この内容は、平成19年度のものです。平成20年度版は現在作成中ですので、しばらくお待ち下さい。
“セルフケア”と“初期治療”でのりきりましょう
今年のスギ花粉飛散量は、「昨年並み」?!
スギ花粉の飛散量は、前年の夏の気象条件(気温や日射量など)や、スギ雄花の着花数から予測されます。それによりますと、今年は、「昨年並み」と予想されていますが、暖冬の影響もあり、例年より早く花粉が飛びそうですので、もしかしたら、花粉症の期間が長くなるかもしれません。
花粉症の対策で大切な事は、〈セルフケア:日常の健康管理〉と〈初期治療〉です。
・〈セルフケア〉は、外出時にマスクや帽子を着用し、できるだけ、花粉との接触を少なくすることです。
・〈初期治療〉は、スギ花粉が飛び始める1~2週間くらい前から行うと効果があります。今年は、2月中旬~下旬くらいから予防内服した方が良さそうです。
初観測日 :1月1日から観測を始め、花粉採集器のカバーグラス状に1個でも花粉が観測された最初の日をいいます。
飛散開始日:花粉採集器に1平方㎝あたり1個以上の花粉(採集期の面積は3.24平方㎝で、この中に4個以上花粉があると1平方㎝あたり1個以上となります。)が2日以上連続して観測された最初の日をいいます
飛散開始日は、本格的な花粉の飛散シーズンの始まりです。初観測日と飛散開始日の間には2週間程度のずれがあります。この間にも少量の花粉が飛散するために過敏な人は症状が出てしまいます。ですから、毎年症状の出る人は初観測日が確認されたら、早めに治療を開始した方がよいです。
今年の盛岡市の初観測日 :1月19日
今年の盛岡市の飛散開始日:2月下旬から、盛岡市の一部では飛散が見られています。
過去7年間の盛岡市の初観測日 :1月25日~3月13日(平均2月16日)
過去7年間の盛岡市の飛散開始日:2月25日~3月22日(平均3月14日)
今年の初観測日はかなり早いので、飛散開始日も早くなりそうです。
花粉飛散開始時期は、1月以降の気温の影響を受けます。一般的には1月の気温が高い暖冬の年には早く、逆に冬が寒いと遅くなります。しかし、飛散開始までに必要な温度は地域によって異なり、北の方ほど小さくなります。東北北部では150度から200度で飛散が始まります。
花粉が飛び始める前から、予防的にお薬(抗アレルギー剤:アレルギー反応を起こしにくくするお薬)を内服(点鼻、点眼)することによって、花粉シーズン中のアレルギー症状を軽減する治療法です。
花粉症は症状によって、①くしゃみ、水性鼻汁の強いタイプ、②鼻閉の強いタイプ、③3大症状全て強いタイプ、に分けられます。当然、それぞれのタイプによって治療する薬もかわりますので、症状にあわせたお薬を選んでもらえばよいです。
〈初期治療〉の利点は
1. シーズン中の症状が軽くなります。
2. 症状の出現が遅くなります。
3. 内服薬や点鼻薬、点眼薬などの薬の使用回数が少なくてすみます。
とにかく、できるだけ花粉を体内に入れないことです。
★.お家で気をつけること
1) 掃除は、掃除機とよくしぼったぬれぞうきんを使ったふき掃除でていねいに。
2) 天気の良い日、風の強い日の洗濯物、ふとんに注意。洗濯物、ふとんを取り込むときはよく払う。
3) 必要なとき以外は窓を開けない。
★.花粉情報をチェックする。
花粉の飛びやすい天気の時は外出を控える。
花粉の飛びやすい天気とは、
1) よく晴れた日の午後1時~3時頃、午後5時~7時頃
2) 最高気温が高い日
3) 湿度が低い日
4) 風が強い日
5) 雨上がりの晴れた日
6) やや強い南風が吹き、その後北風に変化した日
★.外出時のおすすめ防衛対策
1) マスク、めがね、 帽子、を着用する。
* マスクは、ガーゼよりも不織布、なるべく使い捨ての方が衛生的です。また、マスクと顔の間の隙間が少ない立体型の方が効果があります。
* メガネは、花粉用のものが一番よいのですが、普通のメガネでも、何もしない時と比べて眼に入る花粉量は半分以下になります。
* コンタクトレンズはレンズの刺激で炎症が悪化することがありますので、メガネに替えた方がよいです。
* 帽子は、つばの広いものがよいです。、
2) 上着はツルツルした素材のもの(ウール製は花粉が付きやすいので、絹や綿などのさらっとした素材がいいです。)を着用。
3) スカーフ(これもツルツルした素材のもの)で襟元を保護。
4) 長い髪は束ねる
5) 帰宅したら、玄関でコートを脱ぐ(家の中に花粉を入れない)。うがい、洗顔する。
カゼと花粉症とは、症状が大変よく似ています。カゼと思っていたら、花粉症であったり、また、その逆だったり、あるいは、両方合併していたりという具合にカゼと花粉症との鑑別は、なかなか難しいものがあります。
花粉症では短時間の間に、①頻回のくしゃみ、→②水様性の鼻汁、→③頑固な鼻閉、の順番に症状が見られることが多く、花粉シーズンにこういう症状がよく見られるときは、花粉症と考えて良いと思います。
また、朝起床時に、くしゃみ、鼻水が連発することも花粉症の特徴です。
一般的なカゼと花粉症の鑑別点は表のようになりますが、必ずしも全ての患さんに当てはまるわけではありませんから、一人一人の患者さんについて、詳しく診察することが大事です。
かぜと花粉症 | かぜ | 花粉症 |
---|---|---|
頭痛、咽頭痛、咳 | よくみられる | よくみられる |
眼のかゆみ、くしゃみ | 少ない、長くは続かない | よくみられる |
下痢、嘔吐、発熱 | よくみられる | 少ない |
鼻汁の性質 | 水様性から、やや粘性、 細菌の2次感染があれば 、 膿性へと変化する |
一般に水様性 |
鼻汁検査 | 好中球(白血球の一種) (感染症に関係する) |
好酸球(白血球の一種) (アレルギーに関係する) |
粘膜所見 | 発赤が強い | 発赤、浮腫(むくみ) |
花粉症でもよく咳がみられます。カゼの咳と花粉症の咳(アレルギー性の咳)とを区別するにはどうしたらよいでしょうか。この両者を厳密に区別することは、難しいのですが、いくつか鑑別点があります。常に、このようにわかりやすく診断できるわけではありませんが、ある程度の目安にはなります。
かぜとアレルギー | カゼ | アレルギー |
---|---|---|
咳の性状 |
乾性(乾いた咳)から 湿性(湿った咳)まで |
一般に乾性(乾いた咳) 咳払いやカラ咳の様なこともある |
痰の性状 | 細菌感染を合併すると膿性 | 細菌感染を合併すると膿性 |
咳の多い時間帯 | 一般に不定 | 夜間に多い |
罹病期間 | 普通は短い | 長い(2~4週間以上) |
運動や冷気に対する反応 | 様々であり一定しない | 咳が誘発されることが多い |
本人や家族のアレルギー疾患 | 特に関係ない | みられる場合が多い |
鎮咳剤 | 無効~有効、個人差が大きい | 殆ど無効 |
気管支拡張剤 | 湿性咳そうでは有効 | 一般に有効 |
睡眠不足は、体調を崩す大きな原因です。十分な睡眠をとるように、早寝早起きすることが大切です。尚、成人の場合、アルコールやタバコは、できるだけ控えるようにしましょう。
脂肪の多い食品(天ぷら、焼肉、等)は、アレルギー反応を促進しますので、花粉飛散中は、なるべく低脂肪の食品を主体にしましょう。また、カロチンの多いニンジンやカボチャは、鼻の粘膜を丈夫にします。
小鼻(鼻の腋)を左右片方ずつ、水や氷で冷やす。一時的ではありますが、1~2分間(20~30秒間でも良い)小鼻を冷やすと、鼻がすっきりします。
甜茶は、中国の甘いお茶の総称ですが、そのうち、バラ科キイチゴ属の「甜葉縣鈎子」という植物から作られる甜茶は、昔から、カゼの妙薬として飲み継がれてきました。花粉症が治ることはありませんが、一時的にせよ、少し鼻がすっきりします。いかがわしい健康食品などよりは、はるかに良さそうです。 お茶だけでなく、飴や、ガムなどの商品もあります。値段も手頃ですが、ブームに便乗したインチキ商品も出回っていますので、メーカーの製品を選ぶようにしましょう。
温泉や、お風呂に入ったとき、鼻がスーッと通るのを経験されたことはありませんか。温熱エアロゾル療法は、熱めのお風呂とほぼ同じ温度の43度cの蒸気を、のどや鼻の粘膜全体に行き渡らせることによって、のどや鼻の不快感を和らげる療法です。これは、薬品を全く使わない水だけの蒸気ですので、妊娠されている方、薬剤アレルギーの方でも安全に使用できます。
花粉症の場合、1回10分間で、1日2~3回行います。専用器具が必要で、「のど、鼻用スチーム吸入器」などの名称で電気屋さんなどでも販売されています。値段:1万円前後