インフルエンザ
  インフルエンザ




 インフルエンザの症状は

 インフルエンザは、毎年冬に流行するカゼの親玉のようなものですが、欧米では普通のカゼと区別して、重症疾患として取り扱っています。ふつうのカゼと大きく違う点は、発熱、咳、倦怠感などの症状が強く、治りにくいということです。<インフルエンザは、カゼではない>のです。

 特徴的な症状は突然の高熱ですが、あまり熱のでない時もあります。また、筋肉痛、関節痛などの症状が強く見られます。

 インフルエンザの症状を一言で言えば、“今まで経験したことがないような、どうにもならない倦怠感”といえます。一度かかった人なら誰でもわかりますね。“周囲にインフルエンザの人がいて、突然高熱が出て、目が充血して、ぼーっとした表情”だと、インフルエンザかなと思います。

 この症状は数日から1週間くらい続きます。以前は(と言っても、20年以上前の話ですが・・・)、インフルエンザに効く薬がなかったので、毎日解熱剤を使ったり、点滴したりしてましたが、どんどん悪化して、入院することも珍しくありませんでした。何とか治っても、しばらく体調が戻らないため、2〜3週間は仕事が手につかない方も多く見られました。

 とても重症な病気と思ってください。

 インフルエンザの合併症と、年令による症状の違い

 インフルエンザの合併症には中耳炎、気管支炎、肺炎などがありますが、年令別に見るといくつか特徴があります。また、乳幼児の脳症のように、過剰な免疫反応が原因と考えられる合併症も見られています。

 学童期や青壮年層では、悪寒、筋肉痛、関節痛などが見られ、気管支炎、肺炎のような呼吸器感染症の合併が目立ちます。

 幼児(1〜5才)で、問題になっているのは脳炎・脳症です。流行の規模によって発生数は異なりますが、幼児を中心として毎年100〜200人が発症し、約10〜30%が死亡し、ほぼ同数の後遺症患者が出ていると推測されています。
 ※ 私見ではありますが、最近は脳炎・脳症の発生は、以前よりも少なく、軽症化してるように思います。

 脳症は、1〜5才に多く見られます。なぜこの年令層に多いのかよくわかっていませんが、インフルエンザウイルスに対する過剰な免疫反応が原因と考えられています。(詳しくは脳炎・脳症を参照)

 ただ、脳症は、1才以下では少ないです。1才以下を【6ヶ月未満乳児】と【6ヶ月〜1才乳児】とに分けてみると、
 ・【6ヶ月未満乳児】では、インフルエンザ自体軽症のことが多いです。親からの免疫があるからとも言われていますが、これだけでは根拠に乏しく、おそらくあまり免疫力が強くないため、免疫が過剰に反応することもなく、脳症のような重症な合併症も見られないのではないかと考えられています。
 ・【6ヶ月〜1才乳児】になりますと、インフルエンザ自体の症状は【6ヶ月未満乳児】より強く見られますし、大体1才以上の子と同じような症状に見えます。ただ、脳症はあまり見られず、やはり、免疫応答力が弱いのが、かえって幸いしているのかもしれません。

 高令者では、インフルエンザにかかる比率は少ないのですが、いったん罹ると免疫力が低下しているため、重症な気管支炎、肺炎が多く見られています。インフルエンザによる肺炎の他、二次感染による細菌性肺炎も多く、最も死亡率の高い年令です。

 現在、流行しているインフルエンザウイルスでは、乳幼児の脳症以外には、免疫が過剰に反応するような異常は見られていないようですが、スペインインフルエンザでは青壮年の多くが、重症な呼吸障害(急性呼吸不全:ARDS)で犠牲になりました。これは脳症のような免疫異常が呼吸器で起きたためと考えられていますので、もし新型が流行った時は、この年令層が一番重症な合併症を持つことになるかもしれません。

 潜伏期間

 インフルエンザにかかってから、くしゃみや咳、悪寒、発熱、倦怠感などの症状が出るまでの期間を「潜伏期」といって、1日〜3日(平均2日間)です。この間は、何も症状がないのでかかっているかどうか解りません。言い換えますと、インフルエンザにかかった人に接触して2日くらいして、上記のような症状がみられればインフルエンザが疑わしいということになります。

 感染のしかたと、インフルエンザにかかったら気をつけること

 インフルエンザは、くしゃみや咳に含まれるウイルスが、そのまま、 あるいは空気中に浮遊しているうちに他の人の呼吸器に吸い込まれて感染します。この様に患者のくしゃみや咳、痰などで吐き出される微粒子(飛沫核) が直接感染することを「飛沫感染」といいます。また、空中を漂うウイルスを含んだ飛沫核を吸い込んで感染することを「飛沫核感染(空気感染)」と言います。

 ですから、インフルエンザにかかったら、マスクをしたり、咳をする時は口に手を当てたりして他の人に移さないようにすることが大事(エチケット)です。

 いつから学校へ行けるの?

 従来、「解熱後2日間」経てば登校できるという事になっていましたが、インフルエンザに罹ると大体1週間くらいは体内にインフルエンザウイルスが存在しています。つまり、「発症後1週間は、まだ他人に移す可能性を持っている」ということです。

 そもそも、解熱後2日間で登校という基準は、タミフルやリレンザのようにインフルエンザに効く薬のない時代の基準です。当時はインフルエンザに罹ると、効く薬は何もありませんので、発熱にジッと耐えて、免疫が上がるのを待つだけでした。
 
 インフルエンザに効く薬を使わなければ、大体4〜5日間くらいは発熱が続きます。そこでやっと熱が下がって2日くらいすれば、発症から大体1週間、解熱後から2日間、その頃には体内からウイルスが無くなっているので登校可能と言うことでした。

 ところが、今は、インフルエンザに効く薬を使えば1〜2日間で熱が下がります。それから解熱後2日間でも、発症から1週間経っていないので、まだ体内にインフルエンザウイルスが存在しています。ここで登校すると他人に移してしまうことになります。

 インフルエンザに効く薬が使われるようになってからも、昔の基準で登校時期が決められていましたが、2009年の新型インフルエンザ(現在のA(H1N1)2009)流行を機に見直しが行われるようになりました。新型インフルエンザ流行時は発症後1週間休みました。それは、新型がウ〜んと重症かもしれないと心配されたからです。

 「発症後1週間休校(園)」というのは、確かに感染拡大を防いで、社会全体を守る効果が期待できます。しかし、学校や生徒側の立場から考えてみると、授業は遅れるし、家でブラブラして体をもてあます児童も増えそうです。園児(幼稚園・保育園)の場合は、働くお母さんにも負担がかかります。

 休校(園)期間はインフルエンザウイルスの強さにより、【感染拡大予防】【社会生活】のバランスを考えて決められるべきです。

 以上より、2012年4月1日からは、次のような基準が設けられました。
1.児童・生徒(小学生以上)では、「発症後5日を経過して、かつ、解熱後2日間経過」したら、登校。
2.乳幼児(保育園・幼稚園では、「発症後5日を経過して、かつ、解熱後3日間経過」したら、登園。
※ 発熱初日は発症0日とし、発熱翌日が発症後1日目です。

 決まりというものは、その時々の実情によって見直されていくものです。今後また、変更があるかもしれません。

具体的には下表のようになります。

児童・生徒(小学生以上)の発熱期間と出席開始の目安
 発熱期間 第0日
/ 
 1日  2日  3日 4日   第5日
 6日  7日 8日  9日
1日間 出席      
 2日間 出席      
 3日間 出席      
 4日間 出席      
 5日間 出席    
 6日間 出席  
        
  発熱   解熱          


乳幼児(保育園・幼稚園)の発熱期間と出席開始の目安
 発熱期間 第0日 
 1日  2日  3日 4日  第 5日
 6日  7日 8日  9日
1日間 出席      
 2日間 出席      
 3日間 出席      
 4日間  出席    
 5日間 出席  
 6日間 出席
         
  発熱   解熱          

 インフルエンザは予防が大事です。

 インフルエンザでも普通のカゼでも治療の原則は、“1に安静、2に栄養”です。インフルエンザのシーズン中は、十分な睡眠休養をとるようにしましょう。

@.帰宅したら、必ず、うがい、手を洗う(ツメ、指間、親指)、顔を洗う

上手なうがいのしかた:先ずはじめに、ブクブクうがいをして、口中の雑菌や、食べかすを除去します。こうしないと喉までうがい薬が入った時、雑菌や、食べかすも一緒に喉に入ってしまいます。
ガラガラうがいは、上を見ながら一気に10〜15秒間「ガラガラガラガラガラ」します。これを2〜3回繰り返します。よくいわれるのは、 15秒間を2回ですが15秒間は少しきついですので、10秒間3回でもよいです。

A.マスクをしましょう。インフルエンザは飛沫感染です。咳や、くしゃみをした時に周囲への感染拡大を防ぐことができます。(マスクはエチケットです。)また、冬の冷たく乾燥した空気が、直接、喉〜気管支に入らないようにガードしてくれます。

B.インフルエンザは空気が乾燥すると感染力が増しますので、室内の湿度をやや高めに設定しましょう。加湿器を使用する場合、室内の湿度は50〜60%くらいが適度です。

C.人が大勢集まるようなところにはあまり行かないようにしましょう。

D.インフルエンザの最も確実な予防法は流行前にワクチンを接種することです。
 抵抗力の弱い小児高令者、気管支喘息、糖尿病、高血圧などの慢性の病気を持っている方などは、インフルエンザにかかると重症化することがありますので、積極的に接種しましょう。といわれていますが、たとえ健康であっても、インフルエンザで苦しみたくないわけですから、できるだけ多くの人が接種した方がよいです。