喘息発作のおきるしくみ”と、“薬のはたらくしくみ”

 気管支喘息を治療していく上で、“喘息発作のおきるしくみ”と、“薬のはたらくしくみ”とを、理解することは大切なことです。特に、薬については、十分に理解できてないと、いつのまにか医師から押しつけられた治療になってしまい、とうてい長続きしません。喘息発作のおきるしくみをよく理解し、どのような薬が、なぜ必要であるかがわかってこそ、良い治療ができるというものです。


 喘息発作のおきるしくみ〜予防治療が必要なわけ

 気管支喘息の本態は、<気道の過敏性亢進を伴う慢性炎症>です。気管支の過敏性が亢進しているため、アレルギー反応を初めとして、運動、天候の変化、疲労、冷たい空気、タバコの煙、かぜをひいた後、等に、気管支が収縮して、喘息発作を起こします。そして、発作を繰り返す度に、気管支はいつも汚れがたまるようになり、だんだん治りにくい気管支になっていきます。

 このように気管支が汚れた状態を慢性炎症といって、放置してると、どんどん汚れがたまり、健康な気管支に戻れなくなってしまいます。汚れがたまってもとに戻れない状態をリモデリングといいます。こうならないように、発作予防治療する事が大切です。

★☆★ 発作の起こるしくみを簡単に図に示しますと次のようになります。


 アレルギーを予防する薬慢性炎症を予防する薬気管支の収縮を和らげる薬、が、喘息の治療薬です。


 喘息発作のおきるしくみ〜アレルギー反応を中心に

 <アレルギー>とは、≪普通の人にとっては、何でもないようなものが、ある特定の人にとっては、不快な反応をおこすこと≫をいいます。この原因になるものをアレルゲン(抗原)といいます。ダニ、HD、花粉、食物、等々いろいろな物質があります。これら抗原が、アレルギー反応の引き金になるのです。

 では、なぜ、ある特定の人にだけアレルギー反応が起きるのでしょうか、これは、その人が反応する物質に対して、特異的IgE抗体を持っているからです。この特異的IgE抗体は、マスト細胞という細胞の上に乗っています。体外から侵入してきたアレルゲンが、この特異的IgE抗体にくっつくことにより、アレルギー反応が始まるのです。これを抗原抗体反応といいます。

 アレルゲンが、特異的IgE抗体と反応すると、異物が入ってきたというメッセージが、マスト細胞に伝わります。すると、マスト細胞は破裂して、多くの有害な化学伝達物質(ロイコトリエン、ヒスタミン、等)を放出します。


 この化学伝達物質が過敏な気管を刺激することによって、気管支表面の筋肉(気管支平滑筋)が収縮します。同時に内側の粘膜も収縮し、炎症が生じて、痰が増えてきます。

 その結果、ゼーゼー、ヒューヒューという苦しい呼吸状態が出現します。これが喘息発作の始まりです。


 薬のはたらくしくみ〜【予防薬】【発作治療薬】

 気管支喘息の治療薬には、発作を予防する【予防薬】と、発作がおきたら使用する【発作治療薬】(気管支拡張剤)との2種類があります。

【予防薬】アレルギー反応を予防したり、慢性炎症を改善します。

※ 予防薬は、普段から使用していないと、いざというときに効果が出ませんので、発作が無くても、きちんと続けることが大切です。

【予防薬】@.アレルギー反応を予防する薬:ロイコトリエン受容体拮抗薬

 近年、喘息発作を起こす化学伝達物質としてロイコトリエンが重要視されるようになり、このロイコトリエンを抑制する薬としてロイコトリエン受容体拮抗薬(以下、LT受容体拮抗薬)が、気管支喘息予防薬として使用されるようになってきました。LT受容体拮抗薬は、慢性炎症の改善効果も期待されており、軽症〜重症の気管支喘息に広く使用されています。

・主なLT受容体拮抗薬:オノン、シングレア、キプレス。

【予防薬】A.慢性炎症を改善する薬:吸入ステロイド

 喘息は発作を繰り返すうちに、過敏性が亢進するだけでなく、慢性炎症が著明になってきます。慢性炎症とは、気管支が常に赤く腫れてむくんでおり、ちょっとやそっとでは元に戻れない状態を指します。この慢性炎症を改善する最適の薬が吸入ステロイドです。 吸入ステロイドは、全年令に渡って広く使用されています。

 ところで、ステロイドというと、マスコミの悪宣伝もあってか、副作用を心配される方も多いようです。内服薬や注射と異なり、吸入薬では極めて微量ですので、普通に使用する量では心配ありません。また、吸入薬は吸入された後、気管支や消化管を経て肝臓で分解され、体外に排出されます。そのため全身に回ることがなく安全性が高いといえます。

 吸入ステロイドも、予防薬ですので、発作の最中に使用しても効果がありません。普段から吸入を続ける必要があります。気管支喘息の本態が気道過敏性や慢性炎症ということがわかってきた現在では、軽症、中等症でも積極的に使用されるようになってきました。その結果、重症化する患者さんは少なくなりました。

 また、慢性炎症は幼児期からでも進行する場合もあり、今や、吸入ステロイドは、喘息治療の第1選択剤になりつつあります。内服剤だけでは改善が思わしくない場合、早めに吸入ステロイドを使用すると良い結果が得られます。

・主な吸入ステロイド:パルミコート、フルタイド、アドエア、シムビコート、レルベア、フルティフォーム等


【発作治療薬】発作時に、気管支を広げるお薬(気管支拡張剤)

※ ゼーゼー、ヒューヒューしてきたら、もう予防薬だけでは間に合いません。なるべく早めに、気管を拡げるお薬(気管支拡張剤)を内服(吸入)します。

【発作治療薬】気管支拡張剤:気管支平滑筋の収縮を和らげ、呼吸を楽にする薬です。治療薬として歴史も古く、大変有効なお薬と評価されています。また、予防薬としても使用されます。ただ、少し副作用のみられる場合もありますので、医師の指示をよく守って使用して下さい。

 早く効果が現れるもの(交感神経刺激剤)と、ゆっくり効果が現れるもの(テオフィリン製剤)との2種類があります。薬の作用が異なりますので、一緒に使用すると効果的です。

・主な交感神経刺激剤:メプチン、ベネトリン、ブロンコリン、ベラチン、ホクナリン、ブリカニール、など
・主なテオフィリン製剤:テオドール、テオロング、スロービット、ユニフィル、テルバンス、アーディフィリン、など

☆.交感神経刺激剤は、心臓がどきどきしたり、指がふるえるような副作用が、みられる事がありますが、中止するとおさまります。また、吸入薬は回数が増えると確実に心臓に負担がかかりますので、主治医の指示をよく守って下さい。

☆.テオフィリン製剤は、吐き気や、心臓がどきどきすることがあります。特に1才未満のお子さんでは、興奮しやすくなって、夜間不眠状態になることもあります。(通常、6ヶ月未満の赤ちゃんには処方しません。)また、抗生剤や、胃炎の薬などの影響を受けて、テオフィリンの濃度が上がったり下がったりしますので、この薬を内服しているときは、他剤との併用に注意が必要です。


 まとめ:長い一生、喘息で苦労しないため、将来のための治療。

 それが、小児期の喘息治療の目的です。

 気管支喘息の治療薬は、【予防薬】【発作治療薬】(気管支拡張剤)の2種類があります。予防薬としては、LT受容体拮抗薬、吸入ステロイドがよく使用されます。発作治療薬として頻用されるテオフィリン製剤は予防薬としても効果があります。

 現代の治療は、LT受容体拮抗薬吸入ステロイドの組み合わせが主流になっています。それに、交感神経刺激剤や、テオフィリン製剤が必要に応じて使用されています。

 最近は、「吸入ステロイド+長時間作動型交感神経刺激剤」というお薬もよく使用されています。これは、吸入ステロイドに気管支拡張作用を持つ交感神経刺激剤を加えたものです。吸入ステロイドをパワーアップした薬剤で、慢性咳そう(咳喘息)にもよく処方されています。

 気管支喘息治療の原則は発作を起こさないことです。(当然のことですが)そのためには、発作のない時でもきちんと治療を続けることが大切です。
 
 発作を繰り返すたびに、気管支の過敏性は高まり、さらに慢性炎症から、リモデリングへと進み、難治性となり、一生薬が手放せなくなることもあります。

 こどもの気管支喘息は成人と比べると治りやすいとも言われています。それは、慢性炎症が、あまり進んでいないからです。今(小児期に)、治療をすることは、今だけ良くなればよいのではなく、長い一生、喘息で苦労しないため、将来のための治療でもあるのです。

 予防薬は、良くなってくれば、少しずつ減量し終了します。大事なことは、少し調子がよいからといって、いきなり止めないこと。再発の反復は治り難くなります。医師の説明を良く聞き、内容を理解して治療を続けましょう。

 発作予防で、みんなニッコニッコ