いつ接種するの(接種対象者・接種時期)

  Hib(ヒブ)ワクチン(商品名:アクトヒブ)は、2ヶ月齢以上〜5才未満のお子さんに接種しますが、標準として、2ヶ月齢以上〜7ヶ月齢未満で接種を開始します。

@.接種開始齢が、2ヶ月齢以上〜7ヶ月齢未満の場合
・初回接種 3回:1回目接種から4〜8週間の間隔で3回接種。ただし、医師が必要と認めた場合には3週間の間隔で接種することができます。
・追加接種 1回:初回接種後、1年〜1年3ヶ月の間隔をおいて、1回追加接種。

A.接種開始齢が、7ヶ月齢以上〜12ヶ月齢未満の場合
・初回接種 2回:1回目接種から4〜8週間の間隔で2回接種。ただし、医師が必要と認めた場合には3週間の間隔で接種することができます。
・追加接種 1回:初回接種後、1年〜1年3ヶ月の間隔をおいて、1回追加接種。

B.接種開始齢が、1歳以上〜5才未満の場合
・初回接種のみ 1回:1回だけ接種します。追加接種はありません。

 Hibワクチンは、他のワクチンと同時接種が認められていますので、三種混合ワクチンと同時接種できます。1才を過ぎてから接種する場合は、麻疹・風疹ワクチンや、オタフクカゼワクチン、水痘ワクチンなどと同時に接種することもできます。

 また、単独接種する場合は、他のワクチンと接種間隔をあけて接種します。その場合、ポリオ・BCG・麻疹風疹・水痘・オタフクカゼなどの生ワクチンを接種した場合は4週間おいて、三種混合・インフルエンザ・日本脳炎などの不活化ワクチンを接種した場合は1週間おいてから接種します。


 接種後の注意

 普通の生活で、かまいません。
 Hibワクチンは、安全性が高く、重篤な副作用はありません。せいぜい注射部位の軽い発赤、腫脹程度です。

 どんな病気なの

 インフルエンザ菌 b型とは?

 19世紀末に、ヨーロッパでインフルエンザが流行した時、多くの患者の喀痰からある細菌が検出されました。当時の人たちはこの菌がインフルエンザの原因と考えてインフルエンザ菌と名付けました。その後、1933年にインフルエンザウイルスが発見されるまで、この菌が、インフルエンザの原因と考えられていました。インフルエンザ菌は、冬に流行るインフルエンザウイルスとはまったく別なものです。

 現在でも、インフルエンザ菌とインフルエンザウイルスは混同されることがあります。Hibワクチンは、このインフルエンザ菌に対するワクチンです。冬に接種するインフルエンザワクチンとはまったく別なものです。

 少し、話はそれますが、ウイルスと細菌の違いについて簡単にご説明します。ウイルスと細菌の一番の違いは、細菌は細胞構造を持っており、自身で増えることができますが、ウイルスは細胞構造を持たず、自身で増えることができないため、他の生物に寄生(侵入)して増殖します。抗生物質は細胞構造を破壊することによって効果を発揮しますので、細菌には効きますが、細胞構造を持たないウイルスには全く効きません。他にもいろいろ違いがありますが、本題からそれますので、『細菌は抗生物質が効く、ウイルスは抗生物質が効かない』ということを、違いとしてご理解頂ければよいです。

 インフルエンザ菌には、a〜f の6種類があります。このうち b型(これが、Hib(ヒブと読みます):Haemophilus Influenzae b =インフルエンザ菌 b型です。)が、病原性が強く、髄膜炎を始め、喉頭蓋炎や肺炎などの重篤な感染症を引き起こします。

 Hib髄膜炎とは?

 Hibは、乳幼児の5%が鼻の奥やのどに保菌しているありふれた細菌ですが、脳の髄膜に感染すると、「細菌性(化膿性)髄膜炎」を引き起こします。
 体の中でもっとも大切な脳や脊髄を包んでいる膜を髄膜と言います。この髄膜に細菌やウイルスが侵入し、炎症を起こし、発熱、嘔吐、頭痛、けいれんなどの症状を起こす病気が、髄膜炎です。進行すると意識障害から命に関わる重症な病気です。

 ウイルスが原因の髄膜炎を「ウイルス性(無菌性)髄膜炎」といい、細菌が原因の髄膜炎を「細菌性(化膿性)髄膜炎」といいます。「ウイルス性(無菌性)髄膜炎」は概ね軽症ですが、「細菌性(化膿性)髄膜炎」は重症で命に関わります。「細菌性(化膿性)髄膜炎」の60%が、インフルエンザ菌 b型によるHib髄膜炎です。

 Hib髄膜炎は極めて重症で、毎年5才未満乳幼児2.000人に1人(約600人)が発症しています。患者の5%(約30人)が死亡、25%(約150人)に運動マヒ、精神遅滞、難聴、てんかんなどの重い後遺症が残る深刻な病気です。
 Hib髄膜炎の症状は、発熱、嘔吐、けいれんなどです。発熱はほぼ全例で、嘔吐は約半数に見られますが、それらの症状は、カゼや嘔吐下痢症でも見られるような症状です。もし、髄膜炎を疑えば、脊椎に針を刺して髄液検査を行いますが、簡単にできる検査ではなく、最初の診察で髄膜炎と確定診断するのは、現実的に不可能です。どんなに慎重に診察しても、発熱後2日以内だと70%は診断がつかないといわれており、重症化するまで診断が難しいケースがほとんどです。  

 細菌には抗生物質が効くといいましたが、Hib髄膜炎には、経口(口から飲む)の抗生物質ではまず効きません。むしろ、中途半端に抗生物質を飲むと菌が検出されにくくなり、さらに診断が遅れることにもなりかねません。これはHib髄膜炎に限ったことではありません。よく、「熱があるから抗生物質がほしい」という方がおりますが、安易な抗生物質の処方は行うべきではありません。
 
 抗生物質の注射が唯一の治療ですが、最近は抗生物質の注射に効かないHibも増えてきており、治療に難渋することもしばしばです。このことからも、Hib髄膜炎を防ぐには、ワクチンで予防することが最善策と言えます。

 Hib髄膜炎は、新生児では母親からの移行抗体に守られているため発症は少ないのですが、3〜4ヶ月になると移行抗体が消失し、生後4ヶ月から増加し、0才児にもっとも多く見られ、2才までに66%が罹っています。乳児期からの集団保育では特に注意が必要です。
 2〜3才からは徐々に自然免疫が発達し、あるいは不顕性感染(罹っても症状が見られないこと)により抗体を獲得することで発症率は低下し、4才以上ではわずか5%の発症で、5才を過ぎると殆ど発症しなくなります。従って、Hibワクチンは、2ヶ月齢以上、5才未満に接種すべきワクチンです。

 <Hib髄膜炎の特徴>を、まとめますと、
@.命に関わる病気。
A.運動マヒ、精神遅滞、難聴、てんかんなどの重い後遺症を残す。
B.初期診断が難しい。
C.進行が早い。
D.抗生物質による治療には限界がある。

 以上より、根本的な解決策はワクチン接種で発症を防ぐということになります。

Hibワクチンの詳細についてはこちらをご覧下さい。→Hibワクチンのお知らせ