症状と診断

 花粉症の症状は?


 花粉症の症状は主にに現れます。

 くしゃみ、鼻水、鼻づまり、眼のかゆみが、主な症状です。くしゃみ、鼻水、眼のかゆみは、ヒスタミンによって、また、鼻づまりはロイコトリエンや、トロンボキサンによって発現します。この他にも、のどの異和感、咳、頭痛、顔の火照り、皮膚のかゆみ、喘鳴など多くの症状がみられます。

 なぜ、鼻や眼に症状が現れやすいかというと、手足の表面は角質層という厚い組織におおわれて異物が侵入できないようになっていますが、鼻や眼の表面は粘膜で、花粉が接触しやすく、また、侵入しやすいしくみになっています。
 口の中も粘膜ですが、唾液などで洗い流されてしまうため症状が出にくいです。しかし、大量にのどまで花粉が侵入すると、のどの違和感や、咳のような症状が見られるようになります。

・朝起きると同時に、クシャン、クシャンが始まります。続けて何回もおこることが多いです。.  
・透明なさらさらした鼻水です。自分でも気づかないうちにスー、タラ〜リという感じで出てきます。  
・鼻呼吸ができないため口呼吸になり、喉が痛んだり、咳が出たりします。熟睡できず、一日中ボーとしてきます。とにかく苦しいです。  
・眼の周りがかゆくなり、まぶたが腫れぼったくなり、結膜が腫れます。痒いのでかくとさらに悪化し眼がごろごろしたりまぶしく感じたり、涙の大洪水になることもあります。  


 口腔アレルギー症候群(OAS:Oral Allergy Syndrome)

 野菜果物を食べた後に唇のはれや発赤、のどのかゆみ、イガイガ感などが起こることがあります。これを口腔アレルギーといいます。

 この原因は、粘膜における接触性蕁麻疹で、誘発食品中の抗原が熱に弱く壊れやすいため、口腔内のみで症状が終わると考えられています。しかし、栗やバナナなど消化酵素や熱に抵抗性があるものでは、口腔内にとどまらず、消化器症状(嘔吐、下痢)などが見られることがあります。

 代表的な食品として、リンゴ、サクランボ、モモ、ナシ、プラム、メロン、スイカ、アンズ、キウイ、ビワ、ナッツ類、セロリ、トマト、などが報告されています。さらに、これらの食品の中には花粉と共通抗原性を持つ食品も多くあります。

 例えば、スギとトマトの特異的 IgE抗体は、共通性があるため、スギ花粉症の人がトマトを食べた直後に口腔アレルギーを起こすことがあります。
 他にも花粉と共通抗原性を持つ食品は多く見られますので、花粉症の人は注意が必要です。

花粉との関連があるとされる食物
カバノキ科 ハンノキ
シラカバ
リンゴ、モモ、メロン
(サクランボ、イチゴ、ウメ、ビワ、キウイ、ナシ、アンズ、ニンジン、セロリ、馬鈴薯、ナッツ類、クルミ)
ヒノキ科 スギ
ヒノキ
トマト
イネ科 カモガヤ
オオアワガエリ
 
メロン、スイカ、キウイ、トマト、キウイ、オレンジ
(馬鈴薯、セロリ、バナナ、ラテックス、ピーナッツ)
キク科 ブタクサ メロン、スイカ、キュウリ、ズッキーニ、バナナ
ヨモギ ニンジン、セロリ、マンゴー
(キウイ、ピーナッツ)


 カゼと花粉症との症状の見分け方

 花粉症では短時間の間に、@頻回のくしゃみ、→A水様性の鼻水、→B頑固な鼻閉、の順番に症状が見られることが多く、花粉シーズンにこういう症状がよく見られるときは、花粉症と考えてよいと思います。
 また、朝起床時に、くしゃみ、鼻水が連発することも花粉症の特徴です。 一般的なカゼと花粉症の鑑別点は、表のようになりますが、必ずしも全ての患さんに当てはまるわけではありませんから、一人一人の患者さんについて、詳しく診察することが大事です。

 カ ゼ 花粉症
 頭痛、咽頭痛、咳  よくみられる よくみられる
 眼のかゆみ、くしゃみ 少ない、長くは続かない よくみられる
 下痢、嘔吐、発熱 よくみられる 少ない
 鼻汁の性質 水様性から、やや粘性
細菌の2次感染があれば
膿性へと変化する
 一般に水様性
細菌の2次感染があれば
膿性へと変化する
 鼻汁検査 好中球(白血球の一種)
(感染症に関係する)
好酸球(白血球の一種)
(アレルギーに関係する)
 粘膜所見 発赤が強い 発赤、浮腫(むくみ)


 カゼの咳と、アレルギーの咳との違い

 花粉症でもよく咳がみられます。カゼの咳と花粉症の咳(アレルギー性の咳)とを区別するにはどうしたらよいでしょうか。この両者を厳密に区別することは、難しいのですが、いくつか鑑別点があります。常に、このようにわかりやすく診断できるわけではありませんが、ある程度の目安にはなります。

 カゼ  アレルギー
 咳の性状
乾性(乾いた咳)から
湿性(湿った咳)まで
一般に乾性(乾いた咳)
咳払いやカラ咳
 痰の性状 細菌感染を合併すると膿性 細菌感染を合併すると膿性
 咳の多い時間帯 一般に不定 一定の条件でよく見られる
(例えば、夜間など)
 罹病期間 普通は短い 長い
 運動や冷気に
 対する反応
様々であり一定しない 咳が誘発されることが多い
 本人や家族の
 アレルギー疾患
特に関係ない みられる場合が多い
 鎮咳剤 無効〜有効、個人差がある 殆ど無効
 気管支拡張剤 湿性咳そうでは有効 無効〜有効


 花粉症の診断は

◇ 問診
 アレルギーの原因を探すために、症状の出る季節、程度を尋ねます。花粉の飛ぶ季節にくしゃみ、鼻水、鼻づまり、眼のかゆみなどの症状があれば、かなり疑わしいです。花粉症は、正確な問診で大体診断ができます。また、アレルギー検査も信頼性が高いです。以前に検査したことがあれば、その結果も参考になりますので、持参して下さい。

◇ 鼻鏡検査
 鼻の粘膜を観察します。ダニやハウスダストが原因の通年性アレルギー性鼻炎では、白っぽくみえますが、花粉症では、赤く腫れていることが多いです。

◇ 鼻汁好酸球検査アレルギー性の炎症(花粉症)がおきていることを意味します。

 好酸球は、白血球の一種で、アレルギー性の炎症(花粉症)が生じた組織にたくさんみられます。好酸球が鼻粘膜から検出されるとアレルギー性鼻炎がかなり疑わしいのですが、常に検出されるというわけではなく、花粉症の季節外とか、アレルギー反応が弱いと検出されない場合もあります。検出された場合は、アレルギー性の炎症がおきていると思ってまず間違いなく、検出されないからといっても、アレルギーを否定はできません。

◇ 特異的IgE抗体アレルギーの原因がわかります。
 花粉症をおこすには、その原因になるもの花粉(抗原)がありますので、この原因を調べることは大変意味のあることです。よく行われている検査は、血液検査や皮膚試験によって特異的IgE抗体を調べることです。

 血液検査は、RASTといいます。1回に13種類の花粉を調べることができますが、実際に13種類も調べる必要はありません。春、夏、秋の代表的な花粉とダニ、ハウスダストの数種類調べる程度で十分です。何が原因かを知ることによって、抗原除去回避や、治療時期を判断するのに大切な情報になります。  

 皮膚試験には、2種類あります。皮膚に花粉のエキスを注射し、反応を見る皮内注射法と、皮膚を少し傷つけて、そこに花粉のエキスをたらすスクラッチテストです。結果は皮膚の赤み(発赤)の程度によって判定します。
 皮内反応は時として反応が強くでることがあり、あまり行われません。スクラッチテストは安全性が高く、花粉症の他、食物アレルギーなどでも行われています。

◇ 鼻粘膜誘発テスト
 鼻の粘膜に花粉のエキスを付け、症状(くしゃみ、鼻水、鼻づまり)が出るかを見る検査です。この検査は原因がよくわかりますが、なんといっても実際に症状が出てしまいますので、殆ど行われていません。