慢性的なかゆみとガサガサした皮膚が特徴です。なぜ、この様な皮膚になるかというと、
@.皮膚炎をおこしやすい素因(アトピー体質)があり、そこに | |
A.生活上のいろいろな悪化誘因が加わって、発症します。 |
アレルギーをおこしやすい体質と、乾燥肌のため皮膚表面の防御が弱く、いろいろな刺激物が体内に入りやすい(これをバリアー障害といいます)という2つの特徴を持っています。(この2つの特徴がアトピー体質と言われるものです)
このような弱い皮膚にダニ、ハウスダストなどのアレルギー的悪化誘因や、乾燥、発汗などの非アレルギー的悪化誘因が作用し、炎症をおこして、赤く、かゆくなるのです。また、心身にかかるストレスは直接、私たちの大脳に作用してかゆみをおこすことも知られています。
なぜ、アトピー体質になるのか、まだ、はっきりとした原因はわかっていません。遺伝的要因、免疫異常、乾燥肌、環境(衣・食・住)の変化、ストレス、等々いくつもの要因が複雑に絡んでいるのと考えられています。
アトピー性皮膚炎は昔からよく見られるありふれた病気ですが、一時期、アトピー性皮膚炎を巡って、マスコミや一部の心ない医師たちにより、誤った情報、特殊な民間療法などが宣伝され、社会的混乱を来し、いつの間にかアトピー性皮膚炎はたいへんな病気という誤解が広まるようになってしまいました。
しかし、最近は以前と比べると重症なアトピー性皮膚炎は少なくなってきました。アトピー性皮膚炎は決してたいへんな病気ではありません。特別な治療は必要ありません。ただ、軽快するまで少し時間がかかりますので、正しい治療をきちんと継続することが大切です。
あるお医者さんには、アトピーと言われ、別なお医者さんには、乾燥肌と言われ、いったいどっちなのか悩んだことはないですか。アトピーと乾燥肌を比べると、どちらも乾燥肌であることに違いはないですが、やはり、アトピーの方が、乾燥の度合いは強く、かゆみも強いですし、症状がずっと続きます。でも、実際の診療ではどちらかなと迷うことも多く、厳密に区別することは難しい場合も多々あります。アトピー性皮膚炎を診断するのに特別な検査はありません。アトピーは目で診て診断する病気です。
診察したお医者さんが、アトピーと言ったり、乾燥肌と言ったりするのは、そのお医者さんには、そのようにみえたとしか言えませんが、もしかしたら、ものすごくアトピーを心配してくるお母さんでしたら、「今、アトピーと言えば、この患者さんは大いに悩みそうだ」と思って、やんわり乾燥肌と言って、少し経過を見ながら、いつかアトピーと話そうと思っているかもしれませんし、今は乾燥肌かなと思っても、放置すればひどくなりそうな時は、積極的に治療を進める意味でアトピーと言っているかもしれません。続けて受診すれば、お医者さんとも気持ちが通じ合い、納得して治療を受けられるようになりますよ。
アトピーとは<変わった>とか<不思議な>というような意味です。アトピー体質とは、一言で言えば、普通の人では何でもないような刺激に対して、敏感であったり、いろいろな変わった反応が、起こる体質といえます。例えば、化繊の下着を着たとたんにかゆくなったりするような過敏な肌であったり、タバコの煙や冷たい空気で喘息発作がおきるような場合がそうです。
これに対し、アレルギーは、食物、ダニ、花粉など特定のものに対して、免疫が過剰に働き、いろいろな体内反応が引き起こされることを言います。両者を比較しますと、アレルギーは免疫の異常反応ですが、アトピー体質は免疫の異常だけでは説明のできない反応をも、含んでいるといえます。
下の図のように、アトピーは、アレルギーとアレルギー以外の反応の両者を合わせ持っていると思えばよいでしょう。
「アトピーは目で診て診断する病気」と言いましたが、「アトピーの血液検査をしてほしい」といって来院される方が多く見られます。よく行われる抗体検査(特異的IgE抗体)は、「アトピー性皮膚炎に合併するアレルギー疾患」を調べる検査です。アトピー性皮膚炎の原因を調べているのではありません。
例えば、卵の抗体が検出された場合、卵による食物アレルギー症状(じんま疹など)が見られる可能性はありますが、卵がアトピー性皮膚炎の原因と言うことではないのです。
これに対して、「アトピー性皮膚炎の重症度」はTARC(タルク、ターク)という血液検査で調べることができます。アトピーの皮膚は一見、きれいになったように見えても、まだ痒みが残っていたり、ガサガサしていることがあります。
皮膚はウエハースのように何層にも重なって出来ていますので、皮膚表面がきれいになったように見えても、皮膚深部ではまだ炎症が残っている場合が多いのです。この皮膚深部での炎症の程度、言い換えればアトピーの重症度を見るのがTARCです。
TARC値が高いときには濃厚な治療を行い、TARC値が低くなってきたら薬を減量するという具合に治療内容を決める上でTARCは大変有用な検査です。
TARCは、乳児のアトピー性皮膚炎にも用いられるようになってきました。アトピー性皮膚炎の赤ちゃんでは、顔にしか湿疹が見られていない生後1〜2ヶ月くらいの乳児期早期でも、既にTARCはかなり高値になっていることがあります。
つまり、皮膚深部では炎症が進んでいると言うことです。これが月齢が進むにつれて全身に拡がっていくわけです。TARCを参考にして、乳児期早期から積極的に治療を始めれば、湿疹が全身に拡がることを防ぐことも可能です。
はっきりした原因が不明な現時点では、対症療法(その症状に応じた治療)が基本です。
(A):皮膚炎を治す。→ステロイド外用剤・プロトピック軟膏・コレクチム軟膏。
(B):乾燥肌を保護する。→保湿剤によるスキンケア 。皮膚を清潔にして、外部の刺激から保護し、皮膚内に十分な水分を保つことです。
(C):生活上のいろいろな悪化誘因(衣、食、住、)を、できるだけ少なくする 。
(D):心身にかかるストレスをできるだけ少なくする。(年長児、成人では特に大切)。
以上がアトピー性皮膚炎の基本的治療です。特別な治療があるのではないです。
ちょっとぬったらすぐ止めたり、何が悪いんだかわからないけど、何となくステロイドは嫌とか、いろいろ情報が氾濫していますからね。あたりまえのことですけど、どんな薬でも使い方が悪ければ、良くなるどころか、有害になってしまいます。副作用などでないように、正しい使い方をすれば心配ないですよ。ただ、人によって個人差があるわけですから、ステロイドを使っている時は、きちんと、定期的に受診して皮膚の状態を見せて下さい。
ステロイドで問題になっているケースは、<医者は、皮膚を診ないで薬だけ処方している。患者は、受診しないで薬だけ取りに来る>といった場合が殆どです。こうならないようにしましょう。
ところで、ぬり薬でステロイドというと拒否する人でも、知らないうちに、ステロイドを内服させられていることがあるみたい?。セレスタミンとか、ヒスタブロックとか、リンデロンとかいう薬を処方されたことないですか?。これ、みんなステロイドです。ぬるより飲む方がはるかに副作用が心配ですよね。こういった薬は普段あまり飲まないようにしましょう。
以前は、成長とともに改善し、殆ど治癒するように言われていましたが、長期間治療が必要とされる場合も見られます。それでも、症状は軽くなってきますし、ステロイドもあまり使わなくてもすむようになります。“成長とともに改善”ということは概ね真実と思いますが、精神的ストレスが関与する場合は少し注意が必要です。その場合、あまり、自分自身に負担をかけないようにすることが大事です。
乳児期のアトピーですと、だいたい1才6ヶ月〜2才くらいで、かなりよくなります。それまでの間、いろいろ悩むことが多いと思いますが、へんてこりんなアトピー・ビジネスに引っかからないようにしましょう。普通の治療で十分です。といっても赤ちゃんの赤い顔を見ると心配ですよね。わからないことは何でも聞いて下さい。何回同じことを聞いてもいいですよ。お母さん一人で悩まないことです。
皮膚炎とは、皮膚が炎症を起こしている状態です。炎症とは、ちょうど火事で火が燃えさかっている様なものです。皮膚が、赤く、かゆく、ジュクジュクして、夜も眠れないようなときです。こういうときはすぐ火を消すこと(炎症をおさえること)が大事です。ステロイド外用剤(以下、ス外剤 *外用剤とは、軟膏、クリーム、ローションなどを指します。)は、この燃えさかる火を消してくれます。
ステロイド以外にも炎症を抑える外用剤(非ステロイド外用剤〜アンダーム、コンベック、スタデルム、ベシカム等)は、ありますが、かぶれを起こしやすく、皮膚炎がかえって悪化する場合もあるため、アトピー性皮膚炎では殆ど使われなくなりました。
ス外剤は、アトピーそのものを治す薬ではありません。燃えさかる火を消す水です。皮膚炎、つまり炎症(赤み、かゆみ、ジュクジュクなど)を治す薬であり、アトピーの体質そのものを治す薬ではありません。炎症が治まったからといって何もしなければ、またすぐ悪くなります。
炎症がおさまっても皮膚のガサガサは残っていますので、保湿剤によるスキン・ケアは引き続き必要です。【皮膚を清潔にして、外部の刺激から保護し、皮膚内に十分な水分を保つこと】 これが、【スキンケア】です。
皮膚を清潔にして、外部の刺激から保護し、皮膚内に十分な水分を保つこと(保湿)、これを、スキンケアといいます。アトピー性皮膚炎を、上手にコントロールするうえで、とても大切なことです。
乾燥肌(ドライスキン)とは簡単にいえば、皮膚がカサカサしている状態です。皮膚内の水分が、少なく、細胞どうしの隙間が広くなっているために起きる現象です。これは皮膚内の水分を保つ物質(皮脂、天然保湿因子、角質細胞間脂質、等の保湿因子)が不足しているため、皮膚の表面が隙間だらけになっているからです。
下図でみられるように、乾燥肌では外からの刺激(細菌やホコリなど)が入りやすくなっています。このように皮膚表面の防御機構が壊された状態を皮膚のバリアー障害といいます
健康な皮膚では:
皮膚はうすい表皮とその下の真皮からできています。表皮の表面には丈夫なタンパク質でできた角層(角質層)があり、天然保湿因子、角質細胞間脂質のような水分を保つ物質や、皮膚の表面を保護する皮脂膜で保護されています。
この角層と皮脂膜が体の水分の蒸発を防ぎ、外部の刺激を阻止するバリアーの働きをして体を守っています。
乾燥肌(ドライスキン)では:
皮膚の表面を保護する皮脂膜がなく、角層に含まれいる天然保湿因子、角質細胞間脂質といった物質も不足し、カサカサした状態です。こうなると皮膚から水分が蒸発しやすくなって、ますます乾燥します。また、バリアー機能が弱まって、角層の隙間から、細菌やホコリなどの外からの刺激が内部まで侵入し、トラブルを起こすようになります。
保湿剤は、皮膚の水分が逃げないように“ふた”をしたり、皮膚に水分を与えたりする役割を持っています。健康な皮膚を守るため、毎日塗ってスキンケアをしましょう。
□.下着は木綿が最適、冬は長袖にして手首に直接セーターが触れないようにしましょう。
□.同じ木綿でもジーンズのようにゴワゴワしたものは刺激になるから、必ず下着を着用しましょう。
□.スポーツウエアは直接着ないで、必ず下着を着ましょう。体育で汗をかいたら、(できれば、シャワーを浴びてから)必ず下着を取り替えましょう。
□.下着のすすぎを十分行いましょう。自動洗濯機ではやや不十分、すすぎの時間を増やしましょう。漂白剤等はなるべく使用しないようにしましょう。
□.下着は襟首の広いものを着用しましょう。(脱ぐときに、耳に引っかからないように)
□.下着のゴムはゆるめにしましょう。
□.シャツは、袖つきTシャツ型の方がランニングシャツよりも、脇の下の汗を吸い取ってくれます。
□.タートルネックは首への刺激が強いのでさけましょう。
□.赤ちゃんをだっこするときは、お母さんのセーターに注意。セーターに頬づりして、ほっぺたが赤くなってしまいます。
□.ふとんには直接掃除機をかけましょう。(ふとん専用ノズルを利用する)掛けふとんにも忘れずにかけましょう。
□.ふとんには目の細かい木綿カバーを掛けましょう。(目の粗いカバーは効果が少ない)
□.まくらは丸洗いができるものがよいです。
□.電気毛布は使用しないようにしましょう。(睡眠中に汗をかきます)
□.防ダニふとんは効果が期待できますが、値段が高いのが、欠点。
□.夜間かゆみが強いときは、木綿の手袋をして寝ましょう。
□.外出時は、つばの広い帽子をかぶりましょう。紫外線の浴びすぎは避けましょう。
(夏場は紫外線の強い時間帯:午前10時〜午後2時頃はなるべく外出を控えましょう。)
□.紫外線の強い時期(5月〜8月)は、薄い色の衣服がよいです。
□.爪は短く切りましょう。(特に子ども)
□.お尻の湿疹が治りにくい時は、いすの上に座布団を使用しましょう。(特に学童)
食事とアトピー性皮膚炎との関係を考えると、すぐ除去食(アレルギーの原因と考えられる特定の食品を食べないこと)の話題になりがちですが、除去食が必要なのはごく一部の人だけで、多くの人は大体何でも食べることができます。だからといって現在の食生活が、果たして健全な食生活かどうかは問題があります。
日本は、高度経済成長の時期に、食生活が急激に欧米型に変化しました。それまでは、米、麦、野菜、魚、が主食で、油を使う料理や甘いお菓子類は少なかったはずです。そもそも日本人の腸管は、欧米人に比べて長く、穀物や野菜を消化するのにあっています。それが、肉類や乳製品のような高脂肪、高カロリーの食品を多く摂取する食生活になったため、消化吸収能力をこえる異常な<オーバーカロリー>を生じ、その結果、高脂肪、高カロリーの食事は、いろいろな病気の原因になってしまいました。
アトピー性皮膚炎に限らず、糖尿病や肥満のような病気も昔は少なかったはずです。ところが、今では『メタボリック』という言葉に象徴されるように、ごく普通にみられるようになりました。ちまたには、こってりとした見るからにおいしそうなごちそう(高脂肪、高カロリー)がたくさんあります。それは簡単に手に入れることができます。しかし日本人の食生活を考えると、少し控えた方がよいものばかりなのです。
脂肪は動物性と植物性とに分類されますが、植物性はさらに大きく2つに分類され、それぞれ、リノール酸とαーリノレン酸と呼ばれています。どちらも人体では作ることができないため、食事で摂取する必要があり、必須脂肪酸と呼ばれています。一般に動物性脂肪に比べて、植物性脂肪は体に良いように言われていますが、果たしてどうでしょうか。
植物性脂肪のうちリノール酸は、ロイコトリエンという物質を多く含み、これはアレルギー反応を促進するように作用します。つまりリノール酸を多く含む食品をとりすぎると、アレルギーは治りにくくなるわけです。これに対して、αーリノレン酸はリノール酸の働きをおさえるように作用します。ですから、アレルギーの人はリノール酸の多い食品は少なめにして、αーリノレン酸の多い食品をたくさん摂取することが望ましいのです。ちなみに、現代の日本人の食生活では、リノール酸を必要量の5〜10倍くらい摂取しています。(子どもの場合はそれ以上といわれています。)
下表にリノール酸の多い食品とαーリノレン酸の多い食品を示しましたので参考にしてください。
リノール酸の多い食品とαーリノレン酸の多い食品 | ||
---|---|---|
@.リノール酸の多い食品 |
||
A.αーリノレン酸の多い食品 |
※シソ油や、エゴマ油は健康食品のお店でよく売られていますが、普通のサラダ油と比べると3〜4倍の値段がします。サラダ油のかわりにエゴマ油を使うより、サラダ油などを使用する料理を少なくすることが先です。
□.野菜、魚を多く食べ、肉類を少なくしましょう。
□.お菓子、(特にチョコレート、ナッツ類、スナック菓子)やアルコールの様な糖分を摂りすぎないようにしましょう。(腸内細菌層が変化し、体内にカビなどが繁殖しやすくなり、難治性のアトピー性皮膚炎の原因になります。)
□.香辛料や合成添加物の多い食品、インスタント、レトルト食品は、あまり食べないようにしましょう。。
□.同じ食品を、毎日続けて食べないようにしましょう。
□.できるだけ多くの種類のものを、少しずつ食べるようにしましょう。
□.有色野菜、海草、小魚を、多く食べましょう。
□.満腹にならないようにしましょう。(いわゆる腹八分目がよいです。)
□.こどもの頃から薄味の習慣を付けるようにしましょう。
□.食器類はなるべくなら陶磁器がよいです。
□.和食中心のメニューにしましょう。→“
ま: | まめ類 |
ご: | ごま類 |
は: | は(わ)かめ類 |
や: | やさい類 |
さ: | さかな類 |
し: | しいたけ類 |
い: | いも類 |
ダニ、ホコリ、カビ、等はアトピー性皮膚炎の悪化誘因であるだけでなく、喘息やアレルギー性鼻炎の原因にもなりますから、少なくしておくに限ります。現代の住まいは冷暖房がゆきわたり、大変居心地がよいのですが、それはダニにとっても繁殖しやすい環境であります。また気密性が良すぎるため、室内の空気が汚染されやすく、壁紙や、じゅうたんに使用されている化学繊維などから、微量の化学刺激物が、ジワジワとしみ出して人体に悪影響を与えているとも言われています。(SICK HOUSE)
窓を閉め切りがちなのも現代生活の特徴とも言えます。特に意識してたびたび窓を開けて、空気を入れ換えるようにしましょう。風通しの良い住まいには、ダニも、ホコリも、カビも、化学物質も少なくなります。(昔の日本の住居は、本当に風通しが良かった。その代わり寒かった!)
しかし、あまりに完璧を求めては、ダニノイローゼのストレスになってしまいます。じゅうたんは取った方が良いと言っても、簡単にとれない場合もありますし、フローリングが良いからといって家中フローリングにするには、お金がかかりすぎます。
ダニが全てではないのですから、できる範囲内で行って下さい。例えば、1日のうち一番長くいるのは寝室ですから、<寝室にはあまり物をおかない>それだけでも掃除は楽になります。〜日常生活の見直し〜(ライフスタイルの見直し)と思って、チェックして下さい。
□.掃除をしやすいように、室内にあまり多くの物を置かないように。(特に、寝室)
□.とれるならば、じゅうたんは取った方が良いです。
□.毛のある動物(犬、猫)はなるべく飼わないようにしましょう。(どうしても飼いたいときは、1週間に1回くらいは洗ってあげましょう。)
□.室内でタバコを吸わないようにしましょう。
□.窓を開けて掃除をしましょう。
□.せっかくフローリングにしても、掃除をしなければ同じことです。
□.殺ダニ剤は人体に影響の少ないものを使用しましょう。
□.押入にはスノコを使用しましょう。
□.ふとんやカーテンにも掃除機を掛けましょう。(ふとん専用ノズルが便利)
※ 親戚の家に泊まると、アトピーが悪化したり、喘息発作を起こすことがあります。この場合、ふとんが原因のことも多く、長く押入にしまっておいたふとんには、必ず、掃除機や乾燥機をかけましょう。
□.ふとんには、天日干しや、乾燥機も有効。(ダニは日の当たらない方に逃げるから、日の当たらなかった方には、必ず、掃除機をかけるようにしましょう。
□.春のふとん干しは、花粉に注意しましょう。
□.ふとん、まくら、毛布には、目の細かい木綿のカバーを掛けるようにしましょう。
□.ベッドにしたら、ベッドの下やマットの掃除を忘れずにしましょう。
□.寝室に持ち込む<毛のあるぬいぐるみ>は、最小限にして、よくお湯で洗いましょう。
□.冷暖房は季節を考えて、温度や湿度を設定しましょう。(室内外の温度差を少なくするように設定しましょう。)
□.加湿器は結露やカビの原因になるから、よく換気して使いましょう。(湿度65%でダニは増殖します。)
□.空気清浄機は大体有効なことが多いですが、これにばかり頼ってはダメです。
□.ダニもホコリもカビも、完全にゼロにすることはまず不可能な話、今よりも少なくなればよい、と考えるようにしましょう。(極端なダニノイローゼはストレスとなり、かえって、アトピーを悪化させます。)
なぜ、ストレスによって、かゆくなるのでしょうか。かゆみを感じるしくみは、下図のように考えられています。皮膚から脳には、常に一定の信号が送られているのですが、皮膚に何か異常がおきると、その信号が変化し、それが脳に伝わってかゆみを感じるというわけです。
ところが、ストレスは皮膚になにも異常がなくても、直接脳に作用し、この一定の信号に変化をもたらし、かゆみを発生させてしまいます。皮膚にはなにも異常がおきなくても、脳がストレスを上手く処理できないために、かゆくなるのですからストレスは大敵です。
と、いわれるほど、私たちのまわりにはいろいろなストレスがあります。特に学童期以後、年令が長ずるにつれて、ストレスが原因のアトピー性皮膚炎が、増える傾向にあります。よく、きまじめな人は、ストレスが生じやすいと言われますが。考え方が「こうあるべき」とか「こうでないといけない」と思いこむあまり、自分で気づかないうちに、自分自身に負担を掛けすぎてしまうからなのでしょう。もう少しゆっくりと、のんびりと、「こんなもんでも、いいんだ」ぐらいに考えれば、ストレスも少なくなるように思います。
また、最近の研究ではストレスは、自律神経(自律神経とは、体温や呼吸を一定の状態に保ち、体の調子を整える神経)にも影響を及ぼし、アトピー性皮膚炎を初めとするアレルギー疾患を、悪化させることも知られています。悩み事や睡眠不足のようなストレスは、自律神経に大きな負担を掛けます。ストレスを全くゼロにすることはできないまでも、それなりに工夫をして、ストレスを少なくすることが大切です。
※ 自律神経には、交感神経(体の活動を活発にする神経)と副交感神経(体を休める神経)とがあり、微妙なバランスを保ちながら、私たちの体調をコントロールしています。アトピー性皮膚炎では、一般に交感神経が緊張気味の場合が多く、このことが体に負担をかけて、治りにくくしていると言われています。ストレスは容易に交感神経を緊張させますから、ストレス対策は重要です。
そのためには、ストレスに対する考え方も大事です。アトピー性皮膚炎が悪化したとき、「またか!!」とあまり悲観的、ヒステリックにならないことです。アトピー性皮膚炎が悪化するときは、自分の体になにか不都合なこと(つまり、ストレス)が近づいている、ということなのです。例えば、最近スキンケアをさぼっているとか、試験が近いとか、いじめにあったとか、夜勤が多く疲労気味とか、いわば自分に対する危険信号が、点滅したと思って下さい。
前述したように、いろいろなストレスでかゆみは強まり、アトピー性皮膚炎は、悪化します。少し話はそれますが、いやなことがあると腹痛や、頭痛を訴える人をよく見かけます。こういう場合もアトピー同様、大脳や自律神経にストレスが作用して、症状が出ているのです。
つまり、ストレスはその人の体の一番弱い所に症状として現れてくるのです。アトピーの場合は皮膚です。これを「またか!!」とは考えず、早めに、危険信号で体の変調を知らせてくれるサインと考えればどうでしょう。もっと大きなストレスで苦しむ前に、その時のライフスタイルを見直すことによって、いろいろな対策を立てることができます。
アトピーの悪化は、ストレスを早めに教えてくれる危険信号と思えば、ストレスに対して柔軟な対応ができるのではないでしょうか。
□.早寝早起きをしましょう。(人間の体のリズムは朝方にできています。夜更かしは、大脳や、自律神経に負担を掛けるだけで、なにも良いことはありません。)
□.睡眠時間を十分にとりましょう。【休めばよくなるんだ。】と考えましょう。これはすごく大切なことです。特に、思春期、成人の場合、疲れてると感じたら、食事よりも入浴よりも、睡眠を優先しましょう。
□.どんなに仕事が忙しくても、1週間に1回くらいの休日は必ず取りましょう。(がんばりすぎは過労のもと〜伸びすぎたゴムは切れやすい。)
□.あまり、〜べき、〜べきと考えない。(完璧主義は程々にして、むしろ少しノンビリ屋さんになるくらいに行動しましょう。)
□.(特に子どもの場合)わがまま、過保護、過干渉は絶対にダメ。(大きくなってから物事を自分で解決できなくなり、その結果、ストレスに弱くなってしまいます。)
□.家の中にばかり閉じこもらないで、外に出るようにしよう。(ゲームばかりしないで、屋外で遊ぶようにしましょう。)
□.大人でも、子どもでも、熱中できる趣味を持つようにしましょう。(遊んでいるときは、かゆみを感じないでしょ。)
温泉がアトピーに効く、というのはよく耳にすることですが、なぜ効くのでしょうか。それには、2つの理由があります。1つめは、お湯にはいることによって汚れが取れ、皮膚が清潔になることです。つまりスキンケアです。なにも温泉でなくてもよいのですけどね。2つめは、(これが大事)温泉のようなのんびりとした環境では、日常生活のイライラから解放され、心身ともに深く開放感に浸ることができます。
つまり、日頃のストレスから、解放されることによって、大脳も自律神経もリラックスして、アトピーが良くなるのです。できれば、1週間くらいのんびりできればよいでしょう。間違っても仕事や教科書を持っていかないことです。
というようなわけで、のんびりとした環境が良いと言うことです。温泉にはミネラルも多く含まれ皮膚によいのですが、特別、アトピーを治す湯というものはありません。
温泉の話のついでに、少し民間療法について触れておきたいと思います。民間療法は一言でいえば、〜医療機関以外で行う治療〜ということになります。アトピーに限らず、実にいろいろな民間療法があります。本来は、<経験豊かなおばあちゃんの知恵>のような発想から生じたものであったように思いますが、アトピーに関する民間療法には、患者さんの弱みにつけ込んだとんでもないものも多く、民間療法というよりはアトピービジネスといった方がよさそうなものがみられます。その中には医師がからんでいるものもあり、大変困った問題です。
これらのアトピービジネスの特徴は、大体以下の通りです。
@.まず、アトピーは今の治療では絶対治らないことを強調してきます。(多くの場合、ステロイドが悪いと言ってきます)
A.そこで、特殊な治療を紹介してきます。(この段階では患者さんは半信半疑です)
B.実際に治った人たちを紹介してきます。(体験談、広告、出版物、患者の会、等々)
C.そして、治療を開始しますが、なかなか治らないと、それは、以前に行った治療が悪いため(特にステロイドを悪役にする)と説明されます。
D.これ以後は、「もう少しがんばれば良くなる。」とか、さらに新たな治療法や商品を勧めてきます。そして、どんどん泥沼にはまりこんでいくことになります。
アトピービジネスに対しては、もっと社会の警鐘があってもしかるべきと思いますが、なぜか野放し状態にあります。全ての民間療法が間違っているのではなく、それなりの効果を期待できるものもあるわけですが、誰にでもに当てはまるような民間療法はなく、補助療法的なものでも誇大広告して法外なお金を請求するようなところに、問題があると思います。以下に民間療法の注意点をあげましたので、よく読んで、あまり変なものにだまされないようにしましょう。また疑問があればすぐ相談にきて下さい。
アトピー性皮膚炎に対する民間療法は、実に様々なものがあります。その中にはそれなりに効果がみられるものもあれば、逆にどんどん悪くなり、悲惨な状態に陥ってしまうものまであります。あまり変なものにだまされないように、ここでは民間療法を併用するときの注意点を述べたいと思います。
民間療法は、大体以下の5通りくらいに分類されます。
@.環境整備(防ダニ用品、空気清浄機、クリーンルーム、等)
A.スキンケア用品(入浴剤、石けん、シャンプー、保湿剤、等)
B.特殊な薬、軟膏(馬油、SOD、MMK、等)
C.健康食品(玄米菜食、〜サプリメント、等、とてもたくさんありますね。)
D.精神心理療法(ハーブ、アロマテラピー、温泉、海水浴、脱ステロイド、等)
全ての療法に良い点もあれば、悪い点もあります。誰かが使って良かったからといってそれが誰にでも良いというわけでもなく、かえって悪くなる場合もあるのです。民間療法を行うときは、必ず医師と相談してくだざい。患者さんの中には医師に相談すると止められると思い、自分勝手に始めてしまう人も多いようです。私もよく民間療法について相談を受けますが、大体次に述べる3点が守られるようなら勧めています。
@.経済的に無理がないこと
1ヶ月の治療費が〜万円などと言うことはあり得ません。家庭の経済に負担のかからないようにして下さい。「薬は高いほど効き目がある」という患者心理を狙ったものです。
A.常識的な治療を継続しながら、併用できるものであること
常識的な治療を真っ向から否定することにより、患者さんの共感を得て、商品を売りつける場合があります。「ステロイドを使っているから治らない。」「ステロイドをやめて〜を使えば良くなる。」と言う類のものです。これは絶対やめた方がよいです。
B.一定期間試用したら、必ず効果の判定ができるものであること
どんな治療でも1ヶ月も行えば、良いのか悪いのか、ある程度の評価ができるはずです。一生懸命言われたようにしているにも関わらず、さっぱり良くならない。それなのに、症状が良くならないのは、「今までの治療が悪かったから」とか、「今は体内の悪いものがでているため」とか、「もう少し続ければ良くなるから、今は辛抱の時」とか言って、いっこうに治療方針が変わらないような場合です。この類のものは、このまま続けてもまず良くなることは望めません。深みにはまる前に医師に相談して下さい。
以上の3点が民間療法を行うときに、必ず守ってほしいことです。上述した内容を理解していただければ、あまり変なものには、だまされないと思います。アトピーを狙った悪徳商法(アトピービジネス)は、たくさんあります。病院で普通に治療しているアトピー性皮膚炎で、危篤状態になった人はいませんが、悪質なアトピービジネスにだまされて、不幸にも亡くなった方がおります。くれぐれも注意して下さい。
以前、アトピー性皮膚炎の原因、治療法などを巡って、小児科は、アレルギーや食物の関与を強調し、皮膚科は、皮膚のバリアー障害を重視し、食物の関与は否定的に考えたため、小児科と皮膚科との間に統一した見解が得られず、患者さんたちが混乱した時期がありました。これにつけ込んで「アトピービジネス」なる悪徳商法がはびこり、アトピー性皮膚炎は一時社会問題となったこともありました。現在、アレルギーやドライスキンなど原因は解明されつつあり、小児科でも皮膚科でも標準的な治療が行われるようになりました。しかし、不明な点も多く、課題は尽きません。
アトピーを、文明病というような言い方をする人もいます。これは昔に比べて、私たちのライフスタイルが、大きく変化した事と関係ありそうです。つまり、(衣)→化繊は皮膚への刺激が強い、(食)→脂質の過剰摂取、(住)→ダニ、ハウスダストの増加、環境汚染、そして、ストレス社会(これが一番大変)こういう身のまわりの変化が、アトピーの原因とも言えます。昔のような生活に戻すことが、アトピー治療の最善の方法かもしれませんが、しかし、それは現実には不可能なことです。それに、この便利な現代の生活に大きな恩恵を受けていることも事実なのです。
アトピー治療で大事なことは、自分でできる範囲内で、治療目標をしっかりと立てることだと思います。<かゆみが、少なくなること>これを目標にすれば良いと思います。少しくらい赤みがあっても、少しくらいガサガサしていても、かゆみが少なくなって、<日常生活に支障がなければ、大丈夫>です。
そして、もう一つ大事なことは、ストレスの項でも述べたように、アトピーが悪化したときに、「またか!!」と、あまり神経質にならないことです。特に、年長児や、成人の場合、アトピー悪化は、もっと大きなストレスが近づいている危険信号です。ここで冷静に<ライフスタイルの見直し>をして下さい。そうすることによって、大きなストレスを防ぐとともに、改善の糸口がつかめるはずです。