはありませんので混同しないで下さい。

 インフルエンザの話からステロイドの話になりましたが、患者さんのお薬手帳を見ますと、【強めのかゆみ止めや鼻の薬】の飲み薬のステロイド剤を処方されているお子さんをよく見ます。ここだけちょっと本音で一言、「こんなモン、子どもに必要ないだろ!」

2008年11月7日(金)
急性細気管支炎が、流行!

 毎年、寒い季節になるとインフルエンザが流行りますけど、インフルエンザの前に流行る病気があります。急性細気管支炎 という病気のこと知ってますか。気管支は太い気管から徐々に枝分かれして細くなっていきます。この細い気管支が汚れて痰がつまったりして、とても呼吸が苦しくなります。RSウイルスというばい菌が原因になることが多いですけど。他のばい菌でもなります。特効薬もなく、赤ちゃんはただでさえ狭い気管支が狭くなるのでとても呼吸が苦しくなります。今日はこのような赤ちゃんを5人みました。そのうち3人は入院紹介しました。急性細気管支炎は入院治療になることが多いです。

 細気管支炎はなぜかインフルエンザとは同時に流行ることがなく、細気管支炎が流行ってる間は殆どインフルエンザがみられません。細気管支炎を起こすウイルスとインフルエンザウイルスは相性が悪いんでしょうか?でも、細気管支炎の流行が一段落する頃にはインフルエンザも増えてきますので、インフルエンザシーズンは近いです。

2008年11月4日(火)
そろそろ、インフルエンザ?

 この頃寒くなりましたね。今日は、2連休明けでとても外来は混み合いました。少し待ち時間が長くなりご迷惑をおかけました。特に流行っている病気らしいものはありませんが、やはり、発熱、咳が多いですね。いわゆる「カゼの季節」です。気管支喘息も多いですよ。9月、10月、11月の3ヶ月が一番発作がみられる時期です。

 インフルエンザワクチンは、10月14日から接種開始していますが、順調に皆さん接種されています。昨年、盛岡市で最初にインフルエンザの患者さんが発生したのは、11月7日でした。今年はどうでしょうか。自分の周囲のことしかわかりませんけど、今年はもう既に、関東、関西方面では学級閉鎖もみられています。早いところでは、10月6日栃木県の小学校、10月7日兵庫県の中学校、大阪の小学校、10月9日東京の中学校、10月20日神奈川県の幼稚園、などが学級閉鎖を行っています。
 10月上旬の閉鎖は例年と比べると、2ヶ月も早いそうです。去年も早い流行でしたが、今年も早くなりそうですね。備えあれば憂いなしです。早めにワクチン接種しましょう。

2008年10月26日(日)
タミフルの効かないインフルエンザ(耐性ウイルス)

 タミフルが効かないインフルエンザウイルス(耐性ウイルス)が、昨シーズンは国内でも9県の患者から見つかりました。詳しい内容は今日から岡山市で開かれる日本ウイルス学会で発表されるようですので、近いうちにマスコミでも報道されるでしょう。岡山まで行きたいですけど、時間的に無理ですのであとから資料を取り寄せて勉強します。
  
 昨シーズンは、比較的タミフルが効きやすいAソ連型(H1N1)の流行でしたが、そのAソ連型(H1N1)1713株を調べた結果、9県(山形、栃木、神奈川、長野、岐阜、愛知、兵庫、鳥取、島根)の計44株(2.6%)が、遺伝子の一部が変異し、タミフルが効かなくなったウイルスでした。
 なかでも、鳥取では68株中22株が耐性で、32.4%の高率です。隣接する兵庫は7.5%、島根は1.2%で、鳥取が突出している理由は不明ということです。 

 もともとタミフルの効かないウイルスは遺伝子変異により1万分の1くらいの確率で生じます。2006年ごろまでは国内で1%以下でしたが、07年11月以降、欧州などで増加傾向が見られるようになり、数十%という高い数値の報告が相次いでいます。
 欧州では、Aソ連型(H1N1)で2004年から昨シーズンまでに、タミフル耐性のウイルスは1%未満しか報告されていなかったのに対し、今シーズンは14%からタミフル耐性のウイルスが発見されています。また、あまりタミフルが使われていないノルウェーでの耐性ウイルスの検出率が70%だったことなど、不可思議なことが多く、現在のところ発生の原因は、はっきりわかっていません。

 昨年Aソ連型(H1N1)に罹った人でも、今年また罹れば今度はタミフルが効きにくいということもあるかもしれませんので、要注意です。

 ところで、リレンザはどうでしょうか。今のところリレンザには耐性ウイルスが少ないようですが、タミフルもリレンザも成分は同じですから、今後どうなるか。
 リレンザはあまり使われていないから耐性ウイルスが少ないのかもしれません。ちょっと気にはなります。

2008年10月19日(日)
今日は七五三

 今日は、休日当番日でしたが、あまり混み合いませんでした。それもそのはず、今日は七五三でしたね。最後に発熱で受診したお子さんは、きれいにメークアップしてましたので、お母さんに何かイベントがあったのですかとお伺いしましたら、七五三とのことでした。いいですね。私のところも昔行きましたよ。どうしても女の子が中心になりますね。写真見ても圧倒的の女の子の方が多いです。千歳飴買ってもらって写真とって、いい思い出になりますね。

 この頃少し気候が穏やかですので、あまり病気も流行ってないようですね。軽い発熱くらいの患者さんばかりでした。

 最近、よく町の薬局で薬を買って服薬しているお子さんを見ます。いわゆる市販薬ですが、実にたくさんありますね。今日来院した患者さんにも市販薬を飲んでる人けっこういましたね。自分もこの間、某ドラッグストアにいってみましたが、かぜ薬一つとっても、あるは、あるは、どれを買ったらいいのか迷ってしまいます。でも成分表示を見るとほとんど同じようなものばかりです。市販薬には、あまり子どもにはふさわしくない成分も含まれていますし、値段も結構高いです。米医薬品当局は、「市販かぜ薬は、副作用が多いので、2歳未満への投薬回避をするように」と勧告しています。ごもっともです。赤ちゃんや小さいお子さんは市販薬を飲まないようにしましょう。

 そうかと思うと、来年4月からコンビニでかぜ薬の販売ができるようになるみたいですね。薬って何だろうと考えてしまいますよ。どういう症状に対してどういう薬を処方するのか、薬同士の相互作用の心配はないのか、副作用の心配は、などなど、医師の診察なしで服薬するのはチョット危険と思います。よく薬だけほしいといってくる患者さんがいますけどよくないことですよ。いつも同じ症状というわけじゃないんだから、キチンと診察を受けてから薬をもらいましょうね。

2008年10月13日(月)
明日からインフルエンザワクチン接種開始

 今年もインフルエンザワクチンの季節になりました。例年同様10月中旬(10月14日)から接種開始します。
 詳しくはこちらを→インフルエンザ ワクチン の お知らせ

 昨年は10月からインフルエンザの患者さんが見られるようになり、11月中旬から流行が始まりました。早い流行でしたが、ワクチン接種を予定していた方々には、電話などでご連絡し、急いで接種をしました。何とか間に合いましたが、今年の流行もいつ始まるのか予測するのは困難です。

 毎年のことですが、マスコミがインフルエンザの報道をすると急にワクチン接種する人が増えます。マスコミの影響はとても大きいです。ワクチン接種しても効果が現れるまで、2週間くらいかかります。そこから5〜6ヶ月は効果が持続します。つまり10月に接種しても11月〜3月までは効果が十分期待できます。ときどき5月頃までインフルエンザが見られることもあります。もし、5月〜6月頃の流行に備えようと思えば、接種時期を遅らせることになりますが、そうすると、今度は昨年のような早い流行(11月)に対応できません。圧倒的に早い時期の流行の方が規模も大きく、重症な患者さんも多く見られます。やはり、11月〜3月に重点をおいて、早めに接種されるようお勧めします。

 よく、インフルエンザは、「冬に流行する」と言われますが、なぜでしょう。実のところよくわかっていないことも多く、いろんな推測があります。そもそも「冬」とは何を意味すのでしょうか?冬と言えば、季節ですが、それが意味するものは冬という気候そのものでしょうか?あるいは、冬という季節を持つ地理的特徴でしょうか?冬に流行るとすると考えるべき要因は何でしょうか?
 考えるべき要因はインフルエンザウイルスの問題と人間側の問題(行動パターン、住居を含めた暮らしぶり、身体状況など)の両面があります。インフルエンザウイルスは低温、低湿度(乾燥)で増えますので、冬という環境が適しているのは確かです。一方、人間に対しても、冬の乾燥した空気は人の気道粘膜にダメージを与えて、感染症を起こしやすくします。さらに、冬は寒いので多くの人が温かい狭い部屋に集まる傾向があります。体温が低下すると免疫力も下がると言われています。ということで冬に流行るという説明がなされています。もっともと思いますよね。しかし・・・、これ(冬に流行るということ)は温帯・寒帯地域の人間社会の話です。熱帯地域ではインフルエンザの流行は、1年中細々と続いているといわれています。そして、亜熱帯ではそれらの中間で、1年中細々と続いてるなかにもちょっとした流行の山があるといいます。一口に熱帯、亜熱帯といっても気候や、人々の生活様式が大きく異なり、実際、流行のパターンも様々なバリエーションがあります。冬〜低温・低湿度(乾燥)という単一イメージだけでは説明ができないことも多く、正直なところ、「冬に流行る」というはっきりとした説明は今のところなされていません。新型インフルエンザが世界中のどこでも、いつでも出現してもおかしくないと言われるのもわかりますね。

2008年10月5日(日)
秋は、アレルギーの季節。

 ちょっと寒くなったと思ったら、また少し暖かくなったような、この頃季節の変わり目を実感しますね。秋はアレルギーの人にとっては、歓迎しがたい季節です。朝夕の気温差は、気管支喘息やアレルギー性鼻炎にとっては大敵です。空気の乾燥もアトピー性皮膚炎には不都合です。アレルギーの原因であるダニは夏に増えて秋に死んでしまいますが、ダニアレルギーは、ダニではなくダニの死骸が原因になりますので、やはり、秋に悪化します。と言うわけで、最近アレルギーの患者さんが多くなりました。

 以前は気管支喘息発作で入院するお子さんも多かったですけど最近は少なくなりました。医学の進歩もありますが、体力の向上も大きい要因です。ただ、気管支喘息は、重症は少なくなったけど、軽症が増えているというデータがでています。しかも乳幼児のような低年令に軽症喘息が増えてきています。社会環境の変化などいろいろな原因はあるでしょうが、乳幼児は体力もあまり強くなく、軽症といっても容易に増悪して入院治療が必要な事も多いです。

 2才以下の気管支喘息を乳児喘息といって、それ以上の年令と少し区別します。赤ちゃんが一度でもゼイゼイしたら乳児喘息というわけではありませんが、一度ゼイゼイすると2〜3週間はその影響が残り、カゼを引いたりするとすぐゼイゼイする事も多く、少しの間予防治療が必要になる事が多いです。特に保育園などでは、ただでさえ、カゼの多い季節ですから、ゼイゼイしやすい赤ちゃんは要注意です。少しでもゼイゼイしたら早めの治療がお勧めです。様子なんか見ないでいいから、ゼイゼイしたらさっさと受診しましょうね。

2008年9月28日(日)
インフルエンザワクチン

 この頃、急に寒くなりましたね。まだ9月ですけどそろそろ、冬の支度もしなければなりませんね。

 今年もインフルエンザの季節が近くなってきました。去年は10月から患者さんが見られるようになって、11月に流行しましたから大変でした。インフルエンザの流行時期を予測することはまず、困難ですが、ここ数年インフルエンザの流行時期は早まってるように感じます。温暖化と関係あるのでしょうか?

 今年も、10月中旬(10月14日)から接種開始します。今までは予約してから接種しましたが、昨年のように早い流行もありますから、今年は予約をせず、来院順に接種しますので、早めに接種して下さい。

 昔と比べるとインフルエンザは何となく軽症化してきたように感じます。ワクチン、検査キット、タミフル、リレンザとインフルエンザの対策が進んできたからと思います。昨年は流行したウイルスが、Aソ連型でした。Aソ連型は、A香港型よりやや軽症です。また、A香港型、Aソ連型、B型のうちで、もっともワクチンの効果が期待できますし、薬の効きも1番よいです。ですから昨年はあまりインフルエンザで苦しんだ人はいなかったように思います。もっとも怖いのはA香港型ですが、昨年はほとんど見られませんでした、ということは・・・、今年あたり心配ではあります。

 新たなインフルエンザ(いわゆる新型)が出現すれば大流行になりますが、何年か続けば多くの人たちが抗体を持つようになり、あまり流行しなくなります。A香港型もAソ連型も、かつては新型として大流行しましたが、今は多くの人たちが抗体を持つようになりました。しかし、みんなが慣れた頃、そういう状況で新型が出現すると言われています。新型インフルエンザ対策はまだ始まったばかりです。毎年流行るインフルエンザだけではなく新型にも注意していかなければなりません。

2008年9月21日(日)
食の安全?

 安心して食べられるのは何?食の安全はどこに行ったの?事故米の次は、メラミンとか?もうメチャクチャですね。ミートホープ、吉兆、ギョウザ、ウナギ、飛騨牛〜まだまだありましたね。あんまり多くて、最初の方はどうなったかわからくなりました。
 
 なぜ、こうも次から次へと、とんでもないことばかりおきるのでしょう。農水省の管理が甘いから、それもあるでしょうが、本質はもっと別なところにあると思います。

 事故米の件では、とりあえず、太田誠一農相は責任をとって辞任したようですが、辞めりゃいいってものではないですよね。この始末はどうするの?敵前逃亡のような辞任です。総選挙が近いから、さっさとその準備をしようということでしょうね。

 食の安全は、もはや地に落ちた感があります。しかし、食だけじゃないです。少し前には、建築偽装の問題が大きく騒がれましたね。その後どうなったのでしょうね。

 思うに、食も建築も個人のモラルに問題があるのではないでしょうか。偽装した当事者達は、どうみても本当に悪いと思って謝罪してるようには見えません。「わからなければいい、自分さえ得すればいい、他人のことなんかどうでもいい。」というあさましい体質を感じます。こいつらが本当に反省しているとは思えない。いつの間にこんな愚かな日本人ができてしまったのだろう。この国の将来はどうなるのだろうと思います。

 いつも思うことですが、どんなに大きな騒動になっても少し時間がたつと皆忘れてしまうことが多いです。時間が解決してはいけない。二度とこんなことを繰り返さないために、どうしたらよいのか?当事者を厳罰に処しても、次から次へと同じようなことがおきるのは、なぜ?

 少し飛躍した話かもしれないですが、「三つ子の魂百まで」と言われるようにしっかりした幼児教育が行われることを期待します。長いこと小児科をしていますと、我慢ができない子、自分勝手な子など将来に不安を感じる子をたくさん見ます。小さい頃から、愛情豊かに、是を是とし非を非として、教えていけば、きっとこういう悪い大人にはならないと思います。自分のできることはそのお手伝いです。

2008年9月14日(日)
三混、BCG、ポリオの接種順について

 今日から、「お八幡(はちま)さんのお祭り」が、始まりました。このお祭りが終わると急に涼しくなり、秋の気配を感じます。今日は三混、BCG、ポリオの接種順についてご質問をいただきましたので、お答えしたいと思います。

Y・Sさんからの


 秋になってポリオの予防接種が始まりました。子どもは今、3ヶ月半です。ポリオは日程が決まってるようですので、ポリオから接種しようと思いましたが、三混か、BCGを先に接種した方がよいとも聞きます。どの順番でもよいのでしょうか?もし決まりがあるなら教えて下さい。



 お便りありがとうございます。通常の定期予防接種は、生後3ヶ月から開始します。三混、BCG、ポリオがこの時期に該当します。さて、順番ですが、特に決まってはいません。どれから初めてもよいわけですが、“安全性の高いワクチン”、“罹る可能性の高い病気を予防するワクチン”から接種することが原則と思います。以下は、HPに掲載した内容ですので、こちらの方も参照して下さい。
予防接種スケジュール

@.安全性について
 “安全性”は、どのワクチンも高く、健康な赤ちゃんが接種するには、まず心配ありません。
 ごく稀ですが、生まれつき重症な免疫不全があれば、ポリオやBCGは、ワクチン接種により、ポリオや結核にかかる心配があります。
  ただし、生後3ヶ月頃になると、そのような重症な免疫不全はまず判明していますので、3ヶ月以後の接種では問題になることはないと思います。

A.罹る可能性の高い病気
“罹る可能性の高い病気を予防するワクチン”という観点から考えますと、
 ポリオは現在の日本では見られなくなった病気であり、流行地域(西南アジア、アフリカなど)に出かけることがなければ、急ぐ必要はありません。
 三種混合ワクチンで予防する百日咳は、最近よく見られるようになってきました。赤ちゃんが百日咳にかかると、咳のため呼吸困難になることもあり、肺炎や、脳炎を起こすこともあります。百日咳の抗体は母体から移行しませんので、生後まもなく感染することもありますので、早めの接種が大切です
 結核も怖い病気です。BCGは生後6ヶ月を過ぎると有料になりますので、早めに接種したいのですが、現実的には百日咳の方が罹る頻度が高いと思いますので、百日咳を含む三種混合ワクチンから接種するようお勧めします。
 もし、チョットうっかりして6ヶ月近くになるのにまだ、BCGを接種してない時は、BCGを優先することになります。
 三種混合は、続けてきちんと2回接種すれば大体免疫ができますので、3回目よりもBCGを先に接種します。ポリオは一番最後でよいと思います。

 具体的には、
@三混1回目→3週間あける→A三混2回目→1週間あける→BBCG→4週間あける→C三混3回目→1週間あける→Dポリオ
 上記の順番が現実的であり、望ましいと思います。

 百日咳の患者さんは7〜8月に3人診ました。マスコミ報道通り、百日咳は増えています。やはり、百日咳を含む三混を優先すべきと考えます。もし、日程的に秋にポリオができなければ、春でもよいと思います。

 以下はおまけですが、興味があればお読み下さい。
 現行のポリオワクチンについては、少し問題があります。ポリオワクチンには、生ワクチンと、不活化ワクチンがあります。日本で使用されているのは、生ワクチンです。
 生ワクチンは菌体(ウイルス)を弱毒化して使用していますので、効果が高い反面、接種したためにその菌体(ウイルス)の症状が見られる心配が少しあります。ポリオの場合、約200万〜300万人の投与につき1回くらいの頻度で、「麻痺」が発生します。時々新聞に載っています。
 これに対して、不活化ワクチンは菌体(ウイルス)そのものを使っていませんので、効果は多少弱いですが、このような副作用の心配がありません。効果をあげるため、不活化ワクチンは複数回接種します。ポリオの場合三混と同じように4回接種します。

 多くの欧米先進国では、ポリオはほとんど見られなくなりましたので、効果が多少弱くても、安全性の高い不活化ワクチンを接種しています。
 これに対して、開発途上国のようにポリオが蔓延している地域では、副作用を気にするどころではありませんので、効果の高い生ワクチンを使用しています。

 つまり、ポリオの感染の少ない地域では、個人防衛のために、安全性の高い不活化ワクチンを接種。ポリオの感染の多い地域では、集団防衛のために、効果の高い生ワクチンを接種しているのが現状です。

 このようなことからみると、日本はどうでしょうか、日本では1972年以来、ポリオは発生していません。もはや、副作用を心配する生ワクチンではなく、安全性の高い不活化ワクチンに切り換えるべきではないでしょうか?数年前に不活化ワクチンに切り換える方針が出されましたが、いつの間にか立ち消えになったようです。

 個人的な考えではありますが、生まれて初めて接種するワクチンは生ワクチンではなく、不活化ワクチンの方が望ましいと思っています。

2008年9月7日(日)
医師不足と医学部定員増

 文部科学省は8月29日、2009年度の予算概算要求をまとめ、医学部入学定員の現時点での検討状況を公表しました。それによると、2009年度の定員は「8560人程度」で、今年度よりも760人増。この数字は、今年6月の政府の「骨太の方針」で打ち出された定員増と、昨年5月の「緊急医師確保対策」の合計分です。

 医師不足といわれる現在、医学部の定員を増やすことはよいことのようにも思えますが、なぜこんな時代になってしまったのでしょう。以前より医師不足といわれてはいましたが、ここ数年医師不足が急速に問題になってきました。

 一番の原因は、現在の初期研修医制度に問題があるといわれています。研修医制度とは医学部を卒業した新米医師に対する教育制度ですが、現在の初期研修医制度は、新米医師にとっては恵まれた制度のように思います。
 私が医師になった二十数年前は、研修医制度は名ばかりで、何一つ教えてもらうこともなく、自分で勉強して先輩の技術をまねして(盗んで?)覚えていくようなものでした。もっともひどかったのは経済的保証が無く、医師になって半年間は無給でした。それに比べると現在の初期研修医制度は、指導医の元に診療を行い、きちんと給料ももらえます。昔は新米医師は奴隷のような生活を強いられていたことを思うと隔世の感があります。

 では、このよい初期研修医制度のもとになぜ、医師不足になってしまったのでしょうか?以前は卒業するとほとんどの新米医師は大学病院に就職し、内科とか外科の医局に入局しました。あまり良い例えではありませんが、大学を大相撲の世界に例えると、医局というのは、○○部屋とかいう相撲部屋みたいなものです。医局(部屋)には絶対的な権力を持った教授(親方)がいて、医局員(関取)の人事権を持っています。「○●くん、明日から、1年間△▲病院へ勤務して、」という具合です。白い巨塔そのものでした。

 しかし、このむちゃくちゃな封建制度のもとでも、地方では、大学からの医師派遣という形で診療を続けていましたが、現在の初期研修医制度は、大学に限らず自由に研修病院を選べるようになりました。もはや大学がすべての時代ではなく、大都市の大病院では多くの研修医を迎えるようになってきました。その結果、大学病院への入局者は激減し、医局からの地方病院への医師派遣は途絶え、地方での医師不足がひどくなってしまいました。

 厚労省の初期研修医制度の本当の狙いは、医局支配の医師供給構造を崩すことにあったといわれています。つまり、二次医療圏ごとに中核研修病院を作りそこから医師を派遣し、大学医局から人事権を奪うというのが、厚労省の狙いだったということです。しかし、現状のような医師不足を招いてしまいました。
 そこで、今度は、文部科学省(厚労省ではないですよ)が、医学部定員増することを決めました。文部科学省に財源が入り、大学の医師が増える。しかし、医師数を増やしても、厚労省が病院必要医師数の増員をするわけがないと思いますので、まだまだ、前途多難のように思います。

 ところで、初期研修医制度を終えた医師達はどこに就職するのでしょうか。毎年新しい研修医が入ってきますから、終わった人たちから順番にどこかの病院へ行くことになると思いますが、そうすれば、今不足している地域にも十分医師は充足されるように思います。今、医学部定員増すれば、何年か後にはむしろ医師過剰になっているかもしれませんね。ここで厚労省が人事権を行使するのでしょうか。これも厚労省の狙い?

 初期研修医制度はよい制度だと思いますが、官僚支配的制度のようにも感じます。厚労省、文部科学省ともに省益を優先することなく、国民目線で考えてほしいものです。

2008年8月28日(木)
日本外来小児科学会

 30日(土)〜31日(日)の二日間、名古屋市で日本外来小児科学会が開かれます。学会出席のため、申し訳ありませんが、30日(土)は休診します。

 この学会は少し普通の学会とは変わっています。外来小児科とあるように、外来での小児診療が中心です。あまり難しい病気の話よりはふだんよく見られる症状、例えば長びく咳や鼻水はどう治療したらよいだろうとか、痛くない採血や予防接種をするにはどうしたらよいだろうとか、待合室にはどんな絵本がよいのかとか、患者さんとのコミュニケーションをよくする工夫とか、小児科にあった電子カルテにはどんなものがあるのか、というようなふだんみんなが考えている疑問、アイデアを出し合って、少人数で徹底して話しあいます。これをワークショップといいます。通常の学会では演者が発表して、それに質問して3〜4分の討論でおしまいですから、ワークショップはかなり中身の濃い話し合いでです。

 6年前も名古屋で開催されましたが、「電話予約」についてのワークショップがありました。それに参加して現在の電話予約をすることにしました。この学会は医師だけでなく、看護師、事務、企業などから広く参加者がおります。少人数で話しあいますので、結構本音も出て、面白いですよ。

 ワークショップは30くらいのテーマがありますが、時間的に一人2〜3題しか参加できませんので、今年は、「母親にとって魅力ある乳幼児健診を探る」 「小児科医の診る中耳炎」 「電子カルテ開発プロジェクト」の3題に参加してきます。学会終了時はものすごく盛り上がるんですけど時間がたつにつれて冷めてしまいますので、よいと思うことはすぐ実行するようにして、9月以後の外来診療にいかしたいと思います。

2008年8月22日(金)
大野病院事件

 一昨日、大野病院事件の一審判決が福島地裁でありました。事件の内容はマスコミ報道でご存知のことと思います。福島地裁(鈴木信行 裁判長)は、「標準的な医療措置で過失はなかった」として無罪判決を下しました。検察側、弁護側、双方の主張を吟味しての判決であり、当然の結果と思います。

 この事件は、最初から警察が介入し、担当の加藤克彦医師の逮捕から始まりました。逮捕というのは、1)証拠隠滅のおそれがある、2)再犯の危険がある、3)逃亡のおそれがある、場合に限るはずです。既にカルテなどは押収していますから、あえて、逮捕して刑事事件とする必要あったのでしょうか。 この事件が社会に与えた影響は計り知れなく大きいです。

 検察や警察が医療事件に介入した場合、医療の知識を有している人がほとんどいないため、本当に事件性があるのかどうか判断に迷うことが多々あると思います。
 今回の事件では、検察側の鑑定人医師は某国立大学の教授ですが、帝王切開の経験はたった1回しかないそうです。そんな医師にこの様な難しいケースの判断をさせるというのはまず無理です。また、求刑は「禁固1年、罰金10万円」です。あまりにも軽すぎる求刑です。威勢よく逮捕したものの、これは勝てる裁判ではないやりすぎたと思ったのではないでしょうか。この事件では加藤先生も遺族も、検察や警察に振り回されたようにも感じます。何が何でも医者をとっつかまえたいという検察官がいたんじゃないのかと裏読みしたくもなります。

 医療においては、その時点でよかれと思って行ったことでも、結果として悪ければ責任を問われます。医師は皆そのことを知っています。いくら説明しても理解、納得できることばかりではないと思いますし、どこまでが不可抗力で、どこからが過失なのか、とても難しいです。

 一般に、どのような職種でも、仕事でミスをすることは多少はあると思います。医療においても、同様です。しかし、ミスをするたびに、警察が来るのではないか、事情徴収されるのではないかと思うと、安心して仕事をすることはできなくなります。その結果は、萎縮診療、医療崩壊へとつながっていきます。

 警察庁の吉村博人 長官は21日の定例記者会見で「将来を見据えた場合、医療行為をめぐる捜査については、判決を踏まえて慎重かつ適切に対応していく必要がある」と述べております。実際、警察はどのような状況から介入し、またしないのかという線引きを明確にすることが、必要と思います。

 厚労省は、患者やその家族が医療に対する信頼と安心を持てるような制度:「医療安全調査委員会」(仮称)の創設を検討しています。近い将来できると思います。患者さんのためにも、医師のためにもよい制度であることを期待します。

2008年8月17日(日)
日本脳炎予防接種は必要か?

 今年のお盆は、遠出することもなく、ノンビリと過ごしました。明日からまた、診療が始まります。気を引き締めてがんばります。
 ところで、7月28日に、日本脳炎予防接種について、掲載したところ、いろいろなご質問をいただきましたので、
今日はそれにお答えしたいと思います。

M・Tさんからの


 日本脳炎予防接種は必要なのでしょうか?回りの人たちの話を聞いていると、どこの先生に相談してもはっきりした返事が返ってこないと言います。また、「積極的に勧めない」とありますが、よく意味がわかりません。



 お便りありがとうございます。確かに「積極的に勧めない」という言い方は理解しがたく、本当に必要な予防接種かどうか疑問が出てくるのも無理がない話です。これまでのいきさつについては、日本脳炎予防接種のお知らせ や7月28日の本欄などから、大体ご理解されていると思いますので、ここでは私の個人的な考え方を述べたいと思います。
 
 そもそも予防接種は病気にかからないためにするものです。日本脳炎という病気はなくなったわけではありません。多くの地域のブタが日本脳炎ウイルスに感染していることや、予防接種をしなくても日本脳炎の抗体ができている子たちが多くいることは、常に感染の機会があることを意味しています。

 日本脳炎は罹ってもみんなが症状が出るわけではなく、全く症状が出ない人も多くいます。この様に罹っても症状が出ない場合を不顕性感染といいます。不顕性感染はおたふくかぜでよく見られます。例えば、おたふくかぜに罹るとみんながほっぺたが腫れるわけではなく、罹ったかどうか大人になってから抗体を調べたら罹っていたことがわかったという具合です。日本脳炎はおたふくかぜより、はるかに不顕性感染が多く、何も症状が出ないままに知らないうちにかかっている場合が多いのです。

 しかし、年間数人しか日本脳炎患者が発生していないと言うことも事実であり、次第に過去の感染症になりつつあるようにも思います。患者数減少の背景には、予防接種の普及、日本脳炎ウイルスの弱毒化、町に養豚場が無くなったこと、用水路の整備など公衆衛生環境の改善、個人の免疫力の向上、などが考えられます。
 では、予防接種は必要ないのかというとそうは思いません。いかなる状況にあってもウイルスが存在すれば、感染しないという保証はどこにもありません。感染する機会がある以上、予防接種は必要と思います。

 ただし、日本脳炎に限らず全ての予防接種は自分自身の意志で行うものです。他人から強制されるものではありません。予防接種の問診票にサインをしたことがあると思いますが、あのサインの意味は「自分の意志で接種をする。無理矢理強制されて接種するのでない。」という意味です。

 「積極的に勧めない」というのは厚労省〜地方自治体の方針です。予防接種の副作用とはっきり断定できないまま、「見切り発進」した反響は大きく、おそらく近い将来見直されると思いますが、これにこだわらず、当院では、接種を希望される方には接種しています。

2008年8月9日(土)
プレパンデミック(大流行前)ワクチン接種開始

 8月4日、新型インフルエンザ対策の一環として、プレパンデミック(大流行前)ワクチンの接種が試験的に開始されました。新型インフルエンザに備えての準備が、いよいよ本格的に始まってきました。しかし、接種については賛否両論がありそうです。

 そもそも、プレパンデミックワクチンは新型を予測して作られるものですから、新型が発生していない現在、果たして本当に当たるかどうかよくわからないわけです。ここ数年、おそらくH5N1が、新型に変異するのだろうと予測されて、それを基にしたワクチンの開発が進んできました。その結果一応できあがったわけですが、副作用については十分な検討がなされていないようです。また、「H5N1は、新型インフルエンザの候補の一つであるが、すべてではない」ということも案外知られていないようです。

 本年5月に、米疾病対策センター(CDC)の研究チームは鳥インフルエンザのうち、H7型も警戒しなければならないという論文を発表しました。H5N1は、主に、アジアを中心に流行していますが、H7型はヨーロッパ、アジアで流行している型と、北米で流行している型があるようです。また、H5N1よりもH7型の方が人への感染力が強いともいわれており、オランダや、英国では人への感染もみられています。今後はこの両者について注意していかなければならないようです。

 このような状況で、安全性が未確認なH5N1型ワクチンを接種開始したということは少し配慮に欠けているという非難もあがっています。かつて1976年、米国で発生した豚インフルエンザが、スペインカゼの再来かと騒がれて、フォード大統領のもと、この株を用いたインフルエンザワクチンが、広く接種されました。ところが、ワクチン接種者からは、ギラン・バレー症候群という神経障害の患者さんが多数発生してしまいました。その結果、このワクチンによる副作用と判断され、中止になったいきさつがあります。今回のワクチン接種についてもそのような心配をしている医師もおります。

 まず、6.400人の医療、検疫関係者に接種したわけですが、今後、備蓄している1.000万人分を安易に接種してよいのか、難しい問題です。これからは、H5N1だけでなく、H7型も視野においた予防政策をとらねばなりません。

2008年8月6日(水)
低体温の子ども達〜冷暖房と運動不足

 毎年暑くなると、院内の空調で苦労します。夏ですから少し涼しくと思うと結構冷えすぎたりしますし、少し温度を上げるとすぐムッとした感じがしたり、いつも今の時期の空調には気を遣います。
 でも、夏は少し汗ばむくらいがいいんですよ。その方が体が体温調節を上手くできるようになって、暑さ、寒さに対応できるようになるからです。今日は、冷暖房の使いすぎや運動不足から、体温調節が上手くできなくなり、その結果、低体温になるという話題です。

 東京都内の私立小学校に、校医として24年間勤務した木村慶子先生という方が、健康小児3.109名(男子2.254名、女子855名)の体温測定を行った結果、「低体温の小児が24年間で6倍以上に増加した」という発表をしました。

 この小学校では、1970年から1993年までの入学児童を対象に、毎年5月に行われる臨海学校で小学4年生の体温を測定してきました。その調査結果を検討すると、児童の平均体温は24年間で徐々に低下し、35℃台の低体温児は1970年代の6倍に増えていることがわかりました。

 1日の平均、起床時、就寝時平均体温のいずれも年を追うごとに低下しており、中でも男女ともに起床時の体温の低下傾向が強く認められたそうです。通常、小児は基礎代謝が活発ですので、体温は成人よりも高いはずですが、しかし、このように低体温児が増加しているということは、本来活発なはずの小児の基礎代謝が低下してきているからだと考えられます。

 体温リズムは自律神経という神経で、コントロールされていますが、この神経のバランスが乱れることで体温調節がうまく行われなくなります。

 その原因を探ると、幼児期から小児期における自律神経の発達と関係しており、特に2〜5歳、子どもが最も活発に動き回る時期に、その行動を制限しすぎたり外遊びを抑制しすぎたりすると、本来獲得すべき機能がきちんと身につかないことがあり、自律神経の発達に影響を与えるようになります。

 冷暖房の普及により快適な環境が得られたものの、暑いとか寒いとかの感覚を覚える機能が十分に備わらないと、寒ければ体を震わせて体温を上昇させ、暑ければ泳いで冷やす。そういった基本的なことが、なかなか身につかずに成長してしまうことになります。また、家にこもってばかりいて運動をしなければ筋肉の量も減少し、結果的に熱の産生能が低下してしまいます。

 体温が1℃下がると酵素の働きが50%となり、脳内伝達物質の産生低下をきたすといわれています。その結果、不眠、気分障害などの障害が見られるようになります。

 最近、特に30〜40歳代の女性の不定愁訴や冷えも増えているのだそうです。このように小児期の自律神経のアンバランスを成人期まで引っ張ってしまう人も多いのかもしれず、木村先生は「脳や神経の発達は子どもの頃に獲得する重要な機能と関係しています。しかし、そのときに十分に発達させておかないと、後からは身につけることができません。それだけに、遊びなどを通して脳に十分な刺激を与えることが重要で、脳の発達が十分なされていないと、成人になってからいろいろな影響が出ることもあります」と、幼・小児期の育て方について、もっと啓発されるべきだと指摘しています。

 子どもを育てる際に、小さいときからの運動習慣がとても大切であることがわかりますね。特に、3〜5歳までに「歩かせる、走らせる」など、思いっきり遊ばせて、脳や神経を十分に発達させることが重要で、跳び上がる感覚、走る感覚、痛いという感覚などを、自分で会得するチャンスを、もっと増やしてあげるべきですね。

 子どもの健康状態を見ながら、できるだけ自由に遊ばせてあげることが、幼児期には特に大切なようです。

 冷暖房はほどほどに、テレビゲームばかりしないで、できるだけ外で遊ぶように心がけましょう。それが大人になってからの健康につながるのですからね。

2008年7月28日(月)
日本脳炎予防接種を続行(読売新聞:h20/7/26)

 「日本脳炎予防接種を続行」 なんだこの記事? 別に中止してるわけじゃないんだから、接種してもいいんですよ。今さら何を言うの? でも、「エッ、日本脳炎予防接種は中止になったんじゃないの?」なんて思っている人もいるかもしれませんね。
 日本脳炎予防接種は定期接種として行われています。ただ、厚生労働省は、積極的には勧めておりません。
 詳しいいきさつは、こちら→日本脳炎予防接種のお知らせ をどうぞ。

 重篤な副作用かどうか判定できないままに何となく副作用が疑わしいから、日本脳炎患者が殆どいなくなり、急いで接種する必要がないから、もうじき新しい日本脳炎ワクチンができるから、予防接種事故が起きた時に国が責任を負いたくないから、減らせる医療費はどんどん減らしたいから、等々の理由で厚労省は積極的には勧めなくなりました。これを受けて事情のよくわからない地方自治体は一斉に厚労省からの通達をそのまま医療機関に提示しました。最初各医療機関の反応はさまざまでしたが、国が、県が、市が、勧めるなと言うならそうせざるをえないということで、平成17年以後、日本脳炎予防接種を受ける人は激減しました。私の所でも接種する人は毎年数人です。

 ところで、本当に感染の心配がない病気なら、さっさと予防接種もやめればよいのに、そういうわけでもないから中止とは言わずに「積極的に勧めない」なんて訳のわからないことを言ってるんでしょうね。
 「流行地域(朝鮮半島、台湾、中国、ベトナムなど)などへ出かける場合や、 蚊に刺されやすい環境にある場合など、感染するおそれが高く、保護者が希望する場合には、予防接種の効果、副反応などにつき、医師の説明を受け、同意書を提出した上で接種することができる。」などといってますが、蚊に刺されやすい環境とはどんな環境か全くわからないじゃないか? それに、この同意書見ればわかるけど、これでも受けるかと言わんばかりの文面です。
 結局接種するからには、接種する医師、接種される人(小児科の場合は保護者)が、責任をとりなさいよと言うことに他なりません。これでは、接種する人も受ける人も少なくなるのが当然です。

 このまま、日本脳炎患者が発生しなければ、あまり問題にならなかったかもしれないけど、平成18年、熊本県で3才の子が日本脳炎にかかってしまいました。少し後遺症が残ったようです。そこで、西日本の小児科医には厚労省の通達に反して積極的に日本脳炎予防接種を勧める人も出てきました。
 次第に日本の国あちこちでこのまま接種を見送っていていいのだろうかという気運が高まりつつありますが、岩手県、特に盛岡市においては殆ど接種されていないようです。

 読売新聞の記事の内容は以下の通りです。
・感染予防の視点から日本脳炎予防接種を続けることが不可欠。
・中断期間が3年以上と長期化し、免疫を持たない幼児が増えている。
・現行のワクチンは来年分も含めて、170万本しかなく供給が底をついている。
・西日本の幼児らへの優先接種や、ワクチンを受け損ねた子どもの対策を話しあう。
・昨年度の接種状況は、3〜4才で1割前後まで減少。免疫を持っている率も2割以下に落ち込んでいる。

 「積極的に勧めない」と言うものの、厚労省も少し心配になってきたみたいですね。もし、この夏一人でも子どもの日本脳炎患者が出たら、大変ですよ。接種を希望すれば受けることができると言っておきながら実際はワクチンが足らず希望者全員が接種できる状況ではないですからね。
 ここにも、我が国の予防接種事業の貧困ぶりが伺われます。

 最後に副作用被害家族からのコメントを掲示します。接種を迷っている方にはお勧めしませんが、接種を希望される方には接種していますのでどうぞおいで下さい。
「1000万分の1の副作用に娘が見舞われたのは、運が悪いとしか言いようがない。そのことで予防接種を中止してよいものかどうか、とも悩んだ。両親は、苦しみ抜いた末、娘のように、まれな後遺症が起きるとしても、重い感染症を防ぐには予防接種は必要、と考えるに至った。」

2008年7月21日(月)
高校野球

 ふだんあまり高校野球を見ることはありませんが、今年は久々に母校(盛岡一高)が、ベスト4まで進出しましたので、決勝は応援に行こうと思っていました。
 残念ながら昨日負けてしまいましたが、一生懸命頑張ったのですから、いい思い出になると思います。それに、社会に出てからも高校運動部で鍛えた精神力はキット役に立ちますよ。
 選手の中には、小さい頃に私が診たお子さんもいます。去年の春、麻疹が首都圏で流行した時、野球部の生徒さん達がおおぜいワクチンを受けにきました。しっかりしてますね。

 高校野球にまつわる思い出話を一つご紹介したいと思います。といっても、もう20年近く前になりますが、その頃私は県南の県立病院に勤務していました。この町の私立高校(S高校とでもしましょうか)は野球が強く、その頃で既に県代表の常連でした。何人かは県外からも入学してきてました。

 ある日、県外からS高校に入学した高校1年生が医師の紹介状を持って私の所にやってきました。紹介状の内容と、本人のお話をまとめると、次のようになります・・・。イヤ実に困りました。どうなってんの?。

 この子はK君といって、関東のある県で野球をしてましたが、すばらしい投手で、リトルリーグかなんかで全国優勝したのだそうです。将来はプロ?というくらい期待されていたようですが、不幸にもチョットやっかいな病気にかかってしまい。今後野球を続けるのは困難ということでした。
 しかし、K君は何が何でも野球を続け、甲子園に出場したくて、高校進学を目指しましたが、地元の高校はK君の病気のことを知り、野球名門校は彼に声をかけてくれなかったそうです。
 S高校の野球部監督は知人を通じてK君を知ったということですが、病気のことはあまり理解していなかったようです。

 私:「野球部での活動は、控えるようにとあるけど、どうしても野球したいの?」
 K君:「はい、でも無理をしないようにします。」
 私:「いくら無理をしないといっても、運動部、特に野球部はハードだから、ダメですよ。前の先生にもそういわれたでしょ。」
 K君:「大丈夫です。きちんと通院しますし、薬も飲みます。」
 
 困りました。始めから無理とわかっていながら、それでも、野球をしたくてわざわざ岩手まできたわけですから、帰りなさいと言うわけにもいかず、どうしたらよいでしょう?
 さっそく、監督さんにもお話ししましたが、「十分休養をとりながら、気をつけてみてます。何かあったらすぐ先生の所へつれてきます。」と言うことでしたが、「何かあってからではね・・・。」 というわけで、大変な不安を抱えながら、K君の岩手での高校生活が始まりました。
 
 初めのうちはまじめに通院していましたが、だんだんこなくなってきました。しばらくぶりにくると具合が悪くなっていて、短期入院ということを何回か繰り返しました。その都度、本人にも監督にも「もう野球をやめなさい。」とお話ししました。その時は「少し休みます。」ということになるのですが、しばらくするとまた野球やってるという具合でした。
 
 K君は本来『先発完投型』だったのですが、やはり病気のため、あまり無理をせず(?)主に『リリーフ』で登板していました。なんだかんだ言いながら、何とか高校3年生までやってきました。
 ところが、春に体調を崩し、また短期入院しました。「本当にもうダメだから、野球をやめよう。」といったところ、その時は渋々承諾してくれました。が、夏の予選が始まるとまた、投げてました。そんなある日、ひょっこりK君がきて、「先生や、看護婦さん達のおかげで何とか3年間野球を続けることができました。あと1ヶ月、野球をやらせて下さい。」と、いつになく真剣なまなざしで訴えてきました。イヤー、ここまでくるともう何も言えない。思わず、「頑張れよ。」といってしまいました。内心「マズイ」と思いながら・・・。

 そして、K君の活躍もあり、S高校は見事県代表になって甲子園出場を果たしましたが、私は気が気でありませんでした。「早く終わって帰ってこい」とそればかり思ってました。
 S高校は1回戦見事に勝ちました。K君はリリーフで出場、キチッと相手打線をおさえて勝利に貢献しました。翌日の新聞には、K君の記事がたくさん載ってました。「病気を克服、すばらしい精神力・技術・・・。」 何だって、いい加減なこと書くなよなー。素晴らしい精神力、技術は認めるけど、病気は治っていないよ〜。もし甲子園で倒れでもされたら、主治医は何をしている〜。ということになるじゃないか。どうして試合にだした〜。などと自分は非難の矢面に立たされるかもしれず、早く帰ってきてちょうだい。と強く強く祈ってました。

 2回戦は残念ながら負けましたが(これで帰ってこられると私はホッとしました。)、念願が叶い、甲子園で一勝、それも自分が投げて勝ったわけですから、本人も満足でしょう。
 大会が終わって2〜3日したら、K君がきました。「3年間僕のわがままを聞いて下さりありがとうございました。先生や、看護婦さん達のことは一生忘れません。大学に進学しますが、もう野球はしません。」なにかジーンときましたね。よく頑張った。病気は治ったわけじゃないけど、そんなに悪くもならなかった。後は、故郷に帰ってゆっくり時間をかけて治療しなさいとお話ししましたら、よくわかりましたと言ってくれました。
 いつも野球をするなといわれていたから、殆どニコリともしない子でしたが、この時は本当にいい顔をしていました。なんかうれしくなって、みんなでサインをもらったんですよ。K君はサインなんかしたことないとびっくりしてましたが、スラスラと書いてくれました。今は、もう立派な大人になっているでしょう。

 夏、高校野球のシーズンになると、いつもK君のことを思い出します。「K君元気ですか。今でも君のサイン持ってますよ。」

2008年7月16日(水)
矢巾町乳幼児健診

 今日の午後は予防接種を休診して、矢巾町へ乳幼児健診に行ってきました。1年に4回くらい出かけています。たまには自分のオフィス(診療所)をはなれて仕事をするのも新鮮な気がしていいモンです。

 なぜ、わざわざ、休診してまで出張するのかというと、実はこれには深い歴史があるのです。といってもそんなに難しい話ではないのですが、今日は、私が矢巾町へ健診に行くことになったいきさつについてお話したいと思います。

 今から十数年前、私は日赤小児科に勤務していました。その頃日赤小児科は矢巾町と玉山村の乳幼児健診を担当していて、私も、矢巾町にも玉山村にもよくいってました。

 日赤を辞めて開業して1年くらいたった頃、突然、矢巾町役場の職員の方と保健婦さんが見えまして、私に乳幼児健診をして欲しいという依頼がありました。何でも、日赤は多忙でなかなか健診まで手が回らなくなったとのことでした。その頃は水曜日の午後は今のように予防接種もせず全く休診にしていましたので、時間的には余裕がありました。そこで、日赤の先生に相談したところ「是非、頼む」ということでしたので、お引き受けすることにしました。が・・・。
 人口増加の著しい矢巾町は当然の如く、乳幼児も多く、1ヶ月に3〜4回健診に出かける羽目になりました。最初はあまり負担になりませんでしたが、さすがにだんだん大変になってきました。ちょうどこの頃、矢巾町にも小児科を開業する先生が増えてきましたので、盛岡市医師会、紫波郡医師会とも相談して、盛岡市医師会としてお手伝いしようということになりました。

 現在は盛岡市医師会として私を含めて4人の小児科医がお手伝いにいっています。といういきさつですが、あまり面白い話ではないかしら?

 ときどき盛岡市から転居した赤ちゃんと会うこともありますし、たまに出かけるのは、けっこう楽しいですね。現在私が担当しているのは6〜7ヶ月児ですが、湿疹のこと、アレルギーのこと、夜泣きのこと、等々いろいろなことを聞かれます。あまり詳しい話をするとかかりつけの先生との間で迷うかもしれませんので、あっさりお話ししています。次は9月です。また、水曜日の午後休診しますがご理解下さるようお願いします。

2008年7月13日(日)
人体の不思議展

 7月12日〜8月31日まで、岩手県民会館で『人体の不思議展』という催しが開かれています。

 これは、一般の人が実際の人体の標本を見ることによって、「人の体のしくみの精巧さ、不思議さを知り、命の尊さ、健康の大切さを実感して欲しい」という趣旨のようです。全国各地を回って開催されているようです。

 実は、1ヶ月ほど前、全く面識のない人(一応、西日本のある病院勤務の医師と名乗っておりました)
から、メールが届きました。「人体の不思議展は、実物の人体の死体をさらし者のように扱い『興味本位な営利主義』に基づくものであり、人間の尊厳性を著しく冒涜(ぼうとく)するものである。」だから、「反対署名してくれ」とか、「カンパしてくれ」とか、「医師会にも後援しないよう働きかけてくれ」という内容でした。
 イヤ、驚きました。さっそく、この催しの主催者やメールを送ってきた人について調べてみましたが、よくわかりませんでしたね。実際に見ないことにはね・・・。

 そうしているうちに、この催しのパンフレットと割引券がゴッソリ送られてきました。2週間くらい前になります。これを患者さんに渡して下さいということですが、はたして、いいのかな?と少し疑問もありましたので、まだ誰にも渡していません。まず一度自分で見てから人に勧めるかどうか決めようと思いましたので、さっそく、昨日見に行ってきました。
 
 開催初日の土曜日の午後でしたが、そんなに混んではいませんでした。私たち医師は学生の時に解剖実習で人体の神経、血管、臓器などを隅から隅までくまなく、勉強させて頂きました。遺体に対して尊厳の気持ちを失わぬよう解剖実習の前と後には必ず、手を合わせました。人体標本に出会うのはそれ以来です。

 この催しで展示されている人体標本は、プラストミックという技術で作られており、保存状態がよいそうです。しかし、よく見ると、筋肉は所々ほぐれたりして、神経も中断していたり、走行がメチャクチャだったりして、失礼ながら少しお粗末な標本という感じでした。

 いろいろなポーズをとっている全身像、各臓器の陳列など多くの人体標本が展示されていました。
 ところで、日本の国では医学教育・研究以外ではこの様に人体標本の展示はできないはずと思っていましたので、会場にいたスタッフの方に、少しお話を聞いてみました。人体標本は全て中国で作られたものだそうですが、全て中国人というわけではないようでした。皆、生前に献体の許可を取っているということでした。また、外国由来の遺体は展示できるのだそうです。つまり、正規の手続きを踏んでいるから展示は別に問題はありませんといってました。

 筋肉や骨の動きをよく見せるために人体標本はいろいろなポーズをとっていましたが、興味本位なポーズにしか見えない標本もありました。実際の筋肉や骨の動きを見せるには不自然なポーズも見られました。
 人体の縦断面の展示には驚きました。人体標本をスライスハムのように切り刻んで、まるで、CTや、MRIの画像を見るようでした。また、死産した胎児の遺体がまるで月例を追うようにたくさん並んでいるのにも驚きました。

 個人の意志に基づく献体とはいうものの、その人達は生前、この様にいろいろなポーズをとらされたり、全身をスライスハムのように切り刻まれて展示されることを承諾したのだろうか・・・?

 1時間くらいで一通り見てきましたが、確かに、純粋に人体の中を見たいという人にとっては勉強になるかもしれないですが、ただ、詳しい説明は何もありませんので、医学知識のない方が見てもおそらく殆どわからないと思います。それに少しお粗末な作りの標本です。何となく人体の中を見たという程度の満足感くらいでしょうか。

 確かに、見方によっては、(少し言い方が悪いかもしれないが)、人間の尊厳を傷つけているような『興業本意の見せ物』という感じがしないでもないです。
 さしあたり、当院ではパンフレットも割引券も配布しません。(希望者には差し上げます。)今後の世間の反応が見たいです。

2008年7月6日(日)
夏カゼと、発熱

 今日は当番医でした。毎年、梅雨明け頃から「夏カゼ」が流行り始めますが、今年もそうですね。

 今日は、「急に熱が上がった。」といって受診したお子さんが殆どでした。急に熱が上がると具合が悪いですよね。「食べない、飲まない、グッタリしている。」とても心配ですよね。

 ところで、どうして熱が上がるんでしょう。考えたことありますか?
 熱の原因で一番多いのは、なんといっても【感染症】です。感染症とは、いろいろなバイ菌が体内に入って悪さをする病気のことを言います。代表的な感染症は、いわゆる『カゼ』です。

 体内にバイ菌が入ると、免疫を担当する細胞が、バイ菌をやっつけるために頑張ります。その結果熱が出るのです。言い換えますと、【熱を上げることによって、バイ菌をやっつけている。】のです。ですから、感染症で熱が上がると言うことは当然のことであり、熱を下げるということは正常な免疫反応を抑えることになり、あまりよいことではありません。

 といってもね〜。熱が上がると焦りますよね。「このままどんどん悪くなるんじゃないか」とか、「高熱が続けば頭がおかしくなるんじゃないか」とか、そんなことはないんですけど、でも心配する気持ちよくわかります。

 私の子どももまだ小さかった頃、よく熱をだしました。お母さん(私の奥さん)は心配します。でも自分は大丈夫と少し見栄を張っていましたが、内心「とんでもない病気だったらどうしよう。」と心配することもありました。なまじっか知識があるからかえって心配するんですよね。3〜4日して治ってしまえば、「マア、こんなモンだよ。」なんて言ってましたが、やはり、高熱が続けば誰でも心配になりますよ。

 《熱が続く時、気をつけてほしいこと。》
@.そんなに元気がないわけじゃない。いつもの半分くらいは食べたり飲んだりしている。→まず心配ありません。
しかし、いくら元気でも、3日以上熱が続けば、必ず、受診して下さい。

A.前の日と比べて、悪くなっているようなとき。→あまり様子など見ることなく、早めに受診して下さい。

B.食べない、飲まない、元気がない、グッタリしている。→そういうときは、熱だけの問題ではなく重症な場合もありますので、早めに受診して下さい。

 今日、発熱で受診したお子さん達、まだ熱が続いてるでしょうね。熱が下がらず、夜間診療所や二次輪番病院を受診してるかもしれません。多分、私と同じような説明をされていると思います。
 熱冷ましを使ったから治りにくくなるというわけではありませんから、いつまでも高熱が続くようでしたら使って良いですよ。1度くらいしか下がらないかもしれませんが、今日はそれで十分です。

 発熱初日はまだ、体が熱になれていないから、かなり悪く見えますが、少し時間がたつと体が熱になれてきます。明日も高熱が続いて元気がないようでしたら、早めにかかりつけの先生を受診して下さいね。皆さんお大事にね。

参考までに→発熱と熱さまし

2008年7月4日(金)
頭ジラミ

 梅雨になったせいか、このごろ、はっきりしない天気が続きますね。盛岡の梅雨はあまり雨も降らず、暑いんだか寒いんだかわからないままにいつの間にか、夏になって、すぐ秋になって、・・・。
 
 先週までは、あまり夏かぜの患者さんも見ませんでしたが、今週になったら、プール熱や、ヘルパンギーナも少し見られるようになりました。そろそろ夏です。

 数日前に、ご近所の皮膚科の先生から、「最近、頭ジラミの小学生がよく受診します。先生(私のこと)が学校医をしている小学校のお子さんもよくきますが
、そちらはどうですか。」と言うようなお電話がありました。
 たまに、頭ジラミのお子さんも受診しますがそんなにくるわけではなく、やはり皮膚科を受診することが多いようです。
 頭ジラミは、決して不衛生にしているからなるのではなく、集団生活の場で、頭と頭が接触することによって感染が拡がっていきます。頭ジラミのタマゴは、0.5mmx0.3mm位の大きさで、髪の毛の片側に飛び出すように固定されてますが、頭ジラミの幼虫や成虫は頭髪の間を素早く動き回ります。
 頭ジラミが寄生して1ヶ月くらいたつと、かゆみが出てきます。頭がかゆくてよく見ると、なにか白いモンがむずむずと動いてるようなので病院を受診というパターンが多いようです。
 園児や、児童に頭ジラミが見つかった場合、かなり広い範囲で感染が起こっていることが予測されますので、集団で検診、治療することが大切です。櫛や、タオルの貸し借りからも感染しますので、集団ではこの様な貸し借り行為は行わないようにしましょう。
 治療はシラミ駆除剤配合のシャンプー:スミスリンシャンプーや、パウダー:スミスリンパウダーが、市販薬として売られていますので、これがよいようです。また、シーツや枕カバーを熱湯消毒したり、ドライクリーニングにだすのも効果があるそうです。

 頭ジラミは普通の生活のなかで感染します。不衛生によって感染するのではありませんので、周囲の人たちもあまり心配しないで、特にいじめの対象にならないように注意することも大切です。