こどものアレルギー性鼻炎

 今や、国民の5人に1人がアレルギー性鼻炎を持っているといわれます。大人だけでなく、こどものうちから、症状が見られることも珍しくなくなりました。

 アレルギー性鼻炎では、くしゃみ、水性鼻汁、鼻閉が3大症状といわれます。しかし、単に鼻だけの症状にとどまらず、眼やのどにまでアレルギー反応をおこし、涙、眼のかゆみ、のどの異和感、咳、頭痛、顔の火照り、皮膚のかゆみ、喘鳴、等々多彩な症状がみられることもあります。

 成人や年長児では、大体このように症状がわかりやすいのですが、小児、特に年令が小さくなるほど、必ずしも、くしゃみ、水性鼻汁、鼻閉の典型的な症状がはっきりしないため、成人のように、パッと一目見てアレルギー性鼻炎とは、なかなか診断できないこともあります。

 アレルギー性鼻炎のうち、花粉が原因の場合は、花粉症。ダニやホコリが原因の場合は、通年性アレルギー性鼻炎といいます。花粉症は花粉の飛ぶ時期に、通年性ではほぼ1年中、症状が見られます
 


 こどものアレルギー性鼻炎の特徴は?

 小児には成人と異なった特徴があり、特有の顔つきやしぐさがみられます。従って検査や、局所所見(鼻粘膜の様子)だけでなく全身の観察も必要です。

 ☆ 鼻閉が多い
 小児では鼻閉以外の症状は、聞かなければ訴えないこともあります。くしゃみのみ強いタイプはあまり多くなく、起床時のみ、くしゃみがみられることが殆どです。鼻汁は水性とは限らず、粘性(膿汁)のこともよくあり、これは副鼻腔炎や感染を合併している場合にみられます。

 ☆ 特有の顔つき、しぐさがみられる。
 鼻をすすったり、よく鼻をかいたり、鼻血がでやすかったり、下眼瞼に浮腫状のクマができたり、また、無意識のうちに、鼻閉、かゆみから逃れるためにチック様の顔面運動がみられたりします(アレルギック チック)等々。成人と比べるとはっきりしない症状も多く見られます。 

 ☆ 合併症が多い
 こどものアレルギー性鼻炎には、気管支喘息が30%、アトピー性皮膚炎が20%くらい合併します。逆に、気管支喘息にアレルギー性鼻炎が合併する率は、70〜80%とかなり高率です。またアレルギー疾患以外にも、副鼻腔炎や、扁桃肥大などの合併も高率にみられますので、これら合併症の治療も同時に必要な場合が多いです。 


 どうやって診断するの?

 ◇ 鼻汁好酸球検査アレルギー性の炎症がおきていることを意味します。

 好酸球は、白血球の一種で、アレルギー性の炎症が生じた組織にたくさんみられます。好酸球が鼻粘膜から検出されるとアレルギー性鼻炎がかなり疑わしいのですが、常に検出されるというわけではなく、花粉症の季節外とか、アレルギー反応が弱いと検出されない場合もあります。検出された場合は、アレルギー性の炎症がおきていると思ってまず間違いなく、検出されないからといっても、アレルギーを否定はできません。

 ◇ 特異的IgE抗体アレルギーの原因がわかります。

 アレルギー性鼻炎をおこすには、その原因になるもの(抗原)がありますので、この原因を調べることは大変意味のあることです。よく行われている検査は、採血や皮膚反応によって特異的IgE抗体を調べることです。花粉症の場合、症状が軽いと、その花粉の季節以外では、抗体が検出されないときもあります。


 治療と、気をつけたいお薬は? 

 まず環境整備が大切です。花粉症ならその時期の外出にはマスクをしたり、花粉の多い時間帯の外出を少なくするようにしましょう。通年性の場合、ダニ、ホコリ対策をこまめに行うことが大事です。

 アレルギー性鼻炎は、@くしゃみ、水性鼻汁の強いタイプ、A鼻閉の強いタイプ、B3大症状全て強いタイプ、に分けられます。当然、それぞれのタイプによって治療する薬(抗アレルギー剤)もかわります。
 ※アレルギー性鼻炎の治療薬は花粉症とほぼ同じですので、初期治療とセルフケアをご参照下さい。

 ただ、少し、注意が必要なお薬もあります。
 それは、
★ 内服ステロイド剤セレスタミン、ヒスタブロック、プレドニン、リンデロン、等

 点鼻薬のステロイドは少量ですので、期間を決めて使用すれば、まず問題ありませんが、内服薬のステロイド剤は、一般にはあまり用いられません。それは、軟膏や、点鼻薬と違って、ステロイド剤を長期に飲み続けると、必ず、副作用(免疫力が弱まり、感染症にかかりやすくなる。多毛、肥満、糖尿病、等)がでるからです。

 しかし、重症な時は一時的に使用されることもあります。例えば、鼻にフタをされて息ができないくらい苦しいとか、眼を取り出して洗いたいくらいかゆいとか、そういうようなウ〜ンと苦しいような時にだけ短期間(数日間)使用されます。

 こどもでは、ステロイド剤を内服しなければならない重症なアレルギー性鼻炎は、殆どみられません。このような薬は安易に内服しないようにしましょう。

★ 血管収縮剤の点鼻薬プリビナ、ナーベル、トーク、ナシビン、コールタイジン、等
                 (コールタイジンは血管収縮剤とステロイド剤との合剤)

 点鼻後数分で、鼻閉がとれてすっきりしますが、使うほどに効果が弱くなり、使用回数が増えると鼻粘膜がかたくなって、前よりも悪くなることがありますので、短期間の使用にとどめる薬です。安全性の問題もあり、(血管を収縮させるため、血圧が低下してショックをおこす心配があります。)2才未満の乳幼児では、使用されません。

 アレルギー性鼻炎用の市販薬には、殆ど血管収縮剤が含まれています。薬品名は、塩酸テトラヒドロゾリン、硝酸テトラヒドロゾリン、塩酸ナファゾリン、塩酸フェニレフリン、などです。成分表示に、これらの薬品が含まれているときは、長期連用しないように注意して下さい。特に小児では、使用しない方が無難です。


 薬物治療の効果が不十分な場合は? 

 最近の薬(抗アレルギー剤)は、かなり効果が期待できますが、それでも、十分な効果が得られない場合や、長期間内服する薬を減らしたい場合には、舌下免疫療法をお勧めします。(対象年令:12才以上です)


 花粉症予防は、乳幼児から 

 多くのアレルギー疾患は遺伝性がありますが、花粉症も例外ではなく、両親がスギ花粉症を持っていれば、お子さんは、ほぼ100%スギ花粉症を発症します。 花粉症を予防するには、乳幼児期から花粉を回避することが大切ですが、現在、花粉症未発症児の予防対策は殆ど行われていません。

 花粉症未発症のうちから予防することは、将来の花粉症の発生を遅らせ、重症化を防ぐためにも大事なことです。

 ◎ 冬にカゼ(気管支炎)をひいた赤ちゃんは、花粉症になり易い?
 赤ちゃんは、生まれた年の冬(最初の冬)によくカゼをひきますが、カゼの原因ウイルスの1つにRSウイルスというウイルスがあります。このウイルスは、細気管支炎という重症な気管支炎を引き起こすことでよく知られています。 また、このウイルスに感染すると、気管支や鼻の粘膜が傷つき、過敏な反応を示しやすくなってしまいます。その結果、気管支喘息や、花粉症(アレルギー性鼻炎)に罹患しやすくなることも、近年明らかになってきました。
 冬に重症な呼吸器感染症にかかった赤ちゃんは、春の外出には気をつけるようにしましょう。

 ◎ 妊娠後期(7ヶ月〜10ヶ月)の妊婦さんは、花粉に注意。
 妊婦さんが、妊娠後期(7ヶ月〜10ヶ月)に大量の花粉に暴露されると、生まれてくる赤ちゃんが花粉症や気管支喘息を起こすおそれが強まると言うことが、報告されています。妊娠後期の妊婦さんは、花粉の多い日の外出をなるべく控えまるようにしましょう。

 ◎ 生まれ月による花粉症発生率の違い
スギ花粉症は、生まれた月によって、発生率が異なってくることが、最近わかってきました。花粉が大量に飛散した年の前年10月〜1月に産まれた赤ちゃんは、花粉症になりやすいのです。これは、赤ちゃんの免疫形成期に、体内に大量の花粉が入ることが原因と考えられています。

 花粉症のシーズン(3〜5月)の花粉飛散量が多いホカホカ陽気の日は、生後半年くらいまでの赤ちゃんは、なるべく外出を控えられた方が良いでしょう。

 京都府で、小中学生500人のスギ花粉に対する特異的IgE抗体量を調べたところ、10月〜1月に生まれた学童の方が、スギ花粉シーズン終了後の6〜9月に生まれた学童よりも、2倍以上に高かったという結果でした。


 花粉症(アレルギー性鼻炎)は、気管支喘息を悪化させ、風邪をひきやすくする

 近年、アレルギー疾患の発症は低年齢化し、幼児期から、アレルギー性鼻炎と気管支喘息を合併することも珍しくなくなりました。鼻と気管はつながっていますから、関係が深いことはおわかりいただけると思います。鼻症状のうち特に鼻閉が強いと鼻で呼吸できず、いつも口で呼吸することになります。

 鼻には、
@.吸い込む空気をきれいにする“フィルター”の働きと、
A.加温加湿した空気を気管に送る“加湿器”の働きがあります。
 鼻閉のため、口呼吸になりますと、これらの働きが妨げられるため、汚れて、冷たい、乾燥した空気が気管に送られることになります。これが原因で気管支喘息が悪化するのです。また、扁桃腺や、咽頭も汚れやすくなるため、バイ菌もつきやすくなり、風邪もひきやすくなってしまいます。幼児期からきちんと鼻呼吸できるように治療すれば、鼻炎だけでなく、気管支喘息も悪化しません。