診察室便り

2009年6月22日(月)
子どもの臓器移植:ドナー(臓器を提供する側)と、レシピエント(臓器を受ける側)

 衆院本会議は18日午後、議員立法4案が提出された臓器移植法改正案のうち「脳死は一般に人の死」と位置付け、本人が生前に拒否表明しなければ、家族の同意で臓器提供を可能にするA案(中山太郎元外相ら提出)を賛成多数で可決しました。
「脳死は人の死」案、衆院通過 臓器移植法改正(共同通信)

 「脳死は人の死」とし、家族の同意があれば15歳未満でも臓器移植を可能とする法案が衆議院で可決されました。この法案によって、小児の臓器移植が推進されていくのでしょうか。

 以前より、日本では小児の臓器移植が実質的に不可能であるため、わざわざ海外に行って、移植手術を受ける人が多く、早く国内での手術ができるように要望されていました。移植を待っている人たちからはたいへん歓迎される法案です。
 ところで、法案可決した時、拍手をしながら笑顔の国会議員もいましたが、亡くなった人の臓器を移植するわけですから、移植されて喜ぶ人がいる一方で、人が亡くなり悲しむ人がいるということも事実です。この議員たちの態度にはデリカシーを感じませんね。「こいつら、ドナー(臓器を提供する側)に対して、少し気を遣えよ。」って言いたくなります。

 今回の法案では「脳死は人の死」と決めつけてしまいましたが、日本人の死生観は、外国に比べて独特なものがありますので、「脳死は人の死」を、すんなり受け入れられない人たちも多いように思います。
 「脳死」でも機械をつければ、心臓も動き、呼吸もでき、温かい血液が循環します。見た目にはぐっすり眠っているようにも見えます。

 法案では「本人の意思が不明な場合でも家族が同意すれば臓器提供できる」とあります。生前から、わが子の臓器提供をする意思があるご両親ならともかく、わが子が危篤状態でやり切れない気持ちでいるご両親に対して、いきなり「お子さんの臓器を提供してくれますか。」という選択を迫るのは残酷な気がします。

 ドナー(臓器を提供する側)の家族は、「どうせ助からないなら、移植を待っている人のために役立ってあげよう。」とも考えるでしょうが、「もし少しでも回復の可能性があれば、10年でも20年でも待っていたい。」とも思うでしょう。
 また、レシピエント(臓器を受ける側)の家族は、「臓器を移植してほしい。生きていきたい。」と思うでしょう。これは当然のことと思います。両者の思いが一致すれば、臓器移植は今後推進されていくでしょう。

 そのためには、前もって臓器移植に対し「心の準備」をしておくことが大切ではないでしょうか。あり得ないことと思いながらも、もし、自分の子がドナー(臓器を提供する側)または、レシピエント(臓器を受ける側)になった場合を考えてみて下さい。
 わが子が不治の病に陥り臓器移植しか治療法がないとしたら、臓器を欲しいと思います。しかし、逆に、わが子が脳死になった時はかわいそうだからあげられないと思ってしまうのではないでしょうか。

 子どもをレシピエント(臓器を受ける側)にしたい人は多くても、ドナー(臓器を提供する側)にしたい人は少ないのが実状と思います。

 ある肝移植希望の子どもが、オーストラリアで臓器移植待機中に肝不全で亡くなりました。そこでコーディネーター(臓器提供に関する一連の手続きを調整する専門職)が親に腎など他の臓器提供の意思を尋ねたところ、親は提供を断ったそうです。
 それまでどちらかといえば日本人には親交的であったオーストラリア人も、それ以降は日本人を受け入れなくなりました。

 『わが子のためには他人の臓器がほしくても、他人のためにはわが子の臓器をあげたくない』という人と、『他人のためにもわが子の臓器をあげてもよい』という人が、同じように臓器提供されるのでは不公平だと思います。当然、『他人のためにもわが子の臓器をあげてもよい』という気持ちの人から優先的に臓器提供がなされるべきと思います。

 現実的には難しいかもしれませんが、例えば、母子手帳発行時に臓器提供の意思をご両親に確認してみても良いと思います。もちろんその時に意思決定をする必要はなく、ご両親でよく話し合って、レシピエント(臓器を受ける側)かつ、ドナー(臓器を提供する側)の両方になってもよいと意思表示した場合にのみ、優先的に臓器提供を受けることができるという規定があってもよいと思います。そして、子どもが成長し、【死】ということを理解できるような年令になったら、改めてその子の意思で決めればよいと思います。

 サッチャー時代のイギリスで、「日本人は札束で臓器を買いに来る」と揶揄されました。世界からは我々医療界も含めて日本人は侮蔑されているかもしれません。自分だけが良くなればよいと思ってはいけない。人から恩恵を受けるには、自分も人に恩恵をほどこさねばならないと思います。日本の臓器移植が進まないのは、身勝手な国民性も原因の一つかもしれません。

 再生医療が進歩して、多くの臓器が再生できるようになれば、臓器移植は必要なくなります。早くそうなるように期待したいです。

2009年6月11日(木)
盛岡でも、新型発生

 『岩手県は9日、盛岡市の女性(36)が新型インフルエンザに感染したと発表した。東北地方での感染確認は初めて。女性は、感染が相次いでいる千葉県船橋市立中学校の生徒が修学旅行で訪れた飲食店に勤務していた。』
 【6月9日21時31分配信 時事通信】

 ついに、盛岡市にも新型インフルエンザが上陸(?)しました。先月16日に国内初の新型インフルエンザ患者が発生したときは、時間の問題で盛岡にもくると思いました。
 6月21日(日)は休日当番医ですので、大流行(?)に備えて検査キットや薬品を急いで確保しましたが、問屋さんの検査キットはアッという間に在庫がなくなり、たいへんでした。その後、少しずつ沈静化してきたなと思っていたら、やっぱりやってきましたね。
 こうなると、また、修学旅行の是非が問われることになりますが、今回の新型は弱毒性ということで、修学旅行に限らず人の行き来はあまり制限されていませんので、やむを得なかったかもしれません。

 問題はこれからです。盛岡市で新型が発生して、3日目。まだあまり騒がしくなってはいません。私たち医療機関にもいろいろ情報が伝えられてきます。患者さんは軽症で、もう回復に向かっているようですが、どこの飲食店であるのかわかりません。確かに店の名前が公表されると風評被害のため、大きな損失を被るかもしれません。個人情報の保護ということだと思います。しかし、この飲食店で感染した人がそうとは気がつかずに、あちこち出歩いて感染を広げる心配もあります。医療機関側としても発生源がわかった方が、患者さんに対応しやすいです。とはいえ、飲食店に非があるわけではなく、いわば、飲食店は被害者ですので、店名公表は微妙な問題です。
 盛岡市保健所では、この飲食店や生徒の宿泊先の従業員ら計400人以上を調査しているところですが、今のところ症状のある人はいないということです。
 
 岩手県は、発熱相談センターや発熱外来の設置拡大を行っております。また、社会生活上の取り組みについては、今のところ、小学校、幼稚園、保育園などの休校措置は行わず、不特定多数の人が集まる施設、イベントなどの休止、自粛も行わない。という方針です。

 世界保健機関(WHO)は新型インフルエンザの警戒水準(フェーズ)を、現行の「5」から、世界的大流行(パンデミック)の宣言を意味する「6」へ週内に引き上げる方向で最終調整に入りました。

 これから梅雨に向かう盛岡で大流行にはなりがたいと思いますが、新型インフルエンザは、確実に患者数が増えていますので、依然として要注意な状況にあることには変わりありません。

2009年6月7日(日)
日本小児難治喘息・アレルギー疾患学会

 また、今年も日本脳炎予防接種の季節になりました。平成17年以来、厚労省の「積極的勧奨の差し控え」というわけのわからない通知がなされてから、接種する人は激減しました。今年から新しいタイプの日本脳炎ワクチンが発売されましたが、出荷本数も少なく、いろいろ制約もあるため、希望者全員が接種出来るわけではないようです。詳しくはこちらをご覧下さい。→日本脳炎予防接種のお知らせ

 6月は9〜10月と並んで気管支喘息発作が多い月です。急に冷え込んだり、風が冷たいような時は要注意です。先週
『第26回 日本小児難治喘息・アレルギー疾患学会』に参加してきました。会場は九州の福岡。遠いですね。私は飛行機が嫌いであまり乗りません。以前に福岡で学会があった時は、新幹線を乗り継いでいきましたが、疲れましたね。今回は時間もあまりなく、土曜日に行って日曜日に帰る行程でしたので、飛行機で行ってきました。仙台から2時間弱で福岡に行っちゃうんだから早い!

 この学会は、「難治喘息」についてかなり深く話し合われています。全てご紹介はできませんが、「小児気管支喘息における吸入療法の現状と課題」というセミナーがありましたので、少しお話ししたい思います。昔、私がまだ医師になる前からも気管支喘息の吸入療法はありましたが、今とは全く違います。昔は喘息発作が起きてから、発作を押さえるために吸入していましたが、今は発作が無くても予防的に吸入する時代です。よく、夜中に発作を起こした時の用心に吸入器がほしいと言われる親御さんがいますが、吸入療法は予防治療が中心で、発作治療はおまけです。ですから吸入器を購入する時は、月〜年単位での使用と考えて下さい。
 吸入療法のお陰で重症な喘息患者さんは少なくなりました。でも、外国と比べると日本では、まだ、吸入療法は広く行き渡っているとは言えず、もう少し普及が必要なようです。
 吸入器を購入して行う吸入療法は、どことなく重症な患者さんの治療というイメージがあるみたいですが、実際は軽症な気管支喘息からでも積極的に行う方が将来的に重症化せず、治療期間も短くなる場合が多く、もっと積極的に吸入療法を勧めましょう。などというお話しでした。
 
 小児喘息は重症患者は減って、軽症患者が増えています。しかし、この軽症といわれる中には症状は軽く見えても、治りにくい場合も多く見られており、以外にも過小評価され十分な治療を受けられていないお子さんが多いようです。そして、より低年令ほどこの傾向が強いようです。こういう場合に吸入療法はきわめて有効と思われます。

 当院では吸入療法が必要と思われるようなお子さんには、まず、吸入器をお貸ししています。これで短期間でよくなれば少し経過を見ますし、吸入療法を止めてすぐ悪くなるようなら、引き続き行います。吸入器は以前は、1台3万円以上しましたが、今は、1万5千円〜2万円くらいでけっこうよい製品が購入出来ます。吸入器にはいろんな種類があり、使用目的にあわせて購入しなければなりませので、自分で勝手に購入しないで下さい。必ず医師と相談してからにしましょう。
 薬を飲むだけではイマイチ喘息が良くならないと思っている方がおりましたら、是非ご相談下さい。私も吸入療法を積極的に勧めています。

2009年5月28日(木)
新型インフルエンザ、収束?

 この頃、新型インフルエンザの記事が少なくなりましたね。まだ、新たに発症している地域もありますが、最初に患者さんが発症した神戸や大阪では収束に向かっているようです。岩手県はどうでしょうか。5月16日に日本初の患者さんが発症したときは時間の問題でやってくるだろうと思いました。6月21日が当番医にあたっていますので、大変なことになるかな なんて思っていましたが、どうやら杞憂に終わりそうです。思ったほど感染力が強くなく、重症者も殆どいなく、季節性のインフルエンザ並み、あるいはそれ以下?。でも油断は禁物です。みんなが心配しているように、これからどういう変異をするか全くわからないわけですし、おそらく、散発的に小流行しながら、世界中に居座っていくんでしょう。やはり、今年の秋〜冬が心配なことには変わりはないです。

 ところで、これまでの我が国における新型インフルエンザ対策(行動計画)について、どう評価しますか。良い対策だった?中途半端だった?まずまず?感じ方は人それぞれですよね。

 当初、厚労省の対策は強毒性新型インフルエンザを想定してのものでした。これは当然と思います。水際対策については、搭乗者を長時間拘束するため、非難もありました。学校の休校も生徒が家で待機しきれずに遊びに外出するようなこともありました。急いで各地に発熱外来が設置されましたが、医師確保が難しい地域も多いようでした。アッというまにマスクは足りなくなりました。診療拒否については、同じ医療従事者として一概に否定はできませんが、説明不足は否めません。などなど、いろいろ大変だったようです。

 次第に弱毒性とうい事がわかってきてからは、それなりの対策に変更されてきましたが、弱毒性でもこれだけ大変だったわけですから、もし強毒性だったら、もっと混乱していたでしょう。
 これからは、弱毒性と強毒性との両面から対策をたてていかなけらばならないでしょう。ただ、弱毒性と強毒性との線引きが難しく、現場では混乱が見られそうです。そのときの状況に応じた適切な判断が必要とされます。今年の秋〜冬に向けて、厚労省はもっと、医師の意見を取り入れながら、行動計画を作成してほしいと思います。

 今週の土曜日(5月30日)に福岡市で、『第26回 日本小児難治喘息・アレルギー疾患学会』が開催されます。この学会に参加してきます。2週間くらい前は、もし新型が大流行していたら、キャンセルするつもりでしたが、この状況なら、仕事を優先します。これも臨機応変な行動計画の変更といえるでしょうね。

2009年5月18日(月)
新型インフルエンザ、冷静になりましょう。

 今日も新型インフルエンザの報道が目立ちます。患者数は、100人を越えました。おそらく、ここ2〜4週間で、全国中にインフルエンザの患者さんが、増加するでしょう。もう感染拡大阻止よりは医療中心の対策に変更した方が良さそうです。舛添厚生労働大臣は、専門家諮問委員会から「新型インフルエンザの毒性は季節性と大きく変わらない」との報告を受けたことから、強毒性の鳥インフルエンザを想定した政府の行動計画は実態に合わないとし、「軽めの症状に合わせた形の対応に変えたい」と述べました。今後どのように変異していくかわからない未知のウイルスではありますが、さしあたり、重症者も見られていませんので、良い判断だと思います。舛添さん少し落ち着いてきましたかネ。

 では、私達は何をすればいいのでしょうか。毎年流行るインフルエンザ対策と同じで良いと思います。聞きあきたと思いますけど、「マスク、手洗い、顔洗い。人混みにいかない。部屋の湿度は高めにする。十分な睡眠、休養をとる。せめて1週間分くらいの非常食品は備蓄しておく。」といったところでしょうか。

 この新型インフルエンザは、ある程度蔓延すると思いますが、梅雨〜夏は少し少なくなると思います。でも、あちこちで散発的に発生は続くでしょう。

 問題は今年の冬です。もしこの時、強毒性に変異していたら、大変怖い事になります。このメキシコで発生した新型インフルエンザは、しばらく地球上に居座るでしょう。私達も今日、明日のことだけではなく、長い目でつきあっていく覚悟が必要です。

 医療機関の対応も様々なようです。診療拒否する医療機関も出たりして、パニックになっています。確かに、免疫抑制されている患者さんにとっては、インフルエンザに限らず感染症はとても怖い合併症になりますので、拒否したくなる気持ちもわからないわけではないです。

 私のところのような町の診療所では、他の患者さんに移されないように配慮しなければなりませんし、職員の健康も守らねばなりません。現在、職員はマスク着用しています。岩手〜盛岡にも患者が発生してきたら、マスクだけでなく、ゴーグルをかけて、徹底した手洗いをして、診療にあたるようにします。前述したように、本当に怖いのは今年の秋〜冬です。今は、その予行演習に過ぎないかもしれません。

2009年5月17日(日)
新型インフルエンザ、流行しそうです。

 昨日は、私の誕生日でしたが、その日に国内初の新型インフルエンザの患者さんが発生しました。大変な記念日になってしまいました。国内で初めて渡航歴のない人から新型インフルエンザが発生しましたが、1日経った今、午後7時現在、患者数は44人になったそうです。明日の今頃は3桁になってるでしょうね。今後感染が拡大するのは時間の問題でししょう。

 一生懸命検疫していたのにと思っても、潜伏期間であれば検査してもわかりませんので、そういう人が入国して、案外軽く罹って、自分では新型インフルエンザと気がつかないままに他の人に移してしまった。なんて考えてしまいます。が、どのような経路で感染したかは調査中とのことです。いずれ、国内でも発生すると思われてたわけですから、想定内のことではあります。

 これで、熱が出たら発熱外来(発熱相談センター )というパターンが一気に広まりそうです。でもチョット発熱しただけでも発熱外来にいったら、アッという間に発熱外来がパンクしそうですよね。それに大したことないのに発熱外来にいって、逆に移されたりするかもしれません。

 水際対策にしても発熱外来にしても、結局は時間稼ぎの意味合いが強いと思います。この稼いだ時間は、医療機関、行政、教育、一般市民、みんながそれぞれの置かれた立場でできる限りの対策を考えておく時間です。今のところ、毎年流行る季節性のインフルエンザと、同じくらいの毒性のようですし、薬も効きが良さそうです。ということは、いつもと同じインフルエンザ対策がキチンとできれば、そんなにおびえなくても良いのではないでしょうか。

 医療機関の一つとして当院の対策も、毎年流行るインフルエンザとそんなに変わりません。ただ、いつもはマスクをサービスしていましたが、このままでは足りなくなりそうですので、患者さんは自分自身でマスク(マイマスク)を用意して下さい。それと安静を守ることを強くお勧めします。体力が低下していれば弱毒性といえども、重症化するでしょう。体調が悪いときは仕事も学校も積極的に休むのが良いと思います

 これからも不安をあおる報道は相次ぐと思いますが、自分ができることは何かということを考えて行動しましょう。

2009年5月16日(土)
今日の、新型インフルエンザ

 ついに、日本国内でも、新型インフルエンザが発生したようですね。水際対策をくぐり抜けてきたんでしょうか。それとも全く別のルートからの感染でしょうか。いずれ、今後国内に広がっていくでしょう。早速、緊急時の対策が新聞などで報道されていますが、具体的な対策はまだはっきり提示されていないようです。学校、幼稚園、保育園などの休校(休園)はどのくらいの期間が必要なのでしょうか。これまでは、強毒性H5N1鳥インフルエンザを想定した対策でしたので、若干修正が必要でしょう。じき岩手にもやってきそうです。発熱したからすぐインフルエンザというわけではありませんから、受診前に、まずかかりつけ医や保健所へ連絡するようにしましょう。

2009年5月15日(金)
この頃の、新型インフルエンザ

 数日前まで、新聞の第一面は新型インフルエンザの記事でいっぱいでしたけど、この頃あまり見なくなりましたね。今のところ国内での発生もなく、少しホッとしたところでしょうか。これまでの報道から今回の新型インフルエンザはあまり毒性が強くないように言われていますが、WHOは、毒性の強さに応じてフェーズを決めるとしていますし、まだ、弱毒性ウイルスと判断するのは早いとも言っています。今後、人〜人感染を繰り返すうちに、強毒化することが心配ですが、今のところあまり危険な状況ではなさそうです。

 医師の中には、毎年見られるA香港型や、Aソ連型と同じように、Aメキシコ型なんて言ってる人もいますが、あまり感心しませんね。今後どれだけの毒性を持つかわからないわけですから、しばらくは慎重に経過を見なければならないでしょう。

 豚から出現した新型インフルエンザですが、これで、強毒性の鳥インフルエンザが、いなくなったわけではないですから、こちらの方も依然として警戒が必要です。鳥インフルエンザの方が豚インフルエンザよりはるかに怖いのなら、現状は鳥インフルエンザが新型になったときの予行演習をしているようなものかもしれません。この教訓が生かされればいいです。

 現在も空港では検疫がなされていますが、いつまで続くんでしょう。世界中に広まればすべての乗客を検査するのでしょうか。国内への感染阻止(水際対策)と、国内での感染拡大阻止とは、少し対策が異なるように思いますが、その辺のことが明確に報道されていないことに少し不安があります。

 発熱外来を設置しても、いずれ患者数は増える一方でしょうから、発熱外来だけではすぐ対応できなくなるはずです。そうすると普通の診療所でも患者さんを診ることになりますが、大変混乱が予測されます。そういう時の対策は今のところ不十分です。
 また、患者さんだけでなく、実際に診療にあたる医療従事者の安全も考えなければなりません。これから夏に向かう日本で爆発的に流行することはないように思いますが、今冬は心配です。

 ところで、今、新型インフルエンザに対するワクチンの議論が行われていますが、近々新型インフルエンザワクチンについての国際会議が開かれるようです。おそらく、その結果から日本での季節性インフルエンザワクチンと新型インフルエンザワクチンの生産比率が決まると思います。

 今年の冬は従来の季節性インフルエンザワクチンと新型インフルエンザワクチンとの2種類のインフルエンザワクチンが生産されることになると思いますが、季節性は例年の生産量を下回るため、不足しそうですし、新型はどういう人たちへ接種するのかまだ決まっていません。H5N1プレパンディミックワクチンのように接種者が限定されるかもしれませんが、なんと言っても半年足らずでできるワクチンが安全なのかどうか、少し心配もあります。また、新型が今後、人〜人感染を繰り返すことによって、強毒化した場合、弱毒性といわれている今のウイルスを元にして作られるワクチンが効くのかどうかもよくわかりません。医療、行政も一生懸命頑張っていますが、「自分の身は自分で守る」くらいの覚悟が必要です。

2009年5月1日(金)
新型インフルエンザ

 日増しに新型インフルエンザの脅威が増しています。今のところ日本では発生していないようですが、不安な毎日が続きます。しかし、自治体も急ピッチで対策を進めています。マスコミ報道にもあるように、発熱相談センター が各地に設置されました。おそらく連休後からはフル活動しそうです。

 幸いまだ、日本での発生例はいませんので、全く海外に行ったことが無く、そういう人とも接触したことがない人の発熱はまず心配ないでしょう。逆に、4月中旬からの海外渡航歴のある人や、またはそのような人と接触したことがある人は要注意です。こういう人が発熱したら、まず保健所へ連絡です。いつものかかりつけ医へ行ったら、そこに来ている人たちみんなに感染を広げてしまうかもしれません。保健所の指示された医療機関へ行きましょうね。こういう事はここ2〜3日マスコミも報道してくれてますので、助かります。

 実際に盛岡市でも新型インフルエンザが発生したら、大騒ぎになるでしょう。とにかく外に出ないことです。学校だけじゃなく、幼稚園、保育園も休校(園)にするのが最善ですけど難しいでしょうね。今、岩手県医師会や盛岡市医師会では新型インフルエンザが盛岡市でも発生した場合の行動計画書を各医療機関に配布しており、臨機応変な対策を講じています。社会全体がルールを守れば最小限の被害ですみます。これからしばらくは、マスコミ報道や、院内の掲示によく注意して下さい。

2009年4月28日(火)
豚インフルエンザ

 この頃新聞の第一面は豚インフルエンザの記事ですね。降ってわいたような話だけど、いつ発生してもおかしくないといわれていた新型インフルエンザですから、ある程度予測されていたことではあります。しかし、いざ発生となると心配で混乱しそうです。

 WHOは、フェーズ4を宣言しましたが、フェーズ4は人から人への感染が成立した事を意味します。アッという間に大流行するかもしれませんが、今のところ何が何だかよくわからないことばかりです。これからゴールデンウイークにかけて海外からも人の出入りが多くなるでしょうから、パンデミックにならないか不安です。あまり心配ばかりしていてもよくないですが、実際今どんな状況なんでしょうか。

 メキシコで発生して、既にアメリカやヨーロッパにも感染が広がっていますので、じき世界中に広がりそうです。海外渡航者の検疫も発熱などの症状がなければ見逃されそうですし、協力的でない人もいるようですから、日本国内に入ってくるのも時間の問題かなと思います。

 国内で発生したとしても、どこの医療機関に行けばいいかわかりません。いつもかかってるお医者さんに行くことになると、そこからさらに多くの人に感染して、広がることになります。早急に指定医療機関を公表し、どういう症状(豚インフルエンザが怪しいと思ったら)が見られたら受診すべきか決めておかなければなりません。

 新型は重症というイメージが強いですが、豚インフルエンザはどうでしょうか。メキシコでは死亡者も出ていますので、やはり、重症?。でも、今のところメキシコ以外では死亡者は見られていません。メキシコで最初の症例が見つかったのは4月13日です。はじめ季節外れのインフルエンザ流行と判断したようですが、新型ということがわかったので、23日に豚インフルエンザ発生を緊急発表しました。少し対応が遅い感じがします。

 どうもメキシコの医療事情は日本のように整っていないようで、あまりタミフルやリレンザのような薬も検査キットも使われていないようです。そのため、インフルエンザとわからず受診が遅れて重症化する場合も多いようです。重症が多いのは医療のレベルによるもの?
 メキシコ政府の発表ではよくわからないことばかりです。もっとも、今見られている豚インフルエンザがそんなに重症でないとしても、人〜人の感染を繰り返すうちにどんどん毒性が強くなる事が予想されますので、やはり、怖いことにかわりはありません。

 桝添厚生労働大臣は豚インフルエンザワクチンの製作に意欲を見せていますが、今の流行には間に合いません。今年の冬には間に合いそうですが、その代わり毎年流行している季節性インフルエンザワクチンは製作できなくなると言うことです。どちらを優先するか大変難しい選択です。季節性インフルエンザで重症化する年令層は、幼児と高令者です。豚インフルエンザで重症化する年令層は青壮年が多いようです。年令別にワクチンを選択して接種できるように両方作ることができれば良いように思いますが、まるで綱渡りです。
 
 差し迫った状況にありますが、今、みんなができることは、「人混みに行かない。外出時にはマスクを着用する。帰宅後は、うがい、手洗い、顔を洗う。部屋の湿度を高めにする。」といった一般的なインフルエンザ対策です。普段から行っていると流行時でも自然にできるようになりますから、いつも心がけることが大切です。

2009年4月16日(木)
花粉症の市販薬は、大丈夫?

 スギ花粉が飛びまわってますね。4月に入ってから、目のかゆみ、くしゃみ、鼻水、鼻づまりを訴えて受診される方が多いです。毎年かかるとわかっていても、今年は大丈夫かなと思ったりして、つい治療が遅れる方も多いです。自分もスギ花粉症ですので、キチンと毎日治療しています。最近は市販される花粉症の薬も多くありますが、効果の方はどうでしょうか?市販薬で治療しているけど良くならないと言って受診される方も多く見られます。

 先日、近くの薬屋さんに行ってきました。ものすごい量の【花粉症グッズ】がありましたね。マスクやメガネは良さそうでした。でも、点眼薬、点鼻薬はその成分を見ると、チョット心配な薬品もたくさんありました。

 薬の安全性という観点から、市販されている点眼薬、点鼻薬について少しお話ししたいと思います。私は学生の頃から花粉症がありましたので、その頃から毎年今の時期は薬を使っていました。当時は花粉症に対して医学的な知識もなく、近所の薬屋さんで点眼薬、点鼻薬を買って使っていました。目のかゆみや充血は点眼すると一時的には良くなりましたが、少し時間がたつとまたひどくなり、また点眼すると良くなり、またひどくなって点眼すると・・・。という繰り返しでした。鼻づまりもひどくて、点鼻するとすっきり良くなるけど、少し時間がたつとまたひどくなり、また点鼻すると良くなり、またひどくなって点鼻すると・・・。ということの繰り返しでした。そのうちだんだん薬の効きが悪くなり、しまいには、目は真っ赤になり、鼻は詰まってひりひり痛くなり、と悲惨な状態になりました。

 アレルギー治療薬にはいろいろな種類がありますが、少し注意しなければならない薬品もあります。私が使っていた点眼薬、点鼻薬はこの要注意薬品でした。殆どの市販点眼薬、点鼻薬には血管収縮剤という成分が含まれています。これは一時的に血管を収縮して血管周囲の腫れを改善します。その結果、かゆみ、充血、鼻づまりが軽快したかのように見えますが、効果は一時的で、すぐまた症状が見られるようになり、使うほどに効果は減弱し、血管を弱めるため、最終的にはかえってひどくなってしまいます。塩酸テトラヒドロゾリン、硝酸テトラヒドロゾリン、塩酸ナファゾリン、塩酸フェニレフリン、などが有名な(?)血管収縮剤です。これらの成分が含まれている薬の使用は要注意です。短期間使うとしても効きが悪いなと思ったら早めにやめて、さっさと医師の診察を受けるようにしましょう。

 血管収縮剤が含まれた点鼻薬は、市販薬だけではなく、病院や診療所でも処方されることがあります。プリビナ、ナーベル、トーク、ナシビン、コールタイジン、(コールタイジンは血管収縮剤とステロイド剤との合剤)などです。ふつうは処方されない薬ですが、鼻づまりがひどいときに短期間処方されることがあります。決して長期間連用する薬ではありませんので、2〜3日間の使用にとどめて、普通の点鼻薬(抗アレルギー剤、ステロイド剤)に切り替えましょう。
 血管収縮剤は、その名の通り、血管を収縮させるため、血圧が低下してショックをおこす心配があります。そのため、2才未満の乳幼児では使用されません。にもかかわらず、ときどき処方されているお子さんを見ます。チョット怖いですね。

 点眼薬は、目に入った花粉を洗い流すという意味で、ドライアイに使うような人工涙液が良いと思います。ただし、カップみたいなものを目に当てて目を洗う「ア○ボ○」とかいう商品は目の回りについた花粉まで洗い落として目に入れてしまうおそれがありますので、注意が必要です。

 盛岡のスギ花粉症シーズンは大体5月の連休頃までです。桜が咲き終わる頃にはスギ花粉症も治まりますが、イネ科の花粉症もある人はこれからも大変です。花粉症治療もいろいろな新しい方法が試みられていますが、一般に普及するようになるまではまだ時間がかかりそうです。それまでは【花粉に近づかない、花粉を避けること】が治療の原則です。

2009年4月4日(土)
開院記念日

 そろそろ桜の咲く季節になってきましたね。インフルエンザも少なくなって、やっと春の訪れを感じるようになりました。今度はスギ花粉で悩む季節ですが、3月下旬〜4月上旬は少し寒かったので、あまり花粉も飛ばなかったようです。これから暖かくなってきますから、ここ1〜2週間は要注意です。私もスギ花粉症ですので、患者さんの気持ちはよくわかります。

 当院は平成8年4月1日に開院しました。早いもので14年目を迎えます。いろいろなことがありましたが、何とか日々診療に励んでいます。現在当院のスタッフは臨時・常勤含めて、8名おりますが、開院時から勤務しているスタッフは2名です。誰かわかるかな?

 小さな頃から見ているお子さんたちは、もうだいぶ大きくなりました。身長も私より高くなったお子さんもたくさんいます。気管支喘息やアトピー性皮膚炎などで、よく通院されていたお子さんも、症状が治まり、最近はあまり顔を見ることもなくなりました。小児科を受診する患者さんは成長とともに症状が軽くなっていく場合が殆どですので、だんだんお会いする機会が少なくなります。それでもときどき大きくなってからでも小児科を受診してくれるお子さん(?)もいます。

 今、医療の世界では、いろんな病気をある程度診ることができる医師:【総合医】の育成が始まろうとしています。総合医と言うからにはなにからなにまでわからなければいけませんが、現実的にはそんなスーパマン医師は存在するはずもなく、なにをもって総合医とするかは難しい問題でもあります。しかし、まず『身近の先生に診てもらって、必要あれば専門の先生に紹介してもらう。』という図式はある程度可能のように思います。すでにいろんな診療科で勤務している医師達が新たに総合医となることができるのか、これから医師となっていく新人医師だけが総合医となっていくのか、いろんな問題をはらんでいますが、近い将来『まず近所の総合医に診てもらってから・・』・となるかもしれません。総合医というからには、局所の所見にこだわらず、全体像を捉えることが大切です。小児科医は子どもの全身を診る診療科です。もしかしたら、小児科が一番総合医に向いているかもしれませんね。
 
 現在、小児科医は総合医ではありませんが、子どもの病気をすべてみる【子どもの総合医】ではあります。目でも、耳でも、鼻でも、皮膚でも、まず子どものことは小児科にご相談下さい。開院14年目になりますが、常に気持ちを一新し、誰からも信頼され、愛されるクリニックを目指して努力していきたいと思っております。

2009年3月22日(日)
転勤シーズン

 先週の日曜日は休日当番医で大変でしたが、インフルエンザも学校が休みになった途端に少なくなってきました。おそらく今週後半くらいからは平穏になると思います。
 今流行っているインフルエンザは殆どB型です。B型はA型に比べるとやや症状が緩やかです。2〜3日微熱が続いて何となく元気が無くて検査したらB型だったということも結構ありました。こういうときにはタミフルもリレンザも使わなくても治ります。たまに5日間タミフルやリレンザを使っても解熱しないで入院なんていうケースもありましたけど、まずは、おおむね軽症B型でした。今年のB型はワクチンとの株が合ってなかったようですが、もともとワクチンは重症化することが多いA型を中心に作られていますので、B型に関してはあまり効果は期待できません。ワクチンが効いてB型に軽く罹った?ということはないと思いますよ。もともとB型は軽いですからね。

 3月は転勤のシーズンですね。毎年3月が近くなると、患者さんから「〜へ転勤しますので、紹介状をお願いします」とよくいわれます。自分も若い頃はあちこちへ転勤させられました(?)けど、知らない土地へ行くのは少し不安がありますよね。特にお子さんが何か病気を持ってると、「今度いくところにはいい先生がいるだろうか」とか、いろいろ心配することも多いですよね。特に気管支喘息、アトピー性皮膚炎、食物アレルギー、アレルギー性鼻炎などアレルギー疾患の患者さんは経過も長いので、詳しい紹介状がないと新しい先生にどのように話したりいいか困ってしまいます。というわけで、私は紹介状を頼まれると、できるだけ詳しく書くようにしていますよ。

 紹介状は2通お渡ししています。1通は紹介先用、もう1通は保護者用です。内容は同じですので、どんな内容が書いてあるかあらかじめわかっていたほうが、紹介先の先生ともお話しがしやすいですよね。それともう一つ、どうしても紹介先の先生となじめないこともありますね。そんな時は別の先生の所へ行くことになりますが、その時のための予備の紹介状になるようにと思って保護者用の紹介状もお渡ししています。紹介状をお渡しするときには、こんな事はお話ししませんが、だいたい察しがつくと思います。あまりいいことではないですが、実際に必要な事と思っています。

 当院にもこれから4〜5月にかけて紹介状を持って受診される患者さんが大勢います。だいたいみんなそのまま当院をご利用して下さいますが、たま〜に、2〜3回受診して全く受診されなくなる人もいます。そんな時は、紹介状なしで他の医療機関に行って、今までのことを上手く話せているのかななんて心配することもあります。医者も患者も人間です。お互いに気が合わないこともあります。お互いに信頼関係のない医療は良い結果にはなりません。というわけで、紹介状を書くときは新しい土地でいい先生に巡り会えますようにという気持ちを込めて書いています。

2009年3月15日(日)
休日当番日

 今日は当番日でした。チョット時季はずれのインフルエンザが流行ってきてましたので、忙しいかなと思っていましたら、案の定、とても混み合いました。患者さんは小学生や中学生が多く、赤ちゃんは少なかったですね。もうみんな、熱、熱です、まるで発熱外来のようでした。インフルエンザは盛岡市内至る所で流行しています。矢巾、紫波、滝沢でも流行っています。殆どB型ですけど、A型もけっこう見られました。B型はA型より少し軽いと言ってもやはり、シンドイですよね。

 今日は多くの患者さんにインフルエンザの検査をしました。前にもお話ししましたけれど、インフルエンザにかかってもウイルス量が増えてこないと検査しても陽性(インフルエンザウイルスが見つかること)にはなりません。つまり、熱が上がったばかりでは、まだ、ウイルス量が増えていないから、検査では陰性(インフルエンザウイルスが見つからない)ということが多いです。言い換えますと、重症な人ほど早くウイルスが増えるから、早めに陽性になるともいえます。

 今日検査した結果は「陽性率30%強」くらいでした。これは検査した人のうち3人に1人がインフルエンザだったということです。まず、患者さんのお話を聞いて、診察して、@.この子はほぼインフルエンザだろうと思った場合が1/3、A.インフルエンザだと思うけど、まだ熱が上がってから時間がたってないので、今は陰性だろうと思った場合が1/3、B.この子はまずインフルエンザではないだろうけど、心配で検査を希望しているだろうと思った場合が1/3
、でした。@.は、ほぼその通りでした。A.にも若干インフルエンザのお子さんがいましたけど、B.にはインフルエンザは見られませんでした。というわけで「陽性率30%強」という結果になりました。

 今日発熱したばかりのとても具合の悪い中学生がいましたが、検査結果陰性でした。同じクラスの子も来ており、その子は陽性でした。お母さんが治療を希望されたこともあり、この子は検査陰性でも、インフルエンザと診断してリレンザを処方しました。今日の話ではありませんが、先週の日曜日夜間診療所勤務でした。2日後に高校受験を控えた中学3年生がやはり高熱で受診しました。周囲にはインフルエンザが流行っているとのことで、かなり具合が悪そうでした。このお子さんの場合も検査は陰性でしたが、結果にとらわれずインフルエンザと診断してリレンザを処方しました。受験は上手くいったかな。

 数年前はインフルエンザが疑わしいというだけで、検査結果に関わらずタミフルやリレンザが処方されていたことも多かったような気がしますが、異常行動の問題が議論されるようになってからは、あまり不用意に処方されることはなくなってきました。だからといって検査にばかり頼ると偏見になってしまいます。インフルエンザの診断は、検査結果だけでなく、患者さんの状態、周囲の流行状況などを良く吟味することが大切です。

2009年3月5日(木)
続・この頃のインフルエンザ

 先々週くらいからインフルエンザの患者さんが少なくなってきたと思ってたら、先週末からどんどんインフルエンザが流行ってきました。でも盛岡市内全部というわけではないようです。自分の周辺しかよくわかりませんが、本宮〜太田方面、都南(永井方面)から患者さんがよくみえますよ。年長児はB型が多いですが、乳幼児はA型、B型両方見られます。一度下火になったインフルエンザですけど、ある程度流行らないと、気がすまないんでしょうかね。高校受験も近いのにちょっと困りますね。

 ふつう、B型は、A型に比べると症状が少し緩やかです。特に今流行中のB型は軽症が多く、あまり熱も上がらず、何となくだるい、頭が痛い、熱は37度台、なんて言う場合も結構ありました。また、38度台の熱が2〜3日続いたけど元気だから受診しなかった(その後に受診して、B型と判明)なんて言う場合もありました。そうかと思うと、リレンザを5日間吸入したけど高熱が続いて入院なんて言う場合もありました。リレンザはタミフルよりもB型に効くはずでしたが、今年のB型には当てはまらない場合もあるようです。と言うわけで、今年のB型はいつもとちょっと違うようです。インフルエンザはある程度流行らないと治まらない病気です。多くの人が免疫を持ってやっと終息します。今シーズンは12月上旬頃から流行り始めましたが、まだ流行は続いています。うがい、手洗いを励行しましょう。

2009年3月1日(日)
この頃のインフルエンザ

 先々週くらいからインフルエンザの患者さんは少なくなってきましたが、先週はけっこうインフルエンザの患者さんが受診しましたね。A型は少なく、B型が多いです。A型に比べると、B型は少し症状が穏やかですし、脳炎・脳症も殆ど見られません。昨日も3人B型インフルエンザの患者さんを診察しましたけれど、みんな軽症でしたので、タミフルもリレンザも処方しませんでした。今のところ今年のB型は軽いかな(?)という印象です。 
 
 愛知県で、ウズラ2羽から高病原性鳥インフルエンザウイルスが見つかったという報道がありました。ときどき国内でも鳥インフルエンザは見つかっていますので、またかと思いましたが、今回の鳥インフルエンザはH7型なんですね。日本国内では1925年以来ということです。今、日本国内で新型に変異するかもしれないと危惧されている鳥インフルエンザはH5型ですが、H7型はヨーロッパ、アジア、北米と広範囲に見られており、H5型よりもH7型の方が人への感染力が強いともいわれています。
 平成20年8月4日、国内で新型インフルエンザ対策の一環として、プレパンデミック(大流行前)ワクチンの接種が試験的に開始されましたが、このワクチンはH5型です。日本ではH5型を新型の第一候補に挙げていますが、今回H7型が検出された事によって新たな対策が必要になるかもしれません。

2009年2月27日(金)
受精卵取り違え

 最近、医療に関する報道が多いですね。福岡の延命治療中止、東京の銀座眼科、香川の受精卵取り違え、同業者としていろいろ考えさせられます。今日は香川で起きた「受精卵取り違え」に触れてみたいと思います。「受精卵の取り違え」などと言うことは決してあってはならないことです。なぜこんな事故が起きたのでしょうか?

 この担当医は「すべて自分のミスです。」と答えてましたね。こういうことは疲労や労働条件の劣悪さに原因を転嫁してはならず、また、個人だけの責任問題や賠償責任に言及するものでもないと思います。どんなに細心の注意を払っても起こりうる事故をどのように回避すればよかったかということをきちんと検証すべきです。

 しかしながら、この病院と担当医の説明には違和感を感じます。「患者への処置には健康上の問題点はない」などと話していますが、妊娠3ヶ月で中絶して、「問題はない」などと言っていいものかと思います。とても失礼な言い方です。さらに、「胚芽の発育状態から他の受精卵を戻した可能性を疑った」などと言ってますが、胚芽の発育状態から誰の受精卵かわかるわけがありません。つまり、妊娠初期の段階では受精卵の間違いがわかるわけがなく、本当はもっと前の胚移植の段階でとり違いがあったことに気づいてたはずです。それを隠していたということは、妊娠しなければ黙っておこうと考えたのではないでしょうか。さかのぼって、胚移植直後に正直に間違った可能性を説明しておけば、これほどの大問題にはならなかったと思います。医師の倫理観を疑ってしまいます。このような隠蔽体質がなくならない限り、患者と医師の間に信頼関係は生まれません。こういう事件が起きるたびに「あってはならないこと。今後二度とこのようなことのないように・・・」で終わってしまいますが、何一つ解決していないように思います。医師は神様ではありません。間違えることもあります。その時いかに善処するかが大切なことと思います。

 現在、産科医療は危機に瀕し、むしろ世間の追い風を受けています。その中でこのような事件が起きたことは残念です。病院、担当医の説明には大いに問題がありますが、事件の起きた背景は十分検証されたのでしょうか。この病院では不妊治療をするのに必要なスタッフは充足されていたのでしょうか?おそらく慢性的な人手不足の中で、時間に追われながら仕事をしているものと推測されます。「忙しくて間違った」は全く理由になりません。どこかで体制の改善、診療の縮小を考えてできる範囲内での診療にすべきだったと思います。どうしてもこの施設で行うのであれば、まず、十分なスタッフ(人員)の確保が先でしょう。一部の医師が好きなマニュアル作りはそれからです。
 
 先日、車に乗っていた時、道路工事の現場を通過しました。けっこう長い距離でしたが、実際に工事をする人の他に、旗を振って車を誘導する人があちこちにいました。大きな作業車が出入りするところには必ず人がいて周囲に気を配っていました。道路工事でも一つ間違いがあれば、大惨事につながることもあります。そのためにこんなに多くの人たちが仕事をしてるんだなと思いました。しかるに多くの危険性をはらんでいる医療の現場では慢性的な人手不足に苦しんでいます。今回の受精卵取り違えも、もう少し人手があれば防ぐことができたかもしれず、日本の医療はまったく余裕のない修羅場ということを痛感しました。

2009年2月15日(日)
インフルエンザやや減少?

 インフルエンザは先週くらいから少し患者さんが少なくなってきたようですね。今は、すぐ検査でわかりますし、薬もありますからインフルエンザとわかると自宅安静でだいたい治ってしまいます。それに何回も受診することなく他の人に移す機会も少なくなりますから、大きな流行になることはないです。

 今年のインフルエンザの話題は
タミフル耐性 Aソ連型 インフルエンザウイルスでしょうね。外来でA型と診断してタミフル処方しても、熱が下がらないという患者さんけっこういました。耐性ウイルスは、ウイルス表面の突起(HA、NA)が変異して生じますが、この部分はもともとインフルエンザウイルスが増殖する時に働く部分ですので、そこが変異するということは、タミフルが効きにくくなると同時に増殖力も弱まるということです。ですから、耐性ウイルスは薬が効きにくいけど、あまり人に移らないという特徴を持っています。ところが最近の耐性ウイルスはタミフルが効きにくく、感染力が強いものが見られるようになってきました。この耐性ウイルスが流行すると大変です。リレンザは耐性ウイルスに効くと言っても、5才以上でなければ処方できませんので、5才未満のお子さんの治療が大変になってきます。ただ、リレンザは水に溶けますので、吸入で使うこともできますし、直接鼻腔に噴霧することもできます、今のところ厚労省はこのような使い方を認めていませんが、耐性ウイルスが増えれば、許可するかもしれませんね。インフルエンザは3月くらいまではダラダラと流行が続くと思いますので、まだ油断禁物です。マスク、うがいを励行しましょう。

 暖冬のせいか、もうスギ花粉が飛んでます。インフルエンザの終わる頃からはスギ花粉の季節です。本格的に飛散する前に予防(初期治療)をすることをお勧めします。花粉の量が多くても少なくても症状が出ることには変わりないのですからね。

2009年2月4日(水)
タミフル耐性 Aソ連型 インフルエンザウイルス

 「今年のインフルエンザは熱が上がったり下がったりする。」という話を耳にしました。インフルエンザは、急な発熱で発症する場合が多いですが、熱が一度下がって、また上がるパターンはよく見られます。熱の上がり下がりの様子がアルファベットのMに似ており、熱のピークが二つ見られることから、【2峰性発熱】といって、A型インフルエンザでよく見られます。今年に限らず、「A型インフルエンザは熱が一度上がって、チョット下がって、また上がることがある。」と理解しましょう。

 先週くらいから、インフルエンザが全国的に流行してきました。盛岡市内でもあちこちで患者さんが見られるようになりました。今年のインフルエンザは、Aソ連型、A香港型、B型、3種類すべてが同時に流行しています。この頃よく聞くのは、タミフルの効かないAソ連型(タミフル耐性Aソ連型)の話題です。

 昨シーズン以来、タミフル耐性Aソ連型が、世界各国で高頻度に分離されるようになりました。昨シーズンの日本国内で分離されたタミフル耐性Aソ連型の発生頻度は2.6%と、諸外国に比べて極めて低かったのですが、今シーズンに入り、タミフル耐性Aソ連型が相次いで分離されるようになりました。1月末での報告は18道府県からで、52株のAソ連型のうち51株(98%)が耐性でした。と言うことは、流行中のAソ連型のほとんどすべてがタミフル耐性であり、これが全国的に蔓延していることが推測されます。

 本来、Aソ連型はタミフルが効きやすかったのですが、なぜこんなに効き難くなってしまったのでしょうか。耐性株の大半はタミフルが使用されていない地域で発生しており、またタミフルを服用していない患者から分離されています。さらに、タミフルが殆ど使われていない国でも発生していますので、薬の使い過ぎで効かなくなったというわけではないようです。

 もともとインフルエンザウイルスは1万個に1個くらいの割合で耐性ウイルスが生じますが、なぜ急激に耐性ウイルスが増加したのかよくわかっていません。おそらくは突然変異によるものと考えられています。

 現在の流行状況は、Aソ連型が36%、A香港型45%、B型が19%と、3種類のウイルスが混合して流行してます。

 迅速診断キットでは、A型かB型かの区別は可能ですが、Aソ連型かA香港型かの区別はできません。A香港型およびB型に対してタミフルとリレンザの両薬剤は効果がありますが、Aソ連型は、ほぼ100%がタミフル耐性となっており、タミフルが効きません。つまり、A型インフルエンザと診断できても、このA型がタミフルに効くのか効かないのかがわからないわけで、治療薬の選択に混乱が見られそうです。ただ、タミフルが効かないからといって、特別重症になるということもないようです。

2009年1月19日(月)
いよいよ、インフルエンザ流行?

 先週末からインフルエンザの患者さんが増えてきました。特 に都南地区が多いようです。ほとんどA型ですけど、B型も散見します。A型は、Aソ連型も、A香港型も出現しています。関東 、関西ではかなり流行ってるようですので、時間の問題で東北も流行地域になりそうです。
 盛岡市では、今週から学校も始まりますので、週末〜来週にかけて一気に患者さんが増えるかもしれません。手洗い、うが い、マスク、ワクチンなど、積極的に予防をしましょう。  

 インフルエンザが疑われると検査しますが、発熱してあまり 時間がたっていないと検査しても陰性(インフルエンザウイル スが検出されないこと)の場合が多いです。では何時間経過すれば陽性(インフルエンザウイルスが検出されること)になるかというと、決まった時間はありません。一般的には12時間( だいたい半日)なんて言われていますが、もっと時間がたたないと陽性にならない人もいますし、逆に、熱が上がるか上がらないうちに陽性になる人もいます。検査キットでは、ある一定量以上にウイルスが増えないと陽性になりませんので、個人差 があります。  

 今の時期、熱が上がればすぐ医療機関を受診するように言われますが、受診したけど、「発熱してからあまり時間がたってないので検査しない。」と言われましたなんてくる人多いですね。確かにその通りではありますが、時間に関係なくウイルスが増えてくれば陽性になるわけですので、私はあまり時間がたってなくても検査しています。ほとんど陰性ですけどね、でも、結果にかかわらず患者さんは安心して帰宅されてますから、精神衛生上(?)検査してあげた方がよいのかなと思っています。も ちろん現時点ではわからないから、熱が続くようなら再受診するようにお話ししていますよ。

 ここで一つお願いです。検査してインフルエンザとわかったら、あるいは限りなくインフルエンザが疑わしいような時、当院では全ての患者さんにマスクをつけてもらっています。マスクは他の人にインフルエンザを移さないために必要です。こればかりはきちんと守って頂きたいです。子どもが嫌がるからなどといってマスクをつけてくれない患者さんもいますが、ダメです。マスクをつけることは最低限のルールです。必ず守ってください。守ってもらえないと、親身になった診療ができないかもしれないよ?

2009年1月9日(金)
インフルエンザ脳症

 盛岡市内のインフルエンザは、あちこちでボチボチ発生してるようですが、今のところあまり重篤な患者さんはいないようです。新潟では今年最初のインフルエンザ脳症の患者さんが出たようです。1月6日の毎日新聞の記事です。

 新潟県五泉市の市立小4年の女子児童(10)がインフルエンザ脳症で死亡していたことが5日分かった。同市健康福祉課が明らかにした。県によると、インフルエンザによる死亡は今シーズン初めて。

 同市によると、児童は12月28日、高熱で同市内の医療機関を受診。29日にインフルエンザ脳症と診断され、新潟市民病院に入院したが、3日早朝に死亡した。予防接種は受けていなかったという。
 インフルエンザ脳症はインフルエンザウイルス感染に伴って、意識障害などが急激に起こる合併症で、乳幼児に多いとされる。

 県健康対策課によると、インフルエンザによる子供の死亡が確認されたのは06年以来。「手洗いやうがいを励行し、人込みを避けるなどの対策をとってほしい」と注意を呼びかけている。【渡辺暢、畠山哲郎】

毎日新聞 2009年1月6日 地方版

 新聞記事だけではよくわかりませんが、この年令なら、多分タミフルは処方しなかったでしょうね。代わりにリレンザは使ったのでしょうか。もっとも、タミフルやリレンザを処方しても脳症の進行が早ければ間に合わないでしょうが、もし何も薬を使わないでこんなことになったら残念です。医療機関のコメントは何も記載されず、何がなんだかホントによくわかりませんね。それに、この報道では予防接種(ワクチン)をしていれば脳症にならないようなニュアンスを受けるけど、どうかな?
 
 もう少し詳しい報道をしてほしいですね。これでは不安をあおるだけで、あまりよい報道とは思えません。だいたい医療機関の名前まで公表する必要あるのかね。
興味本位でなく真実をわかりやすく報道してほしいです。

 これからインフルエンザシーズンになると、マスコミは一斉にワクチン接種を呼びかけます。そうすると患者さんはあっという間に医療機関に押し寄せてワクチンが足りなくなるという状況に追い込まれます。マスコミの影響力は強いです。どうせなら、10月頃にワクチン接種を呼びかけてほしいですね。何はともあれ、早くワクチン接種しましょうね。

2009年1月4日(日)
同窓会

 1月1日、夜間診療所に行って来ました。患者さんは、40人来院しましたけど殆どが、嘔吐・下痢の嘔吐下痢症(急性胃腸炎)でした。何人か点滴しましたけど、入院するくらいの重症なお子さんはいませんでしたね。インフルエンザは地域によって少し発生してる程度です。この日は一人もいませんでした。まだ、嘔吐・下痢は続きそうです。徹底した手荒いが大事ですよ。吐物・便に触れたら流水で30秒手洗いをして下さい。年の初めの診療でしたが、平穏な夜でした。
 参考までに→嘔吐下痢症

 1月2日、高校の同窓会がありました。毎年1月2日午後3時(1-2-3)に開かれてますが、同窓生三百数十名のうち出席者は大体60〜80人くらいです。私も時々出席してますけど、「市内に住んでるなら、毎年出て来い」なんて言われますね。久しぶりに会うといろいろな話が聞けて楽しいですよ。

 私は弱小の運動部に属してましたが、クラブの仲間はいいですね。先輩にしごかれたり、後輩をしごいたり(?)、対外試合の思い出とか、懐かしい話でいっぱいになります。

 病院関係者からは最近の産科・小児科をはじめとした医師不足のこととか、今問題になっているモンスターペイシャントについて話を聞きました。ある公立病院の事務職の友人は、些細なことから脅迫電話をかけられて、最終的には警察が逮捕というところまでいったそうです。怖いですね。幸い当院ではそのようなトラブルはありませんが、ちょっとした誤解や、一方的な思いこみが引き金になることが殆どです。こういうトラブルを防ぐには、お互いに相手の話をよく聞き、理解し合うことが大切だと思います。

 何十年ぶりかに盛岡に返ってきた友人もいて、「北上川がきれいになってるのに驚いた。高松の池ではスケートができなくなったのか」などと、浦島太郎みたいなことを言ってました。

 来年は母校が創立130年を迎えるそうで、記念行事のための準備が大変そうでした。最後は校歌を歌ってお開きになりました。ふだん殆ど歌うことはありませんが、応援歌練習でメチャクチャにたたき込まれたせいか、校歌は忘れませんね。きちんと4番まで歌えました。短い時間でしたけど、青春時代に戻ったような気がします。
 同窓会のホームページ→白亜四八会です。興味のある方は、どうぞ。

 明日から新年の仕事始めです。年末年始はたっぷり休みましたから、張り切って診療します。

2009年1月1日(木)
明けましておめでとうございます。

 明けましておめでとうございます。

 昨年は暗いニュースが多かったですが、丑年の今年はどうでしょうか。丑年は、牛がゆっくり歩むように忍耐が必要であるといわれます。現在、医療、福祉、経済、教育など、あらゆる分野で社会不安が広がっています。こんな時こそ、付け刃の応急処置ではなく、じっくりとした取り組みが必要なのだと思います。

 自分にできることは小児医療というごく限られたことですが、今年も少しでも社会貢献できるよう努力していきたいと思っています。昨日の診察室便りに、占いは信じないと言いましたが、自分に都合のいいことは信じることにしています(?)。九星気学によると、一白水星の私は、今年は「運勢は好調、公を優先して仕事に取り組むこと。争いを避け、協調の1年と思え。」とありました。個人的なことにこだわらず、社会の一員として役目を果たすことと理解しました。今年も良い年になるよう頑張りたいと思います。